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【コラム】旧敵国条項の悪用と国連体制の限界

政治
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また、古いものを持ち出したな。

中国「国連安保理の許可なしに日本攻撃可能」 Xで旧敵国条項に言及

2025年11月21日 19:56 (2025年11月21日 20:24更新)

在日本中国大使館は21日、中国が国連の許可なしに日本を軍事攻撃できる国際法上の権利に言及した。国連憲章の「旧敵国条項」に触れ、日本など敗戦国に対しては「安全保障理事会の許可を要することなく、直接軍事行動をとる権利を有する」と主張した。

日本経済新聞より

国際連合憲章に、敵国条項と呼ばれる部分が現存していて、第二次世界大戦中に連合国の敵国であった国に対する措置を規定した第53条、及び第107条、第77条は今なお有効である。支那が言っているのはこの部分のことなんだけど。

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誤ったロジック

敵国条項が残っている

連合国のロジックで「敵国」に含まれるのは、日本、ドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドが含まれると言われている。

ただ、日本を始めとした国家の働きかけによって、1995年に日本やドイツによって、第53・77・107条を憲章から削除する決議案を提出、12月11日の総会でそれが賛成多数によって採択されている。尤も、実際に削除に至るには常任理事国内での国内批准手続きがあるため、未だに削除に至ってはいないんだけれども。

そんな状況をいいことに、常任理事国の一角を占める支那が「あたかも自分たちには敵国を攻撃する権利がある」と言いたげに触れているわけだが――条文を読んでみれば話は全然違う。

第53条

  1. 安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極又は地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。
  2. 本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。

第107条

この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。

この条文、どう読んでも「地域的取極や機関が、安全保障理事会の許可なしに強制行動をとることを禁じ」ている。よって、支那が日本を一方的に攻撃できるようなことにはならない。

つまり、敵国条項が“死文化すべきもの”であることは国際社会の共通認識だし、仮に条文が残っていたところで、中国の主張は論理的に破綻している。

常任理事国の資格なし

あわせて、こんなニュースも出てきた。

中国「日本は常任理事国の資格なし」 国連大使、高市首相答弁を批判

2025年11月19日 9:34

中国の傅聡国連大使は18日(日本時間19日)、国連安全保障理事会の改革に関する会合で高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を批判した。「戦後国際秩序の破壊だ。このような国には安保理常任理事国になる資格が全くない」と述べた。

日本経済新聞より

これもまた、「何を言っているのやら」という。

そもそも、常任理事国の資格を持っていたのは中華民国だったんだけど、1971年のアルバニア決議によって、台湾からその権利を剥奪して得た形になっている。国際関係において複雑な政治的駆け引きはあったのだろうけれど、それにしたって乱暴な話である。

とまあ、政治的に常任理事国の地位を簒奪することに成功した支那は、それ以降、その地位を乱用して国際的に有利な地位を確立していくことになる。

そんな国に日本が「日本は常任理事国の資格なし」とか言われても、全く響かない。結局、彼らは「戦後国際秩序」を叫んでいるので、構造的に日本が常任理事国に入ることを否定する理由は分かるんだけど、彼らの言う国際秩序って、随分と便利なものだよね既に常任理事国になっている国家にとって。

国連の枠組み維持は平和維持を目的としたものだったが

そもそも国連という組織が、あれほどまでに“いびつ”な権力構造を抱えながらも、多くの国がその枠組みに従ってきたのは、常任理事国が「平和の維持」という建前だけは辛うじて守っていたからだ。第二次世界大戦後の国際秩序を維持し、少なくとも表向きは安定をもたらす存在として期待されていた。

ところが、現実は完全にその建前が崩壊している。

アメリカは“世界の警察”を降り、ロシアは周辺国に対して露骨な軍事的圧力を行使し、ウクライナを侵略中。支那は海洋進出と経済的影響力の拡大に躍起になり、国際規範を自国の都合でねじ曲げようとしている。

本来、国連の中心にいるはずの国々がこれなのだから、世界が「国連を維持する理由」を見失うのも当然だ。国連自身も、もはや平和維持に対する主体的な関与をほとんど停止してしまっている。

つまり、支那が持ち出してくるロジックは、事実誤認であるだけでなく、そもそも時代錯誤なのだ。戦後直後の“旧敵国条項”などを引っ張り出して威圧を試みたところで、国際社会の現実とは噛み合わない。

だが、こうした国家と付き合わざるを得ないのが日本の立場でもある。

だからこそ、日本政府としては情緒的な反発ではなく、冷静かつ計画的に対応し、国連という枠組みに過剰な期待を抱かず、むしろ国連とは異なる多国間・地域枠組みを視野に入れた外交と安全保障を進めざるを得ない。

要するに――国連中心の戦後秩序が揺らぐ今、私たちもまた次の時代を意識して動いていくしかない、ということである。

コメント

  1. 軍事オタクより より:

    中国は今感情的になりすぎなので
    こちらは如何に冷静に対処する事が
    望まれますね
    まさか敵国条項を持ち出すとは
    どうしようもないですね
    相手が墓穴を入るのを望むだけですね