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BYD「9分フル充電EV」の衝撃、その裏で必要になる電力とインフラ

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中華人民共和国ニュース
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いやー、盛り上がっていますな。

BYDがEV電池を刷新、9分で満充電可能に 11車種に搭載

2026年3月6日 1:27

中国自動車大手の比亜迪(BYD)は5日、電気自動車(EV)など向けで性能を高めた新型の電池を発表した。満充電までの時間を約9分と従来より大幅に短縮できる。まず11車種に搭載する。国内販売が低迷するなか性能を高めたEVで巻き返しを狙う。

日本経済新聞より

「嘘くせぇ!」と思ってスルーしてはいたんだけど、この記事では「技術的に可能だ」という前提で少し考えてみたい。

しかし、日本経済新聞がコレなのは、経済新聞としてどうなのか。

インフラとセットで売りたいBYD

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BYDは大躍進!?

日経は、会員限定記事なので、もう少し詳しい情報が出ているメディアを引用しておこう。

BYD、9分フル充電へ 中国で2万カ所の急速充電網を整備

2026年3月11日

中国電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)は3月5日、「閃充(フラッシュ充電)中国」戦略を発表した。第2世代ブレードバッテリーの発表に合わせ、今年末までに 中国全土で新たに2万カ所の急速充電施設を設け、都市部と高速道路をカバーする充電インフラを構築し、「給油並み」のEV充電体験の実現を目指す。

36KrJapanより

BYDにとって起死回生の大博打にでたなぁ、というのが僕の正直な感想である。

ちょっと前にこんな記事を書いたが、BYDは売上げ低迷に苦戦している状況である。

季節性要因というよりは、商売のやり方がが拙いのでは?と分析したが、詳しくはそちらを読んで欲しい。

インフラ整備からスタートするBYD

今回のこの技術、電池の技術として「アリなの?」という本質的な疑念はあるのだが、そこはさておく。冒頭に書いたように、技術的に成立する前提で話を進めていこう。

気になるのはインフラ整備の必要性である。

BYDはこの大規模な整備を実現するため、「協業」と「自社主導」を組み合わせる差別化戦略をとった。都市部の急速充電施設1万8000カ所は、外部の充電サービス事業者と緊密に連携し、自社の高効率充電設備を既存の充電ステーションに設置する。このアセットライト方式により都市部の90%をカバーでき、ユーザーは半径5キロメートル以内で充電設備を見つけられるようになる。

また高速道路でも充電施設を2000カ所整備する。長距離移動する際のニーズに着目し、ほぼ100キロメートルごとに充電施設を設け、全国の高速道路サービスエリアの約3分の1に展開する計画だ。第一弾として、次の大型連休5月1日(メーデー)までに1000カ所の充電施設の運用開始を予定している。

36KrJapan「BYD、9分フル充電へ~」より

このBYDの戦略は理にかなっているというか、コレをやらないと新車種は売れないというジレンマを抱えている。

9分でフル充電できるEV、そんな「できたらいいな」を詰め込んだ商品ではあるが、当然、充電する機械がなければ実現できない(=売れない)のである。

だから、インフラの整備はどうしても必須なので、これがBYD持ち出しで整備するとしているのである。

先ずは、5月までに1,000カ所の整備を目標にしているらしい。

この充電設備、第2世代ブレードバッテリーと出力1500kW超の「FLASH Charger」であり、ステーションの建設には、約70万元(約1,500万円)を要するのだとか。

独自のモジュール化技術により、土木工事や大規模な電気系統の改造を最小限に抑え、最短1週間で設置できる体制らしく、1,000カ所の整備で約150億円 〜 170億円の予算を必要とすることに。

おそらく、設置費用には補助金などを見込んだ金額だと予想され、地方政府から3割から5割の補助金がでている(現状、高速充電施設を作るときにはこの程度の補助金がでているようだ)。また、土地代もかかっていないケースが多いようで。

「協業」と「自社主導」

流石に、支那共産党がEV保護政策を打ち切ると宣言はしたものの、直ぐに全部締め上げる訳にもいかない。

さらに、支那全土に2万カ所用意することは、BYD1社は難しい額になるので(単純計算で3,000億円以上)、協業他社を巻き込んでの計画のようだ。だから、この充電施設で他社のEVも充電が可能だというスタイルを採っている。

ただ、スタート時点ではBYDが自社で出資しないと間に合わないわけで、5月までに1,000カ所設置。1カ所で1500kWクラスの充電設備になる。

単純計算すると、

  • 1500kW × 1000カ所 = 150万kW

つまり、「原子力発電所1.5基分(150万kW)」の巨大な需要が生まれることに。もちろんコレに対応する送電網も必要になる。

協業他社を巻き込む予定になっているけれど、このスタート時点でかなりの混乱が巻き起こる可能性が高く、果たして他社は相乗りする気になるのか?という不安は付きまとうだろう。

もちろん、BYD充電設備は、巨大なバッテリーを含んだものなので、一気に電力を消費するわけではない。だから、一気に電力消費が生まれる訳ではないのだが、しかしそれは充電池が必要とする総量が減ることを意味しない。

この時点で計画がかなり怪しい。

もちろん、下調べして「大丈夫だ」という結論に至ったからこそ、スタートするのだろうが……。

高速充電できるのは最初の8台だけ!?

そしてもう1つ懸念が。

例えば、1充電施設あたり、コンテナサイズの蓄電池ユニットを1基用意していたとして、概ね500kWh級のユニットだったと仮定しよう。冷却機構の話は無視して、十分に冷却が間に合う想定で、仮に計算すると以下のような流れに。

前提はこんな感じだ。

  • コンテナ蓄電池: 500kWh(満タン状態からスタート)
  • EV1台あたりの充電量: 80kWh(大型EVの10%→80%程度の急速充電を想定)
  • 送電網からの補充(入力): 150kW(高圧受電の現実的なラインを仮定)
  • 回転サイクル: 12分(9分充電+3分入れ替え)
到着順充電ステータス終了後の蓄電池残量備考
1台目1500kW(爆速)420 kWh余裕のスタート
3台目1500kW(爆速)320 kWh徐々に減り始める
6台目1500kW(爆速)170 kWh蓄電池の底が見えてくる
9台目1500kW(速)20 kWhここで蓄電池がほぼ枯渇
10台目150kW(低速)50 kWh補充が追いつかず、速度が1/10に(90分充電)
11台目1500kW(枯渇?)0 kWh僅かに貯まった分で一瞬加速するが即終了

実際には、BYDの高速充電できるタイプの高級車が連続で来るという想定をするのは酷なのだが、あくまで普及したと仮定している。

そうすると、500kWh級のユニットであっても8台目までしか高速充電に対応しないことになる。9台目は残量的には足りそうなのだが、電圧は低くなるために減速は避けられない。そして、実際には放熱に伴うロスが発生するので、もっと少ないのだろう。

最初の9台目の充電が終わると、充電設備の電力が枯渇するために10時間のリチャージ時間を要する。

もちろん、ユニット1基ではなくて複数用意すればこの問題は解消できる話ではあるが、必要な電力量が減るわけではない。つまり、EVの利用が増えれば増えるだけ、ユーザーは不便になる可能性があるわけだ。

なお、ユニットは1基あたり2台まで同時に充電出来る仕様だが、2台同時だと充電速度は下がる可能性が高いために計算には反映していない。

まとめ

BYDはEVが大幅に売れなければ設備投資する分を回収できない一方で、大幅に売れるとEVユーザーが不便になるという現実を抱えている。

EV普及によるバラ色の未来を描いている人が多いけれど、どうにも危ういバランスの上に立っている気がして仕方がない。BYDの戦略的には、インフラ事業まで食い込めば、そう簡単に潰せなくなるだろうという、そんな計算はあるのかもしれない。そして、これを他国で売るためには、かなり高いハードルを越えねばならないだろう。

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