この記事を読んで、「今更バタバタしてどうするんだ」という感想を抱いた。
ところが世間ではそうでもないらしく、むしろ前向きな受け止め方も少なくないようで、正直なところ少し驚いた。
「中東に絶対的依存」韓国のS-OIL、米国産原油を検討…カナダ産も代案として浮上
登録:2026-04-21 06:22 修正:2026-04-21 08:20
米国とイランの戦争が長期化し、石油業界と韓国政府が原油供給網の多角化を進めている中、中東への依存度が極めて高い韓国の石油精製会社大手のS-OILも、米国産原油の輸入拡大を検討していることが分かった。
ハンギョレより
書かれているのは、「米国産の輸入を検討」「カナダ産も代替候補として浮上」という程度の話に過ぎない。つまり“検討段階”であって、供給が安定したわけでも、価格が下がる見通しが立ったわけでもない。
では一体、どこに喜ぶ要素があるのだろうか。
原油確保に大わらわ
FTAの成果
ああ、もしかしてこれかな?
カナダ産原油が関税なしで韓国へ…両国が「原産地証明の特例」で合意
登録 2026.04.21 10:23:23 修正 2026.04.21 10:44:28
関税庁が、カナダ産原油の輸入における障害となっていた原産地証明手続きの難題を解決した。自由貿易協定(FTA)に基づき、カナダ産石油が関税なしで円滑に韓国へ輸入されることになり、国際的な原油需給の危機から脱却する上で大きな力となる見通しだ。
~~略~~
今回の共同声明でアルバータ原油輸入時自由貿易協定(FTA)特恵税率(3%→0%)を適用されるのに障害となった原産地立証問題が解決された。
NEWSISより
この記事に対して「これこそが本当のディールだ!」と喜んでいる方も見かけたのだが、そんなに素晴らしいことなのだろうか??
何故なら、冷静に見ると、これは「輸入しやすくなる可能性が高まった」だけであって、「安定して大量に確保できるようになった話」ではない。
確かに、韓国はカナダとFTAを結んでいる。一時期は、多くの国家とのFTAを締結することで「経済領土が広がった」と大喜びしていたのだが、それ以降、あまりFTA締約国を増やそうとはしていないようだ。
実際のところ、カナダとの貿易も必ずしも良い成果を出せたとはいえない。
原油の取り引きの話も、この類いの話になるのだが、実際、韓国はカナダから原油を輸入する場合に、今回の特恵税率の適用を受けるのは難しかったが、以前は3%の関税がかけられていた。
これはまもなくカナダ産原油の国内供給量の拡大とともに供給価格の引き下げにつながる。カナダは最大年間3300万バレルを韓国に輸出するという意志を見せた。
NEWSIS「カナダ産原油が関税なしで韓国へ~」より
韓国は年間およそ10億バレルの原油を輸入しており、その約7割を中東に依存している。
ではカナダはどうかというと、輸入額ベースで見ても全体の0.5%程度に過ぎない。だから、仮に関税がゼロになったとしても、この比率が一気に主力に化けるとは考えにくい。
アメリカからの輸入
なお、カナダからの原油よりもアメリカから輸入する原油の方が遙かに多く、1.7億バレルをアメリカから輸入している。
じゃあ、アメリカからの輸入量を増やしたら?という話になりそうなのだけれど。
米国産原油は価格が安く、韓米自由貿易協定(FTA)による無関税の恩恵を受けており、精製過程で重質油と混ぜて使いやすいという利点がある。だが、ヒューストンやルイジアナなどメキシコ湾(アメリカ湾)沿岸の港から積み出されるが、これを運ぶ超大型原油タンカー(VLCC)がアフリカの喜望峰を迂回しなければならないため、中東産原油より輸送期間が2倍近くかかり、莫大な運賃がかかることがネックとなっていた。
ハンギョレ「「中東に絶対的依存」韓国のS-OIL~」より
狙い通りに安くはならないようだね。
ただ、安くなくとも量が確保できるならまだ韓国の産業が死滅してしまうようなことはないハズ。なのだが、商売のやり方は、考え直さねばならないだろう。
そういう意味ではカナダから購入すれば、喜望峰回りで来ることもなく購入できるからイイヨネってことになる。
そういうレポートもあるにはあるのだ。
ただ、一方でこんな記事も。
韓国の製油会社は、TMX拡張後のカナダ産原油輸入の経済性を評価している
2024年6月12日 | 03:46 UTC
韓国の製油所は、トランス・マウンテン拡張パイプラインの最近の拡張を受けて、カナダ産原油の輸入と精製の経済性を評価しているが、アジアの最終消費者がより軽質の原油を好むため、バンクーバーと韓国間の貿易量は当面限定的になる可能性があると、製油所および貿易関係者が6月7日から12日にかけて述べた。
韓国は2021年から2022年にかけて、カナダ産の重質サワー原油を定期的に輸入していたが、アジア第3位の原油輸入国である韓国は、2022年9月以降、カナダ産原油を一切購入していないことが、国営の韓国石油公社(KNOC)の最新データで明らかになった。
S&P Globalより
輸入が始まって、2年経過してから買わなくなったのだとか。
バンクーバーから太平洋経由で北東アジアへ輸出されるカナダ産原油の供給量は大幅に増加する見込みだが、重質で酸性の強いカナダ産原油が韓国の最新の製油所線形計画モデルに定期的に適合するかどうかは依然として判断が難しいと、原料管理担当者と韓国の大手製油所の関係者は述べた。
S&P Global「韓国の製油会社は、TMX拡張後の~」より
うんまあ、面倒くさいもんね。手間がかからず安い中東産の方が嬉しいと思うよ。
入手可能なのか?
とはいえ、輸入していた以上は、おそらくカナダ産の超重質油であろうと韓国内でも調質はできるのだ。その調質能力は低いかもしれないが、多分できる。
では、全く問題ないのか?というと、懸念点も。
カナダが長らく待ち望んでいた日量59万バレルのTMXパイプラインが5月1日に商業運転を開始し、カナダの生産者がバンクーバーから国際市場に原油を輸出する機会が生まれた。S &Pグローバル・コモディティ・インサイトが以前報じたように、ウェスタン・カナダ・セレクトやコールド・レイクといった重質の西カナダ原油の流れは、中西部から西カナダ、そしてアジアやカリフォルニアへとますますシフトしている。
S&P Global「韓国の製油会社は、TMX拡張後の~」より
この記事の時点で59万バレル、現時点だとカナダのTMXパイプライン拡張で輸出能力は日量89万バレルまで拡張されてはいるそうだけど、このうちの大半を支那が購入する話になっているのだとか。
支那はベネズエラからも重質油を大量購入していたので、カナダ産でも問題ない。では、韓国はイケるのか?というと、ここは「検討」が必要な程度には躊躇があるようなんだよね。
重油を輸送するにも、中東との貿易で使っていたタンカーでは問題があるとかで、そう簡単に振替輸送できないという事情もある。
今欲しいのに
ということで、韓国の市場はここ数日で出てきた「カナダからの原油調達」の報道があったにも関わらず、余り反応していない。
ナフサ68%、エチレン61%…韓国、3月の生産者物価が4年ぶり最大幅上昇
2026.04.22 12:06
国際原油価格急騰の影響で国内生産者物価が約4年ぶりの大幅上昇となった。これは消費者物価につながる可能性が高く、今後の物価負担が拡大する見込みだ。
韓国銀行(韓銀)によると、2026年3月の生産者物価指数は125.24(2020年=100)と、前月比1.6%上昇した。これはロシア・ウクライナ戦争直後の2022年4月以降、最も高い上昇率。生産者物価は昨年9月から7カ月連続で上昇している。
中央日報より
ここのところ、韓国の物価上昇を牽引しているのは、原油価格らしい。その状況は何処もあまり変わらないのだろうけれど、それでも朗報が出たのに全く反応しないってこともあるまい。
つまり、韓国市場はカナダのニュースに関して、余り肯定的には捉えていないという意味なのだろう。
まとめ
もちろん、韓国がカナダ産の原油を技術的に処理できないという話ではないだろう。
しかし、供給量・輸送コスト・原油の性状といった現実を踏まえれば、今回のニュースは「選択肢が一つ増えそうだ」ということに過ぎない。
少なくとも、手放しで歓迎できる状況とは言い難いだろう。それは、市場もそう考えているのだから、あながち僕の妄想というわけでもなかろう。



コメント
こんにちは。
こういうの、「中革のポスターがいっぱい貼ってある!素晴らしい!」っていうのと同じ事なきがします。
いっぱいあるのは、実はそれで全てであって、貼ってない大多数の有権者は支持してないという事実。
今更ドタバタするのは、今まで対応策がなく、今も対応出来ていないことの証左。
まあ、騒ぐ人は、エビデンスベースの話しが出来ない人ですから。
ミョン²がベトナムを訪問しまして、「エネルギー安全保障の強化と供給網安定化に向けて、より緊密に協力することで一致した」そうです。ベトナムの海底油田開発に一丁噛みして、原油引取優先権を確保するというのはどうでしょうね。韓国はいまのままではジリ貧です。