また計画の前倒しかと思ったら、実際には以前発表した2030年の小型月着陸船計画を改めて打ち出しただけのようだ。
韓国 35年までに低軌道衛星通信網完成へ=月面着陸も30年へ前倒し
2026.07.03 18:14
韓国の呉泰錫宇宙航空庁長は3日、南部の慶尚南道晋州市で開催された「先端産業発展ビジョン国民報告会」で、数百機の衛星による韓国独自の低軌道衛星通信網を2035年までに完成させ、月面着陸の時期を30年へ前倒しする方針を盛り込んだ「宇宙航空産業育成戦略」を発表した。
聯合ニュースより
韓国の宇宙開発って、直ぐに計画の前倒しをしちゃう悪癖があるんだよ。4月頃には、2030年初めまでに小型の月着陸船を打ち上げるとか言っていたんだが、おそらくその計画の具体化がこの報道に乗ったと言うことなのだろう。
ただ、前回も指摘したが、計画全体に無理があるんだよなぁ。
夢を見せるのが政治家の仕事
かなり見切り発車的な計画
これが前の記事。

こちらの記事でも、「2030年初めまでに民間の小型の月着陸船を打ち上げる事業」と説明されている。
ここで、ちょっと気になるのは「民間」と書かれていることだ。
また、30年に早期月面着陸を実現し、月を開拓する計画も紹介した。32年に次世代ロケットでの打ち上げが予定されている月着陸船に先立ち、30年に国産ロケット「ヌリ」で民間の小型月着陸船を打ち上げる。これと共に、29年の月軌道通信衛星、31年の地球・月科学探査船の打ち上げなどによって本格的な月探査時代の幕開けを飾る計画だ。
聯合ニュース「韓国 35年までに低軌道衛星通信網完成へ~」より
民間企業といっても、出てくるのはKAIかハンファエアロスペースのどちらかで、それを民間主導と謳っている理由はコストの問題なんだろう。
で、資金難にも関わらず、何とか民間企業に仕事を配りたいというのが、この計画のキモで、2029年にはヌリ号によって、月軌道通信衛星を打ち上げる予定になっているらしい。
計画順に並べると以下の通りになる。
- 2029年の月軌道通信衛星打ち上げ
- 2030年の小型月着陸船打ち上げ
- 2031年の地球・月科学探査船の打ち上げ
- 2032年の次世代ロケットの打ち上げ
- 2035年までに低軌道衛星通信網完成
誰にでも夢を見る権利はあると思う。でも、これは国民を騙す気満々の詐欺みたいな話で、過去にも「永遠の2020年計画」ってのがあったけど、そんな感じになるのではないだろうか。
また、「お金を出すのは民間である」というのは、韓国のいつものやり方だよね。夢を語るのは政治家の仕事だが、その夢に裏付けとなる技術や予算が伴っているかは別問題だ。他人の褌(民間の金)で国民に夢を見させようというのは、かなり都合の良い計画だ。
そういう意味では、今回の計画もかなり予算的に厳しそうではある。
永遠の2020年計画
ところで、「永遠の2020年計画」って、ナニカという話だが。
これは、昔ネットで噂になった話である。2007年、盧武鉉(ノムたん)政権が立てた「2020年に月探査(軌道船)、2025年に月着陸船」という計画は早々に破綻。だが、朴槿恵(クネクネ)政権になると「月探査を2020年に前倒しして、2020年に月に太極旗(国旗)をはためかせる!」と大々的に宣言した。これも実現はできなかったね。
ノムたんとクネクネは政治的思想など一切交わらないタイプだったんだけど、大見得を切るのは韓国大統領の特権みたいな話。
それでも、大幅に計画はずれ込んだにせよ、それでもヌリ号打ち上げまで漕ぎ着けたのだから、韓国人技術者の努力には頭が下がる。
が、計画自体の実現は、時間的制約があってかなり怪しいのが現実なんだよね。
一貫性のない開発計画
そして、このシリーズの第1回にまとめたんだけど、韓国の技術には一貫性がない。

大統領の思いつきで、あっちへフラフラこっちへフラフラ。継続的に計画を進めればいいのに、ちょっと良い結果が出ると、その計画の確実性を高めるのでなしに次の計画に手を出してしまう悪癖がある。これでは、技術者がどれだけ努力してもその積み上げが薄くなってしまう。
今回の、李在明氏(ミョンミョン)の発表も、まさにその悪癖が発揮されている気がする。ミョンミョンの任期中の2030年には月に行くと、そういう話になってしまったのだから。
そして、それが技術的に可能なのか?というと、2029年の月軌道への小型衛星投入もかなり厳しいけれど、2030年の小型月面着陸船の投入は、まず不可能だろう。
色々と無理がある
理由は前の記事にも書いたのだけれど、今のところヌリ号が成功したのは、低機動への小型衛星投入のみ。

確実に月を狙うには、高軌道に衛星投入をしたいところ。
低軌道でも楕円軌道に衛星を投入できれば、加速スイングバイを使って月軌道を狙うことは、理論的には可能ではあるんだけど、それだってかなりの燃料を詰んだ船をロケットで打ち上げる必要がある。ヌリ号のエンジン性能は、低軌道に投入できる重量が2.6tまで、太陽同期軌道に1.5tまでの小型衛星を投入できるとしている。

実際に太陽同期起動への衛星投入テストはこれまでに成功はしているんだけど、じゃあ更に月遷移軌道まで持ち上げられるかというと、完全にロケットエンジンのパワー不足。
そうすると、最優先で取り組むべきはヌリ号に使われているエンジン、75t級の出力向上かブースターの開発の必要性がある。それが実現するのは、最低限、2032年の次世代ロケット打ち上げまで待たねばならない。
月衛星軌道に辿り着くためには
低軌道から人工衛星に備えるスラスターをふかしてホーマン遷移軌道に乗るプランもあるかもしれないが、その為に必要なエンジン出力を確保するには、人工衛星にそれなりの燃料を積まねばならない。通常はそんな離れ業は使えないので、ロケットエンジンに頼る。つまり「第3段エンジンの再着火技術」を獲得するのが王道である。
ヌリ号は3段式のロケットではあるけれど、1段目は75t(KRE-075)×4本、2段目は75t、3段目は7t(KRE-007)と何れも非力。3段目の再着火技術も未獲得だとされており、少なくとも今まで一度もトライできていない。

この図で示す静止トランスファ軌道が、ホーマン遷移軌道のことを示す。
ただ、ホーマン遷移軌道から静止軌道に乗れたとして、そこから更に月の軌道に乗るためには、再び加速度を得なければならず、月の軌道に乗った後でまた姿勢制御の必要がある。
簡単に言うと、ヌリ号で打ち上げられる月軌道通信衛星の重量には限界があり、ロケットエンジン技術的な問題で、ホーマン遷移軌道に乗せることもできない。更に月軌道通信衛星に求められる能力もかなり高いのだけれど、それを実現出来る科学力が韓国にあるかどうかはちょっと怪しいってこと。
少なくとも、韓国は一度もそれに成功していないから。
ロケットエンジン技術開発を急げよ!
で、これが無理となると、ちょっと特殊な弾道補足を使う手はある。一応、韓国も韓国初の月探査機タヌリで成功させてはいるのだけれど、打ち上げに使ったのはスペースX社のファルコン9なんだよね。

日本だと、SLIMで成功させているので、真似したいのかもしれない。が、それをするにはやっぱり技術力が足りない。これもエンジン出力の問題なんだけれどね。
つまり、報じられた計画を阻むのは、主にロケットエンジン技術ということになる。
まとめ
現状、2029年の月軌道通信衛星打ち上げすら実現が怪しい状況にあって、2030年の月着陸船などとてもとても。技術開発の積み上げというより、政治的な目標設定が先行している印象を強く受ける。
ちょっと大きな計画をぶち上げるのは良いのだけれど、実現可能かどうかはしっかり検討すべきだろう。政治家は国民に夢を見せる仕事ではあるが、自分が夢を見るようでは話にならない。政策実現のためのリアリストになって貰わねば困るのだ。
現在のヌリ号は、月遷移軌道投入に必要な推力を持たないだけでなく、第3段エンジンの再着火にも対応していない。そのため、月へ向かうためのホーマン遷移軌道へ衛星を投入すること自体が難しい。その辺りはキッチリと把握しておくべきではないだろうか。それとも、一般的にはあまり知られていない裏技的な技術でも獲得しているのだろうか。



コメント
木霊様、めっちゃ面白い記事したよ♪
図解入りで判り易い。ロケットでどうやって他天体へ撃ち出すとか、あまり解らないんてすよ。だから興味深かった!
んで、またか…というへきか。懲りないといえべきか。
そもそも、これは記事にお願いしよかと思った内容てもあるのだけど。
月の裏面への着陸を成し遂げ、火星を目指すシナ共産党ですが。
①打ち上げ回数と、運んだ物量
②ロケット機材や機体の再使用率
のどっちも「振るわない」ようですね。
月面の裏着陸とか、たしかに人類初ですけども、それがシナ宇宙開発の追い風になってるとは思えない。
対してスターリンクなど、衛星高度での商業利用を徹底したイーロン・マスク。
こっちは、がんがん打ち上げるし、その回数も運んだ荷物も爆増させてる!
つまり、
「シナの国家の威厳をかけた宇宙計画は、イーロンの一民間企業に敗けた!」
と言えるのでないすかね??
この記事はシナでなく、キムチの話だ?
いや宇宙なんて、
シナに無理ならキムチには無理なので、シナの話で良いですう?
大は小を兼ねますから。
とりあえず南小中華の宇宙話は、大中華で話す方が話が早い想うすので。