近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。
スポンサーリンク

【コラム】ロシア経済は絶好調!?

ロシアニュース
この記事は約4分で読めます。

「ロシアで物々交換拡大、中国車を小麦で決済」というニュースを見れば、なるほどロシア経済は絶好調だ。

ロシアで物々交換拡大、中国車を小麦で決済 西側の制裁受け

2025年9月16日午前 11:23 GMT+92025年9月16日更新

ロシアの対外貿易で1990年代以来初めて物々交換が増加している。西側の制裁を回避しようとする企業が、小麦を中国製自動車と交換するなどしているようだ。

ロイターより

GDPも成長して、軍事費も国家予算の3割を突破。石油輸出を止める余裕すらあるのだから、不調なわけがない

スポンサーリンク
スポンサーリンク

懐古主義のロシア

1990年代のロシアと物々交換

ソ連崩壊(1991年12月)に伴って生まれたのが今のロシアで、経済的要因が崩壊の引き金になったソ連の遺産を引き継いだロシアでも、やっぱり財政悪化、外貨不足という経済的悩みを抱えていた。

西側との貿易ではドル不足(ハードカレンシー不足)で、現金支払いが行えず、苦肉の策として物納決済するケースが多かったのである。

実際、原油・天然ガス、穀類、木材など、今のロシアでも主力の輸出製品が、バーター取引の対価として支払われ、外国から工業製品や生活必需品を受け取っていた。この状況は1990年代中盤には、国内企業同士にまで波及し、物々交換での取引が横行したという。これらを揶揄して「バーター経済」と呼ばれた。

尤も、この状況は石油・天然ガスの価格が上昇し始めた1990年後半から2000年代初頭には解消したんだけどね。

国産車と支那車の微妙な共存

翻って現代のロシア国内では、外資系カーディーラーが次々と潰れていて、国産ラーダと支那車の需要が伸びている。

例えば、ロシア市場では2025年に国産車シェアが50%以上に回復したと報告されている。

そして、冒頭のロイターの記事にもこんな下りがある。

ロイターが関係筋2人に確認した取引では、中国製の自動車がロシア産小麦と交換された。中国側のパートナーがロシア側に穀物で支払うよう求めたという。

ロイターより

半導体が入らないからシンプル設計に戻った国産車、支那から融通される部品、そして支那製OSのスマホ。産業の「国内回帰」は着実に進んでいる……ように見える。

だが実態は、支那依存がより深まっているだけだ。しかも支那車はメンテナンス性が悪く、数年でガタがくると好評で、ロシアの中古車市場では特にボディーの床が腐りやすいと大好評だ(支那製の自動車の塗膜が薄く、金属の質が悪いのが原因だとの噂)。

国産車メーカーはラーダ(AvtoVAZ)が中心だが、UAZやGAZ、KAMAZなども存在する。ただし、UAZはSUV・オフロード車、GAZやKAMAZは商用車・特殊車両が中心で、一般消費者向けはラーダが圧倒的に主流だ。

結果として、「やっぱりラーダ最高!」という90年代的回帰が進んでいる。EVではロシアの冬と電力インフラに耐えられないから、選択肢は限られるんだよね。

バーター経済から生活様式まで90年代回帰

対外貿易が物々交換に回帰すれば、生活様式も90年代に戻るのは当然の流れだ。

輸入品不足を国産で埋め、支那製スマホで国内が閉じる。支那製Harmony OSを搭載して、支那のエコシステムによってアプリが提供されるのだから、当然に閉じた世界に引き篭もらざるを得ない。Harmony OSも、AndroidベースでiOSとの連携もある程度はできていたが、最近になってAndroidとの互換性は廃止されてしまったんだよね。

結局、表向きは「自立」と胸を張っても、実態は支那への傾斜と生活水準の逆行だ。

高金利とインフレが物々交換を後押し

直近のロシアの数字を見ると、失業率は7%前後、政策金利で20%、インフレ率は8%程度なんだそうな。

これは、都市部でインフラや消費物資の不足が指摘され、人手不足が加速しているから当然の帰結で、地方では更に絶望的な状況(数字)になるようで。

こうした数字が裏付ける減少は、高金利で現金借入が難しくなることと、輸入品不足などが影響して消費が減退すること。失業率が思ったより高くないのは戦争に人がとられているからなので、生産能力向上も見込めない。

結果として、企業も個人も現物での取引(物々交換)に走るのは自然な流れだ。それはつまりルーブルの通貨としての信用が失われていることをも意味する。

そして国民の不安

GDPなどの数字だけ見ると、皮肉にも「絶好調」なロシア経済。しかし国民からすれば、失われる生活の快適さや将来展望は無視できない。軍需が景気を支え、物々交換が貿易を回すモデルは、長期的に持続可能なのか?

戦時経済の中で、国民が「いつまでこの状況が続くのか」と不安に感じるのは、むしろ当然ではないだろうか。それでも、それでもプーチン氏が居る限り、ロシア経済は絶好調なのである。

後書き

というわけで、前回の、「経済崩壊と独裁国家」をロシアに絞ってコラム風?に仕上げてみました。

このブログでは、ニュース解説風味に拘り引用多目にしているのだけれど、読み物としてはやや読みにくさがあると思っていて、時々はまとめ風味にコラムとして書いてみるのも良いかなと思って、トライをしてみた次第です。

ちょっと皮肉が強めなので、賛否はあると思いますが、今後も時々はこういう試みにもお付き合い頂くことがあるかもしれません。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    ロシアは常々、武士は食わねど高楊枝なポーズをしますが、
    内実は「90年代回帰」とはまったくお寒い限りです。

    最近ロシア中銀が政策金利を17%まで引き下げると発表しました。
    雇用対策と内需刺激のためでしょうが、当然インフレは悪化しますね。
    https://shorturl.at/fS4n2

    いまのロシア経済をみると、むしろスタグフレーションを疑う状況なので、
    金利を動かしてどうこうなるとも思えません。

    で、昨日露皇帝が財政悪化を理由に富裕層に増税すると言い出しました。
    これは遠からず庶民への増税も行われそうです。
    https://shorturl.at/qwZKl

    戦争を止めるしか復興への道はありませんネ。
    それでも支那にスリ寄ったということは、当面の停戦はないのでしょう。

    • 木霊 木霊 より:

      戴いた情報は、ロシアの情報操作の一端とも言えるべき話ですね。
      ただ、いつまでも続けられないものです。
      支那への擦り寄りも、果たしてどれだけの効果があるのやら。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    少し話逸れますが。
    二次大戦、わーくには後半ジリ貧、国内も経済ジリ貧で、超大国アメリカと比べてわーくにはダメのダメダメだった、と言う論調が主流派かと思います。
    なんですが、イーストウッドの硫黄島二部作の「父親たちの星条旗」を観た時、「ああ、アメリカも戦費確保にてんてこ舞いだったのだな」と認識を新たにしました。
    ※工業力そのものの差はさておく。

    翻って、経済規模的に(現在の)日米と比ぶべくもないおロシア国、戦時経済のフィルタで一見ハラショー!に見えて、その実は……
    勝っても負けてもその先数十年は地獄が続く、プー皇帝はわかってらっしゃるのでしょうかね?

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      アメリカが戦争始めた理由って、経済政策の失敗からですから。
      戦費確保は債権で賄って、戦後はブレトンウッズ体制を構築してドルが基軸通貨としての地位を確立しました。

      ロシアは同じことをやれませんから、勝っても負けても厳しいですよね。