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H3ロケットの打ち上げ予定とみちびき7号

科学技術
この記事は約7分で読めます。

予定通りであれば、12月7日には打ち上げが実施されるH3ロケット8号機だが、その前に9号のニュースが。

H3ロケット9号機、26年2月打ち上げへ 日本版GPS衛星7基目

2025年12月1日 12:44 (2025年12月1日 18:10更新)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は1日、大型基幹ロケット「H3」9号機を2026年2月1日に種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げると発表した。日本版全地球測位システム(GPS)を担う準天頂衛星「みちびき」の7号機を搭載する。打ち上げの時間帯は午後4時30分〜午後6時を予定しており、予備期間は26年3月末まで設定している。

日本経済新聞より

そう、みちびき7号機を搭載した打ち上げが予定されているのである。

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国産GPSの整備

準天頂衛星システム

2018年11月より4基体制でひっそりとサービス開始したみちびきだが、7基体制になって初めてみちびき単独での持続測位が可能となる。

スケジュール

日本のGPSはみちびきだけで機能充足可能というという体制なので、みちびきの性能を十全に引き出した測位が実現できる。

4機体制時と7機体制時の比較図-1

といっても、多くの人にはピンとこないかもしれないね。過去の記事でも触れているんだけど。

もう少し詳しく説明していこう。

高精度測位

準天頂衛星「みちびき」を運用することで何ができるのか?というと、一番の特色は高精度測位である。

また、GPSを補う信号を出しておりGPSと併用することで、約10メートルあった位置情報の誤差を最小約6センチメートルに抑えられる。車の自動走行や農機の遠隔制御、災害時の安否確認といった幅広い分野で活用が期待されている。

日本経済新聞「H3ロケット9号機、26年2月打ち上げへ~」より

既に適用されているサービスで、一部のスマホなどでもみちびきの信号を受信してGPSの精度を高めている状況にある。

対応製品はリンク先を確認して欲しい。

スマホ・タブレットPC

なお、2022年以降のスマホに関しての紹介がないが、これ以降のマルチGNSS対応マルチバンド対応の国産のスマホには概ね適応されているようだ。国産のスマホが絶滅危惧種になりつつあるのは嘆かわしいが……。

ともあれ、民間利用も進んでいるという理解で良いと思う。

img

7基体制になると何が変わるかというと、24時間サポート可能と言うことになるのである。他国のGPSに依存することになると、どうしても測位精度が低下してしまう問題があるのだが、それが解消するよと言うことになる。

現時点では実現できていないが、おそらくはスマホでも1m程度までには誤差を縮められるとされている。今使っているナビだと、道路を挟んで反対側の道を歩いていると表示されるようなケースもあるが、そうしたトラブルが激減するということになる。

海外にもサービス提供

なお、災害・危機管理通報サービスの拡張も予定しているらしく、オーストラリアやフィリピンなどにも提供可能なんだとか。

災害・危機管理通報サービスによるJアラート(ミサイル発射情報)・Lアラート(避難指示)の配信を2024年4月より開始し、豪・東南アジア諸国向けの災害情報の配信を2025年度めどに開始するよう整備を進めています。

説明サイトより

なるほど、国防に直結しているというわけだね。

オーストラリアやフィリピンにとって、アメリカのGPS衛星からの測位情報を得る場合には民生グレードしか利用できないと色々と不都合がある。日本だってアメリカ軍との共同作戦をやる時は軍事グレードが使えるが、単独で動く場合は制約があるのだ。

ところが、より精度の高い測位情報が得られるようになれば、そりゃ日本の製品が高くても「売ってよ」という話になる。

コレまで特に言及してこなかったが、日本の製品の引き合いが広がっている背景にはそうした事情もあるわけだ。

韓国?知らない子ですね。

農業での高精度測位

更に、過去にも触れたことがあるが、農業などにも利用可能性が期待されている。

こちらには、具体例が示されていて、自立型の工作機械や自立飛行型のドローンを使った農薬散布などが期待できる。

日本版GPS衛星「みちびき」の農業利用の可能性

2021.4.19

米国運用のGPSのような日本独自の衛星を使った測位システムが、「みちびき(準天頂衛星システム)」だ。2018年に4機体制で運用を始め、うち3機の測位信号が日本に常に届き、農業でも利用可能になりつつある。

~~略~~

飯田:みちびきの公募実証を行っていて、農業用だと、たとえばクローラー型自律走行車両の開発と実証があります。茶畑で自律走行できる収穫機を、CLASを使って高い精度で制御しようというものです。 また、ドローンを使った肥料の精密散布に関する実証実験もあります。GPS単独での測位だと、10メートルとか大幅にずれてしまうので、CLASを使うことで散布位置のズレを極力抑え、精密な散布をするための検証作業を進めています。

SMART AGRIより

この記事は4年前の記事なのだが、現状では更に技術が進んでいるのでかなりの精度のGPS運用ができるようになってきている。7基体制はそうしたGPS運用をサポートする上でもかなり有益なのである。

農業DX「レポサク」専用端末がCLASに対応 – 国内初の通信一体型超高精度GPSロガーで作業データの取得精度向上と適用範囲拡大へ –

2024年5月3日 11時50分

農業DXスタートアップのエゾウィン株式会社(本社:北海道標津町、代表取締役:大野宏)は、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応した新型ロガー端末の提供を開始しました。

PR TIMESより

みちびき7機体制による本格的なサービス提供は26年度から開始予定となっているので、これらの技術に関して更に発達するのは今後ということにはなるんだけど。

信号認証サービスと利用可能性

もう1つ重要だと思うのは、信号認証サービスの提供開始である。

現在の測位信号は第三者の信号と区別する仕組みがなく、偽の測位信号によって位置・時刻の改ざんが可能とされ、例えばドローンによる配送サービスが普及した場合、ドローンの位置情報を途中で改ざんすることで、商品を盗むことも可能になる。

信号認証サービスを導入することで電子署名と公開鍵などによって電子的に認証を行ない、位置情報の乗っ取りを防止する。

Impress Watchより

これが、他の展開にも影響してくると見ている。

現状で何処まで研究が進んでいるのかは不明だが、「スマホdeリレー」というサービスを始めようとしている。「スマホdeリレー」は、スマホ同士の中継機能を使って、通信インフラが途絶した状況での通信がアプリを使って使えるようになるサービス。とはいえこれ、未だ研究室でテストしている段階で、実用化するにはちょっと問題ありという感じ。

ただ、GPSでの信号認証が可能となり、みちびきを介した通信が可能となれば、災害時の救難に利用できるのでは?という話になっている。

みちびきの通信回線とスマホdeリレーの相互補完関係(提供:株式会社構造計画研究所)

これ、高知市などでは運用開始したとの報道があるが、高知市のケースでは地域限定の運用にとどまっているようだ。この機能、電力消費が激しいうえにWi-FiやBluetoothの通信可能距離に縛られるという欠点があるので、イマイチ広がらないようだ。

ただ、みちびきを利用した個人の安否確認のツール化が可能であれば、劇的な機能改善が可能となる。スマホにアプリがいれてあれば、SOS発信ができるというわけだ。ただ、Q-ANPIサービスを使うためには専用のアンテナは必要になるので、絶賛、実証実験中なんだけどね。

衛星安否確認サービス(Q-ANPI)の防災機能拡張に伴う実証・調査 : 宇宙政策 - 内閣府
衛星安否確認サービス(Q-ANPI)の防災機能拡張に伴う実証・調査

何処の避難所に何人避難しているか、とか、そういう情報の取得によって、物資支援数を確定し易くなるとか、現時点ではその程度のようだが。

まとめ

というわけで、H3ロケットによって打ち上げられる人工衛星によって、これからの技術革新に大きな期待ができるというお話だったんだけど、H3ロケットの打ち上げコストが下がるかどうかは12月7日の打ち上げが成功するかどうかにかかっている。

今週末が楽しみですな。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    3-0形態のH3の打ち上げも、「みちびき」運用同様に興味深いところ。
    本年度中の(問題点を改善した)打ち上げ予定とのことで、上手く行って欲しいです。

    「みちびき」運用は、完全自動運転にもすごく影響するので、どんどん予算つぎ込んで欲しいですね。

  2. 軍事オタクより より:

    七面鳥さんのおっしゃる通り
    精度が高くなれば自動運転もできますもんね
    アメリカの衛星はわざとグレードを落としてるので本格的な稼働が楽しみですね