まあまあバカバカしい話になっている、韓国による原子力潜水艦建造の話。
駐韓中国大使「韓国の原潜推進に懸念、慎重な対応を望む」
Posted November. 15, 2025 09:53, Updated November. 15, 2025 09:53
戴兵・駐韓中国大使(写真)は、米国が韓国の原子力潜水艦(原潜)建造を承認したことについて「中国は懸念を表明した。各国の懸念を十分考慮し、慎重に処理してほしい」と述べた。韓国大統領室が原潜建造に関して「中国に対して説得できたと考えている」と説明した中、中国が改めて公に懸念を表明した形だ。
東亜日報より
支那から釘を刺されたところで、トーンダウンするかもしれないね。
本当に原子力潜水艦は必要なのか
条件闘争が始まる?
韓国はアメリカとの関税交渉において、「原子力潜水艦建造の権利をもぎ取った!」と大騒ぎになっていた。
韓国は、トランプ氏に「作って良いよ」と言われたという話をしていたが、蓋を開けてみると、トランプ氏の言動やファクトシートの公開などから以下の点が明らかになった。
- 米韓二国間の123協定と、合衆国の法的要件に従うことを条件として
- 平和目的での民生用ウラン濃縮および使用済み燃料再処理へと至るプロセス
- アメリカのフィリー造船所で作るってよ
この最初の123協定ってのは、1954年原子力法第123条(他国との協力)とのことで、アメリカが他国との原子力協定に関してはこの法律に縛られる。
当たり前のことだね。
原子力推進機関を持つ潜水艦
米韓でもこれに基づく原子力協定が結ばれていて、韓国はアメリカの同意なしには使用済み核燃料の再処理やウランの濃縮を行うことができないので、事実上、原子力潜水艦を韓国が自国で行うことは不可能だ。
で、これを「平和目的で」という条件付きで、緩和するプロセスに入るってことになっているんだけど、「民生用」の限定が付されている。この「民生用」というのは、20%未満の濃縮のことを意味していて、現状、韓国はそれすらアメリカの許可なしに行うことはできない。
今できるのは、原子力発電所の燃料として一般的に使用される濃縮度3~5%程度が限度なんだよね。20%未満でも大きな進歩となるんだけど、兵器級ともなれば20%以上に濃縮出来なければ始まらない。核兵器製造に転用可能な90%以上の濃縮は先が長そうである。
その上で、これをクリアする意味でも「アメリカ国内でやれよ」「フィリー造船所の機能を拡張してやって」という話に繋がるわけだね。
それと、もう1つ大きな意味を持つのが「原子力潜水艦」と韓国が拘っているのは、そこに核ミサイルを搭載するという野望があるからだ。しかし、そこはアメリカが明確に断っている。あくまでも「原子力駆動の攻撃型潜水艦(nuclear-powered attack submarines)」がターゲットなんだという話。
そうすると、無意味とまでは言わずとも、原子力潜水艦を保有する意義はかなり薄れる。いや、韓国のドクトリン的にそもそも原子力潜水艦の保有は不要なんだが、そこはさておこう。
支那からの牽制
しかしながら、どんな動きでアレ、韓国海軍の軍事力増強に繋がる動きというのには、支那も黙ってはいないということのようで。
戴氏は13日午後、ソウル市中区の駐韓中国大使館で開かれた記者懇談会で、「強調したいのは、現在の韓半島・地域情勢が依然として複雑かつ敏感だという点だ」とし、「韓米の原潜協力は単なる商業的協力の次元を超え、世界的な核不拡散体制および韓半島地域の平和と安定に直結する事案だ」と述べた。
中国は、米国による原潜燃料供給が核不拡散に反するとの認識を示したものだ。韓国政府は、原潜が核兵器ではなく通常兵器で武装するため、核兵器不拡散条約(NPT)違反には当たらないとの立場だ。
東亜日報「駐韓中国大使「韓国の原潜推進に懸念、慎重な対応を望む」」より
相変わらず支那側の要求は面倒くさいことこの上ないが、要は韓国側に原子力潜水艦を持とうとするなと脅しをかけているという風に捉えれば良いのだろう。
戴氏は、在韓米軍の戦略的柔軟性拡大など韓米同盟の現代化についても懸念を示した。戴氏は「韓米同盟が台湾問題で火遊びをしないことを望む」と主張した。
東亜日報「駐韓中国大使「韓国の原潜推進に懸念、慎重な対応を望む」」より
そして台湾の話もここで突っ込んでいるね。
韓国にとって両岸問題はかなりのタブー扱いなのだけれど、口に出してすらいないことに対しても牽制球を投げてくる辺り、支那も相当にこの問題にピリピリしているのだろうね。
台湾有事の際の役割
ただ、これに関してはソウル新聞がこんな言及をしていた。
「無料の核潜水艦」ではない「トランプには計画があるんだな?」…習近平を狙い撃ち
2025-11-16 19:52
「無料の原子力潜水艦」は存在しなかった。ドナルド・トランプ米大統領には計画があったのだ。
14日、ソウル某所で国内外の記者団と会ったダリル・カドル米海軍作戦部長は、韓国が原子力潜水艦(核潜)の建造推進を公式化したことについて「その潜水艦が中国を牽制するために活用されるのは自然な予測だ」と述べた。
~~略~~
彼は「台湾有事の際、在韓米軍や韓国軍が役割を果たすべきだと考えるか」との質問に対し、「大国間の衝突が生じれば『戦力総動員』に近い状況になる」とし、「具体的にどのような方式になるかは言えないが、明らかに一定の役割はあるだろう」と述べた。
ソウル新聞より
こういう評価であれば、支那からの牽制は分かるんだよね。ただ、何というか台湾有事に潜水艦か?という気はしている。
そもそもこのソウル新聞の記事なんだけど、「無料の原子力潜水艦」という意味の分からないタイトルになっている理由は、「引き替え条件=台湾有事介入の役目を持たされる」という構図を描いているからなんだよね。
出来る、出来ないという話はあるけれども、韓国に「その気があるよ」ということになれば、それだけで軍事的プレゼンスには繋がる。
当然ながら、支那にとっては「大問題」ってなことになるのだよね。韓国にとってそんな噂のある話を本当に進めるのか?ということも含めて、再び揉めそうな話である。




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