本当に出来るのかしら?
韓米「原潜・原子力」安保後続協議、大統領府とホワイトハウスが主導へ
Posted February. 14, 2026 09:06, Updated February. 14, 2026 09:06
韓国と米国が、原子力潜水艦(原潜)の導入やウラン濃縮・使用済み核燃料再処理権限の拡大など安全保障分野の後続協議を韓国の大統領府と米国家安全保障会議(NSC)が主導することで合意し、早ければ今月末にも米側交渉団の訪韓を調整していることが分かった。また、韓国政府は韓米「2+2」外交・国防長官会談も推進しているという。
東亜日報より
去年の夏頃に、トランプ氏と李在明氏(ミョンミョン)の間で合意が行われ、アメリカで韓国の原子力潜水艦が建造されるという話が持ち上がっていた。今回のニュースは、その協議を進める段階に入ったことを伝えている。
原子力潜水艦建造の困難性
それでも原子力潜水艦が欲しい
先ずは、去年の記事に触れておこう。
こちらの記事ではトランプ氏とミョンミョンとの間で関税協議に絡み、「原子力潜水艦を作りたい」「おう、じゃあ、アメリカで作るなら良いぜ」というやりとりがあったことを紹介している。
今も25%関税に拡張する話で盛り上がっているが、それにかこつけて原子力潜水艦の協議をしたミョンミョンの交渉術はたいしたものだ。
過去に、韓国海軍の潜水艦事情をこちらの記事で紹介している。
その中で、「島山安昌浩級潜水艦 バッチ3」という構想があって、「原子力潜水艦を作ろう!」ということになっていることに触れた。
何故、韓国は原子力潜水艦を欲しがっているのだろうか?まずは、原子力潜水艦とは何が違うのか?技術的ハードルを整理する。
動力源の違い
折角なので、少し原子力潜水艦について整理しておこう。
原子力潜水艦と通常型潜水艦の最大の違いは「動力源」にある。
通常型はディーゼルエンジンとバッテリーを併用し、定期的に浮上またはシュノーケル航行を行って充電する必要がある。ディーゼルエンジンは燃料と燃料を燃焼させるための酸素が必須なので、バッテリーを充電する時には酸素を供給しなければならず、バッテリーは低速で移動しても満充電で数日から1週間程度、燃料も1回の給油で1月程度保てば良い方だろう。
一方、原子力潜水艦は小型原子炉で蒸気タービンを回し発電するため、燃焼に酸素を必要としない。それどころか、水を電気分解して酸素を作り出すことが出来るため、持続的に発電できるため、理論上は補給なしで数か月単位の連続潜航が可能となる。燃料は数年に1回交換か、最近では艦体寿命が尽きるまで交換不要なタイプもある(高濃縮ウランが必要となるため、韓国は取得が極めて困難)。
この“潜航持続力”と”速度“こそが最大の軍事的価値である。高速で長距離を移動し、外洋で長時間活動できるため、空母打撃群への随伴や遠距離抑止任務に適している。近海防衛を主目的とする通常型とは、用途そのものが異なる。

ただし、原子炉の構成は、陸上に作るものほど複雑ではない。
小型化と静粛化が必須
しかし、原子力潜水艦の難しさは「原子炉を載せること」そのものではない。
第一の壁は小型化である。原子力発電所と違い、潜水艦に搭載する原子炉は極めてコンパクトでなければならない。同時に、耐震性・耐衝撃性・放射線遮蔽を確保する必要があり、設計難度は極めて高い。
第二は静粛化だ。潜水艦は音源(振動源)は相性の悪いの兵器である。原子炉の冷却ポンプや蒸気タービンは振動源となるため、それらを極限まで低減しなければならない。初期の原子力潜水艦は、その音で居場所がわかると言われる程であったが、高速潜航ができることでその欠点を帳消しにした。だが、静粛性に優れることに越したことはなく、ここが通常型との決定的な技術差であり、長年の運用経験がものを言う領域でもある。
第三は核燃料管理の問題である。高濃縮ウランの使用は国際的な核拡散問題と直結する。技術力だけでなく、国際協定や外交関係が強く影響するため、政治的ハードルも非常に高い。
第四は艦体の大型化の問題である。原子炉をコンパクトに作っても、相当のスペースを要する。これは原子炉容器を厳重に作らねばならない他、蒸気発生器や冷却系統のコンパクト化が難しく、更に放射線遮蔽に気を遣わねばならない。そのために、大きくせざるを得ない。
第五は高額な維持費の問題である。通常の兵器は3つで1セットのような運用をすることが多い。このルールに従えば原子力潜水艦は3隻作らねばならないが、非常に高額な建造費を必要とする原子力潜水艦を3隻を作るだけの予算の捻出が先ず問題となる。そして、数年おきにフルメンテナンスが必要なので、運用にも高額な維持費をかける必要がある。
さらに建造費は通常型の数倍に達し、専用ドックや放射線管理体制、乗員教育まで含めた国家的インフラ整備が不可欠となる。
つまり、原子力潜水艦の難しさとは、「小型化・静粛化・安全性・核管理」という複数の技術的壁を同時に越える点にある。
単なる装備の高度化ではなく、国家の資金を多額に投入して技術基盤そのものを整備する必要性が問われる兵器なのである。
戦略的な意味付け
それでは、こんな面倒な原子力潜水艦を何故各国は欲しがるのか?特に韓国は何故欲しがっているのか、という点について整理したい。
圧倒的な「持続力」
違いでも触れているが、通常潜水艦の場合は非大気依存推進(AIP)を含めて、数日から数週間ごとに浮上・シュノーケルが必要となる。一方で、原子力潜水艦の場合は、それが数か月に伸びる。これは豊富な電力を使って水を電気分解して酸素を生成できるからである。数ヶ月というのは食料の保存期間と乗組員の精神状態の維持という観点から、限界があるとされている。
高速での持続行動
原子炉は冷却が必要な一方で、継続的な発電が可能で莫大な電力を生み出すことができるため、原子力潜水艦は高速で長時間航行が可能である。
通常潜水艦の場合、高速航行をするためには浮上した状態でディーゼルエンジンを駆動する必要がある。つまり、先行した状態で長時間航行する用途には原子力潜水艦を使うということになり、空母打撃群に随行する為にはその能力は必須ということになる。
そして、そのことは遠洋における運用にも耐えることを意味する。通常潜水艦の場合には、AIP仕様であっても運用しにくい話となる。
抑止力の向上
このため、潜航したまま高速移動すると、極めて補足しにくいという特性を得ることが出来る。
どこにいるか分からない原子力潜水艦から、核弾頭を有する弾道ミサイルを発射するというのが、戦略級原子力潜水艦と呼ばれる兵器の運用である。この戦略級原子力潜水艦を保有できれば抑止力としては大きな意味を持つ。
核弾頭を使わない場合でも、長距離巡航ミサイルを用いて精密打撃を行えることが出来るのであれば一定の抑止力を実現できる可能性がある。
このように、戦略の幅が広げられることは、軍事的には大きな意味を持つ。
建造できる能力の獲得
というわけで、原子力潜水艦の建造のハードルはかなり高く、韓国にとってはアメリカの協力なくしては建造が出来ないのが現状である。
これは米韓原子力協定(アメリカの原子力法123条に基づく協定)というハードルがあることも関係している。
原子力潜水艦を建造するためには高濃縮ウランを軍事利用核燃料として使うことが出来るという立場が必要となる。ところが、現状、韓国はアメリカの許可なしにはそれが出来ないというような協定を結んでいるのである。
政府消息筋は13日、「昨年、首脳レベルでファクトシートに合意しており、両国NSCが総括して安全保障分野の後続協議を進める方向で議論している」と伝えた。これに伴い、NSCのカナパシー上級部長(アジア担当)を代表に、国務省、国防総省、エネルギー省など、原潜や原子力濃縮・再処理、造船協力関連省庁の関係者で構成される米側交渉団が、早ければ今月末に訪韓する日程が調整されているという。
東亜日報「韓米「原潜・原子力」安保後続協議~」より
NPTや米韓原子力協定を乗り越える必要があるから、協議が必要だよと言う立て付けとなっている。
ただし、別記事で紹介したトランプ氏の提案、「韓国の原子力潜水艦は、アメリカで作れ」「フィラデルフィアにあるフィリー造船所の整備を韓国が出資してやってくれ」「そこで作れば良いじゃないか」で、全て解決する。
韓国としても原子力潜水艦の建造までの時間は長くなるが、獲得実現性は高まるので、悪い話ではないだろう。
まとめ:ただし現実的な問題も
原子力潜水艦は技術・戦略・外交が密接に絡む兵器であり、建造は容易ではない。だから韓国はアメリカの協力を不可欠としている。しかし多数の問題を抱えている。
つまり、
- そもそも韓国海軍に原子力潜水艦の保有が妥当かが不明
- 北朝鮮を敵国想定しているが、近海での運用であれば無用の長物になる
- 支那を敵国想定するのであれば必要となるが、それは口が裂けても言えない(以前、口に出して批判された為に、慌てて修正している)
- 概要に原子力潜水艦を持ち出して運用するドクトリンが存在しない
- アメリカ国内で建造し、メンテナンスも行うのであれば、それは韓国海軍の原子力潜水艦と呼べるのか?という、国論が沸き起こる可能性が高い
- アメリカの基地から原子力潜水艦を持ち出すため、アメリカには運用実態がバレてしまう
- 韓国国内の雇用創出に繋がらない
- 韓国の抑止力というより、米韓同盟の抑止力という位置づけになる
という問題が生じるわけだ。
そんなわけで、韓国にとっての原子力潜水艦は、技術的にはアメリカの協力で実現可能だが、運用ドクトリンや国論、コストとのバランスを考えると、現実的な意義は慎重に評価する必要がある兵器と言えるだろう。






コメント
記憶違いでなければ、ミョン²は原潜保有は民族の悲願だと言っていました。
おそらく20年後くらいには、韓国最初の原潜が完成すると思います。良かったですね。
そして、原潜建造は現ナマ3500億ドルの対米投資の見返り的な意味をもっているでしょうから、逆に対米投資を怠れば、トランプ大統領に反故にされてしまうかもしれません。
韓国には、まずは対米投資を乾いた雑巾を絞ってでもがんばってもらいたいです。(ふぁいと!)