紆余曲折あった次期型戦闘機(F-X)の選定とは別に、新たな戦闘機開発を自国で行おうというのが韓国の次世代戦闘機事業(KF-X事業)である。
現在は、形になってKF-21と名称が改められている。……なぜ、21なのかナンバリングは不明だが、おそらくは2021年に登場した(KF-X試作1号機の出庫式が行われたのが2021年)からというような意味合いなんじゃないかと。
どうせなら、制式採用した年にしようぜ。まあ、韓国の勝手なんだけれど。
韓国製戦闘機を作るニダ!
遅々として進まないKF-X
さて、計画が始まった時には次世代戦闘機事業(KF-X事業)という風に銘打たれていたのだが、この話が出てきたのは、2001年3月の韓国空軍士官学校の卒業式でのこと。当時大統領だった金大中が「自国開発の戦闘機を持つ」ことを発表した。
多分、当時老朽化が気になっていたF-4戦闘機やF-5戦闘機の後継を、国産戦闘機で!という思いがあったのだと思う。


こちらは、開発前のイメージ図だ。この手のスケッチ的なものは様々なものが出たのだけれど、紆余曲折を経て今の形に落ち着いた。カナード翼とか、デルタ翼は廃止された。アイデア段階ではユーロファイターの形状を随分と取り入れていたんだけどね。

実際、出庫式にたどり着けたのが2021年なので、計画発表からお披露目までに21年かかっているんだよね。
ステルス機か非ステレス機かで迷う
で、当初の予定では、とにかく国産戦闘機を!という話だったんだけど、2010年の延坪島砲撃事件(2010年11月23日発生)を受けて、ステルス性能を持たせた第5世代戦闘機を目指す、という話が出てきた。
コンセプトとしては、アメリカのハイローミックスという方針を参考に、F-35Aを「ハイ」、KFXを「ロー」と位置づけ、F-35Aほどの性能は要求しないコスパの良い戦闘機が欲しいという方針だったようだ。

最終的に決まった形はコレなんだが、どっからみてもF-35そっくりだね。F-22に似ているという意見もあったな。まあ、ステルス製を追求すると似たような形になるのは仕方がないらしい。え?これ、非ステルス機なの?
ただ、ここに至るまでには紆余曲折があったんだ。
韓国型次世代戦闘機事業、551億ウォン投じて中断の危機
2012年09月26日09時37分
韓国型次世代戦闘機を開発するKFX事業が海外共同開発パートナーの確保に難航し中断の危機に瀕している。この事業は2021年までに5兆770億ウォン(約3523億円)を投じて空軍主力戦闘機のKF-16の性能を上回る戦闘機を韓国の国産技術で生産するために推進されてきた。
中央日報より
F-35の開発を真似てKFXは共同開発方式を選択し、2012年の段階ではインドネシアやトルコに声をかけていたんだよね。だが、共同開発をすると手を挙げたトルコが「やーめた」と言い出し、20%出資で合意したインドネシアが余りの計画の進まなさに激怒。
[単独]インドネシア、韓国型戦闘機事業を非難
登録2013.06.01 19:12 /修正2013.06.01 19:36
[アンカー] インドネシアが韓国型戦闘機の開発KFX事業を非難して出ました。
「朝鮮TV]より
パートナーとして80億ウォン以上のお金を注ぎ込んだが何の成果も上げられなかったと主張しました。
ついに、空中分解に至ったかに見えた。
迷走を続けるKF-X
しかし走り出した韓国としては諦めきれずに迷走をしだす。
【時論】次期戦闘機事業、発想の転換を=韓国(1)
2013年11月01日13時08分
~~略~~
したがって次の通り提案したい。今後、老朽戦闘機に代わるKF-X事業を別途に推進せず、その予算をF-X事業としてまとめ、単一事業として進めるというものだ。FK-X事業も自主開発か従来のモデルの改造・開発かをめぐり数年間も論争中であり、まだ検討中だ。このため発想を転換しようということだ。そうすれば、追加の予算投入なく第5世代戦闘機を現計画の2倍近く確保することができる。これは予算問題を解決すると同時に、軍事戦略的に最善の選択となる。
中央日報より
一時は、中央日報が主張する様にKF-X事業を諦めて、F-X事業に統合するという選択肢が浮上する。このF-X事業、別に紹介したようにF-35Aを選定するに至るのだが、あるいは統合してしまってF-35Aを増やしたほうが幸せだったかもしれない。
とまあ、現実的な案が出てきたが、翌年にはいとも簡単に覆される。
韓国が独自戦闘機を本格開発 23年の戦力化目指す
2014.01.05 10:03
韓国軍当局が2023年の戦力化を目指し、韓国型戦闘機(KF-X)の本格開発に乗り出す。
総合ニュースより
覆すも何も、中央日報の提案だったのだから、韓国軍当局としては是が非でもという気持ちがあったのだろうね。
次期戦闘機:メーカーは単発機、空軍は双発機を希望
記事入力 : 2014/02/21 09:37
開発費と量産費を合わせると20兆ウォン(現在のレートで約1兆8900億円、以下同じ)前後に達する韓国史上最大の兵器導入事業、韓国型戦闘機(KFX)。このKFX事業をめぐり、韓国空軍が国防部(省に相当)に対し「エンジン1基の単発機ではなくエンジン2基の双発機を希望する」という立場を公式に伝えたことが、20日までに確認された。
朝鮮日報より:リンク切れ
ところが、ハイローミックス案で、「Hi」を担当するF-35A購入を決めたにもかかわらず、「Low」を担当するKF-Xは双発機にするとか言い出す始末。それって、安くならないですよね?
KFXエンジン「双発エンジン」と暫定決定…今月案発表
最終修正 2014.07.03 13:39 記事入力 2014.07.03 11:39
3兆ウォン規模の韓国型戦闘機(KFX)エンジン事業の「双発エンジン」を採用することで大枠が決定した。
asiaeより
そして、結局エンジンだけ先に決まってしまう。
選定されたエンジンはGEアビエーション社の「F414-GE-400」だが、実績でいえばスパホ(F/A-18E/F スーパーホーネット)で採用しているヤツなので、問題なかろう。
ただ、それならスパホじゃダメなんですかね??
KF-Xの入札を続ける韓国
そして、ついにKF-X計画は始動した(笑)
韓国の次期主力戦闘機開発計画「KF-X」、Boeing/Airbus/Korean Airlinesが共同提案へ
Posted 2 days ago, by Gerald Byrd韓国が現在、進めている次期主力戦闘機開発計画「KF-X」に関して、Boeing/Airbus/Korean Airlinesの3社が大連合を組んで、韓国政府に対して提案を行う方向で調整を進めていることがAviation Weekの報道で明らかとなった。
リンク切れ
ボーイングが入札に参加しようとしたり、エアバスが粉をかけたりと忙しい状況だったが、多分韓国軍側が声をかけまくったのだろう。
韓国型戦闘機開発 大韓航空とKAIが入札参加
記事入力 : 2015/02/24 12:39韓国防衛事業庁は24日、韓国型戦闘機(KFX)の開発事業入札に韓国航空宇宙産業(KAI)と大韓航空の2社が参加すると明らかにした。
「聯合ニュース」より:リンク切れ
最終的には、KAIと何故か大韓航空で一騎打ちが(爆笑)
何故に、大韓航空が出てきたのかは意味不明だが、きっと碌でもない理由なんだろうな。
入札の結果KF-XはKAIが作る事に
まあ、結果的にはやっぱりKAIが作るって事になったのだが、それならロッキード・マーティン社に設計をお願いするパターンの方が良い様な……。
建国以来最大の「韓国型戦闘機」企業としてKAI選定
2015年03月30日15時02分
建国以来最大の武器導入事業である「韓国型戦闘機(KF-X)」開発と関連し、韓国航空宇宙産業(KAI)が「優先交渉企業」に選ばれた。KAIによると、防衛事業庁は30日、防衛事業推進委員会を開いてこのように決定した。KAIと競合していた大韓航空は脱落した。
中央日報より
実際、やっぱりLM社を頼るつもり満々だったKAIは、「技術移転して貰うんだー!」と吹聴しつつ、結果的にはその手の技術を移転して貰える目処が立たずに、核心的な部分を自前で開発する流れになった。
国産戦闘機のレーダー開発を開始 26年終了目標=韓国
2016/08/10 11:49 KST
韓国国防部傘下の国防科学研究所(ADD)が10日、韓国国産戦闘機(KFX)の中核装備となるアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーの開発事業を開始した。防衛事業庁が伝えた。
総合ニュースより
大丈夫ですかねぇ?
で、急ぎに急いで2021年には試作機が登場する予定となった。計画が概ね固まった時期が2017年なので、設計や風洞実験など必要な手順をどのように熟したかは、正直良くわからない。
共同開発するハズのインドネシアが脱落?
共同開発という風に書かれることもあるが、KFXの実質的な共同出資者扱いなのがインドネシア。
一応、開発費の2割を負担する代わりに、試作機1機と技術移転を受ける話になっていた。この話が今も有効かどうかは不明だが、インドネシアが負担金の支払いを拒んでいるというニュースは何度か聞こえていた。
一応、開発費の2割を負担する代わりに、試作機1機と技術移転を受ける話になっていた。この話が今も有効かどうかは不明だが、インドネシアが負担金の支払いを拒んでいるというニュースは何度か聞こえていた。
韓国があまりにKFXの開発を遅らせるものだから、「信用出来ない」とキレていたのは事実である。ただ、最近になってその風向きがおかしくなってきた。
他国からのセールスを受けて、ラファールだとかF-15SEだとかF-16Vだとかを検討し始めたというのである。
一部の噂では、ラファールの購入は決定したという話も。
ただ、インドネシアという国も一筋縄ではいかない国であるため、確定情報が出るまでは「噂」扱いで構わないだろう。
韓国も、「ソレは別の話だから」という態度でいるようだしね。内心はどうだか知らないんだけどさ。
KF-21発表される!
出庫式に漕ぎ着ける
で、紆余曲折あったもののKFXはついに日の目を見ることになる。
2021年4月についに機体が完成して出庫式が執り行われるに至った。試作1号機ではあるが、まさにスケジュールに間に合ったと言っていいだろう。
韓国国産戦闘機が出庫式
2021.04.09 16:02
韓国防衛事業庁は9日、南部の慶尚南道・泗川にある防衛大手・韓国航空宇宙産業(KAI)の工場で、韓国国産戦闘機(KFX)の試作1号機の出庫式を開催した。
聯合ニュースより
この際にKFXは正式にKF-21「ポラメ」と改められる。製造されるのは120機となる予定なのだけれど、試作1号機が空を飛ぶ前に既に2023年12月までの開発スケジュールが決められていて、2026年までに完成を目指すことになっている。
更に、2026〜2028年の生産予定になっている初期ロット40機、2032年までに120機を納入する計画になっているからなかなか壮大である。
搭載兵装に苦戦
ただ、本体の開発は順調だと報じられても、搭載予定の兵装のほうは実は目処が立っていない。
実はKFX時代から搭載予定の兵装はアメリカから調達する予定だったようなのだが、どうもそれに失敗してしまったようで、KF-21の搭載兵装はわかっているだけでこんな感じだ。
- 長距離空対空ミサイル「METEOR」:欧州製、射程距離100km以上
- 短距離空対空ミサイル「IRIS-T」:ドイツ製、射程距離25km程度
- 空対地ミサイル「タウルス」:ドイツ製(韓国国内で製造予定)、射程距離500km以上
残念なことにこれはあくまでも見通しで、本当にシステムに統合してこれらの兵器を搭載できるのかは未だ不透明である。
取材ファイル] KF-21の最終関門「長距離空対地」、「独自開発は難しい」… 進歩は?
記事入力2021.08.17 午前9:09 の最終修正2021.08.17 午前11:55
去る4月韓国型戦闘機KF-21 1号機が華やかに初登場しました。大統領が直接出庫式に出席し、「私たちの手で作った先端超音速戦闘機として、世界で8番目の快挙」と称賛しました。KF-21が真の快挙になる何よりも強力な武装、すなわち長距離空対地ミサイルと長距離空対空ミサイルを確保する必要があります。KF-21の成功の最終関門は同じです。
NAVERより
皆さんも「ああ、アレか」と思い至るのではないだろうか。
とうとう飛行テスト始まる
とまあ不安要素はあったんだけど、試作機は続々出来てきて試験飛行の成果も徐々に報じられるようになった。
「韓国型戦闘機」KF-21武装飛行試験…「武装分離・機銃発射成功」
2023.03.29 08:00
韓国軍当局が国内技術で開発中の超音速戦闘機KF-21「ポラメ」の武装飛行試験を成功的に遂行した。
防衛事業庁は28日、KF-21が空軍第3訓練飛行団から離陸して南海(ナムへ)上空で実施した空対空武装分離試験、空中機銃発射試験を成功的に遂行したと明らかにした。
KF-21試製2号機はこの日午前10時54分に離陸して海軍第3艦隊、海洋水産部(南海漁業管理団)、南海地方海洋警察庁の支援下で中距離空対空ミサイル(Meteor)試験弾に対する武装分離試験を遂行し、午後12時9分に着陸した。
~~略~~
防衛事業庁は「昨年7月の初飛行以来、約150回の飛行試験を遂行してKF-21の超音速飛行能力やAESAレーダーをはじめとする先端航空電子性能を成功裏に検証してきた」とし「この日の武装飛行試験を成功裏に着手したことに伴い、未来の大韓民国領空守護の主役になるKF-21が完全な戦闘機として一歩先に進んだ」と強調した。
中央日報より
今のところ、成功したという報告しか聞かないんだけど、幾多あるトラブルを乗り越えての成功だと思う。5月末にはきっと試験合格の判定がでるだろう。
そしていよいよ量産体制に入るのだ。
……本当に大丈夫かね?
テスト飛行は合格したが
生産が始まる前に減産?!
と、2023年5月には暫定戦闘用適合判定が出て、KF-21は予定通りであれば2024年から生産に入るので、そろそろその生産工場の準備を、という段階になった。
防衛産業展示会2023では大勢の観客の見る前で、見事にデモ飛行を熟したしね。
これで予定通りに第1次生産分の40機を作り始めるぜ!という事になる筈だった。第1次生産分は2024年から製造を始めて2026年には韓国空軍に納入するスケジュールになっている。年間20機の生産というのはなかなかのハイペースだ。
例えば、世界中に販売中のF-35Aは、アメリカが年間100機以上を生産しているが(2022年は年間160機生産)、これは分散生産体制を確立できたからの話だから、現状で120機ほどしか作る予定の立っていない戦闘機をいきなり年間20機製造するというのは、少々酷である。
日本のF-2戦闘機は最終的に96機を製造したけど、年間製造数は10機前後(一番沢山作った年で12機を生産)であった。韓国のFA-50軽攻撃機は理論上年間60機の製造が可能らしく、KF-21の隣のラインで作られているので、案外、製造ラインを整理すれば年間20機くらいは余裕で製造できるのかもしれないけれど。
そうした検討をしたかどうかは知らないが、製造を始める前に、「やっぱり初期ロットは20機だけにしようぜ」という話になった。
その理由は、どうやらまだ空対空攻撃能力も確実に獲得できていないから、という事らしい。空対地攻撃能力は、未だにテストすらやれていない事も影響しているようだね。あと、狙ったとおりにコストダウンできていないという事情もあるみたいだ。
ここから「やっぱり40機作るんだ!」という派と「20機でも多い」という派の熾烈な争いが始まったのだけれど、現時点ではその折衷案で、20機作る予定で進めて夏頃までのテストで上手くいったら追加で20機ね、というところに落ち着いている。
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