韓国の自走砲と言えばK9自走砲が有名なのだが、他にも運用している自走砲がある。それがK55自走砲である。ああ、タグはお笑い韓国軍が付いているけど、お笑い要素はない事だけは先に書いておこう。今回の記事はあくまでも、知識としてこういうアイテムがあるよ、ということを記録しておく目的で書いているから。
[G-Military]5次量産に入るK55A1とは?
入力2019-12-31 13:20
我が陸軍の155mm自走砲KA55A1が5次量産に入る。 K55自走砲にK9自走砲技術を適用したKA55A1の5次量産が完了すると、陸軍の自走砲電力と砲兵染色が大きく増強されるものと見られる。
G-enewsより
コレまで扱って来なかった兵器の記事だけれども、別の機会で出てきたので少し触れておきたい。引用記事が古くて申し訳ないが。
寧ろ主力にすべき自走砲
ライセンス生産品
どうして触れなかったか?なんだけれども、あまり話題にならなかったからなんだよね。何しろ、元型はアメリカ製のM109A2自走砲で、基本的にはライセンス生産品だから。
ハンファディフェンスはこれと関連し、2011年から開始した1~4次自走砲の量産事業を順調に進めながら、今回の事業も進めることになったと説明した。
K-55は米国のM109A2自走砲をライセンス生産したもので、このため米国ではK-55ではなくKM109A2Kと呼ばれる自走砲だ。
G-enews「5次量産に入るK55A1とは?」より
アメリカ製のM109自走砲といえば、有名なのがM109A6「パラディン」である。

ただ、「パラディン」はそれまでのM109を大幅に近代化改修したもので、価格的には大幅に上がる。それまでとは別物と呼べるくらい大きな改良があったからね。現在のアメリカ陸軍はM109A6からM109A7に改修中であるらしい。
韓国陸軍はM109A2自走砲を1960年代に導入したが、導入数を増やすために1983年にライセンス生産する権利を取得。7割くらいの部品を韓国内で製造して、韓国内で組み立てたのがK55自走砲ということのようだ。さらにこのK55自走砲を近代化改修するに当たって、M109A6相当にするよりも自国開発した方が安いことに気がついたらしく、K9自走砲の開発を決断したと言われている。
世界で使われるM109系自走砲
この自走砲、かなり人気があったらしく多くの国で採用されている。が、ベースとなったM109は1950年代に開発されたベテラン兵器である。
流石に引退させた国も多いが、改良して使い続けている国もあるようで。
「100年兵器」ほぼ確定? 「M109自走砲」がここまで使い倒されるワケ 70年経て砲身まだ伸びる?
2023.10.19
イギリスの防衛大手BAEシステムズが2023年10月9日、新型自走砲「M109-52」を発表し、合わせてM109-52から155mm砲弾の発射試験に成功したことを明らかにしました。
このM109-52はドイツのラインメタルが開発した52口径155mm榴弾砲に、BAEシステムズのM109を組み合わせる形で開発された自走榴弾砲です。
現在運アメリカ陸軍が運用しているM109A6は主砲に39口径155mm榴弾砲を搭載しています。M109の主砲の砲身の長さは約6.07mですが、M109-52は約8.06mと2m近く長くなっています。砲の最大射程は砲身が長ければ長いほど大きくなるので、同じ155mm砲弾を発射した場合、M109-52は現用のM109よりも遠距離からの砲撃が可能になります。
乗り物ニュースより
ベストセラーとなったM109自走砲だが、開発国のアメリカは改良して運用している。実は高性能化した装軌式自走砲XM2001「クルセイダー」は、価格が高騰し過ぎて開発を断念。手頃な重さのM109A6「パラディン」がそれだけ使い勝手が良かったとも言える。
今回発表されたM109-52に装備されたL52は、M109A7の車体との互換性も確認されており、BAEシステムズは2024年にも射程の延伸を証明するための追加試験を予定しています。
乗り物ニュース「「100年兵器」ほぼ確定?」より
帯に短し襷に長し、自走砲に関して言えば、近代化改修の結果が全て良い方に向かうということはないようだね。価格とのバランスが大切と言うことだよ。そういう意味ではK9自走砲は巧いところをチョイスできた製品だと言えるだろう。
K55A1に近代化改修
が、韓国陸軍はK55自走砲をK9自走砲の技術をフィードバックしてK55A1自走砲として改修する選択をした。
良いか悪いか?という話でいくと、K55自走砲、つまりM109A2自走砲って、重量が26tそこそこで、38口径155mmの主砲を積んでいる格好なんだけど、K9自走砲は重量が倍近くの47tで、52口径155mmの主砲を積んでいる。装甲性能も破壊力も全然違うんだよね。
ただ、コスト的にはK55自走砲の方が新造するにしてもお安く、既に1100両も導入しているのでアップグレードする形で導入する方が更にお安く済む。
ハンファディフェンスによると、K55A1自走砲は運用中のK55自走砲を将来の作戦環境に適合するように性能を改良した装備だ。K55A1自走砲は現在運用中のK55自走砲にK9と同じ自動放熱/射撃制御システムと衛星航法装置を適用し、持続発射速度の向上と反応性、生存性を向上させた。目標物を攻撃する距離と角度、風の強さだけでなく、目標物の位置も自動的に計算する。
これにより、超弾発射時間を既存の2~11分から停止状態45秒、起動中75秒まで短縮した。何より懸垂装置のアップグレードで射撃ごとにスペードを地面に固定させなくても射撃が可能になるように改善された。
G-enews「5次量産に入るK55A1とは?」より
そしてK55A1にアップグレードすることで、砲弾装填も半自動となるので登場する兵員の負担も軽くなるという。
戦闘重量27tのK55A1の最大射程距離は32kmで、最高速度は時速56kmである。この自走砲は1分あたり最大4発を射撃し、1分当たり2発を持続射撃できる。自走砲自体の中に36発の砲弾を積載する。砲弾装填は自動であるK9とは異なり、半自動で装填される。
G-enews「5次量産に入るK55A1とは?」より
そんなわけでK55自走砲を改修して使うメリットもかなりあるという事なんだろうね。
K9自走砲は1,300両国内に配備していて、K55自走砲は1,040輌配備している。そして、韓国国内で設計したK9自走砲よりも、K55自走砲の方が信頼性が高いまである。もちろん、K9自走砲もブラッシュアップされつつあるので随分と海外での評価も高くはなっているんだけど、それでもK55自走砲を全部退役させて入れ替える判断にはならないよね。
そういう意味でも、海外に販売するアイテムにはならない可能性は高いけれども、韓国陸軍の戦力増強という意味ではかなり賢い選択と言えると思う。
コメント
こんにちは。
>手頃な重さのM109A6「パラディン」がそれだけ使い勝手が良かった
>K9自走砲は巧いところをチョイスできた
性能(カタログではなく、出来れば実戦)とお値段のベストバランスがちょうどその辺なのでしょうね。
どんなに高性能でも重すぎたり高すぎたりすると数揃えられないし機動力もなくなるし。
10式以外の現役戦車がみんなそこにハマってる気もしますが……
>K55A1自走砲として改修する選択を
自走砲は、そこまで機動性が求められないでしょうから、車体が耐えられる範囲なら、法の載せ替えはアリでしょうね、アビオも含めて。
※一式中戦車に12cmの艦砲載せた旧陸軍は……
韓国には珍しい、地に足付いた装備なんじゃないですかね、K55A1は。
こんにちは。
そういう意味では、韓国の兵器は優秀なものが多い……、多い?いやまあ、そういうのもあるって位にしておきます。
結構、色々詰め込みすぎておかしなことになっている兵器も見かけますから。
K55A1自走砲は、K1E1系戦車と同等の良さがあると思います。KM256 120mmL44滑腔砲を載せてしまったK1A1系は、残念な感じですが。