予算編成の段階でも、ちょっと揉めているらしい。
「KF-21は戦闘できない?」…予算・武装・KAIリスクが噴出 [パク・スチャンの軍]
入力 2025.11.23. 午前9:02
「防衛事業庁はボラメ(KF-21)の初量産となる2028年の戦力化日程遵守のため、事業管理を徹底し、発生し得るリスクを事前に予防するよう最善を尽くす。」
先月13日、国会国防委員会は2026年度国防予算案を審議・議決し、防衛事業庁に3つの付帯意見を提示した。その一つがKF-21であった。
NAVERより
「絶賛生産中」とされるKF-21だが、実際には懸念の方が多いようだ。
お金のかかる戦闘機開発
割に合わない予算
今回ついた予算は、KAIにとってはかなり物足りなかったようだ。
政府が国会に提出した2026年度予算案によると、来年まで行われるKF-21の研究開発費として8398億7600万ウォンが計上された。
NAVER「KF-21は戦闘できない?」より
8398億7600万ウォン(890億円程度)は決して小さくない額だが、戦闘機開発の当事者であるKAIにとっては不満らしい。
韓国型戦闘機事業団長のノ・ジマン氏も「2024~2028年に初の量産事業を行う必要があるが、毎年1兆5000億ウォン以上が必要なのに、昨年から予算が少なく反映されている」と述べ、KAIの負債比率が上昇していると明らかにした。
NAVER「KF-21は戦闘できない?」より
量産フェーズに入ると最も金がかかるのは常識で、KAIとしては「ここでケチられたら完成できない」と言いたいわけだろう。
インドネシアのせい?
KF-21は「韓国・インドネシア共同開発」という建前で始まっているが、インドネシアの負担金は大幅に減額された。
当初開発費の20%を負担すると約束していたインドネシアだったが、元合意の1/3程度に減額してもらう話になったらしい。
[単独]インドネシア、KF-21分担金1113億ウォン納付…残額は来年完納の見通し
入力 2025年11月21日 午後2時25分
国産KF-21戦闘機の共同開発に参加しているインドネシアが、今年の分担金を昨夏頃に納付した。
21日、国会国防委員会と軍当局によると、インドネシア側は先月8月にKF-21分担金1113億ウォンを追加で支払った。韓国とインドネシアが分担金関連の基本合意書を今年6月に改定した直後のことだ。
~~略~~
このような状況でインドネシアは納付期限延長を要求したが受け入れられないと分担金規模を6000億ウォンに調整しようと提案した。
政府はこれを受け入れて6月の基本合意書の改正を完了した。
NAVERより
当初予定では1兆7338億ウォン(全体の20%)を負担する予定が、色々調整した結果6000億ウォンにまで減額されたとのこと。
インドネシアとしては「今のKF-21をそのまま渡されても使えない」のだから、出し渋るのも無理はない。結果として、韓国側の持ち出しは増えるばかりである。
アメリカは兵器統合を拒む
当初搭載する予定だった韓国軍が運用しているアメリカ製の兵器、アメリカにシステムに統合することを断られている。
- 中距離空対空ミサイル AIM-120 AMRAAM
- 短距離空対空ミサイル AIM-9 「サイドワインダー」
- 空対地ミサイル AGM-65「マーヴェリック」
韓国空軍が既に使っている兵器なのだから、KF-21にも載せたいのは当然だ。が、アメリカ議会はシステムに統合することを拒否。
「統合するためのノウハウ」まで求めたことがアメリカの逆鱗に触れたのだろう。結局すべてNGを食らったのだ。
その結果、外国からミサイルを購入してKF-21戦闘機から発射できるようにする作業を自前でやらねばならなくなった。ところがそれが出来たという話は今のところ聞かないんだよね。
KF-21戦闘機には以下の兵器が搭載される予定になっている。
- 長距離空対空ミサイル「METEOR」:欧州製、射程距離100km以上
- 短距離空対空ミサイル「IRIS-T」:ドイツ製、射程距離25km程度
- 空対地ミサイル「タウルス」:ドイツ製(韓国国内で製造予定)、射程距離500km以上
これに関して、システムに統合できて使えるようになったという話を聞かない。
更に冒頭の記事でも言及されているのだけれど、これらのミサイルをベースにして国産化する予定になっているようで。
忙しいねぇ。
分離はできた。でも「撃てる」とは言っていない
ミサイルに関する報道はいくつかあって、2023年に既にKF-21戦闘機からの武装分離に成功したという話があったが、最新のがこちら。
初の国産長距離空対地ミサイル 分離飛行に成功
Write: 2025-06-26 09:38:05/Update: 2025-06-26 09:58:03
韓国国防部の防衛事業庁は、韓国で初めて開発が進められている長距離空対地ミサイルの分離飛行試験を行い、飛行中の分離に成功しました。
防衛事業庁によりますと、試験用のFA-50戦闘機に試験用のミサイルを搭載して分離飛行試験を行ったところ、ミサイルの基本性能と飛行の安全性がともに確認されたということです。
KBS WORLDより
そういえば、この喜ぶべき記事はこのブログで取り上げてはいなかったのだけれど、FA-50戦闘機関連のニュースである。韓国で開発中の長距離空対地ミサイルの分離飛行試験に成功したという報道だ。
今後、FA-50を用いた追加の試験を続け、2027年からは、韓国が開発中のKF-21試作機に長距離空対地ミサイルを搭載し、作戦運用に向けた最終的な性能の検証を行う予定です。
KBS WORLDより
このニュースで報じられている長距離空対地ミサイルはおそらく、ドイツ製ミサイル「タウルス」を模したミサイルだと考えられる。
ただ、形をコピーできてもレーダーと連動して目標に向かって飛ばし、目標を破壊するところまで行ったという話は寡聞にして聞かない。
これに先だって、北朝鮮が独自開発した空対空ミサイルの試射を成功させたという報道を中央日報がしていたが、ここで「韓国は未だなんだよね」と自白しているんだな。
韓国も完成できていない武器…北朝鮮が空対空ミサイル射撃初公開
2025.05.18 13:28
北朝鮮の戦闘機が独自に製作した新型中距離空対空ミサイルの射撃訓練の場面が17日に初めて公開された。このミサイルは朝ロ軍事協力により北朝鮮がロシアから技術移転を受けて開発したと推定される。韓国はまだ空対空ミサイルを独自開発できていない。
中央日報より
北朝鮮は、ロシアから技術移転を受けて空対空ミサイルの開発を成功させたらしく、一方の韓国は国内開発中である。無い物ねだりをしても仕方がないのでは?
KF-21が“戦闘機”になるために必要なもの
KF-21はよく「飛行試験順調」と報じられる。 だが、飛べるだけならジェット練習機と大差ない。戦闘機と言うからにはミサイルが発射できなければならないわけで、それには未だハードルがあるのだろう。
記事では濁しているが、どうもそこが未だ上手くいっていないらしい。
KF-21は2002年の需要決定以降、2032年まで進行する大規模な国策事業である。全体の総事業費も32兆ウォンに達すると推定される。
KF-21が順調に製造され、第一線部隊で活躍するためには、機体製造とともに航空武装を十分に装備し、最高の戦闘力を発揮できるようにしなければならない。
関連する武器システム・装備の搭載及び国産化などに関する準備を徹底的に進め、製造会社であるKAIがより細やかな事業管理を行えるよう、政府レベルで支援・監督する必要があるとの指摘がある。
NAVER「KF-21は戦闘できない?」より
この話の肝となるAESAレーダー開発に関しては、過去の記事を見る限り、イタリア企業のレオナルドが関わるような話があって、2026年以降に軽攻撃機用AESAレーダーの完成品を生産が行われるとしていた。
おそらくはこのAESAレーダーはKF-21戦闘機にも使われる予定なのでは?と、推測している。国内開発をしているとは報じられていたが、国内で作ることができるのであればFA-50軽戦闘機用のASEAレーダーの制御系装置を海外に発注する理由はない。
そうすると、KF-21戦闘機開発にはこれからお金がかかるよと言うことになる。
こうした状況なので、とにかく予算を増額して欲しいというのがKAIの訴えなのだろう。だが、記事を読む限り減額しちゃったということみたいだね。韓国政府の財政は火の車だからなぁ。
まとめ
飛行できるようになったことを披露し、外見だけは“戦闘機らしく”なったKF-21だが、実際に戦闘機として完成するにはまだ長い道のりが残っている。
特に兵装統合は、韓国がこれまで成功体験を持たない分野だ。時間と金がかかるのは当然で、短縮できる見込みは現状ほとんどない。
そのうえ予算は減らされるというのだから、「順調」とは言い難い。 2028年の“初期戦力化”は、どう見ても楽観できない情勢である。






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