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韓国の最低賃金上昇と根底にある問題

大韓民国ニュース
この記事は約8分で読めます。

この記事は楽韓Webさんが取り上げていたものなんだけれども、なかなか深刻な話である。

最低賃金上昇の逆襲…熟練労働者が去った [記者24時]

入力 2025.05.14 午後1時33分

1年間最低賃金がなんと16.4%上がった2018年、自営業者らの声を取材したことがある。賃金や各種社会保険料の増加に困難を訴えていた自営業者は、営業中断を深刻に悩んだり、従業員を減らす方法で対応した。

NAVERより

楽韓Webさんのところでは、「ムン君の置き土産」と評価していたね。

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韓国の悪い面が更に強調される事態に

トピックスの抽出

さて、このニュースをベースに幾つかのトピックスを検証していきたいと思う。ザックリとこんな感じの問題点が考えられる。

最賃引き上げによる熟練労働者の離職

  • 最賃の急激な引き上げにより、熟練労働者が相対的な賃金格差の縮小を感じ、離職や転職を選択するケースが増加

介護施設における人材の質の低下

  • 最賃引き上げの影響で、介護施設がコスト削減のために資格の低い人材を雇用する傾向が強まり、サービスの質が低下

熟練労働者の相対的剥奪感

  • 経験豊富な労働者が、新人と同等の賃金を受け取る状況に不満を感じ、職場を離れる動きが見られる

最賃制度の画一的適用による問題

  • 業種や地域、労働者の熟練度を考慮せずに最賃を一律に適用することで、特定の業界や職種での人材不足やサービス低下

労働市場の柔軟性不足

  • 最賃制度の硬直性が、労働市場の柔軟な対応を阻害し、特に中小企業や特定業種での雇用維持が困難に

色々な深刻な問題が垣間見えるね。ただ、この記事は余り正しくないようにも思われる。

最低賃金を引き上げろ!

さて、少し歴史を遡ることになるが、ムン君が大統領選挙に出るにあたって、最低賃金の大幅引き上げを公約にぶち上げた。

最低賃金の公約・全教組合法化など「10大ろうそく課題」直ちに実践

登録:2017-05-22 04:00 修正:2017-05-22 11:59

「ろうそく」が切り開いた早期の大統領選挙を通じて発足した文在寅政権に対し、成功に向けた改革完遂のための戦略・戦術を提言した報告書が出た。共に民主党選挙対策委員会の「国民の国委員会」と民主研究院が共同で作成した「新政府の国政環境と国政運営の方向」報告書だ。

~~略~~

報告書で最も目を引くのは直ちに施行可能な「10大ろうそく改革課題」だ。セウォル号の期間制教師の殉職者認定、教員労組の再合法化宣言、セウォル号の船体調査委員会に対する人材・財政の追加支援、4大河川復元対策機構の構成、故ペク・ナムギ氏死亡事件の再捜査、最低賃金公約の遵守に向けた意志表明及び勤労監督の強化、労働改悪4大行政指針の廃棄、開城工団入居企業への緊急支援、朴槿恵政権によるメディア弾圧の真相調査、国家情報院の政治介入禁止宣言などだ。

ハンギョレより

財閥改革もぶち上げていたのだが、「最低賃金公約の遵守」というのがかなりイマイチだった。分かり易い公約だったので、かなり頑張って公約実現に邁進したのだが。

JETROのサイトより

当選した翌年2018年には伸び率16.4%を記録し、それ以降はたいして引き上げられはしなかった。

正直、最低賃金の引き上げ自体は必要なんだと思うのだけれど、何を以て最低ラインを引くかを勘違いするとこんなことになる。

制度的に引き上げるのではなく、国民の手取りが増えていく方向に舵を切っていくべきだったのだ。

2026年度最低賃金の審議スタート…韓国「1万30ウォン据え置き」VS「大幅引き上げ」

2025年4月25日 12:30

2026年度の韓国の最低賃金を決定するための審議が22日、90日間の公式日程に突入した。大統領選を控えた政治的な緊張感の中で開かれる今回の審議は、政権交代直後に最終決定が下されるという点でも注目が集まっている。

~~略~~

今年の最大の争点は最低賃金の引き上げ幅だ。今年(2025年度)の最低賃金は初めて1万ウォン(正確には1万30ウォン)を突破したものの、前年比の上昇率は1.7%と歴代で2番目に低かった。

労働側は昨年、時給1万2600ウォンを要求した前例があることから、今年はこれを上回る要求を掲げると見られる。一方、経営側は今年の水準を「凍結」すべきだと主張する公算が大きい。

AFPより

ムン君が大統領の時代、時給1万ウォンにまで引き上げるという公約を掲げていたが、それが達成されたのは2025年に入ってからだ。今年の最低賃金決定の綱引きは、7月に決着することになるというから、大統領選挙後。そうなると、大幅に引き上げられる可能性がある。

最低賃金を受け取れない

ところが……、実際にはこの最低賃金を受け取れていない労働者が結構、韓国にはいるのである。

経総「昨年、最低賃金を受け取れなかった労働者が12.7%に達し」

登録 : 2023-04-02 19:29:40**修正 : 2023-04-02 20:21:38

昨年、韓国労働市場で労働者の12.7%が最低賃金に達しない賃金を受け取っていたことが分かった。

亜洲日報より

日本でも「最低賃金を1500円に!」とかアホなことを言う政治家がいたが、そもそも最低賃金を設定する前提が間違っている。

労働者を守る必要があるのはもちろんのことではあるが、一方で産業の育成も政治家の大切な仕事だ。中小企業の倒産が続出するような最低賃金設定をするようなことは、寧ろ労働者を守る政策とは言えない。

日本はともかく韓国の場合、最低賃金設定は全国一律なので、首都では商売が成立する最低賃金でも地方ではやっていけない。その結果どうなるかというと……。

「来年度の最低賃金また上がるのか」…廃業が続出する中企業界「不安」

登録 : 2025-04-21 09:11:42**修正 : 2025-04-21 09:11:42

来年度の最低賃金を決める最低賃金委員会の初会議が今月22日に開かれる中で、労働界が提示した最低賃金の引き上げを巡り、中小企業界に不安が高まっている。

亜洲日報より

廃業続出ということに。

「昨年276万人の最低賃金を受けられず…週休手当り反映時468万人」

入力 2025.05.11 (13:53)**修正 2025.05.11 (17:50)

昨年、国内賃金労働者8人のうち1人は最低賃金を受け取れなかったという分析が出ました。

韓国経営者総協会(軽総)が統計庁原子料を分析して発表した「2024年最低賃金未満率分析」によると、昨年法定最低賃金額(時給9千860ウォン)を受け取れなかった労働者は276万1千人と集計された。これは前年比25万人減少した数値です。

賃金労働者のうち、最低賃金を受け取らなかった労働者の割合を意味する最低賃金未満率は、前年比1.2%ポイント下落した12.5%で、2015年(11.4%)以降の最低値を記録しました。

KBSより

それどころか、最低賃金を受け取れていない労働者が多数出てきてしまっていて、制度自体が形骸化しているとまで指摘されている始末だ。

熟練工の嘆き

そんなわけで、最低賃金の引き上げは韓国に於いてあまり上手く作用していないのだが、寧ろ悪影響が出ていると考えられる点がある。それが、熟練工の離職だ。

雇用主が人材を減らしたこともあるが、熟練人材も自ら現場を多く去った。代表的な「根産業」に挙げられる金型産業では、時間外手当をいっぱいに満たした低年次労働者が15年目のベテランたちと似た月給を受ける場合が多い。熟練労働者は相対的剥奪感を感じて離職をしたり、職場をやめた。

NAVER「最低賃金上昇の逆襲」より

楽韓Webさんのところでは「相対的剥奪感」がキーワードだと指摘していて、これの意味するところは、「自分が得られていたかも知れないものを、奪われたとする(思いこむ)感覚」なんだとか。

日本だと「やりがいが失われた」とか、そんな感じになるだろう。

そして、こうした問題点は日本でも有り得る話で、賃金引き上げをやらないと、とんでもないことになるぜ?そのための政策を打てていないのが日本政府なんだけれど。

っと、ちょっと話が逸れてしまったが韓国の話だ。そもそも、韓国の国内経済がかなり後退局面にあるということと、韓国の文化として職人に敬意を払わないという面があることが問題なのだ。

韓国は恐ろしい学歴偏重社会で、なおかつ日本で3Kと呼ばれる職種への忌避感が高い。これが、韓国国内での技術の積み上げに繋がらないということに関係してくる。先進国の多くはこれと似たような課題を抱えているが、韓国ではその傾向が強いのが問題で、それに最低賃金の話が絡んでくる。

熟練工は賃金が上がりにくい、その上で最低賃金が引き上げられているので賃金差が殆どなくなり、それが「相対的剥奪感」に繋がっていると言える。

政府の財政支援が必要だが

そういうわけで、熟練工の喪失感というのは、最低賃金引き上げだけの問題というわけではない。

経験豊富な人材は、組織がうまく運営されるようにするための重要な集団であり、次の世代の人材を育てるための重要な人材です。彼らが現場で消えるのは、画一的な最低賃金適用のもう一つの大きな副作用である。経営界が熟練度・業種・地域など多様な側面で最低賃金差別化を主張する根拠でもある。

最低賃金を柔軟に適用しようとするのは、人件費を減らすという宣言だけにとどまらない。熟練人材の経歴と超過能力に適正値を与えられる財源を設けるという主張でもある。来年も最低賃金突入した労使が必ず覚えなければならない事実だ。

NAVER「最低賃金上昇の逆襲」より

急激な最低賃金の引き上げというのもかなり社会的な問題を引き起こすというのは、韓国が身を以て社会実験をしてくれたので明白になったのだが、それとは別に韓国の基礎技術の向上のために、中小・零細企業の技術承継に補助を出す程度のことをやるべきで、このままだと本格的にダメになりそうな予感がする。

だって、次期大統領はかなりヤバイよ?最低賃金も大幅に上げる約束をしているようだし。

でも日本も他人事ではないんだけどね。

コメント

  1. 山童  より:

    日本でも建設や介護で人不足ですわね。
    「誰でも出来る仕事」と見下して、その結果、賃金高騰に耐えられなくなってる!
    実は現場作業員とか警備員とか介護や医療って、「有事」「事件」が起きるもので、その時に熟練工や熟練者いないとどーにもならないんですね。
    それと10年前にブルーカラーは「ロボット技術とAIに駆逐される!」と推論した事も
    離職を招いた。蓋を開けるとブルーカラーの賃金が上がり、ホワイトカラーが……
    BOOK様のオススメで早速に生成AIためしてみたけど、あははは!
    コレね、木霊様のようにコンテンツ作る能力ある方は「利用して量産できる」道具ですが、創造性の欠片もない奴は使えない思いますよ。情報に反応して切り口を見つける知性があると、「まとめ」をAIに任せられるので、作業時短≒量産や効率化できる。
    しかし本質的な好奇心や構築力の無い人には他利用者との差別化は難しい!
    知的分野がフルイにかけられるのは、なかなか面白い。
    んで、本題に戻すと、「氷河期世代」で技術継承してくれる世代を腐らせたでしょ?
    そのツケで日本はキムチを笑えない代償が来ますよ。とくにインフラでね。
    コロナのワクチンの時みたく、陰謀論にハマる反知性主義が出てくるのは、虚業を拡大して、実業を疎かにしてきた報いかと。

    • 山童  より:

      あっ、そうそう…よく報道は「若者の大半が公務員志望」と言うけれど……。
      現実の地方公務員は若い人から離職増えてるそうです。そりゃ学力や資格に自信ある人なら、それなりの民間なら基本給が高くなってきてるもの!
      で、辞められるから、①人員が足らない。
      ②なのでパート労働増やす。③でも②は残業させられないし、未熟練!
      ④結果として正規職員の公務員に負担くる

      実際、役場では、パソナから来た不正規の窓口職員は無知で理解力が少ない。話にならんすね。結局、他の仕事してる正規の公務員を呼び出して、彼の仕事を増やす事になるんですよ。
      悪いなぁ……想うけど、パソナ他の不正規は
      官吏の仕事やるには、あまりに無知すぎる。日本もキムチの事たぁいえません!

      • 木霊 木霊 より:

        公務員志望が多いのは支那でも韓国でも同じですが、韓国はより酷いみたいで。
        公務員の正職員の枠を広げられないから、公務員のパート枠を増やして就職率を見かけ上あげるんだけど、実際に仕事は増えていないという。
        この辺りは、シンシアリーさんが昔良く書かれていた話ですが、現在は更に悪化している模様。

    • 木霊 木霊 より:

      日本の話をし出すとかなり昏い真面目な話になっちゃうんですよね。
      人手不足を外国人材で補おうという発想が「アホか」と。
      AIやロボット技術を入れることには賛成で、トライアンドエラーやれば良いと思いますよ。

      でも、AIの利用はなかなか難しいでしょうね。
      実は、最近割とチャットGPTを使っているんですが、やっぱり補助的にしか使えない。質問して返ってくる答えが間違っていることが多いのですが、最近は巧妙化しているので見破りにくい。違和感を突っ込んで、別の角度から検証してってことをやると、全然別の結論になるのもしばしば。
      ただ、いくつかの資料を纏めるとか、トピックス抽出するといった使い方は出来そうです。試行錯誤していますから、「普通に書いた方が早い」というケースの方がおおいんですが。

      • 山童  より:

        それ実は木霊様の能力値が高いからの反応と思います。
        てか、無能な奴はAIの誤回答を見つけられないし。ましてやクエスチョンの方向性を変えて正解させるとかは貴兄が有能ゆえできる事です。
        ただ、その木霊様のお答えからすると、有能なクリエーターなら「自分でよる方が速い」ののですね。
        マンガで言うと昔のスクリーントーン貼りとか、ベタ消しやホワイト修正などの「アシストのアシスタント」なレベルかぁ。まぁ効率化はできても、代行まではムリとは想うていました。

        • 木霊 木霊 より:

          ところがですねぇ、最近良い使い方を見つけてしまいまして。
          Googleで検索すると日本語記事中心で検索してきて、ゴミも結構引っかけるんですが、チャットGPTで外国文献中心に検索をお願いすると、あら便利。きっちり探してくれるんですよね、要約も付けてくれて。
          外国記事は、一度翻訳して中身を読んでから出ないと使えないんですが、チャットGPTが読んでくれるので使えそうな記事を探すのに早くて便利だということに気がつきまして。

          結局のところ、書き手の能力に依存するのは変わらないと思うのですが、使い方次第というのは本音ですね。

          • 山童  より:

            ほっほ〜。コレは良い情報ありがとうございます。
            うさんくさい海外ネタ好きなので、そのネタ元探しとかに使えそうです。
            ちなみに最近、「シンギュラリティ」とか「人類を滅ぼす危険」とか、実は新手の「炭素商売か?」と疑いだしてるんてすよねぇ。AI開発してるCEOが「ヤバい」言うのは本当にヤバいと岡田斗司夫が言うてるけど、それはAI開発大手CEOが言うからこそ「怪しい」のでないか?と。
            シンギュラリティ来る好かね? だいたいAIが意識持ったところで、それを意識なのか辞書なのか判定する方法なんて無いじゃないすか?
            そんなにあふないなら、やめりゃ良いので。やめられずに万一に滅びるなら諦めれば良いのでのいすかね?
            生き延びることこそ大事と戦後日本はしてきたが、それによって「命かけても」の覇気を失った。滅びるならそれで良いと居直る方が生き延びる率は高くなる!