近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。
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ジリ貧の自民党、消費税に関する嘘を積み上げる

報道
この記事は約18分で読めます。

またまたご冗談を。

自民・森山幹事長「政治生命かける」 消費税対応が参院選争点と指摘も減税には慎重姿勢

2025/5/17 13:13

自民党の森山裕幹事長は17日、鹿児島県屋久島町で講演し、夏の参院選で消費税の扱いが争点になると指摘した上で「もし敗れるようなことがあれば大変だ。幹事長として、自分の政治生命をかけてこの問題に対応したい」と述べた。財政健全化が重要だとし、消費税減税には改めて慎重な姿勢を示した。

産経新聞より

財政健全化?それって、既に終わっていませんか?

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財務省の呪いと嘘

政治家の思い?

森山氏の論旨がイマイチ正確に分からないのだが、明確に誤りは指摘しておかねばならないだろう。

消費税導入や税率引き上げに尽力してきた政治家の思いが踏みにじられてはならないと強調。野党がそろって減税を主張することを踏まえ「政権を奪還するために甘い話がある。国家の運命を左右するようなことがあってはならない」と語った。

産経新聞「自民・森山幹事長「政治生命かける」」より

致命的に間違っているのがこちら。

> 消費税導入や税率引き上げに尽力してきた政治家の思いが踏みにじられてはならない

もう、政治家辞めたらイインジャナイですかね?

政治家の本懐は、受益者である国民と国家の利益調整である。そして、そのための法整備を行う責務があり、法整備に関する説明責任までがセットである。

社会的正義の実現というのも政治家の責務ではあるが、その正義を歪んで捉えるパヨクの方が多くて困る。弱者救済だけが社会的正義というわけではなく、弱者救済を維持出来るだけの受益調整をしていかねばならない。

「政治家の思い」などどうでも良いと思わないのかね?

財政健全化が重要

さて、「財政健全化」の話だが、これは「借金経営は健全じゃないよね」という主張と同義であると思われる。

財務省が示している歳出と歳入の構成なのだけれど、この年次会計の出し方は恣意的な誤解を誘導している。

よくある説明の流れでいくと、公債費と社会保障費が増えている。だから不健全んということになるらしい。

石破首相 消費減税に伴う社会保障費への国債充当「好ましくない」日本の財政は「ギリシャよりよくない」と強調

2025年5月19日 月曜 午後0:59

石破首相は19日の参院予算委員会で、消費税の減税を求める野党側に対し、社会保障財源である消費税を減税して、借金にあたる国債で穴埋めするのは「好ましいことだと考えていない」と述べた。

~~略~~

また石破首相は、国民民主党の浜野議員に対して日本の財政状況と金利について「金利がある社会・世界の恐ろしさというものは、よく認識をする必要があ」と指摘し「金利ある世界は現出しており、我が国の財政状況は間違いなく極めてよろしくない、ギリシャよりもよろしくないという状況だ。税収は増えているが、社会保障の費用も増えているわけで、そういうことを全て総合的に勘案していかなければならない。そこにおいて減税をするのだ、財源は国債で賄うという考え方には私どもとしては賛同しかねる」と述べた。

FNNプライムオンラインより

ギリシャよりねぇ。

ギリシャ格付け見通し「ポジティブ」に引き上げ=フィッチ

2025年5月19日午前 11:31

格付け会社フィッチ・レーティングスは16日、ギリシャの格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げた。財政黒字の拡大と公的債務の急減を理由に挙げた。

格付けは「BBBマイナス」に据え置いた。

ロイターより

ギリシャ経済は回復傾向にあって、格付けは「BBBマイナス」に修正されているんだけど、日本はフィッチの格付けで「A」なんだよ。

格付け会社を信用しろとは言わないけど、ここまで評価に差があるのに「ギリシャより悪い」は流石にちょっと酷い。

この辺りの話をしているのかもしれないけれども、GDP比の債務残高なんかで比較する意味があるのかどうか。

その上で「決して目的税というわけではないが、国分の消費税収が20.1兆円。そして、社会保障4経費は34兆円で、これだけでも全然足りない。ということで、それを借金で賄って次の時代の方々に負担いただくのが正しいのか、それとも他の税金を用いるのか。私どもとして借金をして、それにあてるということは決して好ましいことだと考えていない」と強調した。

FNNプライムオンライン「石破首相 消費減税に伴う社会保障費への国債充当」より

「足りぬ足りぬは工夫が足りぬ!」とは言わないけど、これを胸張って言うことかね。歳入を増やす工夫をすることと、歳出を減らす工夫をするのが先決なのでは?

……石破政権って何か経済対策やったっけ。

財政健全化

さて、石破政権も経済に関してはかなりダメダメで、何をやっているのかサッパリ分からないし、方向性も不明。

そして、指導をしている財務省だが……。

参考資料4 低金利下における財政運営

足もとでは多額の国債が低金利で消化されていますが、低金利環境においても、公債発行に依存せず、財政健全化を進めていくことが重要です。

財務省のサイトより

長期にわたる低金利の時代に、どうして公債発行の抑制をしていたのかサッパリ分からないのだが、自らの愚策を棚上げして「健全化しろ」とは。

それはともかく「財政健全化」は必要だろう。

で、財務省はプライマリーバランス赤字だから、財政が健全ではないというのだけれど……。

外貨準備、米国債利息で増加 2.7%増の195兆円

2024年4月6日 2:00

政府や日銀が持つ預金や債券などの外貨建て資産が膨らんでいる。2024年3月末時点の総額は1兆2906億ドル(およそ195兆円)と前年同月末から2.7%増えた。年度末時点での増加は3年ぶりで、債券の運用収益が全体を押し上げた。円買い・ドル売りの為替介入の原資を底上げしたともいえる。

日本経済新聞より

実は外貨準備など外貨建て資産の金利に関して、具体的な額は公表されていないものの膨らんでいると見積もられている。ところが、この利息収入は歳入には組み入れられていない。

おかしいではないか。借金の方は一般会計に載せられているのに、資産の方は計上されないばかりか利息収入を予算にカウントしていない。財特会から予算に繰り入れる財政措置を行った年度もあるのだが、「余剰金が生じた場合のみ」「政府判断」で行われているのだとか。

もちろん、利息収入とは言えドル建てなので、簡単に歳入カウントしろというのは少し問題はあるんだが。だが、財務省の嘘であることは間違いない。

支持率にも影響する税制政策

支持率に苦しむ

さて、こんな状況なのだけれど、恐らくは手取り問題と農政の問題というか米価の問題で自民党は支持率低下に苦しんでいる。

政党支持率 自民26.4% 立民7.6% 国民7.2% 支持なし38.2%

2025年5月12日 19時29分

5月の各党の支持率です。

「自民党」が26.4% 「立憲民主党」が7.6% 「日本維新の会」が2.6% 「公明党」が3.7% 「国民民主党」が7.2% 「共産党」が2.6% 「れいわ新選組」が2.5% 「参政党」が1.5% 「日本保守党」が0.8% 「社民党」が0.3% 「特に支持している政党はない」が38.2%でした。

NHKニュースより

面白いのは、国民民主党も支持率低下が。

これは完全に候補者選びが影響しているらしいのだが、そこはさておこう。

立憲民主党の消費税減税、国民一人年4万円 基金や外為特会の剰余金を財源に

2025年5月16日 11:50 (2025年5月16日 19:20更新)

立憲民主党の野田佳彦代表は16日の記者会見で、食料品の消費税率を1年間に限りゼロにする減税策の原案を発表した。2026年4月の開始を目指し、国民1人あたり年4万円の減税になると試算した。夏の参院選の公約に盛り込む。

日本経済新聞より

野党が消費税減税を大合唱し始めたので、与党側が抵抗を試みているのだけれど、どうにもダメっぽいね。

なお、立憲民主のような減税案もダメだとは思うが。

1年限定で限定したところで経済的な混乱を来すだけだし、食料品だけに限定しても経済的には効果は薄い。いやまあ、庶民にとっては有り難いんだけど、しかし実のところガソリン税を下げた方が効果は高い。

ガソリン税の暫定税率廃止法案 単独で衆議院に提出 立民

2025年4月18日 10時47分

ガソリン価格の高騰が続く中、立憲民主党は、国民生活の負担を軽減するため、ことし7月からガソリン税の暫定税率を廃止する法案を単独で衆議院に提出しました。

法案では、ガソリン価格の高騰から国民生活や経済を守るため、ことし7月からガソリン税の暫定税率を廃止するとしています。

NHKニュースより

その辺りも立憲民主は目を付けているようなので、まるっきり無能というわけじゃないのだろうけれども。

国債は使わない!

さて、一方、経済対策の面で残念なことになっている石破政権が打てる手はあるのだろうか?

石破首相 消費税 “減税し財源を国債で賄うのは適切でない”

2025年5月19日 15時36分

国会は参議院予算委員会で集中審議が行われました。

年金制度改革の関連法案をめぐり、立憲民主党が、基礎年金を底上げする措置が見送られ不十分な内容だと批判したのに対し、石破総理大臣は、底上げ措置については議論を続けるとした上で、年金改革に向けて必要な内容を盛り込んでいると理解を求めました。

また、消費税の扱いをめぐる与野党の議論が活発になる中、社会保障に必要な経費も増しており、減税して財源を国債で賄うことは適切ではないという考えを示しました。

NHKニュースより

年金改革を急いで、社会保障費の増大を抑えるとかそういう話をすべきなのでは?とは思うのだが。

これに対し石破総理大臣は「わが国の財政状況は間違いなく極めてよろしくない。また、税収は増えているけれども、社会保障の費用も増えているわけで、全て総合的に勘案していかなければならない。その中で『減税をする。財源は国債で賄う』という考え方には賛同しかねる」と述べました。

NHKニュース「石破首相 消費税 “減税し財源を国債で賄うのは適切でない”」より

税収増を予算に盛り込んでいないという不具合は3月頃にも指摘されていたのだけれど、それはそれとして何が何でも国債を使わないという姿勢は如何なモノか。

2025年度予算のうち、建設国債は6.8兆円ほど積み上げられている。この他、赤字国債が21.9兆円ほど積み上げてあり、今年は国債発行額が減らされたとのこと。

税収増で国債発行30兆円割れ 17年ぶり、歳出改革道半ば

2024年12月25日 23:00

政府の2025年度予算案で新規の国債発行額は28.6兆円程度となる見通しだ。当初予算ベースで4年連続で前年を下回り、17年ぶりに30兆円を下回る低水準となった。税収が過去最高の78.4兆円に増えるためだ。一般会計総額は社会保障関係費を中心に抑制が利かず、歳出改革はなお道半ばだ。

日本経済新聞より

……日本経済新聞もこうだもんなぁ。

さておき、国債発行は今年の予算でも予定されていて、去年の国債発行額は税収増によって減らされたというニュースである。

要は、増収が見込まれれば国債によって補填する措置はあり、と思うのだけれど。もちろん、際限ない国債発行が良いことだとは思わないのだけれど、必要ならば、ね。

アカの新聞

なお、この予算措置については、阿呆な主張をしている新聞が。

防衛費に充てる建設国債1.2倍に 「不文律」破り今年度5千億円超

2024年5月7日 5時00分

防衛費に充てる建設国債の額が膨らんでいる。政府は今年度に5117億円の発行を計画し、昨年度の1.2倍、額にして774億円増やすことがわかった。

朝日新聞より

これは去年の朝日新聞。

「防衛費のため借金」は絶対しないはずだったのに…3年で2兆円も国債発行 「それを許す雰囲気」が危ない?

2025年4月2日 06時00分

国の防衛予算に充てる建設国債の発行額が拡大を続けている。3月31日に成立した2025年度当初予算では前年度当初比40%増の7148億円を計上。太平洋戦争の反省から、防衛費を借金で賄うことは禁じ手となっていたが、23年度当初予算から解禁。戦後80年となる今年、国債発行はわずか3年で2兆円を突破する。

東京新聞より

これが今年の東京新聞。

アホばっかだ。

この話は、建設国債の発行ルールを見直して、防衛予算のうちインフラ性を有する項目については建設国債を使って良しということになった。例えば、弾薬・ミサイルの整備拠点、弾薬庫やレーダー施設などの防衛インフラ、造船所、格納庫、滑走路など耐久年数が長い施設については、建設国債をあてることが可能。

いちいち断らずとも、建設国債を使えば良かったのに。

議論と整理が必要

さて、色々書いたが「消費税減税すれば良いのに」と軽々に言えないということ自体は、理解できる。

批判を受けがちな消費税だが、負担の公平性という意味では消費税は優れた側面がある。一方で、インボイス制度などを抱き合わせで採用したことを含めて批判も多い。

しかしこの消費税導入の経緯にあたって、「所得税の負担を軽減する」こととセットだったはずなのだが、一時負担減に留まり、いつの間にか所得税の負担も重くなってしまった。税制の変更が趣旨だったはずなのに、何故か所得税は増えてしまい、更に社会保障費の負担を増やしてしまうという結果に。

自民党が「消費税減税はまかりならん!」というのであれば、国民の税負担が軽くなりかつ現役世帯の負担軽減を目指す必要があるだろう。

40代以下の支持率が特に低くなっている理由は、手取りの増加が見込めないからである。老人の方ばかりに向かっていると、次の選挙では相当厳しい状況になるだろう。

実際、現在の経済状況で減税というのは必ずしも正しい政策とはいえない。社会保障費負担を減らして、老齢世帯の医療費負担を増やしたり、湿布薬など市販薬が買える範囲でのOTC類似薬の保険適用をしないなど、見直すべき点が幾つもあると思うのだが。

そういった議論と説明をキチンとして、制度の見直しを具体的にやるのなら未だ説得力もあるんだけども。

追記

もっと阿呆がいたよ。

「円の信用落ち円安、物価高…国が破綻」自民・小野寺氏、消費減税に慎重 国債発行論牽制

2025/5/19 11:03

自民党の小野寺五典政調会長は18日のフジテレビ番組で、消費税減税に慎重な考えを重ねて示した。「消費税は単年度ではなく、ずっと続く。仮に減税した場合、代わりの財源を長いものを見つけていかないといけない。借金を国債でやることになると円の信用が落ちてしまう」と語った。

消費税減税分の財源を巡っては、国民民主党やれいわ新選組、自民党内から赤字国債の発行で充てるべきと主張する声が出ている。

産経新聞より

小野寺氏は、財政に関する話を口にすべきではないと思うんだ。

その上で「お金をどんどん借金して出せば出すほど円の信用が落ちる。そうすれば円安になる。円安になれば買ってくる原油や小麦が高くなる。また物価高につながる。これを次々とやれば最終的に国が破綻する」と強調した。

産経新聞より

小学生じゃないんだから、そんな子供欺しの説明をしてどうする。

この理屈だと、円高は円に信用がある状態で、円安は円に信用がない状態だってことになってしまう。流石にちょっとおかしいだろう。完全に間違いというわけではないと思うけれど、円安になったのは円の価値が下がったということで、その理由は様々だ。現在は日米の間での金利差による影響が強いのだろうと思う。

一時146円台をつけたドル安・円高進行の背景と今後の展望

市場の値動きに左右されがちな円相場ではあるが、「国家破綻ガー」というのは流石に無責任だろう。投機筋の売り買いをコントロールするのも難しい話だし、そもそも市場に介入するのはNGだ。じゃあ、物価高のコントロールをする為にはガソリン税を大幅に下げるか、消費税に手を付けるしかない。

ここで出すべきメッセージは、「物価高を放置しないよ」というメッセージであって、「減税は出来ない」というのは政府として無責任だろう。

追記2

IMFは日本の特殊ルールを加味していない

「財政健全化が終わっていませんか」と書いたのだけれど、そのツッコミを回収するのをすっかり忘れていたので、追記しておく。

令和5年末現在本邦対外資産負債残高の概要 : 財務省
令和5年末現在本邦対外資産負債残高の概要

政府が公開する対外資産である。

  • 対外資産残高:1,488兆3,425億円(対前年末比+148兆6,763億円、+11.1%)
  • 対外負債残高:1,017兆364億円(対前年末比+97兆3,701億円、+10.6%)
  • 対外純資産残高:471兆3,061億円(対前年末比+51兆3,062億円、+12.2%)

実のところ「日本の信用」というのは日本政府の抱える債務の他に、対外資産の保有額によって左右される。故に、小野寺氏には「何言っているの」という話にしかならないんだよねぇ。

で、財政健全化の話なんだけれども、一般的には「厳しい道のり」だということになっている。

IMFが日本財政に警鐘、「明確な健全化計画を」-補正予算に苦言も

2025年2月7日 10:30 JST 更新日時 2025年2月7日 12:44 JST

国際通貨基金(IMF)は7日、日本経済に関する審査(対日4条協議)終了後に公表した声明で、財政健全化に向けて明確な計画が必要だとの認識を示した。日本の常態化した補正予算編成について苦言を呈すとともに、金利上昇を見据えた強固な債務管理戦略の重要性にも触れ、日本の財政運営に警鐘を鳴らした。

Bloombergより

IMFの中の人、財務省の出身者が多いんだよね……。

IMFによれば、日本の公的債務の対国内総生産(GDP)比は25年に232.7%と世界で最悪の水準にある。同年度に黒字化目標を掲げる(プライマリーバランス、PB)は直近の政府試算で赤字の見通しとなっており、財政健全化の足取りの鈍さを改善するよう第三者の国際機関から改めて忠告された形だ。

Bloombergより

だから、全く同じことを言われる羽目になる。

廃止すべき謎ルール

「正しいから同じことを言われている」と思われるんだけど、考慮に入っていない話もある。それが60年償還ルールというやつだ。

国債の60年償還ルール

国の借金である建設国債赤字国債について、借り換え分を含めて、全体として60年で償還を終えるというルール。公共事業で建設した建築物などの耐用年数が約60年だったことに由来します。毎年度の一般会計から国債整理基金特別会計への繰入率は、国債残高の約60分の1(1.6%)に設定されています。このルールに基づくと600億円の国債を全て償還期限10年の国債で発行した場合、10年ごとに100億円ずつ6回償還することになります。まず10年後に100億円を現金償還し、残りの500億円は借換債を発行します。10年ごとに100億円償還と残額分の借換債発行を繰り返して、60年後には全額償還します。

三井住友DSアセットマネジメントのサイトより

先進国はどこも採用していないこの不思議なルールは、減債基金と呼ばれるものの仲間なのだが、戦後の日本が借金だらけで資産がない時に作った仕組みである。

「信用性を増す」という意味で当時は存在意義があったけれども、借金しながら減債基金への繰り入れのためにさらに借金するという構図になる不可解なシステムなので、今では百害あって一利なし。

わざわざ借金のための借金をしなければならないので、予算に余裕がなくなるというデメリットはあるが、これをなくしたからといってトータルで返済額が変わるわけではない。でも、なら必要ないよね?

では諸外国はどうしているかというと、国債の償還期限が来ると新たな国債発行をしてロールオーバー(借り換え)するのである。

逆に60年償還ルールが問題なのは、財政が黒字になった時にはその半額を借金返済に当てなさいということになるので、税収増の効果が薄まるというデメリットが生じる。

具体的にどういうことかというと、先ずは上で引用した図を紹介する。

この一般会計の歳出のうち「利払債務」と「債務償還費」の2つが「国債費」に含まれているのだが、60年償還ルールを止めると「債務償還費」が計上されなくなる。事実上、歳出が減るわけだ。2024年度であれば17兆円の「財源」が出てくることになるわけだ。

他にも「単年度の税収中立の原則」という謎ルールが設定されていて、単年度でどこかを減税するなら、どこかを増税しなさいという縛りだ。自民党が「増税」と「財源」をアホの子の様に繰り返す理由の1つがこれ。単年度会計縛りが日本の政策の弾力性をなくしているとも言える。

あと、「プライマリーバランスの健全化」という事を呪文のように唱えているけれども、これ、正確には「生のプライマリーバランスの黒字化」のようだ。

なんというか、これは単年度会計縛りとも関係があるんだけど、景気が悪い時に赤字になるのは当然なんだけれども、これを単年度で区切るので、その赤字も許さないという考え方だ。景気を考慮しないというのは、景気を良くするというモチベーションに繋がらないという意味でもある。

雇用とか物価とかマクロ経済の観点をもとに財政を運営するのが国際的なスタンダードであるのに、日本ではそういう考えが苦手らしい。

追記3

折角なので、財務省お得意のペテングラフも紹介しておく。

これは財務省の説明する「ワニの口理論」を補強するグラフである。既に業界では有名になっているので、これが通用すると思われている辺り、国民は舐められている。

何が問題かといえば、歳出には国債の元利金支払いや債務償還費が含められている一方で、歳入には「税収」しか含まれていない。利払いなどを含むのであれば歳入に利息を含めて考えればならない。つまり、キャッシュフローのまやかしがあるのだ。

これを修正したグラフがとある記事で紹介されていたが、見れば分かるように随分と印象が異なる。

【図表2】グローバルスタンダードでの開いていないワニの口

おっと、グラフ作成者が異なるのとスケールも異なるので、直接比べるべきではないという注意書きはしておく必要があるが、武漢ウイルス感染症拡大で歳出が増えた点を除けば特に問題のある財政状況には見えない。

むしろ、こうした突発的な出費に備えた基金の設立を設定した方が良いのでは?と思えるのだが、それも単年度会計の呪いが邪魔をするのである。一般的な家計と比べるなと良く言われるが、家計でも突発的な出費に備えた貯金くらいはしているわけで、そういう意味でもおかしな話である。

「国債償還ルール、外国でもある」 鈴木俊一財務相 - 日本経済新聞
「60年償還ルールは国債の償還財源を確保し、償還の財政負担を平準化する観点から決められている。(財政的な)規律を守っている部分がある。こうしたルールは外国をみても形は違うがある」(2023年1月20日、閣議後の記者会見で)鈴木俊一財務相は防...

自民党内部では、どうもそういう認識はないようなんだけど……。

追記4

ちょっと残念な柳ヶ瀬氏だが、中々の切れ味だね。

外国人の国保未納は年4千億円と試算 維新・柳ケ瀬氏「日本国民の税金で立て替えている」

2025/5/20 10:40

日本維新の会の柳ケ瀬裕文参院議員は19日の参院予算委員会で、外国人の国民健康保険(国保)の納付率が日本人に比べて低いことに関し、全国の外国人による国保未納が年間計4千億円にのぼるとの試算を示した。「(日本)国民の税金で足りない分を立て替えている。由々しき事態だ」と問題視し、政府に是正を迫った。厚生労働省は全国の実態調査を進める方針を明らかにした。

厚労省によると、国内在住の外国人による国保の納付率(令和6年4~12月)は、世帯主が外国人のケースを抜き出して集計できる150市区町村の平均で63%。日本人も含めた全体の納付率は93%で、外国人の納付率が著しく低いことが浮き彫りになっている。

産経新聞より

柳ヶ瀬氏の主張の数字はあくまで推計値であって、実態は厚生労働省も把握できていない。しかし、推計値が大きく出てしまっている可能性を割り引いても看過出来ない話である。

何しろ、年々、日本国内の外国人は増えているのだから、更に膨れ上がる可能性が高い。

実態把握に努めると共に、日本人向けに設計された国民健康保険の適用そのものが問題視されてもおかしくはない。是非とも改善して欲しいものである。

コメント

  1. 山童  より:

    消費税下げは私は反対なんですね。
    さげた方が得して我が家の家計も助かるのは解るんですが。
    つまるところ、それで得をするのはインバウンドで来ている外国人と、それなりに資産ある高齢層なんで。
    結局、現役世代と若者に始末を押し付ける結果となる。絶対、後から回収に入るでせう。その結果、子供が自立する前の家庭や、若者たちが「回収台」に回されるのが目に見えてる!!
    だって石破政権はまともな経済対策してないし、木霊様の御指摘とおり「計上してない部分」が財務省の発表には多すぎる。そこで「信用してくれ」言われても、信用ならない!となるのは当然かと。

    • 木霊 木霊 より:

      文中に解説したように、税の公平化を狙った制度設計であった消費税の効果というのは、所得税によって税収を上げるよりも実際的で効果的です。
      ですから、安易に下げるべきではないという主張はわかりますが、数字を弄るだけで弾力的に上げ下げできる税制(注:法律縛りなのが問題なので、その点を変更する必要がありますが)でもありますから、議論の対象から外すのは違うと思います。が、真っ先に下げるべきものではないと思っています。

      追記で説明しましたが、減税する程度の財源はやりようによっては出てきます。
      減税による経済効果は無視できません。尤も、インフレが進んでいるタイミングで減税というのは噛み合わない政策となる可能性もあるため、慎重に行う必要はあるわけですが……、それだったら給付金を配っても効果は同じです。減税は駄目だが給付金はOKとはならないわけで。その点は気をつけなければなりませんが、実質手取りを増やす対策というのは必要ですから、しっかりした経済対策をやれというのが、石破政権への要求なのです。

  2. 砂漠の男 より:

    いま現在の自民党は、政権与党として社会の歪み・利益相反を助長しているので、下野して冷静になるべきでしょう(※お爺ちゃんたちに引退してもらうため)。
    その硬直化した思考が、何処から来ているのかは不明ながら、現在の法制度・法執行実態をみるに、確実に日本国民の不安を煽っているといえそうです。
    財務省がそんなにプライマリーバランスに拘るなら(※それはもちろん建前ですが)、財政法4条をサクッと削除して、その呪縛を解いてあげたいですね。
    結局、国民が国家に望んでいることの本質は、安全に暮らせる社会、公平な裁判と税制ですね。

    • 木霊 木霊 より:

      それもありですか。

      でも、悪夢の民主党政権の再来はご勘弁願いたい。
      あれほど酷い時期が今重なってしまうと、流石に再起不能になりそうです。

      財務省を解体しろとは叫びませんが、歳入部門と歳出部門は分割して欲しいですねぇ。

      • 砂漠の男 より:

        自分も立憲共産維新れいわ国民の時代が来ないことを強く願っています。

        今日のロイター電に、石破首相が「米の減反政策から、米の増産に舵を
        切らねばならない」と答弁を行ったとの報道が上がっていました。
        https://tinyurl.com/mut2yyvy
        でも、朝令暮改な首相ですから..まぁ
        で、失脚した江藤農水相の後任が、あの小泉珍次郎くんとか..
        人事がヘタですねぇ。(人材がいないんだねw)

  3. 匿名 より:

    「お父さんが家族で使うものを買うのに、お金をパートしているお母さんから借りました。」
    みたいな感じに思えてしょうがない。
    そのお金を借しているのはサラ金でも銀行でも他人である知り合いでもないのに。

    • 木霊 木霊 より:

      何というか、「へそくりを家族に隠しているおかあさん」的な運用に思えるんですよね。
      変なところに使っているわけではないんですが、優先順位はおかしくないか?と。

  4. 七面鳥 より:

    こんにちは。
    ・週末だったか週明けだったか、石破内閣を「農水内閣」としている番組があってはたと膝を打った次第(総理、幹事長が農水相経験者だと。まあ、持ち回りだから近い例は他にもありそうですが)
    ・で、石破含む大臣どもは、一部を除き官僚の意のままに操られているとしか思えない(中谷防衛相だけがむしろ異質)
    ・そもそも大臣は「責任を取る役職」で常に詰め腹斬る覚悟で居ろと。なんだ今の農水相は!舐めてんのか!

    他にも色々言いたいことはありますが……

    真面目にやってる自民党員が浮かばれないですね……

    ※一時、注目を集めた国民民主も、アホンダラを参院選候補に引き込んで炎上してますが……

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      別の記事で紹介しましたが、必要な法案を通すために粛々と動いている部隊はいるんですよ。
      でも、総理が大方針を出して政策を進めてくれないから、肝心なところが動かない。
      結局、石破氏の覚悟の無さがコレなんですよね。