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政局回避のために厚生年金を差し出す石破内閣

政治
この記事は約6分で読めます。

もう、サラリーマンからしたら「ふざけるな」としか言いようがない。

底上げ策、財源議論を先送り 年金法案修正で正式合意―自立公

2025年05月28日07時05分配信

自民、立憲民主、公明3党が27日の党首会談で、年金制度改革関連法案に基礎年金の底上げ策を盛り込む修正で正式合意した。年金改革が「政争の具」となり、将来世代の低年金問題が放置される事態は避けられそうだ。ただ、将来的に必要となる兆円単位の追加財源に関する議論は先送りされた。

時事通信より

「基礎年金の底上げ」といえば聞こえは良いのだけれど、現実は違う。言ってみれば、横領合意である。

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年金制度改革待った無し

賦課方式の限界

理解が不十分である可能性もあるので、間違っていたらご指摘願いたい。ただ、恐らくは認識は間違っていない。

【数字で見る】年金は決して「おトク」な制度ではない | 新宿会計士の政治経済評論
現在、国会では年金制度に関する法案の審議が進んでいるようですが、これに対する厚労省の資料を読むと、メリットばかり強調されているわりには、きちんとした数字的な根拠がほとんど示されていません。これに関連し、本稿では現在の年金制度を巡る大きく2つ...

こちらは、新宿会計士さんのサイトで説明される内容で、大雑把には賦課方式を批判した内容となっている。概ねこの記事で指摘する内容もソレと似たような話だ。

現行制度である「世代間負担」などとも呼ばれるこの方式は、言ってみればネズミ講と同じやり方なのである。

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現役世代が受給世代を支える構造なのだが、少子高齢化が進むと制度そのものが破綻することは誰の目にも明らかである。何故なら、働く世代が減少するのだから。

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その点は厚生労働省も懸念していることで、賦課方式では限界があるので積み立て方式を採用しようという話が出ている。少なくとも制度改革は必要だという認識で、僕自身もそこには同意している。

ただ、ソレほど簡単な話でもないんだけどね。

厚生年金からの盗用

で、今回議論されている話は、誤解を恐れずに言えば厚生年金から盗んじゃおうぜ!という話である。

全国民共通の基礎年金は、少子高齢化の影響で2057年度まで減額調整が続き、給付水準は現在より約3割下がる見通し。今回、3党が修正合意した底上げ策は厚生年金の積立金を活用するもので、政府も改革の目玉として検討していた。

底上げ策を実施した場合、65歳から平均余命まで受給すると50歳以下は厚生年金の水準に関係なく総額でプラスになる。一方、65歳以上では総額で最大102万円減るケースもある。

時事通信「底上げ策、財源議論を先送り」より

ここで、改めて基礎年金と厚生年金について復習しておこう。

先ずは国民年金(基礎年金)について。

国民年金は、日本に住んでいる20歳から60歳未満までのすべての人が加入する仕組みになっていて、その納付率は77%程度となっている。

国民年金の納付率 12年連続で過去最高 加入者数は過去最少に

2024年6月27日 10時02分

自営業者などが加入する国民年金の保険料の納付率は昨年度77.6%で、12年連続で前の年度を上回って過去最高となりました。一方、加入者数はおよそ1400万人と過去最少となっています。

NHKニュースより

実のところ、この「日本に住んでいる20~60歳の全ての人」というのは外国人を含むのである。この国民年金制度への強制加入は昭和57年1月から決定していて、しかし本当に全部をフォローできているかはやや疑問である。

何故なら、加入者数(第1号被保険者数)は1,400万人であり一方で2023年10月時点での20~60歳の人口は約7,420万人ということになっている。

一方、厚生年金の加入要件が緩和され、移行する短時間労働者が増えたことなどから、国民年金の加入者は1387万人と、最も多かった平成15年度に比べると800万人以上減って過去最少となりました。

NHKニュース「国民年金の納付率 12年連続で過去最高」より

一応、厚生年金に移行していれば国民年金を支払わないことになっているので、厚生年金への加入者4,000人(第2号被保険者)はこの数字に含まれない。……でも、1,400万人+4,000万人でも7,420万人には全然届きませんよ?

第1号被保険者にも第2号被保険者にも含まれないのが第3号被保険者で、第3号被保険者は厚生年金などに加入している人によって扶養されている配偶者がこれにあたる。700万人ほどいるとされている。ちょっと数が合わないのだが、年度データが違うのが原因だ。

ちょっと混乱させて申し訳ないので、同年度の数字で纏めている図があったのでこちらをご紹介。

国民年金(基礎年金)の加入者数は約6745万人。第1号被保険者は、農業、自営業者、学生など、約1387万人。保険料の納付方法は、加入者自身による。加入の手続きは、市(区)役所又は町村役場に加入者自身が届出。第2号被保険者は、会社員や公務員など約4672万人。保険料の納付方法は、加入者の給料から自動天引き(会社などの負担額(加入者と同額)と併せて会社などが納付)。加入の手続きは、勤め先の会社などが届出。第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者(年収130万円未満)、約686万人。保険料の納付方法は、自己負担なしのため不要(配偶者が加入する年金制度が負担)。加入の手続きは、加入者自身が配偶者の会社などを経由して届出。

こちらは令和5年度の政府広報からの数字。ザックリイメージで良いと思う。で、これを支払い区分で考えるとこんな3階建てのイメージになるのだとか。

img

で、今回の方針は厚生年金部分から国民年金に資金を補填しようという弥縫策を合意したらしい。しかしそれは厚生年金からの盗用に他ならない。何故なら、国民年金だけ支払っている人は厚生年金は支払っていないのだ。その厚生年金から一部を国民年金に充当するというのは、どう考えてもおかしいだろう。

そもそも厚生年金は企業負担が大きい

厚生年金は、実はその半額を企業が負担している。

社会保険料 会社負担

イメージ的にはこんな感じで、しかし、「企業負担」といっても企業が何処からお金を調達するかと言えば、企業の利益から負担することになる。すると、結局その分は従業員の給与に還元できないということに。

もちろん、そんな単純な話ではないのだろうが、しかし企業負担分というのは、すなわち従業員給与に充てられるべきお金から拠出するのだから、実質的には従業者負担と言える。

とすると「企業負担が大きい」と書いたが、実際には労働者の負担とも言い直すことが出来る。

ただし、政府からしてみれば厚生年金からの徴収は楽ちんだ。何故ならば、給料から天引きして企業から政府に支払われる仕組みになっているのだから。

厚生年金をどんどん値上げしていて、現在は18.3%である。実際にはその倍取られているんだけどね。

厚生年金の保険料率の推移

馬鹿にされていますわ、サラリーマンは。

「底上げ」とは

で、冒頭のニュースなのだが。

発動の可否は29年の財政検証の結果を見て判断するが、厚生労働省幹部は「高い経済成長が見通せない限り底上げ策は実施される」と話す。

時事通信「底上げ策、財源議論を先送り」より

基礎年金の底上げをするという話なのだけれど、それを何処から引っ張るか?が問題である。

これに関しては、河野太郎氏がかなりキビシイ指摘をしている。

河野太郎氏「毒入りあんこだ」基礎年金底上げ財源に厚生年金積立金活用を批判 国民玉木氏も同調

[2025年5月26日18時48分]

自民党の河野太郎前デジタル相は26日までに、自身のブログで、年金制度改革法案を巡り、基礎年金(国民年金)底上げの財源に厚生年金の積立金を活用する修正案を「毒入りあんこだ」と批判した。自民は公明、立憲民主を含む3党で修正合意する方針だが、与党内で異論が顕在化した形。

河野氏は、底上げの財源に関し「厚生年金の被保険者が年金のために負担した保険料を勝手に目的外利用するものだ」と主張。税金も併せて投入されることになるにもかかわらず、厚生労働省も立民も財源を明確にしていないと訴えた。

日刊スポーツより

そりゃ、財源に関して何も議論していなくて、「厚生年金の積立金」というのは65兆円規模のもの。更に不足分は国庫から引き出すらしく、つまりそれは税負担分ということになる。

「毒入り」と揶揄したくなるのも当然である。そして、厚生年金加入者にとってみれば、自身が積み立てたお金を勝手に基礎年金の方(つまり厚生年金加入者以外)に充当されるわけだから、怒りを買って当然だ。

国民民主、年金修正案に反対 「問題の先送り」

2025年05月28日12時07分配信

国民民主党の古川元久国対委員長は28日の記者会見で、自民、立憲民主、公明3党が共同提出した年金制度改革関連法案の修正案について「到底賛成できない」と表明した。

時事通信より

国民民主党は反対に回る気らしいけど、ここも大したポピュリズム政党になったものである。いや、反対してくれるのは嬉しいんだけどもね。

コメント

  1. 山童  より:

    なんだこりゃ!?
    泥棒やんけ!
    私、社保歴とフリーランサー歴が半ばする。社員に払う立場(会社側)も。
    とにかくグラフで見るようにデタラメな社会保険料の上がり方してきてるのは、
    どの立場から観ても間違いないと断じる。よく、これで暴動にならんなぁと想うんですよね。
    例の財務省解体デモを観て想うんですが、ほう。と感心した事と、冷笑する事と二つ。
    ほう。……てのは敵目標が永田町でなく霞が関な事ですね。戦後の左翼たちのデモってのは「永田町≒政治家」が対象です。
    対して今回のは「霞が関≒官僚機構」なのですね。ああ少し進んだかと。
    日本の反政府運動で最もお粗末な一つに
    オウム真理教があるんですが、あらゆる意味でダメダメな連中でしたが「霞が関」を攻撃目標にしたセンスは評価できる。
    で、この官僚機構が的に書けられてる点では仏の黄色ベスト運動にせよ、トランプ支持者たちにせよ、今の西側社会のムーブメントになってる想う。
    問題は「戦後民主主義的な価値観」すな。平たく言うと「他人に迷惑かけるな」と言うのが、戦後民主主義における日本人の礼節でして。団塊のあたりから完全に刷り込まれてる! 美徳と言えば美徳だが、それが日本人を絞ってる!
    幕末には赤報隊(アサヒのバカ記者を駆除した人とは違う)のように、庶民側からも闘争があったし、日露戦争を勝利したにもかかわらず屈辱的な講和には、日比谷を焼くくらいの暴れ方を庶民がした。そういう力を削いだのが「迷惑かけないのが社会人のマナーです」す。
    うっせぇうっせぇうっせぇわ!!
    デモを本気なら車を燃やして、商ユニクロを壊して、観光地に火をつけて暴れるべきなんですよ!
    何故か?
    そうすると商工会議所だの、大企業だのが与党に「何とかしろ!」「次の選挙で票集めしてやらんぞ!!」と陳情≒脅迫に行くからですよ!
    官僚には「天下りの枠を減らしますぜ」と言いに行く!
    こうやって始めて、霞が関や永田町の奥を揺さぶり「言うことをきかせる事」がてきるのであって、
    人に迷惑をかけない人畜無害なデモでは、政治も官僚機構も動きませんな!
    暴力を用いずに、為政者を動かせるという甘い考えが笑わせる😂😂😂😂

    • 木霊 木霊 より:

      酷い合意ですよね。
      そして、自民党は、というより石破政権は以前にも三党合意をしてそれを反故にした実績がありますから、「ふーん」と見ているだけではありますが、酷いメンツがあつまったものです。
      本来であれば内閣不信任決議案を提出して然るべき事案だし、恐らくは通ってしまうタイミングです。が、それを出さないことこそが政局の綱引きなんですよね。腐った政治の何処に声を上げていけば良いのか。

      ご指摘の財務省解体デモですが、主張している内容を見てみると随分とおかしなことを言っていまして、アレではなぁというのが僕の感想でした。
      声を上げるべきというのは御節の通りではありますが、数を集めなければニュースにも成らない。交通が麻痺するほどの人数を集めてこそ、初めて効果が出るのでは無いでしょうかね。

  2. 山童  より:

    早とちりなさらぬように。
    私は「革命起こせ」など一言も申しておりませぬゆえ。
    ただ……庶民の声など聞く気のない為政者に、
    「どうやって言うことを聞かせるか?」
    という具体的なテクニックを話してるたけで。当然だけれど……
    体制を全変換する革命でなく、要求を飲ませる為の「方便」だから、
    リーダー的な存在には、要求を飲ませたら退く、引き際を心得た人物でないとならないてすな。

    • 山童  より:

      ただし、この制御と駆け引きができないままに常態化すると「お隣国」なる😂
      でも私は奴らの血の気の多さも、それなりに評価してるんてすね。
      だって日本官憲って靖国にイタズラした外人犯罪者や、ジョニー・ソマリに何もできなかったじゃん!!
      韓国は元軍人がボコッて、捕まえて、
      本気で懲役させるようてすからね。
      血の気の多さは必ずしも悪札ではない!
      「暴力はいけません」てのは自己家畜化てすよ。
      人類史99%は暴力で決着をつけてる。
      つまり力によらない解決などない!
      そう現実を観た上で「いかに少ない流血で済ませるか」が要諦でありましょう。

  3. 山童  より:

    人命尊重だの迷惑かけないだの、下らない理屈並べすぎなんですよ今の日本人。
    人命存置てのは、実は「我が身第一」の保身の裏返しでしてね。
    そうやって、美辞麗句で誤魔化して、
    ズルズルズルズルと「後退」して生きてきたのが戦後の日本です。
    命大事にし過ぎるんですよ。本当にとうにもならないなら、命に粗末に扱っても良いのですよ! 歴史が証明している!

    • 木霊 木霊 より:

      声を届けるために手段を選ぶなというご指摘はご尤もです。
      が、一番大切なのは皆さんの同意を得られることであると思っています。
      そのためには先ずは認知を広げないとなと。

      学生運動を知っている世代ではありませんが、彼らのムーブメントは追い求める理想があって、突き動かされる躍動感がありました。
      でも、末端の実行部隊は「それが何を意味するのか」を理解していなかった。その先に何があるのかも、です。そこは反省すべき点だろうと思うわけです。

      • 山童  より:

        そこ戦後民主主義てすよ。
        皆さんの同意などいらない!
        米国独立戦争時、米国(英国新大陸植民地)で「独立賛成派」は、
        植民者の30%に過ぎなかった!
        7割は英国の王政に刃向かう事を忌避して、独立の武装闘争をきのひしていた。
        しかしジョージ・ワシントンたちは
        独立を達成しました。
        我々、日本人はアレを「独立戦争」と呼んでいるが、アメリカ人は 
        「レボリューション」と呼んでます! 
        皆の同意?
        そんなもの永遠に結びませんよ!
        同意を得てからというのは、好き勝手やる為政者への援護してるのと変わりません。
        だからクーデターでも革命でも、
        ある時に突然に起きる!
        大事なのは成功するか否かで。勝てば官軍なんですよ。

        • 木霊 木霊 より:

          戦いは数ですよ、アニキ。

          冗談はさておき、「同意」は同志を募ることが出来るのか?という意味で、後でマスコミにたたかれて悪者にされては条件達成には覚束ないです。
          正義は我にアリは、客観的に実現できねば最終的な目標達成には至りません。勝てる戦いをする、それは大東亜戦争の教訓でもあります。

          • 山童  より:

            あー、それは木霊様が正しい。冗談でなく数だし。なにより後から悪者にして…も正しい。
            オウムがアホだったのは、在日米軍をとうするか考えてなく、またクーデター後の世論を味方に付ける手段を考えてなかった事でした。
            元新左翼系の人に聞いたのですが、デモ現場の監視に来てるのは普通のデコスケばかりで、公安が見当たらないそうです。
            つまり警察は左翼系のデモほど敵視してない可能性があるよと。
            ここで犯罪集団レッテル貼られて、完全に排除対象にされる事はアウトだなぁ。
            逆に言えば100万人単位の
            、私や木霊様でも参加するようなデモが頻発すれば政府は倒れるという事ですな。
            数は力でありますね。

  4. 砂漠の男 より:

    現役世代の年金納付額は今後も増えていくでしょうね、と随分前に税理士さんから聞いていて、60歳になったら受給を開始するのもいいでしょうねと。まだ随分先のことですが、納付者から受給者に代われば、いろいろな意味で負担の大きな年金納付はもう終了ですからね。

    若い世代は、国家財政の仕組みへの理解が少ないだろうから、こういうトピックは頻繁に取り上げて教えてあげるべきなのかも知れませんね。
    木霊さん、がんばって。

    • 木霊 木霊 より:

      60歳から受給開始ですか。
      確かに取りっぱぐれは薄くなるんでしょうけれど、結局のところ年金制度は長生きしないとメリットが生まれない構造になっていましたから、僕が60代突入するときに果たして機能するかどうか。

      国家財政の仕組みに関しては、僕には荷が重いんですがねぇ。
      頑張って入れ込んでいくようにしたいと思います。