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小泉氏の農業政策は右往左往

政治
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米騒動は続くよ。

備蓄米に想定超える申し込み殺到、新規受け付け「いったん休止」発表…「先着順」も見直しへ

2025/05/28 00:30

農林水産省は27日、政府備蓄米の随意契約による放出を巡り、大手小売業者からの申し込みが殺到し、同日夜に新規の受け付けをいったん休止すると発表した。約70社から申請があり、放出対象30万トンのうち2022年産米が上限の20万トンを超える見込みになった。残りの21年産米約10万トン分は、中小スーパーや米穀店に対象を絞った上で30日にも随意契約の受け付けを再開する。

讀賣新聞より

小泉進次郎氏、初動の失敗部分を修正できるのだろうか?

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農政の失敗を何処で取り返すのか

戦闘力には定評のある

色々な期待を背負って農水大臣になった小泉氏だが、結果的に悪くない人事だったのではと、現時点では思っている。

良くも悪くも客寄せパンダ的な人気のある小泉氏は、一挙手一投足がニュースになりやすい。

正しい政策を進めるのであれば、これほど遣りやすい人物もいないわけで。そういう意味では、前農水相の江藤氏は残念であった。彼には広報能力が欠けているから。

そういう意味で、小泉氏の起用で農政を大きく変える切っ掛けにするという破壊力はあると思う。親父からマスコミを翻弄する手管は受け継いでいるからね。ある意味「戦闘力がある」と評価して良いと思う。

何処に問題があるのか

さて、現状を整理しておこう。

  • 米の流通価格が上昇している
  • 米が手に入りにくくなっている

大雑把に言って表面上はこの2点である。

日本人を怒らせるには、食べ物に関連することを利用すれば良いというのは良く知られた話。邦人が拉致されようが外国で馬鹿にされようが穏やかな日本人だが、食べ物関連のことになると大騒ぎする。

特に主食の米はかなり敏感な分野だといえよう。

過去にも「貧乏人は麦を食え」と発言したと報じられて辞任に追い込まれた大臣がいたと思うが、あれは池田勇人だったっけ。

ともあれ、本質的な部分は米が手に入りにくいというところが大きな問題となっている。

しかし、僕が思うに、この問題は値段が上がったことよりも手に入りにくくなったことに敏感になっている側面があると思う。去年の夏に「店頭に米がない」と大騒ぎになったが、価格上昇に関してはジリジリと値上がりして今や去年の2倍となっているけれども、値上がりだけが問題視されているのではないと思う。品薄感こそが問題なのだ。

そりゃ、安いに越したことはないのだが。

売り場面積の拡大は吉と出るのか

さて、「米を5kg2,000円台にする!」と怪気炎を上げている小泉氏だが、それ自体は悪くはないと思う。

27日夜、小泉農相は記者団に対し、「(小売業者から)あまり手が挙がらない想定もしていたが、2日もたたずにこれだけ協力をいただけた」と語った。

当初の随意契約は、コメの年間取扱量が1万トン以上の大手小売業者約50社を想定して26日に開始した。早ければ29日にも小売業者に引き渡しが始まり、6月1週目に店頭に並ぶ可能性がある。27日時点で申請量の9割超が22年産米に集中する一方、21年産米は数%にとどまっていた。

讀賣新聞「備蓄米に想定超える申し込み殺到」より

ただ今回、「米を安く売る協力を」と随意契約をする相手を募ったら、米を扱ったことのない商社まで数多具して押しかけてきて混乱が起きている。

かつては米専門に扱う米屋が存在していたが、今は米屋は何処を探しても見当たらない。いつの頃からか米だけを扱っても利益が出ない構造になってしまったからだ。

米をスーパーに置いたことで、手軽に消費者が米を買えるようになった。

それはそれで良いのだが、かつて米屋が担っていた米の維持管理を、スーパーはあまりやらない。あれは生鮮食品だという理解がなされなくなった結果、袋に入ったままの精米を備蓄して虫を発生させる人が多数いるという時代だが、玄米のまま保管して精米して出すという発想がないのだ。

それどころかまともな冷温保管設備のないホームセンターですら米を扱い始めた。恐らくは売れ行きと価格高騰による利益幅が増えたので「商品になる」という判断をしたのだろう。

だが、急激な売り場面積の拡大は、品薄感をもたらした。価格高騰に歯止めがかからないのはそういった側面もあるのだ。

農水省によると、27日時点でスーパーのイオングループやイトーヨーカ堂、ディスカウント店「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、ドラッグストアのサンドラッグ、ネット通販の楽天グループなどが申請した。

讀賣新聞「備蓄米に想定超える申し込み殺到」より

これが何をもたらすのかは、少し考えれば容易に想像出来る。

大混雑の精米工場

そう、「どこで精米するのか」が問題となるのだ。

備蓄米引き渡し、精米工場「奪い合い」の様相…小売り大手「精米所と袋の確保が一番のボトルネック」

2025/05/29 07:05

随意契約で放出される政府備蓄米を巡り、小売業者への引き渡しが29日にも始まる。申請した各社は販売に向けて準備に追われており、精米工場は「奪い合い」の様相となっている。

讀賣新聞より

大狂乱と言っても良いだろう。

ある大手コメ卸には精米の依頼が相次いでいるといい、担当者は「銘柄米とこれまで放出された備蓄米の精米でいっぱいいっぱいだ。(今回分の)精米を優先できるかは、相手との調整次第だ」と話す。

讀賣新聞「備蓄米引き渡し、精米工場「奪い合い」の様相」より

備蓄米の放出は、更にこの問題に拍車をかけたのである。

ボトルネックは何処にあるのか

結局のところ、この問題の根底が何処にあるのかを追求しないまま、右往左往しているだけのように見えて仕方がないのだが、「見えている部分だけに対処する」というポピュリズム政策に特化した小泉氏に、果たしてこの問題の解決ができるのか。

良く、「大臣になると勉強する時間がない」と言われるが、小泉氏はちゃんと農政を勉強してきたのかしらん?

現状、米の流通で問題になっているのは、消費量の減退傾向にあることと、生産量の減少傾向にあることだ。

img

農水省の把握では令和3年時点で年間704万tで、消費量は年々減少傾向にある。

農水省は7月30日、食糧部会を開催し7月指針を決定した。それによると令和5年7月から令和6年6月末までの主食用需要量は前年より11万トン増の702万トンなり、この結果6年6月末の民間在庫量は前年より41万トン減の156万トンとなった。

日米連のサイトより

ところが、令和6年と令和7年も予測よりも需要が減っていない。それどころか、ここのところの売り場拡大などの影響もあって需要は増えているのである。

一方、供給はどうかというと、年々生産量は減る一方である。

img

その結果、需要と供給のバランスが崩れて価格が高騰しつつあると。もうこれ、アベノマスクと同じ話なのである。だからこそ、小泉氏が「制限なく備蓄米を放出するぜ」とアナウンスしたことは、彼の実行力も相まってかなり「意味のある発言」ではあったのだ。

だが、問題となったのは流通の方で、米を流通させるには精米という手順を踏まねばならず、そこが細っていた為に直ぐに備蓄米が出回らないという江藤氏と同じ轍を踏む羽目に。

それを流通の問題と理解した小泉氏が、販売元の新規開拓をしたことで何が起こったかと言えば……、ご覧の通りである。

小泉農相、卸売団体に精米の協力要請

5/28(水) 17:29配信

小泉進次郎農相は28日、コメ卸売業者の業界団体である全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)の理事長らと農林水産省で面会し、小売業者に放出する備蓄米の精米に協力を求めた。

Yahoo!ニュースより

ええと、精米協力?バカにしてんのか。小泉氏には是非とも頑張って欲しいのだが、どうにもおかしな言動も目につくんだよな。

米不足は解消しない

そんなわけで、色々指摘してきたけれども、根本的な米不足の部分は解決していないのだから、備蓄米を出して一時凌ぎという弥縫策を打ったけれども、アナウンス効果はともかくとして、現実的にはそれが解消する見込みがない。

何しろ、無制限に放出する!とアナウンスしても、備蓄量は精々100万t程度で2~3ヶ月分しかない。それを一気に出そうとして転けてしまったけれども(流通の細さにも問題があると前回も指摘した)、出したら終わりの備蓄米である。

一時的に安値が実現しても、次に出せる米が無くなってしまったら本当にどうしようもなくなってしまう。

数字だけ見れば市場で不足しているのは数十万トンなんだけどね。

そうすると、石破氏が言ったように「輸出できるようにする」というのは、ある意味最適解なのである。そして、そのために何をすれば良いのか?といえば、大規模農家を増やすということで、生産拡大のための手法を打つべきだ、と。

そのあたりは、前回の記事に書いていたことなんだけど、最近、見ているXの中でこんなポストが。

ああ、機械化だけで解決しないのね……。

実際、日本の国土の11.6%が水田であり、そのうち山間地に属する水田面積は全体の4割である。山間地は機械化して大量生産というのが難しい場所が多い。

更に困った話がこちら。

「備蓄米、1年経てば動物のエサ」 国民民主・玉木氏発言が物議 小泉氏苦言「残念だ」

2025/5/28 23:02

小泉進次郎農林水産相は28日、政府が放出する備蓄米を巡って国民民主党の玉木雄一郎代表が「1年たったら動物の餌になるようなものだ」と発言したことに関し、「備蓄米の放出に取り組んでいるときに私としてはちょっと残念だ」と苦言を呈した。農林水産省で記者団の取材に応じた。

産経新聞より

これについて玉木氏はこんな弁明をしているが、更に酷い。

減反政策は確かに問題なんだけど、そもそも米農家が儲からない構造になっていることそのものが問題なのである。

そういう意味で、国民民主党を期待していたけれども、「やっぱダメなんだ」と。

その際、農家の再生産可能な所得を補償する新たな直接支払い制度が不可欠で、国民民主党は「食料安保基礎支払い」を提案しています。

玉木氏のポストより

米農家の現状は、専業農家ではやっていけないサラリーマンと農業の二足の草鞋を履いている人が多いことが問題だった時期を過ぎ、今や老人ばかりになっていて、平均年齢が70歳を超えている現状が問題なのだ。もちろん、後継者もいない。「所得補償」はそういう意味で悪手だ。

米作りが儲けられる産業になり、大企業参入も出来る形に規制緩和していく。それでも安値を望むのはもはや不可能だ。

そういえば、米どころか卵も牛乳ももやしも、最近は値段が上がったまま下がらない。バターとかもそうだよね。

そうすると、農政改革はもちろんやるべきなんだけど、今すべきは労働者の手取りを増やす政策を目指すべきなんだろうと思う。

小泉氏は奮闘しているようだが、残念ながら農水大臣の権限で解決はできない分野の話であることを理解すべきなんだと思う。そういう意味では、石破クンが動かねばならないんだけど、アノヒト、矢面に立つの嫌がるんだよね。

追記

さて、良さげなニュースが報じられていたので併せて紹介しておきたい。

山形県内 ことし収穫の主食用米の作付面積 2.8%増見通し

05月29日 08時47分

ことし収穫される県内の主食用米の作付面積は先月末時点で5万3900ヘクタールと去年に比べて2.8%増える見通しとなっています。

NHKニュースより

NHKって何故、「ことし」を平仮名で書くのか意味が分からない。そういうレギュレーションなのだろうか?

さておき、作付面積が増える見込みであると報じられている。

東北農政局によりますと、コメの消費量の減少に伴い、作付面積も全国的に減少傾向でしたが、県内でことし、主食用米の面積が増加すれば、令和元年以来6年ぶりだということです。

また、コメを使った製品の原料となる「加工用米」の作付面積の見通しは、去年に比べ4.6%増加した一方、家畜のえさとなる「飼料用米」は、27.6%減少しています。

NHKニュース「山形県内 ことし収穫の主食用米の作付面積 2.8%増見通し」より

山形の記事を取り上げただけだが、群馬でも滋賀でも作付面積増やすよという報道が出ていて、歓迎すべきニュースだと思う。ただ、天候は全国的に不順になると予想されていることから、全体収量があがるかは微妙なところ。

飼料用米の作付けを減らして加工用米を増やしているというのも、歓迎すべき話だ。

この飼料用米の作付けの話だが、ここに補助金が出ている(転作するのに補助金が出ている)ことをネガティブに扱うところと、ポジティブに扱うところがある。否定的な意見の方は、補助金のせいで飼料用米が増えて主食用米の生産量が結果的に減っているとの意見であり、肯定的な意見の方は、飼料用米作付けを許可されることで、主食用米に転作が容易になるという意見である。

これはどちらも正しいが、結局、主食用米の価格がどうか?という点が問題となるわけで、そういう意味で価格低下措置をとるにせよ、全体的な価格の上昇を見込んで手取りを増やしていくべきだという話をしていくべきではないだろうか。

その意味でも、輸出用に米を作れという選択肢はアリだと思うのである。それで、主食用米が減るにせよ、米で利益が得られる構造にならないと農家は減る一方なのだから。後継者のいない産業は本当に悲惨だよ。

追記2

アピール始まったな!

農相「どれもおいしい」 古い備蓄米試食

5/29(木) 17:59配信

小泉進次郎農相は29日、農林水産省が主催した備蓄米の試食会に参加した。それぞれ2024~21年産のコメで作られた一口大のおにぎりを口にし「率直にどれを食べてもおいしい」と感想を述べた。21年産の古いコメに対し、小泉氏は「そこまで(味などの違いを)感じなかった」とアピールした。

Yahoo!ニュースより

この手の「食べてみる」アピールは、結構批判を浴びる向きもあるが無意味ではない。

古いコメをおいしく食べるには…炊くときのコツ・相性のいいメニュー、「お米マイスター」が伝授

2025/05/26 20:19

政府が今回放出を決めた備蓄米は2021年産や22年産で、収穫から一定の年数がたっている。「おいしく食べるにはひと工夫が必要になる」。コメの博士号とも言われる「五ツ星お米マイスター」で、大阪市平野区で米穀店を営む西川信一さん(59)はそう話す。

讀賣新聞より

この手の「美味しく食べるコツ」とか「保管上の注意」とか、情報をバラ撒きつつ「美味しい」と食べてみせる。陳腐で使い古された方法だが、「古古米は食えたもんじゃない」と暴れ出す人達の予防措置としては悪くない。

そして、この速度でやってみせることが出来るのは小泉氏の美徳だろう。

ついでに、Xをやっているのだからこの程度の情報は呟いて欲しいポヨ。

ともあれ、あえてパンダになって見せてでも、良い方法を選び取れるというのは資質である。上に立った時に、「批判は全部俺が受ける」「だからこの方針で自由にやってくれ」と示せるトップはなかなか得難い。石破氏だったら原則論を語って逃げそうなものだが、それとは違うのだろう。

まあ、石破氏も役が付いて、我が身を省みてくれる可能性はあるんだけどさ。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >「批判は全部俺が受ける」「だからこの方針で自由にやってくれ」と示せるトップ

    結局、省庁のトップ(≒大臣)なんてのは、広告塔であり、また、責任を取るのが仕事と割り切ってもらわないと。
    もちろん、「この方針」が『国民の為のもの』であることを担保出来る程度には頭良くて知識も無いとダメですが。
    ※出世と保身の為の増税原理主義の財務省とか、どうなっているのだろう……

    それから、裏取れてませんが、古来、新米より古米古古米の方が珍重された、というのも目にしました。新米は水分多くてべちゃべちゃするからイヤ、なんだそうで。
    現代と古代では保存方法も違うから一概に言えませんが……七面鳥は、お米はコワイ方が好きです。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      だから、大臣として小泉氏は優秀なのですよ。アホなのが玉に瑕ですが、操縦するしっかりとしたブレインがついてくれれば……。
      小泉構文でも、それらしい解説できてくれれば、後は劇場が勝手に盛り上げてくれます。

      新米が喜ばれるのは、それだけで食べる層で、丼ものにしたり炊き込みご飯にする時などは古米の方が扱いが容易なんですよね。
      現代では古米買うのは難しいようですが、それでも食べ物を扱う店では出たての新米より、時間を置いた米の方が良いと言うところもあるようですよ。

      • 七面鳥 より:

        米の流通において、ものすごい数の中間搾取する業者がいることが明るみに出た事は、小泉氏の功績として認めるものであります。
        精米も、都心はともかく、ちょっと田舎ならコイン精米機あるんだから、玄米でバラ撒いて勝手に精米しる!でもいいと思うんですけどね。「精米しないと売っちゃアカン!」って、初期の備蓄米には但し書きがあったとかなんとか……

        米が高くても、農家にはその差額が入らないのでは、農政として間違ってると誰もが気付きますよね。