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自民 特命委員会 「外免切替」の手続き厳格化を目指す

政治
この記事は約12分で読めます。

ここのところちょっと問題が大きく報じられるようになった「外免切替」の話、僕自身も誤解していた面があったので、ちょっと整理しておきたい。

自民 特命委員会 「外免切替」の手続き厳格化を首相に提言

2025年6月5日 16時51分

外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える「外免切替」について自民党の特命委員会は、石破総理大臣に対し、住所確認を厳格にするなど手続きを見直すよう提言しました。

NHKニュースより

調べてみたら外免切替制度は昭和8年(1933年)から運用されている制度らしい。ただ、最近は観光客のような短期滞在者も利用出来るようになったことで問題が表面化したようだ。

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制度設計時に想定されない利用が問題

ジュネーブ協定に基づく?

事故が増えてきたことで、政府も漸く重い腰を上げた感じなんだけれども、何処が問題なのか?は、批判をするためにも理解をしておかねばならない。

そもそも、この話は何処が起点になっているのか?という点を知るべきだろう。

日本で車を運転するための「外免切替」制度改正を検討 警察庁

2025年5月21日 18時36分

警察庁は、外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える手続き「外免切替」について、住所確認を厳格化するなど制度改正を検討しています。

外国籍の人が日本で車を運転するためには、「ジュネーブ条約」に基づく国際免許証を取得する方法、外国で取得した運転免許証に領事機関などが発行する日本語の翻訳をつける方法、それに、日本の教習所に通ったり外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える手続き「外免切替」を行ったりして、日本の運転免許証を取得する方法の3つがあります。

「ジュネーブ条約」に基づく国際免許証は条約に加盟しているおよそ100の国と地域で取得できる一方、中国やベトナムなど条約に加盟していない国では取得できません。

また、外国で取得した運転免許証に日本語の翻訳をつける方法は、日本と同じような免許制度があるスイス、ドイツ、フランス、ベルギー、モナコ、台湾のみが対象となっています。

一方で、「外免切替」は外国の免許証を持ち、日本の試験場で運転に必要な知識や技能があると認められれば、日本の運転免許証を取得できる制度です。

NHKニュースより

ええと、外国人が日本で運転免許証を取得するための方法は4つに整理できる。

  • 「ジュネーブ条約」に基づく国際免許証を取得
  • 外国で取得した運転免許証に領事機関などが発行する日本語の翻訳をつける方法
  • 外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える手続き「外免切替」
  • 日本で自動車教習所に通う方法

NHKニュースでは3つと整理しているんだけど、日本の運転免許証を取得する方法が一纏めになっているので3つなんだよね。

でも、本稿では「外免切替」を取り扱うので、敢えてそこを2つに分けている。

僕が勘違いしていたのは、外免切替制度がジュネーブ条約を下敷きにしているのでは?という点だ。てっきり、条約加盟国同士で運転免許に関する利便性を高める目的だと、そのように考えていた。

ところがどうもそうではないらしい。ジュネーブ協定に基づくのは国際免許だね。

ジュネーブ条約の中身

ジュネーブ条約なんて読んだこともないので、一応確認しておこう……、と思ったのだが、ちょっと難しかったのでWikiから引用する。

  1. 締約国は期間1年を限度として、その領域内にとどまっている自家用自動車、被牽引車または運転者にこの条約に定める利益を与えること。(1年を超えて引き続きその領域内にとどまっている場合はこの条約に定める利益を及ぼすことを要求されない[3]
  2. 締約国は、国際交通を認められる自動車の輸入につき、輸入税の支払を保証する担保の提供を要求することができる。ただし、当該自動車について有効な国際通関書類を発給した国際団体に加盟している国内団体の保証をもってこれに代えることができること。
  3. 締約国は、この条約に定める道路交通に関する規則の遵守のため適切な国内措置を執ること。
  4. 本条約の利益を享受するためには、自動車は締約国またはその下部機構により法令で定める方法で登録されなければならないこと。また、権限のある当局または正当に権限を与えられた団体は、自動車の登録証書を発給すること。
  5. 締約国は、自国の領域への入国を許された運転者で、他の締約国もしくは権限のある当局または正当に権限を与えられた団体から発給を受けた、有効な運転免許証を所持するものに対しては、新たな試験を受けることなく、自国の道路において運転することを認めること。
Wikiより

なるほど?しかしこれ、観光客に運転免許を出す根拠としてはかなり貧弱な内容のように思える。

しかしながら、交通ルールをある程度共通化させることと、その交通ルールの共通化に伴って運転免許の付与手続きを簡素化しようという目的は読み取れる。

そして、観光立国を目指す日本は、外国人の免許取得にも利便性を付与しようという話になったようだ。そのため、ジュネーブ協定に基づいて国際免許への切り替えと、それの対象外となった国を対象に「外免切替」の制度を整備している。

事故が増える

しかし、ここのところ事故が増えているらしい。

おととし1年間に「外免切替」で日本の免許証を取得した人は6万10人で、10年でおよそ2倍に増えています。

今月14日、埼玉県三郷市で小学生4人が車にはねられてけがをした事故や今月18日に三重県の新名神高速道路で乗用車が逆走した事故では容疑者のドライバーはいずれも外国籍で、「外免切替」で日本の免許証を取得していたということです。

~~略~~

このうち「知識確認」では2択問題が10問出題され、「技能確認」では一時停止やS字カーブなど正確なハンドル操作ができるかなどを確認します。

警察庁によりますと、おととしの「知識確認」の合格率の全国平均はおよそ90%だった一方、「技能確認」の合格率の全国平均は29%だったということです。

NHKニュース「日本で車を運転するための~」より

「外免切替」のハードルは2つで、「知識確認」と「技能確認」があり、「知識確認」は9割合格、「技能確認」は3割合格であったという。

この「外免切替」制度をめぐっては、国会で「知識確認の問題が簡単すぎて、日本の交通ルールをよく理解していないのではないか」とか「日本に住民票がない観光客なども、ホテルなどの一時滞在場所を『居住地』として認めることは事故を起こしたときなど、取締りに影響が出るのではないか」といった指摘が相次ぎました。

NHKニュース「日本で車を運転するための~」より

なるほど、利便性を高めたら安全性を犠牲にする結果になったという、制度的な不具合があるよということみたいだね。

日本の運転免許証制度

このブログを読んでくれている人の多くは、おそらく日本での運転免許取得を体験していらっしゃると思う。

そして、あの学科試験のクソっぷりも体験されているかと思う。

何というか、一定数の再試験者を出すためだけに、おかしな日本語の問題を出しているような状態で、それでも出題傾向を勉強すればクリアできるレベルの問題ではあると思う。

ところが、「外免切替」の「知識確認」は、2択問題が10問出題されるだけで7問正解で合格だという。そして、恐ろしいことに「日本語を含む最大24言語で受験できます」となっている。

外免切替試験 「日本人と同等」への厳格化検討と坂井国家公安委員長 維新・三木氏に答弁

2025/5/23 15:11

坂井学国家公安委員長は23日の衆院内閣委員会で、外国人が母国の運転免許を日本の免許へ切り替えられる「外国免許切替(外免切替)」制度について、簡単すぎると指摘される知識確認(筆記試験)の問題を、日本人と同等とすることも検討する考えを示した。日本維新の会の三木圭恵氏への答弁。

外免切替の知識確認は最大24言語で受けられ、「○×式」の10問のうち7問正解で合格できる。

産経新聞より

……日本語読めない人でも合格できる試験って、それは日本の運転免許証の付与をしてはいけないのではないか。

特に、日本の免許制度は諸外国に比べてかなり難易度が高いとされていて、国によっては車を真っ直ぐに走らせることができれば免許を出すというような制度設計のところもある。なお、金銭的にもかなり差があって、アメリカだとせいぜい80ドル(1万1500円程度)、韓国だと30~40万ウォン(3~4万円程度)と、日本の免許取得とは乖離が見られる。

では、日本は何故こんな難解で高額な制度になっているのか?というと、どうやら欧州基準で設計された模様。特に、ドイツのモデル(高額かつ試験難易度の高い、安全性重視の設計)を採用した形跡が見られ、安全性を追求する姿勢は悪くはないと思うが、これは、交通戦争と言われた昭和30年代の交通事故死者数の多い時代に整備された結果でもある。

外免切替の制度は危険

一方で、外免切替の制度自体はこれまで余り重視されてこなかった。制度の取り入れ自体は昭和8年だが、実際に切り替えニーズが高まったのは昭和60年代以降の話。現在の制度になったのは平成12年以降で、「国際的な相互主義や交通安全の観点」から手続きの簡素化が進んだ。

これを主導したのが公明党である。第2次安倍政権発足が平成24年で、それ以降の国交省ポストは公明党の事実上の指定席となっている。それ以前も、積極的な働きかけをしていたようだが、ポストを手にしてからは更にその速度を加速させ、今に至っている。

もうなんか、ここまでの説明で全体的に胡散臭さが漂い始めたと思う。

【外免切替での取得 統計】

2023年 6万0010人 2022年 4万7558人 2021年 4万3333人 2020年 4万3117人 2019年 4万6983人 2018年 4万3547人 2017年 3万9188人 2016年 3万7256人 2015年 3万2577人 2014年 2万9037人

NHKニュース「日本で車を運転するための~」より

10年で3倍に増えているようだが、実際に外免切替の制度を利用して運転する人はこれまでは然程多くなかった。

ニュースもあるが、これまでは前提が異なっていたのである。

「外免切替」の制度は1933年(昭和8年)から運用されていて、外国で免許を取得した日本人が帰国後に日本の免許証に切り替える際などに利用されてきましたが、日本を訪れる外国人の増加に伴い観光客などの短期滞在者も「外免切替」の制度を利用するようになったということです。

NHKニュース「日本で車を運転するための~」より

つまり、これまでは日本人が外国で生活しいていて、生活拠点を日本に移した時にスムーズな免許取得が可能なようにという制度だったのだが、今やその趣旨は忘れ去られてしまった。

「技能確認」の合格率平均は3割と、そもそも運転技能の低い人が多いというところが問題なのだ。

「車は右側通行」○か×か…簡単な試験でOK、外免切替に「穴」 警察庁が見直し厳格化へ

2025/5/21 07:00

外国人が母国の運転免許を日本の免許へ切り替えられる「外国免許切替(外免切替)」制度の「穴」が問題視されている。

~~略~~

国際運転免許証はの利用は道路交通に関する「ジュネーブ条約」に加盟する必要があり、未加盟のベトナムや中国、ネパールなどが外免切替制度を利用しているという。免許証の有効期間の関係からジュネーブ条約加盟国の外国人もこの制度を利用する場合もあるとされる。

警察庁によると、令和5年に外免切替で免許を取得した約6万人のうち最も多かったのはベトナムからが1万5807人で次いで中国からが1万1247人だった。埼玉県三郷市の小学生ひき逃げ事件で逮捕された中国籍の鄧洪鵬容疑者(42)も外免切替で日本の免許を取得していた。

産経新聞より

逆に言えば、技能確認の試験が厳しいことでまだマシな状況であるとも言えるが、これは外国の運転免許試験が日本より容易であるという意味でもある。

更に、日本の運転資格を得る上で標識や交通ルールの理解は必須であるが、そこのハードルとなるべき「知識確認」が多言語対応というのは意味が分からない。交通規制が敷かれた場合などでも、外免切替の制度利用者は適切な判断が可能なのだろうか?

結局、日本の交通標識などはピクトグラムなどと組み合わせて、運転者に瞬時に理解されるような工夫が積み重ねられ、日本語表記も入れられている。だが、高速道路では電光掲示板に交通情報を示したり、ラジオで情報を流したりとの工夫がある。

こういった交通安全を意識した工夫は、他言語表記と馴染まないという問題があって、一朝一夕で解決するような話ではない。そこを安易に外免切替制度で外国人による日本の運転免許証取得に門戸を開くというのは、道路交通に関する制度設計の破壊に繋がりかねない。

住民票提出が要件に?

というわけで、NHKニュースでは警察庁の制度見直しにも言及しているが、どうにもこういった問題点を踏まえると、方向性を間違えていると思わざるを得ない。

外国人との共生のあり方を議論する自民党の会合で、警察庁は、外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える「外免切替」の制度について、住民票の写しの提出を原則とするなど見直しの方向性を示しました。

~~略~~

そして、警察庁は、外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える「外免切替」の制度の問題点が指摘されていることを踏まえ、住所確認を厳格化するため、住民票の写しの提出を原則とすることや、交通ルールの知識を問う「知識確認」の設問をいまの10問から増やすことを検討するなどとした見直しの方向性を示しました。

NHKニュース「日本で車を運転するための~」より

確かに、ホテルの一室を住所として指定し免許取得が可能というのは、そもそもおかしな話ではあるが、住民票があったら解決か?というと、それも違う。

自民党の特命委員会も随分とヌルいことを言っているが、ことは国民の安全に資することなので、「知識確認」を10問から増やしました、といって11問になったらOKかというと、そういう話でもない。

日本人向けのテストは厳しすぎるのでアレと同じにしろとは言わないが、せめて交通ルールが理解できているかを確認できるテストにしてくれ。それと、そもそもテストが多言語対応っておかしいよね?これは数年前にも指摘されたことではあるんだけども。

この際ハッキリ言っておくが、そもそも外免切替制度の設計と目的がかなり乖離しているところが大きな問題であって、こんな制度は廃止してしまうべきだろう。ジュネーブ協定の要請する国際免許は維持するにしても、日本の運転免許証取得のためには日本人と同等の試験をクリアして貰わねば困る。

敢えてそれでも利便性をということであれば、別の免許制度を創設すべきだろう。外国人で正規に自動車学校に通って日本の運転免許証を取得しているという意味と、外免切替制度を利用して安易に免許取得できるような状態で日本の運転免許証を手に入れられてしまうことを混同させることこそが問題なのだから、国際免許に類する別の制度を作って外国語対応のナビを使えば運転出来るとか、そういう制度に切り替えていくべきだと思う。

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