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支那国内で増える走行距離ゼロの中古車

中華人民共和国ニュース
この記事は約7分で読めます。

これはまた。

走行距離ゼロなのに「中古車」で販売、中国当局がメーカーや業界団体と協議へ

2025年5月27日午後 2:31

中国商務省は、走行記録がない乗用車が中古車として販売されていることについて、比亜迪(BYD)や東風汽車などの自動車メーカーや中国汽車工業協会(CAAM)などの業界団体と協議する。関係者が明らかにした。

ロイターより

日本国内でもショールームで展示した車を新古車で出すパターンとか、ディーラーが試乗車として使っていた車を出すパターンはある。あるんだけど、何れも走行距離ゼロなんてことにはまずならない。

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苦戦するEV

中古車市場に新車が流れる

時々走行距離ゼロの車があるけど、アレは結構レアケースだからねぇ。最初からディーラーで展示されていて試乗車にならないまま、販売されるパターンがそうなんだけど、それでも移動させるためにエンジンをかけるため、ゼロは珍しいんだよね。

先週、長城汽車の魏建軍会長は金融情報サービス、新浪金融のインタビューで、中国自動車市場で長年にわたる価格競争の結果、「走行距離ゼロの中古車」と呼ばれる現象が見られると指摘した。登録済みでナンバープレートが付いており、販売済みとなっているが、走行記録がない車が中古市場で売られているという。中国の中古車販売プラットフォームでは、少なくとも3000─4000の業者がそのような車を販売していると魏会長は述べた。

ロイター「走行距離ゼロなのに「中古車」で販売」より

支那で売られる車はそういうのとはまた違う位置づけのものらしい。

で、このニュースを見かけてちょっと気になったのがこちら。

こちらの記事ではBYDのショールームが大幅値引きをしかけて、販売台数は今年最高を記録したというニュースなのだけれど、それに引っかけて、販売代理店が経営破綻したニュースを紹介した。

BYDの中国東部最大の販売代理店が経営破綻―仏メディア

2025年5月30日(金) 12時0分

2025年5月29日、仏国際放送局RFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)の中国語版サイトは、中国の電気自動車(EV)大手BYDについて、中国東部最大の販売代理店が経営破綻したと報じた。

記事は、英ロイターが29日に中国メディア・済南時報の報道を引用して伝えた内容として、山東省でBYD車の販売店を運営していた済南乾城汽車貿易が経営難に陥り、済南市など同省の複数都市にある店舗で営業を停止したと紹介。少なくとも20店舗が空店舗または閉鎖されていることが判明したと報じている。

Record Chinaより

この時に、「販売代理店が値引き分を負担するのでは」「無理があるよね」というような感想を言ったんだけど、販売台数を稼ぐために販売したことにして中古車市場に流していた疑いすら出てきたな。

そもそもリセールバリューは低い

ただこの話、販売店の判断が不味かったかというと、そうでもない。何しろEVの販売価格は結構下がる感じらしい。

EVのリセールバリューは1年で半減、その実態と構造

2024.11.11

中古の電気自動車(EV)の価値が最初の1年で急激に下がることが英米での査定サービスから明らかになっている。そこで、注視すべきモデル、価値が大きく下落する理由、市場動向をうまく利用する方法を、『WIRED』が調査した。

WIREDより

ちょっと有料記事なので申し訳ないが、似たような記事を紹介しておくので雰囲気を掴んで欲しい。

【5年後は7割減も】“EVを買う人”が知っておくべき「リセール率の落とし穴」の噂は本当なのか?

2025.02.21 10:00

欧州メーカーを中心とした性急な電動化の波はいったん収まったように見えるものの、BEV(電気自動車)が近い将来自動車販売の中心になる可能性は依然として高い。となると、新しもの好きとしては、早めにBEVを手に入れたいと思うのも無理はない。

~~略~~

新車価格は約400万円なので、その25%くらいまで残価率したことになるが、一般的に5年落ちでの下取り額は人気具合にもよるが新車価格の60~40%と言われているので、それに比べるとやはり低いと言わざるを得ない。

Carviewより

多くのメディアが指摘しているのは、電池の劣化がリセールバリューに影響しているという話で、スマホのことを考えれば分かり易いだろう。二次電池が劣化することで性能が低下してしまい、それが価格低下を招くという構図となっているそうな。

売り上げが減る

とまあ、かなり怪しい話は出ているのだが、何かハッキリした証拠のあることでもない。

ハッキリ分かっているのは、支那のEV製造メーカーの利益が減っているということだ。

中国EV「NIO」、1〜3月は21.5%増収も赤字拡大 採算性に課題

2025年6月6日

中国の新興電気自動車(EV)メーカー「蔚来汽車(NIO)」が6月3日、2025年1〜3月期決算を発表した。売上高が前年同期比21.5%増の120億3470万元(約2400億円)となった一方で、純損失は30.2%増の67億5000万元(約1400億円)、非GAAPベースの調整後純損失は28.1%増の62億7910万元(約1300億円)と赤字が膨らんだ。

36KrJapanより

もちろん、売り上げが伸びているメーカーもあるのだけれど、全体的に過当競争をやっているので、どうしても利益が減っている傾向にはある。

中国自動車工業会、自動車産業の過当競争を是正するための提案を発表

2025年06月09日

中国自動車工業会(CAAM)は5月31日、「公平な競争秩序の維持、産業の健全な発展を促進する提案」を発表した。中国自動車工業会はこの発表で、「5月23日以降、ある自動車メーカーが大幅な値下げ活動を開始し、多くの企業がそれに従い、新たな『価格戦争』のパニックを引き起こした」と指摘した。その上で、「無秩序な『価格戦争』が悪質な競争を激化させ、企業利益をさらに圧縮し、製品の品質やアフターサービス保証に影響を与えている」とし、これについて「産業自体の健全な発展を阻害するだけでなく、消費者の利益を損ない、安全上の危険をもたらす」との見方を示した。

JETROより

むちつじょなかかくせんそう……。

BYDやっちまったな。

このような状況を踏まえ、中国自動車工業会は次の4点について提案を行った。

  1. すべての企業は、公平な競争の原則を順守し、法律と規則に従って経営活動を展開する。
  2. 優位企業は、市場を独占するために、他の企業の生存空間を圧迫し、その合法的権益を損なうことがないようにする。
  3. 企業はコストを下回る価格で販売せず、消費者を誘導する虚偽の宣伝を行わない。
  4. すべての企業は、国家の関連法令に従って、自己調査と修正を行う。

同日、工業情報化部は公式アカウントの中で、中国自動車工業会の提案に賛同し、自動車業界の「内巻式」競争(注)の是正を強化することや公平な秩序ある市場環境を維持し、消費者利益を守り、自動車産業の質の高い発展を推進することを発表している。

JETRO「中国自動車工業会」より

ちょっと無理っしょ。こんな標語みたいな目標を掲げたところで、横紙破りをして儲けるのが正義なわけで。

短期的に儲けられればいいや、という業者が一杯いるので、こんな「公正な競争の原則」なんて掲げられましても。

中国自動車メーカーのBYDは、5月23日以降、22車種の販売価格を値下げすると発表していた。最も低価格帯の小型純電動車「海鷗(シーガル)」は5万5,800元(約111万6,000円、1元=約20円)となっていた。また、これに続き、吉利汽車なども価格値下げに追随していた。

JETRO「中国自動車工業会」より

ここまでしないと売れないほど支那の国内のEV売り上げが落ちていたと、そういう風に理解すべきかな。随分と政府が手を入れていたのだけれど、政府から指導もあったのかな、これくらい売れという指導が。

かといって、EUにも売れないし、他の外国も買ってくれないっぽいし。そして、先日取り上げたEV搬送中の火事で、海運的にもなかなか大変なことになるんだろうと思うよ。

追記

殴り合いらしい。

中国BYDのEV大幅値下げでメーカー間の対立が激化

2025年6月10日午前 8:47

 中国の大手電気自動車(EV)メーカーの吉利汽車が、競合する比亜迪(BYDの大幅な値下げを批判したことで、メーカー間の対立が激化している。

メーカー間の争いの発端となったのは長城汽車が2023年、BYDの売れ筋のハイブリッド車(HV)2車種が排ガス基準を満たしていないとして、中国の規制当局に通報したことにさかのぼる。BYDは当時、この主張を否定し、同社の車が中国の排ガス基準を満たしていると強調していた。

ロイターより

BYDの安値攻勢に対して、吉利汽車が批判。それだけではなくてBYDのHVが排ガス規制を満たしていないと長城汽車が指摘したことが争いの根っこにあって、業界で言い合いに発展している模様。

過当競争をするなと当局が割り込みをかけた話は紹介しているけれど、そんなことで頭が冷えるのなら最初からやらないわけで。

結局、EVの技術競争ではなくて、値下げすることでしか差が見いだせない状況になっていることが問題なのだが、市場原理にしたがって価格競争をするのは寧ろ健全ではある。問題はパイの奪い合いが発生していることなんだろうね。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ネットニュースのタイトルを眺めてたら、見るからに提灯記事のタイトルが……
    「率直に言う EVは「ハイブリッド車」を滅ぼすだろう」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/9e71a049c348bea519d5f4b6f0e929bc0330f7a3

    ちょっとググると、なかなかに「なとかに交われば赤くなる」のヒトのようで……
    https://merkmal-biz.jp/post/writer/kazushige-yamaguchi

    今朝の犬HKでも、中古トラックをEVにコンバートする業者を持ち上げてましたが(それ自体は否定しないし、立派だと思う)、最終的には、利用者がどこにメリットを求めるかであって、EV自体は否定しない(制御性、低速トルクなど、車に向いている要素は多い)けれど、少なくとも補助金なしで今すぐ普及するには色々足りない物だらけだし、ヒステリックな欧州の政策に乗っかってるわけでもないし、国策で(技術力不足でエンジン内製出来ないから)EV推進してEV墓場造る国でもないし、って事ですよね。

    ……って自分で書いてて思いましたけど、「ラファールより凄い」国産戦闘機作れる国が、たかが自動車のレシプロエンジンで日本に勝てないんだ……
    ※アレは機体ではなくミサイル(とその制御まわり)が凄いのですけどね……

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      >「ラファールより凄い」国産戦闘機作れる国
      そこは、ワンオフのトライアンドエラーが許される兵器と工場生産品で品質の求められる製品の違いとしか。
      ロシアも同じですからね。

  2. 砂漠の男 より:

    支那国内のEVバトルは、支那指導部の混乱ともリンクしているような気が..
    吉利汽車などは、紅皇帝肝煎りのメーカー(利権企業)なので、権力者間の力の不均衡は、
    EV業界の衰亡にも影響するかと。

    • 木霊 木霊 より:

      その辺りの事情は記事を新しくして触れています。
      ただ、ご指摘のような習近平寄りのメーカーがどこか?までは言及していなかったので、なるほどと腑に落ちるところも。
      いずれにせよかなり政治的な話ですよね。