本日のネタは、特にこれといって目にとまらなかったので、アメリカの今後のエネルギー政策に関連する話を少し。いや、イスラエルの話とか支那の話とか、結構突っ込むべきところはあったんだけれども。
米上院財政委、水力・原子力・地熱発電の税額控除を延長する予算案提出
2025年6月17日午後 12:33
共和党が多数派となっている米議会上院財政委員会は、トランプ政権(共和党)が支援する水力発電と原子力発電、地熱発電の税額控除を2036年まで延長するとした予算案を提出した。一方、バイデン前政権(民主党)時代に導入された太陽光発電と風力発電の税額控除は2028年までに廃止することを盛り込んだ。
ロイターより
アメリカは前政権の在り方を否定するということも結構やるけれども、これはそういう話だけではない。共和党はそもそもカーボンオフセットに消極的である。
安定電源を模索
水力・原子力・地熱に注力
で、米議会上院財政委員会は共和党多数派なので、水力発電と原子力発電、地熱発電を協力に推していくことにしたようだ。
これに関しては、過去にも取り上げている。
1つは原子力発電を増やす為の大統領令に署名したという話で、もう1つが支那へ原子炉用の部品の輸出を規制したという話である。
ただ、水力発電も地熱発電もやりたいというのは、やや筋が悪いかも知れない。
アングル:水不足で世界の水力発電ピンチ、温暖化阻止に脅威
2021年8月19日午後 7:00
米国や中国、ブラジルなど世界各国で、気候変動による水不足から水力発電所が電力供給の縮小に追い込まれている。火力発電への依存が高まっている国もあり、地球温暖化に対する国際的な取り組みにとっても脅威となりかねない。
気候変動で異常気象が増えて水資源の安定的な確保が難しくなり、こうした問題が長期化する、と科学者やエネルギー専門家は見ている。
ロイターより
個人的に温暖化が進行しているかは懐疑的だが、それはさておき異常気象による影響が出ているのは事実だと思う。
その結果、水力発電が低調であることと、そもそもアメリカのダムが結構老朽化していることも問題である。
米ダム決壊で数千人避難 新型コロナ感染懸念 車中で過ごす人も
2020年5月21日 12時08分
アメリカ中西部ミシガン州で19日、豪雨でダムが決壊し下流の住民数千人が避難を余儀なくされていて、避難先での新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されています。
NHKニュースより
このダム決壊は、NHKニュースでは「豪雨で」と天候の影響を指摘していたが、しかし、そもそもダムそのものの能力に問題がある事が指摘されていたことが後に発覚。いや、多分、地元の関係者は知っていたと思うよ。
米ダム連続決壊、洪水吐きの能力不足を再三指摘
2020.06.04
大雨で決壊した米ミシガン州の2つの水力発電用ダムで、これまで洪水吐きの放流能力の不足を再三、指摘されていたことが分かった。建設から100年近く経過しており、大規模な洪水に対する耐久性不足が問題視されていた。維持補修の遅れが甚大な被害につながった恐れがある。
日経XTECHより
そもそもミシガン州は民主党が伝統的に強い地域で、インフラ投資には消極的な地域である。
200年に一度の規模の豪雨だったという話ではあったが、メンテナンスがしっかりなされておらず、能力低下が指摘されていたが、特に手当てされていなかった。
老朽化ダムはアメリカ全土に
そもそも、アメリカのダムの多くは100年ほど前に作られたものばかりである。
老朽化ダムが引き起こすリスク増大、アメリカが直面する複合的課題
2024年7月13日22:27
アメリカでは多くのダムが100年以上前に建設され、老朽化が進んでいる。気候変動による極端な天候の増加が、ダムに与える影響を強めており、老朽化や破損による人命や財産へのリスクが高まっている。ダムの修理、建て替え、撤去には、費用や環境への影響を考慮する必要がある。
~~略~~
アメリカでは、気候変動の影響により、極端な天候が増加しています。これにより、国内にある約92,000のダム、特に100年以上前に建設された老朽化したダムが大きな脅威にさらされています。ミネソタ州のラピダンダムの部分的な破損は、この問題を象徴する出来事であり、近隣の建物の破壊や人々の避難を余儀なくされました。
innovaTopiaより
この記事にあるラピダンダムは2024年6月に決壊してしまったが、これも「集中豪雨によって」という風に解説されている。

このニュース、日本ではあまり注目されなかったようで、報じられた記憶がない。
米中西部で大規模洪水、死者2人 ダム決壊の恐れも
2024.06.26 Wed posted at 15:30 JST
米中西部が大雨による大規模な洪水に襲われ、当局者らによると少なくとも2人が死亡した。ミネソタ州南部では1900年代初めに建設されたダムが決壊の危機に直面している。
ミネソタ州のラピダン・ダムについて、地元ブルーアース郡の当局者は24日、「完全に決壊するかこのままとどまるかは分からない」としたうえで、下流の住民らに警戒を呼び掛けた。
CNNより
ただ、結構な被害は出たらしい。
そして、こういった洪水被害を「気候変動のせいだ」と、二酸化炭素排出抑制に繋げようとする層がいるのだが、実際はそれだけではないのだ。ダムの老朽化はかなり深刻な話なのだから。
バイデン氏はこの手のダムの問題を「二酸化炭素が出るからダムを撤去しよう」という意味の分からない(ダムや溜め池はメタンガスや二酸化炭素の主要な排出源になるらしい)方針で解消しようとしていたらしい。
再生可能エネルギー発電には問題がある
そもそも、再生可能エネルギー発電は様々な問題がある。このブログで色々指摘しているけれども。
一番の問題は気まぐれ発電が困るってヤツだね。だが、それに付随する問題があってそっちの方が深刻である。
「1兆ドル計画」でも足りない、米国の次世代送電網は実現できるか?
2021.08.17
気候変動に対処するための効果的な計画は必ず、高い塔を結ぶ長い電線という基本的なテクノロジーの影響を受ける。
米国では、今後数十年で何十万キロメートルもの送電線を増設し、地域ごとに分断されている電力系統を統合し、再生可能エネルギーの大量導入に対応できる相互送電網にしていく必要がある。
MIT Technology Reviewより
そう、送電網の整備が必要なのだ。
何しろ、太陽光パネルにしろ風力発電にしろ、人の住まない地域に建てねばならない。そして、発電密度が低いので発電所が点在することになる。
短距離の引き込み線と長距離の高圧線で構成される全米統一の電力網は、風力、太陽光、水力で発電した電力を、必要なときに必要な場所に届けることができる。熱波や大雪などの影響で地域的な電力不足が発生した時に信頼性の高い非常用電源を提供し、家庭や企業で自動車や暖房などの電化が進む中で急増する電力需要に対応するのにも役立つだろう。
この壮大な構想には、大きな問題点がいくつかある。まず、必要な送電線の敷設には、この10年間だけでも数千億ドルの費用がかかる可能性がある。
MIT Technology Reviewより
これをこまめに繋いでいくというのは、実に効率が悪いのである。
しかし、再生可能エネルギー発電は風力や太陽光でお互いに足りないところを補い合いつつ、それでも足りないところを二次電池で構成された蓄電所に電気を溜めて対応するということになる。それでも足りなければ火力発電を足すということになるのだが、これがまた効率が良くない。火力発電も連続運転をしていた方が効率が良いのだ。
インフラの再開発
というわけで、老朽化ダム問題も何とかして欲しいという話は出てきているのである。
全米水力発電協会のマルコム・ウルフ最高経営責任者(CEO)は、水力発電の新規施設に対する税額控除を延長したことを評価した一方で、既存施設改善への税額控除を延長していないのを問題視して「私たちは、これらの多目的施設がクリーンで信頼できるエネルギーを何世代にもわたって提供し続けられるような法案が議会で今後採択されることを望んでいる」とコメントした。
ロイター「米上院財政委~」より
ただ、全体的な流れとしては、水力発電にしろ地熱発電にしろ原子力発電にしろ、ベースロード電源と日本が称している安定的な発電手法に傾倒している感じが強い。
更に言えば、発電効率が比較的良いものに集中しているのも興味深い。
これを機に、老朽化ダムの対策もしっかりやってくれると良いのだが、それは、日本も同じなんだよね。そろそろ「再エネ賦課金」で太陽光発電事業者とか風力発電事業者を甘やかすの止めようよ。他に必要なことがあるでしょうよ。
コメント
こんにちは。
>民主党が伝統的に強い地域で、インフラ投資には消極的な地域
インフラ投資を重視しない政権は長持ちしないんですよね……
江戸幕府が長持ちしたのも、インフラにかなり力入れていたからじゃないかと思ってるのですが。
インフラのキモは安定と安全、風頼り、お天道様頼りのプラントは、ダメですよね。
※そもそも、異常気象の時こそインフラの安定性が重要なのだから。
こんにちは。
インフラ投資に手を抜いたツケなんですが、これは民主党政権だけの失敗ではないので、アメリカ全体の反省ということかも知れません。
特にダムは治水に絡む話ですから、放置したツケは大きいでしょう。
トランプ第2次政権は、バイデン政権の積み上げた”負債”を清算しながら、
ほとんど真逆の諸政策を進めていこうとしているので大変でしょう。
予期せぬ問題が常に起こり、政権の脚を引っ張りますし。
奇しくも、お隣りで似たようなことが。でも、それは無惨にも失敗しました。
これは、日本の次期政権にも言えることで、笑える話ではありません。
そうなんですよね。
「コンクリートから人へ」という意味不明なスローガンで大失敗した政権がありましたが、それから何処までその方針改善されたかというと、建設国債を渋っている実情がありまして。それでも石破政権は少し積むようですよ?防災を前面に出してきましたからね。
日本政府は、防衛増税ではなく、防衛国債で防衛費増を賄うべきでしょうし(建設国債でもOK)、国土強靭化&防災のために、ジャブジャブ建設国債を発行すべきですね。
国債を発行して、日本を元気に!😀 石破政権の”次”に期待!!
漸く重い腰を上げたように防衛施設に関しては建設国債で作って良いと思うのです。
ただし防衛国債を作るのには、少々注意が必要かも知れませんね。結局、一番お金が必要なのは人件費ですから、そこをどうするかと言うことはやっぱり真剣に考えて、もうちょっと防衛費に割り振るべきでしょう。
あと、本文とは違う筋の話になりますが、インフラの老朽化対策のためにはやっぱり建設国債でなんとかしなければ。