酷暑がすぐそこまで来ているのだが、EVの話で少し不穏なネタを拾ったので、紹介していきたい。
ホンダ、EV戦略車種の大型SUV開発中止 米国需要減速でHVに転換
2025年7月5日 17:00
ホンダが電気自動車(EV)の戦略車種の1つだった大型SUV(多目的スポーツ車)の開発を中止した。主力市場の米国でEV需要が減速すると判断したためだ。EVへの投資を抑え、収益が見込めるハイブリッド車(HV)の増産に振り向ける。
日本経済新聞より
日産が業績を大きく落としている中、ホンダも苦戦中である。そして、EV戦略の転換を図るというニュースが。
寒さだけじゃなくて暑さにも弱い
EVは酷暑に弱いのか
ホンダの戦略見直しの話は、結局のところ世界的にEVのブームが落ち着いてきて、「アメリカでも、もう売れないんじゃないかな」という判断になったということで。EV戦略の見直しというのは既に各国で始まっているので、これはそれほど驚くようなネタではなく、「そりゃそうだよね」と。
で、各国でなぜEVの人気が落ちてきたか?という話なんだけれど、単純にEVの弱点がいろいろ知られるようになったからということなんだろう。リピーターが減っていると言い換えても良い。
で、EV関連で僕自身が認識していなかった弱点があることを知ったので、記事にした次第。それが「暑さにも弱い」という話だ。「不穏なネタ」というのはホンダの戦略転換の話ではなく、夏季の問題。「知っていた」という人も多いかもしれないけれど。
EVにとって猛暑は大きなリスク?? 今後EV火事が増えると予想されるワケ
2023年7月26日 / コラム
そしてEVには新たなリスクが生じつつある。それは暑さだ。このところの真夏の暑さは尋常ではない。
日向にクルマを停めておくと、30分で車内は50℃を超える。ダッシュボードは70℃前後にまでなり、黒いボディのクルマであればボディの表面温度は80℃を超えることもある。
ベストカーより
これは2023年の記事なんだけれども、「猛暑だと大変だよ」というような、あまり説得力のない記事である。
このところの猛暑は、それら充電器の寿命や信頼性を低下させる恐れもある。事実、日向に設置された急速充電器が日差しによる温度上昇で熱暴走し、安全装置が働いて稼働を停止するという事態も起こっている。
ベストカー「EVにとって猛暑は大きなリスク??」より
フワッとしすぎて説得力がないのはベストカーらしいといえばらしい。ただ、この話は事実無根だよと切って捨てるにはちょっと問題なのだ。
良く知られる事実としては、夏季、EVを走らせると走行距離が短くなると言われている。
これは、エアコンなどを使うことで消費電力が増え、その結果、走行に回せる電力が低下するという話なのだが、この話はデータを出すまでもなく理解しやすい話ではある。
電気自動車の航続距離に対する気候の影響
05/16/2023
電気自動車 (EV) は、政府の二酸化炭素排出量削減計画において重要な要素です。より広範囲の気候条件で導入される車両が増えるにつれ、さまざまな気候がEVに及ぼす影響についても学んでいます。このブログでは気候がEVのパフォーマンスに与える影響、また、引き起こす可能性のある問題の対し、導入されているいくつかの解決策について見ていきます。
~~略~~
Consumer Reports (CR)は複数の短距離走行 (2019年) と高速道路での走行 (2023年) を調査しました。 短距離走行テストでは、キャビンを繰り返し加熱したため、航続距離が50%低下したことがわかりました。 高速道路での走行では周囲温度16°Fで航続距離が30~35%減少しました。95°Fの暑い日にテストしたところ、エアコンなしでは4%低下し、エアコン使用時には航続距離が17%低下しました。
Power.comより
周囲温度華氏 95°F(摂氏35℃)で、エアコン使用時に航続距離が17%低下するというデータが出ているので、エアコンを使えば確実に航続距離は短くなる。
ただ、問題は「エアコンなしでは4%低下」の方だ。
なお、周囲温度が華氏 16°F(摂氏ー9℃)では3割程度の航続距離低下が見られる。低温のほうが影響が大きいことは良く知られているよね。
エアコンを使わなくても航続距離は低下するのか
ただ、僕が気になったのは高温時のパフォーマンス低下である。これは恐らくモーターの問題だと思われる。温度上昇によってモーターコイル内の抵抗が上がってしまうため、余計に電力消費が大きくなる。理科的な知識ではあるが、他にも永久磁石の磁力低下や制御装置のエラーなどが考えられる。
当然、各社高温警告は出すようなシステムにはなっている。外気温が40℃を超えるような状況だと、実際に出力制限が出てしまう。これが、高速道路での長時間高負荷運転だとか、山道のドライブ、炎天下で駐車していた場合にも影響が出るようで、渋滞に巻き込まれると最悪である。
そういったパフォーマンス低下に比例して必要電力が増えるということに。
EVの性能を引き出す「熱マネジメント」の重要性とは?
2024年3月18日
従来のエンジン車では、ガソリンを燃焼する際に発生する熱を利用して車内空間やエンジンオイルなどを暖めることができます。一方、EVは熱効率が非常に高いため、バッテリやモータを含む内部部品を熱源として利用することができません。そのため、EVでは快適な車内温度を維持するために、エアコンによる冷房だけでなく、適宜ヒーターなどで暖房を行う必要があり、これによって走行に必要なバッテリの電力を消費してしまいます。また、EVに用いられるリチウムイオンバッテリの性能を最大限引き出し、航続距離を長くするためには、外気温に応じてバッテリを適切な温度に冷却または加熱して調整する必要があります。バッテリが高温になり過ぎると、バッテリの寿命が短くなるだけでなく、充電時間が長くなったり、航続距離が短くなったりと性能の低下に直結します。以上のように、EVにおいてバッテリを節約しながら快適な運転を実現するためには、エンジン車以上に車両の「熱」をうまくコントロールする必要があるのです。
TDKのサイトより
実際、TDKのサイトで紹介されるように、バッテリーの熱マネージメントはかなり重要。温度が低かったり高かったりすると充電速度の低下という問題がでてきてしまうということのようだ。
そう、モーターも高温に問題を抱えているのだが、バッテリーの方もちょっと問題がある。バッテリー温度が50℃を超えてしまうと、急速充電の出力低下が起きる。つまり、外気温が上がって充電時に発生する熱の影響が出ると、充電が遅くなる問題が出てくる。
暑さによる影響
この辺り、Money1様の所で取り扱っていた。

ここで引用している記事がこちら。
How Hot Summer Weather Affects EV Range
June 23, 2025
電気自動車は、気温が90°F(32°C)の暑い天候でも航続距離がわずか5%しか低下しません。これは主に、乗員の空調とバッテリーの消費エネルギーによるものです。ほとんどのドライバーはそれに気づきません。100°F(38°C)を超える極端な気温では、より大きな影響が出る可能性があります。約3万台の車両を対象とした実走行データによると、電気自動車は平均で約17~18%の航続距離低下が見られます。
recurrentautoより
なるほど、結構、航続距離低下するんだね。
外気温が高くなって渋滞するような環境、日本だとお盆の高速道路とか、地獄を見そうだ。Money1さんのところでは、山東省で外気温40度を超える事態になっていて、充電問題で困っているという事例が紹介されている。
とまあそういうわけで、そういうネタもあるよねという紹介をしてみた。
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