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フィリピン 海自護衛艦の調達を模索

国際ニュース
この記事は約7分で読めます。

意外に的確な分析をしているね。支那はこれだから侮り難い。

日本がフィリピンに護衛艦輸出、「パンドラの箱」を開けることになるかも―中国専門家

2025年7月9日(水) 5時0分

2025年7月8日、環球時報は、日本がフィリピンに中古の護衛艦を輸出するとの情報について「パンドラの箱が開く可能性がある」とする評論記事を掲載した。著者は中国国際問題研究院アジア太平洋研究所の項昊宇(シアン・ハオユー)特任研究員。

レコードチャイナより

ただ、パンドラの箱といえば、中に希望が入っているのはお約束である。

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準同盟国を増やそう

フィリピンの防衛力強化

さて、この話、フィリピン海軍があぶくま型護衛艦を欲しがっているという内容で、それが気に入らないのが支那の冒頭の分析だ。

フィリピン 海自護衛艦の調達可能性探るため日本に専門家派遣

2025年7月9日 10時18分

フィリピン海軍は退役が予定されている海上自衛隊の護衛艦の調達の可能性を探るためとして、来月、日本に専門家チームを派遣すると発表しました。フィリピン側には南シナ海の領有権問題で争う中国を念頭に日本との連携を強化するねらいがあるとみられます。

NHKニュースより
「おおよど」(ロービジ塗装)

あぶくま型護衛艦は、1989年にネームシップが就役しており、基準排水量は2,000tと比較的小さな護衛艦である。昭和61・62・平成元年度に2隻ずつ、計6隻が建造された実績があり、フィリピン側は6隻全てを取得の意向のようだ。

艦船の輸出は初

支那は色々言及しているが、なかなか面白いことを言っている。

項氏は、日本とフィリピン両政府が海上自衛隊の中古護衛艦をフィリピンに輸出することで合意したと6日に日本メディアが報じたことを紹介。実際に引き渡されれば戦後の日本において初めての大型攻撃的兵器の輸出事例となり、日本が「軍事的な聖域」を打ち破る大きな一歩になるとした。また、日本による対外戦略調整の三つの方向性も示していると伝え、分析内容を紹介した。

レコードチャイナ「日本がフィリピンに護衛艦輸出」より

この3つの方向性なのだが。

  1. 自衛隊や防衛装備の海外展開を加速
  2. 地域の安全保障における影響力を拡大
  3. 中古装備の提供を足掛かりにユーザーの慣例をつくり、補給・維持体制を構築

恣意的な部分を排除するとこんな感じのことを言っている。概ね正しい分析だと思う。

日本からフィリピンにはこれまでに巡視船12隻が供与されたほか、「防衛装備移転三原則」に基づき警戒管制レーダーが輸出されていますが、護衛艦のような殺傷能力の高い装備品の移転は行われていません。

日本からの護衛艦の調達は南シナ海の領有権問題で争う中国を念頭に日本との連携を強化するねらいがあるとみられます。

NHKニュース「フィリピン 海自護衛艦の調達可能性探る~」より

NHKの分析はこうなんだけど、NHKの分析よりは余程まともな分析である。

護衛艦は殺傷能力が高いのか

そもそも、「殺傷能力の高い装備品」というカテゴリーがNHKの頭の悪いところで、意図的に書いているのだろうが、このあたりの表現は支那の意図とも一致する。

次に、攻撃的姿勢による地政学的利益の追求を挙げ、日本が「台湾有事は日本有事」といった「周辺脅威」を言い立てることで、国内の安全保障上の不安をあおり、対外的には「現状の一方的な変更は許さない」という常とう句を使って南シナ海問題に介入し、地域の安全保障における影響力を拡大しようとしているとし、フィリピンへの護衛艦輸出もその一環であるとの見方を示した。

レコードチャイナ「日本がフィリピンに護衛艦輸出」より

が、まだレコードチャイナの記載のほうがマシなんだよなぁ。

支那としても「攻撃的姿勢による地政学的利益の追求」などという表現を使っているが、「殺傷能力の高い装備品」のような頭の悪さはない。

そもそも武器・兵器の類は殺傷能力の高さなどという基準で図るのはちょっとイカレている。何のための武器・兵器なのかという話である。

例えば、先に輸出したレーダーは良くて、護衛艦は駄目だというのなら、支那の海警が武器を搭載して日本近海をウロウロしているアレはどうして「駄目」だとは思わないのか。

建前を信じるのであれば、日本側は攻撃の意図はない専守防衛を貫いているのだから、武器をわざわざ持ち出す必要がない。にも関わらず、対人兵器ではなく確実に相手の艦艇を破壊できる兵器を搭載した海警局の船に対して何も感じないというのがもうおかしいのである。

なお、あぶくま型には62口径76mm単装速射砲、20mm機関砲、ハープーンSSM、12.7mm重機関銃等を装備可能な機関銃座が搭載されるが、弾薬の類を輸出する予定は日本にはない。そして、これらの装備は対潜水艦を想定したものなんだよね。え?殺傷能力?そりゃ、潜水艦を攻撃したら相手は高い確率で生き残れないだろう。そういう意味では正しいのだろうけれど、対潜水艦装備の増強ってそんなに問題なの?

武器輸出三原則による制限

さて、このような話が進んだ場合、ネックになるのが武器輸出三原則による縛りである。そんなものは法律でもなんでもないので、律儀に守る必要性すらないのだが、航空万能論さまのところは改正なしの輸出は賛同できないとしている。

フィリピン海軍司令官、早ければ2027年にあぶくま型護衛艦を受け取れる
読売新聞は6日「日本とフィリピンがあぶくま型護衛艦の輸出について協議している」と報じ、Naval Newsの取材に応じたフィリピン海軍司令官も「まだあぶくま型護衛艦とTC-90の移転に関する協議は初期段階だが、早ければ2027年に艦艇を受け...

確かにルールを見直す必要性はあるのだろうが、そもそも「原則」はルールとして定められたものではない。「方針転換します」と閣議決定すればおしまいだ。

この話は、日本のシーレーン防衛に資するものであり、FOIPの観点からも非常に有用な話となる。

フィリピンに護衛艦を輸出へ、中国への抑止力強化に初の事例…中古の「あぶくま型」全6隻

2025/07/06 05:00

日本とフィリピン両政府が、海上自衛隊の中古護衛艦を輸出する方向で一致していたことが、わかった。中古護衛艦の輸出が実現すれば、初の事例になるとみられる。護衛艦の輸出を通じて比軍との相互運用性の向上を図り、一方的な海洋進出を進める中国への抑止力・対処力を共同で強化していく狙いがある。

~~略~~

英国際戦略研究所の「ミリタリー・バランス2025年版」によると、中国軍は駆逐艦などの水上戦闘艦を102隻保有しているのに対し、比軍はフリゲート艦2隻にとどまる。

読売新聞より

フィリピン海軍の防衛力は極めて貧弱であるため、フィリピン海軍の装備を充実させて共同で訓練をするような体制を構築することは、国益に資する。

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長いシーレーンのうち、その一部をフィリピンが担当してくれるようになれば、日本としても人手の問題を緩和できるのだ。

台湾やフィリピンと共同してシーレーンを守ることは、彼らの国防にも益のあることなので、こちらとしても大歓迎である。

防衛装備移転3原則の運用指針では、輸出できる装備品を救難、輸送、警戒、監視、掃海の5類型に限定しており、攻撃能力の高い護衛艦をそのまま輸出することはできない。

~~略~~

日比は安全保障協力を深化させ、「準同盟国」関係の構築を進めており、4月の首脳会談では、自衛隊と比軍が食料や燃料などを融通し合うことを可能とする物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向け、協議入りすることで合意した。

読売新聞「フィリピンに護衛艦を輸出へ~」より

そもそもACSA締結を目指しているのだから、そこに護衛艦が増えることに何の問題もない。

オーストラリアへの護衛艦輸出

そもそもである、オーストラリアに新型フリゲート艦を売りつけようというタイミングで、「武器輸出三原則がー」もないものだ。

どのみち武器輸出三原則の見直しは必須だし、フィリピンとの物品役務相互提供協定(ACSA)の締結を目指して準同盟国を目指すのであれば、武器輸出先は同盟国または準同盟国に限るという話にすればいいだけである。

オーストラリアとはすでに準同盟国なので、それで解決だ。

真っ当な協議ができて防衛協力できる国家となら、是非ともこういった話を進めていって欲しい。そうすれば、防衛装備品の価格を下げられ、質を更に高めることができる。

日本人は良くも悪くも器用なので、使いにくい武器でも使いこなしてしまうが、世界の軍隊は色々な人々が兵士として参加するのだから、より直感的に使いやすく壊れにくいものが求められる。そういった世界に足を踏み入れていくべきなのだ。

市販自動車の世界では三菱自動車製の車は壊れやすいという評価なのだが、それは三菱重工だって体質的に変わりはしない。世界で売れるためにはトヨタ自動車のような泥臭い努力が必要なのである。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    あぶくま型、海自のワークホースの典型ですから、グレイウォーターネイビーには最適かもです。
    ※フィリピンは「限りなくブルーウォーターに近いグレー」だと思ってます、日米中国というスーパーブルーウォーターネイビーが居るので(日をここに入れるのは議論必要ですが)。

    武器輸出は「諸外国装備を載せて『改装』すれば問題なし!」だそうで。
    GCAPもあるし、オージーへの改最上級、ちがう、もがみ級の話もあるし、旧態依然の思考しかない輩こそとっとと「退役」してほしいものです。

    ※その意味で、憲法含む法律は、常に現状にあわせて改正していかなければならない。改憲反対論者には、十七条憲法でも御成敗式目でも守ってろと小一時間。

    ※最上級重巡、一番好きです。15センチ三連装が一番似合う、20センチ連装は(威力はともかく)ロマンが無い。15センチ三連装&後部航空甲板という架空仕様が一番好きです(マテ

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      そうですね、大きさからして近海向けの性能というのがあぶくま型で、使い勝手的にはかなり優秀なんだとか。
      法律改正なども必要ですが、一番でかいのは憲法ですよね。なにか、トランプ氏をネタに、「憲法改正を選挙の軸とする」とかやってくれるキモが座った首相いないですかねぇ。
      「責任は俺がとる」とかいって、トランプ氏との交渉材料に憲法改正を持ち出して、「アメリカを一人にはしない」「アジアの防衛は日本が軸となる」とか言えば、トランプ氏も「おー、グレイト!」とか言ってくれると思うんだけれども。