まあ、そうなるよね。
豪州最大のグリーン水素計画中止、丸紅や関電も撤退 脱炭素に逆風
2025年7月3日 4:00 (2025年7月3日 9:50更新)
再生可能エネルギーで水素をつくるオーストラリア最大の「グリーン水素」プロジェクトが頓挫した。生産コストが高く、2024年に現地の州議会選挙で誕生した保守系の州政府が追加出資を取りやめたことが決定打となった。
日本経済新聞より
グリーン水素の話はこのブログでしたんだっけ?
脱炭素とは一体
無駄な開発
検索をかけてみたが、触れていない感じなので軽く説明しながら言及して行く。
ここにもちらっと書いたけれども、説明はしていなかったようなので、そもそもグリーン水素って何ですか?という話からだ。
グリーン水素とは、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力など)由来の電力を用いて水を電気分解して製造される水素のこと。
……もう、再生エネルギー発電の時点でダメだろう。そもそも一旦水素に変えて、再度、水素からエネルギーに変換するというのは、どう考えても無駄が発生してしまう。

資源エネルギー庁でも、軽く説明がなされているんだけど、なんというかバカバカしい話。

グレーだろうがブルーだろうがグリーンだろうが、何の意味もない。そもそも石炭のほうが保存性も良いのだから、直接燃やして発電しろよ。それ以上に効率が悪いのが「グリーン水素」である。
そうするとこれ、「何のためにやるのか」という話になる。
日本も撤退
結局、「私たちは環境に興味がありますよ」などというスタンスのためにやったのだが、「金の無駄じゃないの」という批判には耐えられないわけで。
日本企業も参画していたが、関西電力や岩谷産業に続き丸紅も撤退。再エネ大国への転換を掲げる豪州でも計画が暗礁に乗り上げたことは、世界の脱炭素へのさらなる逆風となる。
日本経済新聞「豪州最大のグリーン水素計画中止」より
日本企業も撤退したらしい。
豊富な資源と地理的好条件を生かし水素輸出国を目指すオーストラリア
2023年7月27日
オーストラリアは「豊富な資源」と「市場となるアジアとの近接性」を生かして、国内で水素を製造し海外へ輸出する水素輸出国を目指している。日本との間でも、国境を越えた水素サプライチェーン構築を目指す取り組みが進む。オーストラリア国内では、水素の製造、貯蔵、消費など様々な段階での研究や実証が行われている。同国連邦政府によると、2022年にプロジェクト件数は倍増、世界の公表済みのクリーン水素(注1)にかかるプロジェクトのうち、約40%(注2)がオーストラリアにあるが、多くが小規模で実証段階にある。今後、プロジェクトをいかに商業化していくかが課題である。
JETROより
商業化は最初から課題を抱えていたのだけれど、安価な水素ができそうだからというところからスタートしていた。
ブルー水素に関しては、2022年5月の連邦議会総選挙による政権交代で、グリーン水素を重視する労働党新政権により、ブルー水素に欠かせないCO2回収・貯留(CCS)の助成金が廃止されるなどの方針転換があった。現地報道によると、連邦政府は、助成金ではなく、規制緩和や制度整備によるCCS支援を進めていく方針を新たに示している。
JETRO「豊富な資源と地理的好条件を生かし~」より
しかし、助成金は廃止されて、これ以上研究を継続していくことも難しくなり、各企業は撤退。
そもそも「安い水素」が出来上がったとして、これを燃料として輸送するのには、様々な課題がある。
水素は液体保管するには高圧を求められ、低温になってしまうので金属に対して条件が悪い。さらに水素そのものの分子が小さいために、さまざまな容器から容易に漏れる。
コストに目を瞑った政治案件
尤も、グリーン水素の研究自体は止めないようだ。オーストラリアとしても商業化に断念という話はあっても、研究は止めないようだ。
だけど、これスタート時点からおかしいのである。
例えば資源産出国のオーストラリアで、石炭を産出し、これを販売すると「政治的なイメージが悪い」し、「競争力に欠ける」と、だから、水素に変換して輸送しようという発想なんだけど、石炭から水素を取り出すと、概算のエネルギー効率は最大40%。ところが、石炭をそのまま燃焼させれば最新の火力発電所で使えばエネルギー効率は45%程度まで高められる。
ここから水素の圧縮・液化・貯蔵・輸送という工程を経なければならないので、実際には更にロスが発生する。水素の貯蔵ってのはかなり低温維持の必要があるうえに、タンクの低温脆化や水素脆性によるリスクを考えると初期費用も継続運用費用も必要となる。
そして、輸出先の国でも同様の問題を抱えるため、少なくとも水素の姿で保存するというのは現実的ではない。もちろん、燃焼効率も悪いので、最終的な利用効率は2割以下と見積もられる。1個もエコではないのだ。
支那も乗り気だったが
なお、これに興味を抱いていたのが支那だったが……。
グリーン水素の普及を通じ、カーボンニュートラル実現に注力(中国)
2025年6月24日
中国は世界最大の水素の生産国であり、需要国でもある。中国政府は、2022年3月に「水素エネルギー産業発展中長期規画(2021~2035年)(中国語)」を発表し、水素エネルギーをカーボンニュートラル実現の重要手段として位置付けた(2022年3月29日付ビジネス短信参照)。中国では2030年までにカーボンピークアウト、2060年までに実質的なカーボンニュートラルを実現することを目指しており、環境にやさしいエネルギー源として水素への注目が集まる。
JETROより
一周回って、このタイミングでもなお脱炭素に拘ることが出来るのは、凄いことかも知れない。
一方で、中国は内陸部を中心に再エネ(風力、太陽光など)が豊富だ。2024年8月末までに再エネ発電設備容量は17億キロワット(kW)に達し、世界最大規模を誇る。
JETRO「グリーン水素の普及を通じ~」より
そして、今や支那は世界最大の再エネ発電国家になった。
なったんだけどね……。
中国で記録的な猛暑続く、電力需要が過去最高に…「計画停電のリスクある」
2025年7月17日(木)17時40分
中国各地で記録的な猛暑が続く中、電力需要が過去最高の15億キロワットを超えたと中国国家エネルギー局が16日、明らかにした。
~~略~~
エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのエネルギー・気候変動専門家、チム・リー氏は「電力システムはこれまでのところ持ちこたえているが、夏が本格化するにつれて本当の試練が訪れるだろう。依然として計画停電のリスクがある」と述べた。
Newsweekより
今年の夏はキビシイらしいよ。
太陽光は捨てきれない
で、オーストラリアの話に戻っていくんだけど、結局、広い国土で真ん中に砂漠もある。上手いこと利用したいという要望があるのは分かるんだ。
でもねぇ。
オーストラリアで太陽光発電し、シンガポールに送電するプロジェクトが進行中
2020年10月23日(金)16時20分
豪州に建設される世界最大の太陽光発電所で発電した電力を世界最大のバッテリーに貯蔵し、世界最長の海底電力ケーブルを通じて東南アジア地域にこれを供給するという壮大なプロジェクト「オーストラリア-アセアンパワーリンク(AAPL)」が、着々と進行している。
Newsweekより
こういうイカレタプロジェクトを幾つもやろうとしていたんだよね。

いやもう、無理だろこれ。
GW級太陽光からシンガポールに送電、豪政府が承認
2024/08/22 20:34
オーストラリアの再生可能エネルギー事業者であるSunCable(サンケーブル)は、オーストラリアとシンガポールを海底ケーブルで接続して電力を供給する「Australia-Asia Power Link(AAPowerLink=オーストラリア-アジア・パワー・リンク)」プロジェクトに取り組んでいる。8月21日、オーストラリア部分について連邦政府から環境保護および生物多様性保全法(EPBC)に基づく承認を取得したと発表した。
メガソーラービジネスPLUSより
……承認しちゃったよ。
まあ、この話も恐らくは支援者が撤退していくような話なんだろうね。そのうち、「撤退しました」とかいうニュースが出てくる可能性は高い。
脱炭素は、トランプ氏が大統領になってからこっち本当に雪崩をうってダメになってきている。これはトランプ氏が凄いとかそういう話ではなく、「みんながダメと思っていた」けれど、建前上、「あれはダメだよね」と言い出せなかった感じの話。
経済合理性のない話は、政策として推進してはダメだよ。研究に留めておけば良かったのに。
コメント
個人的試算ではワーストケース、あと75年で化石燃料とウランが枯渇します。(楽観ケースでは300年)
その時にはエネルギー源は、核融合か、人類需要の4000倍以上はあるソーラーしか残されていませんが、
何れにせよ、人類文明は電気エネルギーだけでは維持出来ないので、電気エネルギーから作る 「燃料、有機物」である e-Fuel が必要で
最も単純なe-Fuelが水素、次がアンモニア、 ここまで出来ればCO2使って他の有機物も、希望が出ます。
しかし残された時間はワースト75年、今上手く行かないのを笑ったり足踏みしてる場合じゃないと個人的には思うのですが、、、
尚、植物光合成・バイオマスは非常に低効率で、養える地球人口は多くて20~30億ぐらい。
上の楽観ケース、300年経てば世界人口は少子化でそれくらいになるので、運良く保って、
かつ残り燃料奪い合いの世界戦争にならなければ、
対策せず人類生き残るワンチャンあるかもですね(苦笑)
あ ワースト75年てのは聞いたことないと思いますが、これは資源毎の各種悲観予測を集め、更に
「石油無くなれば他の消費加速」みたいな計算暗算の寄せ集めで、ホントは150~200年ぐらいと思ってます。
しかし、巨大インフラ、政治の備えは、人類文明まで掛かった事象では、ワースト想定の準備して然るべきと考えた 残る時間が「75年」でした。
おっと、高速増殖炉or進行波炉の商用運転は無理。て仮定も入ってます^_^;