毎日新聞の引用をするのは、気が引けるんだが。
「極端な思想の公務員、洗い出し辞めさせる」 参政・神谷代表が発言
2025/7/17 20:45(最終更新 7/17 22:20)
参政党の神谷宗幣代表が14日、松山市であった参院選の街頭演説で、公務員を対象に「極端な思想の人たちは辞めてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法です」と述べた。
毎日新聞より
極端な思想の政治家に先ず辞めてもらって良いですか?
内心の自由は何処へ?
参政党はコレだから
選挙戦において、極端な発言をするケースはままあると思っている。
だけど、ちょっと不味いのでは?
神谷氏の発言の該当部分は以下の通り。
<自民党がもうアメリカの民主党みたいになっているんですよ。だから全然自民党がトランプ政権とうまくいかないでしょ。関税交渉もいかないでしょ。それは官僚ですよ。官僚、公務員。そういった極左の考え方を持った人たちが浸透工作で社会の中枢にがっぷり入っていると思うんですよ、ね。これをね、洗い出して、ね、極端な思想の人たちは辞めてもらわないといけないと思います、私は。これをね、洗い出すのがスパイ防止法です>
毎日新聞「極端な思想の公務員、洗い出し辞めさせる」より
左派勢力が官僚の中に入り込んでいるという考え方は、わかる。実際に前川氏のような実例もあるわけで。
共通テスト記述式白紙の戦犯・萩生田文科相 「教育勅語を本気で復活させかねない人物」と前川喜平氏
2019/12/17/ 13:19
~~略~~
「萩生田さんに大臣の資格はない。一人ひとりの子を大切にするというより、国のために役に立つ人間を作るという考えで、実に権威主義的です。教育勅語を本気で復活させかねない人物であり、非常に危険だと思います。『身の丈』発言は憲法と教育基本法に真っ向から反する。経済格差に甘んじろと言わんばかりの発言で、教育の機会均等という最も大事な理念すら理解していません」
AERAのサイトより
2017年に職を追われて其の後、左派活動に邁進した前川氏はAERAにこんなコメントを寄せている。官僚をクビになった切っ掛けは、公金を使って出会い系バーに出入りしていたことがバレたからであり、「貧困調査だ」と言って憚らなかったのは記憶に新しい。

流石にこんな人物ばかりだとは思いたくないが、後に政治家に転身した方の多くは、なかなかクセのある人物ばかりである。また、自治労、日教組、官公労などの組織を見るにつけ、左派エリートが官僚になっているのでは?と疑って(これらの組織幹部には官僚を退任した方も散見される)しまう。つまり、神谷氏の発言には真実を含む可能性はある。
憲法19条に抵触
しかし、「スパイ防止法」は彼が主張するような「こんな人々を洗い出す法律」ではない。断じて違う。
憲法19条は、思想や信条の自由を保障している。また、思想調査については憲法13条に基づくプライバシー権に触れる恐れがある。
毎日新聞「極端な思想の公務員、洗い出し辞めさせる」より
左派お得意の憲法19条や憲法13条に抵触する可能性があるのだ。
もちろん、憲法13条には左翼に不都合な記述もある。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
e-Gov「日本国憲法」より
そう、国民の権利の限界についてだ。「公共の福祉に反しない限り」という但し書きがつけられており、無制限に権利が認められるわけではないのだ。そして、スパイ防止法はおそらくこの「公共の福祉」の上に成り立つ法律となるはずである。
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
e-Gov「日本国憲法」より
そして、思想及び良心の自由は、制限はない。
つまり、考えるだけであればどんなことを考えるのも自由。それが犯罪的な内容であろうと、実行(計画・準備を含む)に移さない限りは罪に問われないし、職を追われることもないのである。
質問状を送る毎日新聞
で、これ幸いと毎日新聞は問い合わせをしたようだ。
思想把握や選別の必要性に言及したと受け取られかねない内容で、毎日新聞は神谷氏と党に質問状を送った。
党事務局は17日に回答を寄せ、「特定の思想を理由に公務員を辞めさせるようなことは憲法上許されるべきでない」との見解を示した。「思想信条そのものを理由に『辞めさせる』という趣旨ではない」としつつ、法令に反する行為があった場合に「相応の措置が必要であるという一般論を述べた」と答えた。
毎日新聞「極端な思想の公務員、洗い出し辞めさせる」より
ええと、回答のうち「思想信条そのものを理由に『辞めさせる』という趣旨ではない」と「法令に反する行為があった場合に「相応の措置が必要であるという一般論を述べた」」の部分は相反する内容では?
よくこれで納得したな、毎日新聞は。
セキュリティ・クリアランス関連法
そもそも、スパイ防止法というかなり強力な法律は、運用次第ではかなり危険なことになるということは、日本人は身をもって知っているはずだ。
中国裁判官、具体的な説明なく「スパイ活動行った」…アステラス製薬社員に懲役3年6月の実刑判決
2025/07/16 21:59
2023年に中国で拘束され、スパイ罪で起訴されたアステラス製薬社員の60歳代の日本人男性に対し、北京市第2中級人民法院(地裁)は16日、懲役3年6月の実刑判決を言い渡した。傍聴した金杉憲治・駐中国大使が閉廷後、明らかにした。判決では詳しい罪状の説明はなかったという。
読売新聞より
このニュースは別の記事で引用したし、拘束された際には記事にもしているのだが、相当深刻な問題である。支那で、理由を明かされずにスパイ罪で拘束されたのはアステラス製薬の役員男性で、当時、アステラス製薬は相当支那に入れ込んでいて、高度な医薬の知識を流出させていた。
拘束された人物はその中心的役割を果たしていたと言われ、つまり、立場的には親支那派の取りまとめのような存在であったという。
関係者によると、男性は中国での勤務歴が長く、現地の日系企業で作る経済団体「中国日本商会」の副会長を務めていた。中国勤務の任期を終えて帰国直前の23年3月、北京でスパイ摘発機関の国家安全当局に拘束された。24年8月に起訴され、同11月に同法院で初公判が行われた。
読売新聞「中国裁判官、具体的な説明なく「スパイ活動行った」」より
読売新聞にはかなりマイルドな表現がなされているけれどね。
スパイ防止法導入とは、まさにこういう事なのである。
日本の場合は過去の反省を活かして、セキュリティ・クリアランス制度を今年5月に導入するに至っている。
2025年5月施行!セキュリティ・クリアランス制度の概要を重要経済安保情報保護活用法に基づき解説
2025年06月05日 17:00
重要経済安保情報保護活用法は、経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度を創設する法律で、2025年5月16日に施行されました。セキュリティ・クリアランス制度は、国家における情報保全制度の1つであり、情報指定のルール、情報の管理・提供ルール、罰則という3つのパートで構成されています。
行政機関によって指定された「重要経済安保情報」を取得し、活用する可能性のある民間事業者は、制度を十分に理解し、「適合事業者」としての要件を満たす必要があります。本記事では、重要経済安保情報保護活用法に基づくセキュリティ・クリアランス制度の概要と企業に求められる対応を解説します。
businesslawyersより
詳細は省くが、要は機密情報にアクセスする者のバックグラウンド調査を含めた思想チェックをやるという話。尤も、内心を探られるという話ではなく、過去におかしな行動をやっていないかというチェックになるので、内心の自由は担保される設計にはなっている。
公務員には別途、法律上の縛りがある
こういった法整備は、民間業者が機密にアクセスする前に事前に行われるものなので、政治家や公務員は対象にはなっていない。
だが、公務員がザルというわけではなくて、実際には法律的な縛りがある。
公務員と秘密情報の保護-公務員が秘密情報を漏洩したり悪用してしまった場合について解説
2025/04/15
公務員は国や地方公共団体の国民・住民の個人情報を扱ったり、重要な政策上の情報を扱っています。これらの情報は、プライバシーに係る情報や、政策の円滑な遂行や公平性のために秘密にするべき情報があります。こうした情報を悪用して不正な利益を得たり、漏洩すれば厳しい制裁を受けます
koumuin-bengosi.comより
ここでは、公務員の情報の保護について説明します。
詳しい解説はしないが、情報漏洩や情報の悪用を行って不正な利益を得る行為は厳しく罰せられることになっている。
とはいえ、罰則規定に関しては国家機密の漏洩という観点から見ると、相当甘いわけだが、そもそも公務員はそんな重要機密にアクセスできる権限があるかといえば、一握りの人間しかアクセスできないようになっているのだから、そこまで深刻に捉える必要はない。
……が、国家反逆罪に相当するような重い刑罰は想定されていないので、まだ甘いとは思うよ。思うが、規制はなされているし、この他にも外為法などの縛りもあって、スパイ防止法に近しい法律が皆無というわけではないんだ。
むしろ問題なのは、政治家にそういった縛りがないことで、過去にも鳩山由紀夫や菅直人のような人物に機密にアクセス可能な状態にあったかと思うと、そこにも網を掛ける必要はあるのだと思っている。
おっと話は逸れたが、要は参政党の代表はこういったバックグラウンドをきちんと把握したうえで発言したようには思えないということが言いたいのである。
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