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日本を追う韓国、対米関税緩和交渉の順番待ち

大韓民国ニュース
この記事は約10分で読めます。

やったー、韓国クン、漸く出番が回ってきたよ。

EU・中国に押された韓国…関税賦課前日のみ、米国と談判

入力 2025.07.27. 午後2時46分 修正 2025.07.27.午後11時15分

26日(現地時間)に米国が予告した相互関税賦課日(8月1日)がドット先に近づいてきた中、米国との交渉は物理的に迫る時間との戦いになると見込まれる。米国がしばらく欧州連合(EU)と中国など経済規模の大きい貿易相手との交渉に集中するものと見られる。

NAVERより

先日、「このまま交渉期限を迎えるんじゃないの」との危惧を紹介する記事にしたのだが、一安心?と言えるのではないか。

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起死回生の一手を用意できるのかがポイント

要望は多数

先ずはリンクを貼っておく。

交渉に出かけようとして、「急用ができた」とキャンセルを喰らったのが、先日の話。

韓国側としては、造船・半導体・電池分野での協力拡大を提案し、その見返りに自動車などの輸出品への関税緩和を求めている模様。

さらに、農産物やエネルギー市場の開放、大規模投資の実施など、欲張りセット感のある“交換条件”も提示しているという。

正直、要望を盛り込みすぎている印象は否めないけれど、強気の交渉は韓国の真骨頂でもある。日本人から見ると「強欲に過ぎる」と感じる内容でも、交渉材料として提示する前提なら悪くはないと思う。

ただ、韓国は「引き際をわきまえない交渉術」を持ち味としているだけに、期限が切られている今の状況では不安が残る。

加えて、日米交渉を引き合いに出すのは、アメリカにとって“終わった話”を蒸し返されるようなもので、下手に比較されるのはむしろ逆効果かもしれない。

日米交渉は「ディール」だった

先日、日米交渉の解説を書いたのだけれど、そもそもこの交渉は合意文書の作られない象徴的なものであった。

トランプ氏の“ディール外交”に日本がつき合わされた面もあり、ぱっと見は日本側がかなり譲歩した印象を受ける。とはいえ日本政府は、「安全保障や同盟重視の枠内で、守るべきものは守った」と自己評価している。

一応、分かっている部分を纏めてみよう。

関税回避の交換条件

アメリカが日本に対する追加関税(最大25%)の発動を見送る代わりに、日本は以下の措置を約束:

  • 農産物市場の一部開放 アメリカ産トウモロコシ、牛肉、乳製品などの輸入枠拡大。
  • エネルギー輸入の拡大 日本側が米国産LNG(液化天然ガス)や原油の中長期契約を増加させる方向。
  • 先端産業への米企業誘致・支援 特に半導体やAI分野で、日系企業と米系企業の共同開発・補助金による支援策。
  • 米国への大規模投資 トヨタ・ソニー・NTTなどの企業が、米国内での工場新設・研究施設投資を公表。トータルで80兆円の投資へ。

日本側の成果

  • 対米輸出品(自動車・機械部品・化学製品など)への追加関税回避
  • 安全保障や経済連携を絡めた包括的パッケージに成功
  • 日米同盟の信頼感を外交カードとして活用

報じられている内容がやや偏っているのと、口約束の合意なので、果たして何処まで履行される話かは不明だが、大枠としてはこんな感じではないだろうか。

アメリカ側としても、「見せ札としての大型合意」を演出しただけという側面は否めず、実質的な履行や細部の詰めはこれから——という構図にも見える。

日本の対応が韓国のお手本になるかどうかは別として、少なくとも米国にとって日本が「交渉に値する相手」として早々に取り上げられたことは間違いなかろう。

韓国がこの路線を模倣する場合、「同じ譲歩はできるのか」「同じ信頼感を築けているのか」が問われることになるだろう。

韓国は経済的な観点でアメリカに譲歩できるか

というわけで、上に紹介した韓国側の要求項目に対して、アメリカ側にどんな譲歩をして見せられるのかが、韓国の交渉の成否のポイントとなるはずなのだが。

造船・半導体・電池分野での協力拡大を提案」がどこまで有効かという点は気になる。バーターとして自動車などの輸出品への関税緩和を求めているのだが、本当にそれが許されるのか?は注目したい。

アメリカが対日交渉でも拘った部分だからね。

「トランプ関税」で対米輸出20%減の衝撃…韓国自動車産業、構造改革待ったなし

2025 年 3月 20日 (木)

トランプ米大統領が、輸入自動車に対して25%の関税を課す可能性を示唆する中、この関税措置が現実化した場合、韓国の自動車生産と輸出に致命的な打撃を与えるとの分析が国策研究機関から示された。対米輸出は最大20.5%減少するとの見通しが出ており、業界の被害を最小限に抑えるためにも、米国市場への過度な依存と輸出中心の販売構造を根本的に見直すべきだという提言が相次いでいる。

KOREA WAVEより

韓国の自動車産業は対米輸出依存度が高い。韓国の主要自動車メーカーの対米輸出台数/輸出額における割合は以下の通りだ。

  • 完成車輸出全体に占める対米シェアは約49.1%(完成車)、部品は36.5%
  • 現代自動車:対米完成車輸出比率が54.3%
  • 起亜自動車37.5%
  • 韓国GM84.4%

つまり、相当アメリカに依存した状況になっている。言ってみれば韓国側の弱味とも言える。

現代自動車、2025年第2四半期の営業利益が15.8%減(韓国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

利益も随分と減ってきているしね。

じゃあ、アメリカは自動車産業を守ってでも、造船・半導体・電池分野が欲しいか?なんだけど……、どうかなぁ。

造船は確かにアメリカとしても重視している分野ではあるが、ここは日本からも随分と支援を期待できる分野である。

半導体は台湾のTSMCとの関係で韓国はやや劣勢。韓国企業の強みも勿論あるのだけれど、それは韓国にとっての虎の子で外国に出せるものではない。そうすると、半導体分野での「協力」というのは、一体何なのか?アメリカにとって魅力に映るのかはかなり怪しい。

電池分野に関しても、テスラが随分と力を入れている分野で、わざわざ韓国企業を優遇するメリットは薄い。技術力に優れているわけでもないんだよね、この分野では。

そうすると、交渉材料としては弱いのでは?と思う。

交渉期限迫るも韓国の手札は弱いまま

というわけで、第三者的視点から見ると、どうにも不安の残る韓国の対米交渉なのだが、期限は8月1日とお尻が決まっている。31日に交渉の機会を得た韓国だが、一体どんなカードを出せるのか?と。

ホワイトハウスは、それでも「(両国間)他の合意がなされない場合(トランプ)大統領の書簡が最終決定事項になるという点はそのまま維持される」とした。 8月1日前までに韓米間の貿易交渉が妥結しなければ、トランプ大統領が去る7日に公開した、いわゆる「関税書簡」の内容通り来月1日から韓国産製品に対して25%の関税を賦課するという意味だ。

韓国政府は8月1日以前に交渉を妥結するという目標で総力を傾けるという方針だ。

NAVERより

恐らく、韓国側も手札の弱さには気づいているだろう。では、何を差し出せるのか?

韓国側は、米国内における工場建設や投資計画を拡大し、「雇用創出」の観点でアメリカに訴求する姿勢を見せてはいるが、これがどうなっているかというと、例えばこんな感じになっている。

Samsung Halts Construction of Semiconductor Factories in South Korea and the United States

29 September 2024

Recently, Samsung Electronics announced that it had suspended its P4 factory in Pyeongtaek, South Korea and the Plant 2 semiconductor factory in Taylor, USA.

~~対訳~~

サムスン、韓国と米国での半導体工場の建設を一時停止

最近、サムスン電子は、韓国・平沢のP4工場と米国・テイラーのプラント2半導体工場の建設を一時停止したと発表しました。

VENTRONより

鳴り物入りで建設をすると宣伝していた工場建設も、不思議なことに建設注しになってしまった。建設の遅延理由として、サムスン側は「需要予測の不確実性」と「米中摩擦に伴う投資判断の慎重化」を挙げているが、米国側から見れば「実現性の乏しい約束」と受け止められる可能性がある。

SK On系の工場は完成したらしいのだけれど、こちらも不調らしい。

Hyundai and SK On finalize B US battery factory [Update]
Hyundai Motor Group and SK On plan to invest roughly billion to build a new EV battery plant in...

完成したSK Onのバッテリー工場(ジョージア州)は、ヒュンダイとの合弁で約50億ドルを投資しているものの、UAW(全米自動車労組)との労働条件交渉が難航しており、フル稼働への移行に影を落としている。

つまり、実績ベースで考えると、韓国企業の現地工場を増やすというのは、期待薄だと言わざるを得ない。

では、何か他に手があるのだろうか?

<韓米関税交渉>韓国大統領室が緊急会議…「農産物も交渉に含める」
中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします

韓国としては、交渉のテーブルに農産物を乗せる案も検討したらしいけど、危険じゃないかな。記事を見る限りは随分と及び腰のようだし。そうすると、カードとして持ち出せる物は他には思いつかない。

じゃあ、あとはトップ会談くらいしかあるまい。

外交交渉の場において、最終的な決着は「誰が出てくるか」で決まることも多い。特に、トランプ氏はトップ会談を重視するスタイルであり、大統領のミョンミョンが出てくることで、局面を打開することのできる可能性はある。

まあ、ミョンミョンが交渉上手だという話は聞いたことがないんだけどね。

追記

コメント頂いた点について、補足をしておきたい。

トランプ関税の日米合意で造船業界に衝撃!今治造船が子会社化するジャパンマリンユナイテッドに政府が砕氷船の技術協力を打診

2025年7月23日 20:40

造船最大手の今治造船の檜垣幸人社長は7月23日の記者会見で、子会社化するジャパンマリンユナイテッドが日米交渉に絡んで、政府から特殊船分野の技術協力を打診されたことを明らかにした。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)

関税巡る日米交渉の“台風の目”となった造船業の日米協力はいかに!?

「世界シェアが落ち込んでいる日本の造船業には米国に投資するお金はない。ただ、個々の企業で特殊船の分野で技術供与するとは聞き及んでいます」。

国内造船最大手の今治造船の檜垣幸人社長が7月23日に東京都内で記者会見し、日米関税交渉で注目される造船協力の進捗を明らかにした。

DIAMOND Onlineより

今回の日米合意にも登場したであろう企業の1つが、日本の造船大手である今治造船である。で、「ウチに金はない」「だから、アメリカへの投資はない」と明言している。素直に、今治造船が投資をスル可能性は低いと見れば良いと思う。

実際にアメリカに出資して工場を!などという展開になっても、収益化はかなり困難である。アメリカの特許にアクセスしたり軍事技術にアクセスするという意味でも、投資できる部分は限定的であるし、外国工場建設などの実績もないため、いきなりそれに踏み切るとも思えない。

だが、そもそもアメリカ工場を作って軌道に乗せるには、多くのノウハウが必要なので、それこそ一定の成功を収めることのできたトヨタやホンダなどの自動車企業に工場経営のアドバイスを貰った方が良いだろう。寧ろそういう経験も無いのに、海外工場を建てるのは無理だ。そういう意味でも今治造船の慎重姿勢は理解ができる。

やるとしても合弁会社を作って出資するとかではないのかな?

そういう意味では、政府の後押しが期待できる韓国企業の方が有望かもしれない。だが、韓国造船業も随分と背水の陣なので、お金に余裕があるわけじゃないんだよね。

コメント

  1. 匿名 より:

    造船に関して、日本最大手の今治造船は「米国に造船所を作る余裕はなく、今は国内に注力したい」ということで政府の要請を拒否しました。ですから日本の造船投資の可能性はなくなりました。
    あと今回のトランプ関税で1番きついのは韓国でしょうね。韓国はGDPに占める製造業割合が日本の1.5倍でOECDの中で2番目に高い。にも関わらず、対米黒字は日本と同程度。そして投資ファンド設立するにしても韓国ウォンは日本円ほど信用がないので果たしてどこまで融資枠を拡大出来るか。
    コメの輸入自由化に関して、韓国は輸入数量を国ごとに決めておりその数量を変えるなら4カ国と別途交渉する必要があるとのこと。比べて、日本のミニマムアクセスは輸入枠内の比率を政府の手加減で変えることが出来るのでこれまた労力が全然違いますね。

    • 木霊 木霊 より:

      そうですね、今治造船の話は少し丁寧に言及しておくべきでした。アノ書き方だと日本の造船会社がアメリカに工場を作る余地があるように採られかねない。
      バックオーダーが埋まっている日本の造船業は、今余裕がないんですよね。どうしてもアメリカ工場を建てるには体力が必要ですし。

      では、韓国がどうすべきか?というと、コレが難しい。
      交渉カードは殆どないのに、有利な結果をもぎ取らなければならないのだけれど、そもそも依存度の高い自動車業界の商売のやり方が、安く作って高めに売るですから。原価がどうしても上がってしまうので、対応しにくい状況になっています。

      • BOOK より:

        1.今回の関税交渉の献上品としてなら
        「投資の9割を米国が取る」なんて案件に企業が自主的に金出す訳がない。経産省や赤沢が違うと口約束したところで、じゃあエビ出してよと言っても文書は作らないじゃお話にならないですよね。
         つづくけど、バックオーダーで余裕なくてもそれを拡張する経費、投資含めて政府が今治に金出し、補助すべき案件。

        2.つづき
         関税関係なく、インド太平洋で、米国造船への大型投資が韓国だけになる。これはマズい、地政学的リスクですね。
        今、特にマズいのが米国が原潜メンテでお手上げなこと。

         ・米海軍作戦部長、造船産業の能力不足で使用可能な攻撃型原潜の放棄を検討
        https://grandfleet.info/us-related/chief-of-naval-operations-considers-abandoning-usable-attack-submarines-due-to-lack-of-shipbuilding-capabilities/

        自国原潜がダメならAUKUSどうなる? この流れだと韓国の米国法人が作ることになりかねん。
        (米軍は喜んでるらしいが、目の前の困りごとに対する現実的回答なのかもしれませんが)
         日本としては、まもなく志那側に行くことがほぼ確で、かつ日本にミサイル打ち込んで来る可能性も高い国の企業がAUCUS原潜作る

        なんて事になれば悪夢でしかない

         AUKUS アメリカ、イギリス、オーストラリアの3か国による安全保障の枠組みで、オーストラリアに原子力潜水艦を配備する計画、
         (例の日本製潜水艦がカエル食いに攫われ、さらにこれを米英が攫ったやつ)

         でも米に余力ないなら、無理にでも日本が作れれば、今あるいみチャンスとピンチ
         

    • 匿名 より:

      関税交渉で忙しいはずのこの時期に韓国の外務大臣が訪日しましたね。日本はどうやってトランプと交渉したのか、そして具体的な合意の中身はどうなのかを聞きに来たのでしょう。
      日本としては韓国にこれらを教えてやる義理は全く無いんですがね。
      そして韓国のカードですがブログでご指摘の通り造船、半導体あたりなのかなと思います。これらについて「具体的な」投資を要請される可能性が高い。日本みたいに「全体でざっくり80兆円投資」みたいな生易しいものではなく、〇〇にいつまでに造船所を作る、〇〇にいつまでに半導体工場を建てる、など具体的な制約が付くと予想しています。