色々情報が出ていたが、どうやら決着したらしい。
トランプ氏 韓国と相互関税15%で合意=2週間以内に韓米首脳会談
2025.07.31 08:46
トランプ米大統領は31日午前(日本時間)、自身のSNSで韓国との関税交渉で合意したと発表した。米国が韓国にかける相互関税の税率を25%から15%に下げる代わりに、韓国は3500億ドル(約51兆5000億円)相当の対米投資や1000億ドル相当の米国産液化天然ガス(LNG)などエネルギーを購入する。
聯合ニュースより
アメリカ側も“完全勝利”にはこだわらなかったようで、最終的には譲歩の形をとったっぽいね。
- 米韓関税交渉で妥結、相互関税は25% → 15%、3500億ドルの対米投資+1000億ドルのエネルギー購入を約束。
- 最終的には米国のほぼ“言い値”を受け入れ
- 鉄鋼・アルミは除外対象で関税50%のまま、韓国の素材産業には厳しい構造が継続
3500億ドルの“上納”で回避した関税25%
関税15%は韓国にとって苦渋の選択
このブログでも韓国の関税回避の話は少し取り上げている。
こちらの記事の追記でも引用したのだけれど、一昨日は「15%では困る」と言っていた。
「日本・EU水準の15%はむしろ損害‥交渉目標上げなければ」
入力2025.07.29. 午後8時 修正2025.07.29.午後8時19分
少なくとも日本とEUだけの結果を得なければならないということから15%を強調していますが、実際に私たちの目標はこれ以上でなければなりません。
日本、EUと違って米国とFTAを締結した私たちはこれまで無関税を適用されたからです。
NAVERより
が、結局、アメリカは15%というラインを譲らず、韓国側がそれを飲む形になった。
アメリカと韓国の関税交渉が妥結 李在明大統領「産業協力がさらに強化される」
2025年7月31日 09:03
アメリカとの関税交渉を終え、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は「韓米間の産業協力がさらに強化される」などと反応を示しました。
テレ朝NEWSより
韓国大統領のミョンミョンも「頑張った」的なことを言っているので、本音では関税率15%では自動車業界が苦しくなるけれど、関税25%よりはマシという判断っぽい。
巨額投資で駆け引き
なお、韓国側が最後まで粘ったっぽいのが投資額。
> 韓国は3500億ドル(約51兆5000億円)相当の対米投資
この件は散々揉めていたみたいで、当初は1000億ドルならと韓国側が持ちかけていたらしい。
韓国「1000億ドルならなんとか」 → アメリカ「4000億ドルだ」 韓国「2000億ドルまで引き上げます……」 → アメリカ「断る」 韓国「3000億ドル」 → アメリカ「だが断る」
という経緯を経ている。
昨日の韓国メディアはこんな記事を出していたね。
一方的な譲歩を求めるアメリカ… 「こんな交渉は初」
入力2025.07.30 午後6時51分 修正 2025.07.30.午後11時56分
ドナルド・トランプ米行政府が関税交渉過程で韓国政府に事実上降伏宣言に近い要求をすることが把握された。政府がどのカードを出しても受け入れるかどうかを明らかにしないまま、ただ「最善のカード」を持って来るように圧迫している。
NAVERより
最後で最善のカードを持ってこい!4,000億ドル投資はマストだ!と、そのような交渉態度だったらしいが、最後はアメリカ側が500億ドル分だけディスカウントした格好みたいだね。
それとは別に、1,000億ドル相当の米国産液化天然ガス(LNG)などエネルギーを購入をしなければならなくなったので、寧ろ負担は増えた感じがするが、きっと気のせいだろう。
要するに、韓国側は段階的に譲歩を重ね、最終的にアメリカの「ほぼ言い値」に近いラインに落ち着いた形だ。
やっぱり造船投資はする模様
そして、事前に噂されていた造船業に関する巨額投資はするようだ。
韓国、米との貿易協議で造船プロジェクト提案=聯合ニュース
2025年7月28日午前 11:06 GMT+92025年7月28日更新
韓国が米国との貿易協議で数十億ドル規模の造船プロジェクトを提案したと、聯合ニュースが28日、関係者の話として報じた。
ロイターより
聯合ニュースソースを引用してロイターが伝えているが、どうやら規模は1,500億ドル程度らしい。
米韓が貿易協定に合意、相互・車関税15% 対米投資3500億ドル
2025年7月31日午前 9:15
トランプ米大統領は30日、韓国との貿易協定に合意したと発表し、韓国からの輸入品に15%の関税を課すと述べた。
~~略~~
李氏は、両国が3500億ドルの投資基金を設立することで合意し、そのうち1500億ドルは造船パートナーシップ向けと説明した。
ロイターより
造船業ね、前回も書いたが、正直、そんなに上手く行くとも思えない。まあ、金を出すのは韓国なので、上手く行こうが行くまいがどちらでも良いとは思うが。
鉄アルミは苦しい
そして、鉄鋼とアルミニウムに関する関税は、対日交渉の時と同様に対象外ってことになっている。
Xへの投稿で、韓国の半導体と医薬品が他国よりも厳しく扱われることはないと強調。また、鉄鋼、アルミニウム、銅は新協定の対象外であり、これらの商品への関税率は変わらないとした。
ロイター「米韓が貿易協定に合意~」より
韓国にとってはかなりキビシイだろう。
米の鉄鋼・アルミ価格急騰、韓国など関連株下落 関税引き上げ受け
2025年6月3日午前 3:40 GMT+92025年6月3日更新
トランプ米大統領が、米国に輸入される鉄鋼とアルミニウムに課す追加関税を4日から50%に引き上げる考えを表明したことを受け、2日の取引で米国の鉄鋼とアルミニウムの価格が急騰した。米鉄鋼メーカーの株価が大きく上昇する一方、韓国など米国以外では株価下落が目立った。
米購買者のアルミ価格プレミアムは54%程度急騰。米熱延鋼板は7.4%上昇した。銅にも高額な関税が課されるとの見方から、銅価格も急上昇した。米銅先物は一時、約2カ月ぶりの高値を付け、ロンドン価格に比べたプレミアムが拡大した。
ロイターより
予定先、米国品目別関税影響分析鉄鋼関税率を2倍に引き上げると、韓国の輸出減少幅は4倍に拡大し、「車 追加関税まで念頭に置かなければならない」
2025-06-25 18:00:00
米国が今月初めに鉄鋼·アルミニウムに対する関税を最大50%に引き上げたことにより、韓国の対米鉄鋼輸出額が最大36%まで減少する可能性があるという分析が出た。 対米最大輸出品目である自動車も最悪の場合、輸出額が17.1%減少する可能性があると予想された。
毎日経済より
つまり、米国市場での競争環境はますます厳しくなり、特に素材産業では韓国が不利な立場に追いやられる構造が固定化されつつある。
それでも、韓国の外交官はかなり努力したのだと思うよ。交渉に成功したかどうかは別だけれども。
結局、今回の合意は「交渉」と呼ぶには苦しい。米国の要求に韓国が飲まざるを得なかった“関税回避のための代償取引”であり、今後もこうした形でアメリカ主導の経済秩序に巻き込まれていく懸念が残る。準備不足なのも交渉の足を引っ張ったのだろうね。後出しじゃんけんに失敗したとも言えるけれど。
追記
あれ、山を越えちゃったよ。
<韓米関税交渉妥結> 李氏「大きな山を越えた…3500億ドルのうち1500億ドルは造船協力ファンド」
2025.07.31 10:19
韓国の李在明大統領が、米国との関税交渉妥結に対する所感を明らかにした。
31日、李氏は自身のソーシャルメディア(SNS)に「米国との関税交渉を妥結しました」と題する文を投稿した。この投稿で李氏は「大きな峠を一つ越えた」と切り出した。続けて「世界最大の市場である米国との交渉は、我々国民主権政府にとって最初の通商分野の課題だった」とし「限られた時間と厳しい条件の中でも、政府はただ国益を最優先にして交渉に臨んだ」と述べた。
中央日報より
ミョンミョンはやっと表に出てきたと思ったら、自画自賛かね。
- 輸出環境の不確実性をなくし
- 米国の関税を主要な対米輸出競争国よりも低いか同等の水準に合わせることで、主要国と対等または優位な条件で競争できる環境を整えた
- 通商合意に含まれた3500億ドル(約52兆円)規模のファンドは、両国の戦略産業協力の基盤を強固にするもの
- 造船・半導体・二次電池・バイオ・エネルギーなど、我々が強みを持つ産業分野で韓国企業の積極的な米国市場進出を助ける役割を果たす
- 特にこのうち1500億ドルは造船協力専用ファンドであり、韓国企業の米国造船業進出を力強く後押しするもの
物は言いようというか、確かに「輸出環境の不確実性」は関税率が決定することで、なくなったさ。日本と同じ関税率15%になったので、「対等または優位な条件で競争」と言えなくもないけど、別の記事では日本より関税上げ幅が大きい(韓国は0%→15%、日本は2.5%→15%)。
3,500億ドルの投資は、「両国の戦略産業協力の基盤を強固にする」かもしれないけど、だったら、最初から1,000憶ドルにしてって泣きいれるなよ……。
うち、3,500億ドルの投資のうち1,500億ドルは、造船協力専用ファンド分で、「韓国企業の米国造船業進出を力強く後押し」だって。えぇ?韓国企業はそれで稼げるのかな?現地の労働力を使う前提なんだけれども。ああ、この辺りは別の記事で突っ込んだので、改めて突っ込まないけれども。
そうそう、しれっと「自動車やトラック、農産物など米国産製品を受け入れることで合意した」と書かれているけれど、そのレベルに関してはさっぱり言及がない。農産品の輸入拡大は、韓国では荒れると思うんだけど。
そして、借金が積みあがっているけど、大丈夫?

コメント
こんにちは。
造船、投資するほどお金があるのかな……
韓国が狙ってるのは「潰れそうなアメリカ造船業界を買いたたいて受注ごとGetだぜ!」かなと思ってます。
関税交渉妥結したとはいえ、グレーだったり、これから詰めるところはいっぱい残っているようで。農産物とか。
※これはわーくにも同じ。
さて、半年後、一年後、5年後、どうなりますか……
ところで、こんな微笑ましい記事を見つけました。
「登録されたばかりなのに「世界遺産が水没の危機」…韓国・岩面彫刻に迫るダムの影」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02407/072900081/?n_cid=nbpnxt_mled_kmh
やあ、なんとも韓国らしい……
こんにちは。
いやー、お金は刷れば大丈夫!(冗談ですよ?)
きっと、アメリカ造船に注力してくれることでしょう!
でも、アメリカ造船はそもそも金になる事業が出来なかったことが衰退の一因なので、滅ぼした側の韓国に果たして救えるのか?はちょっと。アメリカで割高タンカーを作っても……。
日本はアラスカの天然ガス採掘で、韓国は造船ですか。
どちらもリスクはかなり高そうです。
天然ガスは気体なのでとにかく採掘量の想定が難しい。掘ってみるまでわからないというのが実際のところであり、各社慎重です。
対して韓国は造船所の米国内建設にはかなり積極的です。米国にまともな造船メーカーがなくなりつつあるので、これは商用的にはアリなのですが労使など雇用を含めた周辺環境がかなりネックとなります。
それはそうと、サムスンが想定を超えた大幅減益みたいですよ。
そうですね、アラスカの天然ガス採掘はそもそも採算性が怪しいのでこれまで行われてきませんでした。
造船に関しても日本は色気を出していますが、アメリカの造船業の状況がかなりヤバイので、これもあまり良さそうな話にはならないでしょう。韓国は利益度外視で突き進みそうですが、日本勢には慎重にアプローチして欲しいですね。
サムスンの減益は聞きましたが、テスラから大型案件を受注したのできっと大丈夫(しらんけど)。
韓国政府、借金が積み上がっているそうですが外貨準備額は大丈夫ですかね?それ以上の経済投資額になりそうですが。韓国の外貨準備ってジャンク債や民間の保有ドルも計上してませんでした?
今朝起きて驚いた話がこちら
米、新たな相互関税率は8月1日発効=ホワイトハウス報道官(ロイター7/31)
https://shorturl.at/cGQWO
え〜、できるんかい? まったく一方的ですなw
ミョンミョンは、交渉は失敗だけど、上出来と自賛でもしないと叩かれますからね。
でも、いつものようにおちゃらけていると、すぐに足元を掬われると思いますが。
相互関税の次は、安全保障分野の交渉になるでしょうし。
日本がアラスカ天然ガス開発に投資するかも話。採掘はともかくガスの輸送面で、
トランプ政権は、商船三井が支那COSCOと合弁開発した砕氷LNG運搬船に注目している
と聞いています。新たにパイプラインを敷設するより、遥かに安上がりですしね。
https://www.mol.co.jp/pr/2020/20042.html
つい最近、商船三井が砕氷LNG運搬船の調達先を変更するかも、という報道があって、
ここでもトランプ政権の対支那制裁が横ヤリを入れてきているとw
商船三井、LNG運搬船の発注国「慎重に判断」 報道受けコメント(ロイター5/26)
https://shorturl.at/XDWEt
慎重な判断、いろいろ必要ですよねぇ。
日本政府、トランプ大統領から「米国内で造れや」と言われていそう。