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オーストラリアがもがみ型護衛艦の導入を決定

オセアニアニュース
この記事は約9分で読めます。

おおお、別の記事を書いていたのだけれど、これは触れておかねば。

オーストラリア、最新鋭護衛艦「もがみ型」11隻導入へ

2025年8月5日 9:44

オーストラリアのリチャード・マールズ国防相は5日、次期フリゲート艦新造計画で、三菱重工が建造した最新鋭護衛艦「もがみ型」11隻を導入し、海軍力を強化すると発表した。

AFPより

有利だとは前から言われていたけど、これは日本の防衛政策にとってもかなり大きな意味がある。この際だから、日本からはもっと大きな提案をしていっても良いのでは?

  • オーストラリア海軍、改良もがみ型護衛艦11隻を導入決定
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日本からはもっと大きな提案を!

採用理由は?

去年末の記事がこちら。

オーストラリア海軍は、アンザック級フリゲートの後継艦導入を急いでいて、今年に入ってからは「最終候補は日本とドイツ」という報道が出ていた。

ドイツが提案していたのはMEKO A-200型。これは「受注後に詳細設計する」という方式で、しかもそのベースとなったMEKO 200型は、アンザック級の原型でもある。

そういう意味では「継続性がある」という評価もされていたが、実はアンザック級に対してオーストラリア海軍は不満も抱えていた。

そういう意味で、「有利」だと言われている反面、オーストラリア海軍にとってアンザック級に対する不満も結構あって、対空戦闘能力の不足だとか、戦隊構造的に被害制御能力が足りないとか、そんな部分で改善して欲しいという話はあった。

一方、もがみ型護衛艦は、「価格以外は合格」という評価だったとか。

もがみ改良型導入へ

そんなわけで選ばれたもがみ型護衛艦の導入ではあるが、最初の3隻は日本で建造して、残りをオーストラリアで建造という形を取るようだ。

豪新造艦、もがみ改良型導入へ 日本に伝達、少人数運用を評価

2025年08月05日09時57分

オーストラリア海軍の次期フリゲート艦新造計画で、豪政府は海上自衛隊護衛艦「もがみ型」改良型を導入する方針を決め、日本政府に伝えた。マールズ国防相が5日、記者会見で発表した。もがみ改良型とドイツの艦艇が最終候補に残っていた。従来の護衛艦よりも少数の乗組員で運用できる点などが評価された。

時事通信より

特に、ステルス性、機動性、モジュール構造、そして何より少人数での運用が可能な自動化システムが高く評価された。

豪政府は約100億豪ドル(約9500億円)をかけて新フリゲート艦を計11隻導入し、最初の3隻は日本で建造する。日本政府と、もがみ型を製造する三菱重工業は官民一体で売り込んでいた。2029年の納入に向け、日豪は価格交渉を進め、26年の契約成立を目指す。

時事通信より

2029年までに間に合うのかが焦点になるのだが、おそらく令和5年度計画艦(FFM-12で採用)で既に現行型の改良版のコンセプトは出来上がっているので、オーストラリアに納入する最初の3隻はこのコンセプトを参考に計画が作られるのだろう。

オーストラリアは2023年に大規模な軍備再編を発表。中国の海軍力への対応を強化するため、長距離攻撃能力の強化に注力している。

もがみ型は、強力な兵器を多数搭載した最新鋭のステルスフリゲート艦だ。

マールズ国防相は、老朽化が進むアンザック級フリゲート艦をもがみ型に置き換えるとして、2030年までにもがみ型の1番艦を就役させると述べた。

AFP「オーストラリア、最新鋭護衛艦「もがみ型」11隻導入へ」より

まあ、妥当な判断なんだろう。

なぜ今、豪海軍は急ぐのか?

背景には、オーストラリア政府が2023年に発表した大規模な軍備再編計画がある。中国海軍の増強に対抗するため、長距離攻撃能力の強化や新型水上艦の整備が急務となっている。ハンター級フリゲート艦の計画も多分進行しているはずなんだけど…、あれはどこに行っちゃったんだろう?

ともあれ、もがみ型は強力な兵器を多数搭載し、高度なステルス性と自動化システムを兼ね備えた最新鋭フリゲート。今後のインド太平洋におけるプレゼンス確保の切り札になり得る。

だから、日本側の提案としては、こちらの記事で書いたように、「じゃあ潜水艦もどう?」というのはどうだろうか。

オーストラリアと原子力潜水艦の共同開発をしても良いんだぜ(ちょっと無理か)。

現実的には、AUKUSで原子力潜水艦の建造が進められるとして、三菱重工や川崎重工がその計画のサポートをする話になるとは思うのだ。或いは、AUKUSへの繋ぎとして、通常動力潜水艦を買ってくれても良いぜ!

ああ、そういえば日本は武器輸出三原則も見直さなければね。この際、同盟国、準同盟国であれば輸出可能にしたらどうかな。

追記

妄想的な話はさておき、日本側はオーストラリア向けの護衛艦製造を優先して作ることにしているようだ。

Australia picks Japan to build $10b frigates after fierce contest

2025/7/31

Japanese shipbuilder Mitsubishi Heavy Industries has won a fierce contest to build the Australian navy’s new fleet of warships, beating a bid from German rival Thyssen­Krupp Marine Systems.

~~略~~

Japan has also said that Australia could receive the first of the upgraded warships ahead of its own navy — which the ABC has been told helped to tip the contest in its favour.

~~対訳~~

オーストラリアが日本を選定、$100億ドルのフリゲート艦建造を決定 激しい競争の末

日本の造船会社三菱重工業は、ドイツの競合他社ティッセンクルップ・マリン・システムズの提案を破り、オーストラリア海軍の新造艦隊の建造契約を獲得しました。

~~略~~

日本側はまた、オーストラリアが自国海軍よりも先に改良型艦艇の最初の1隻を受け取れる可能性があると表明しており、ABCが報じたところによると、これが契約獲得の決め手となったとされています。

ABCニュースより

令和5年度計画艦の納入計画がやや遅れる可能性は高そうだが、それでもオーストラリア向けの護衛艦建造を急ぐ意味はあるのだろう。

仕様が固まっていれば、建造自体はさほど時間を要しないだろうから、2029年納入というのはない話ではないと思う。

追記2

公式プレスが出ていたので、引用しておく。

Mogami-class frigate selected for the Navy’s new general purpose frigates

5 August 2025

The Albanese Government is accelerating the delivery of a larger and more lethal surface combatant fleet with the selection of the upgraded Japanese Mogami-class frigate as the preferred platform for the Royal Australian Navy’s future fleet of general purpose frigates. 

Following a rigorous and competitive tender process, Mitsubishi Heavy Industries’ Mogami-class frigate was assessed as best able to quickly meet the capability requirements and strategic needs of the Australian Defence Force (ADF).

The upgraded Mogami-class frigate boasts a range of up to 10,000 nautical miles, a 32 Cell Vertical Launch System, and is fitted with surface-to-air missiles and anti-ship missiles.

~~対訳~~

モガミ級フリゲートが海軍の新世代汎用フリゲート艦の候補に選定

アルバネーゼ政権は、日本製のモガミ級フリゲート艦の改良型をオーストラリア海軍の将来の汎用フリゲート艦隊の主要プラットフォームとして選定することで、より大型で戦闘能力の高い水上戦闘艦隊の配備を加速しています。

厳格で競争的な入札プロセスを経て、三菱重工業のモガミ級フリゲート艦が、オーストラリア国防軍(ADF)の能力要件と戦略的ニーズを迅速に満たす最も適した艦艇として評価されました。

改良型モガミ級フリゲートは、最大航続距離10,000海里、32セル垂直発射システムを搭載し、対空ミサイルと対艦ミサイルを装備しています。

Australian Gavernmentのサイトより

なるほど、事前に出た報道内容と齟齬はなさそうだ。

海軍水上戦闘艦隊に関する独立分析に対する政府の回答では、最初の汎用フリゲート艦3隻は沖合で建造されると概説されています。この加速計画により、最初の3隻は日本で建造され、最初の1隻は2029年にオーストラリアに引き渡され、2030年に運用開始される予定です。 

Australian Gavernmentのサイトより

やはり2029年引き渡しの予定で、公式に明記されてしまったので、この予定で突っ走るんだな。なかなか時間がタイトだが……。新型FFMの設計が出来上がっているので、多分問題ないのだろう。実際、海上自衛隊の調達計画では2028年までに12隻作る予定になっていて、そのうち3隻をオーストラリアにということらしい。

令和7年度防衛予算案では新型FFM3隻分の建造費3148億円が既に計上されていて、準備万端といったところ。発表が前倒しになった理由は、おそらくこれ以上引き伸ばされると2029年納入に間に合わないという事情も関係しているのだろう。

予定を見ると、新型1番艦となるFFM-13と2番艦となるFFM-14は2025年起工の予定になっている。

なお、ここで気になる発言は1箇所あった。

「これにより、我々の汎用フリゲート艦の発射可能な防空ミサイルが32発から128発に増加し、ますます複雑化する環境で勝利するために必要な最先端の兵器と戦闘システムを海軍兵に提供できるようになります。」 

「この決定は予定より数ヶ月前倒しで行われ、納税者への総負担を軽減しながら、迅速に能力を提供するという我々のコミットメントを強化するものです。これにより、今後10年間で、前連立政権が引き継いだ計画の4倍の艦艇を配備するという我々のコミットメントが実現します。」

Australian Gavernmentのサイトより

これ、オーストラリアの国防産業大臣パット・コンロイ氏の発言部分なのだが……。128発というのは?

新型FFMはMk.41 VLS×32セルを搭載と発表されているのだが、誰か詳しい人!

最後に、関連記事のリンクを貼っておこう。

コメント

  1. 砂漠の男 より:

    豪州がもがみ型を採用したことは、日豪の防衛協力を促進するし、結果日本のシーレーン防衛にも役立つのでハッピーな話です。
    豪州にもがみ型(改)11隻、フィリピンにあぶくま型6隻が配備されれば、強圧的な支那海軍に対抗するかたちがつくれるんじゃないですか。
    また、豪原潜計画は遅れるでしょうから、時期をみてもう一度、たいげい型を売り込みたいもんです。

    • 木霊 木霊 より:

      シーレーン防衛という意味では大きいですね。
      インドにもアンテナが売れていますから、今後もうちょっと輸出が拡大するといいんですけどね。フィリピン辺りが狙っている気がします。

  2. 匿名 より:

    装備品輸出で久しぶりに良いニュースですね!
    4隻目以降はオーストラリアでの建造ということですが、今回は国産化率とかうるさいことはそこまで言われていないので、もしかしたら日本から部品輸出して向こうでは組み立てるだけ、みたいな形になるのではと予想しています。

    • 木霊 木霊 より:

      三菱重工など日本企業としては、納期がタイトなので大変だとは思うのですが。
      4隻目以降は、とりあえず作る場所まで決まっているらしいのですが、果たして工場の整備が間に合うのかどうか。
      ノックダウン式で組み立てというのも、あまりうれしくないと思うんですがね。

  3. 匿名 より:

    もがみ改型はアメリカ製兵装が使えるが
    ブランデンブルク級でアメリカ製兵装を使うには再開発が必改
    もがみ改型が選ばれた理由の一つ

    • 木霊 木霊 より:

      オーストラリアに提案されたMECO-A-200型は、受注してから設計なので、多分、アメリカ製兵装を使うように設計されるとは思うんです。
      ただ、既にアルジェリアや南アフリカに納入された実績を見るに、アメリカ製兵装の適用はそう簡単ではないのでしょうね。

  4. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >これ以上引き伸ばされると2029年納入に間に合わない

    もしかしたら、納期が決め手だったのかもしれませんね。
    >MEKO A-200型。これは「受注後に詳細設計する」という方式
    のドイツ案はペーパープランですから、納期なんかあってないようなもの。しかも絶対遅れる。
    対して、改もがみ型なら、納期はかなりの精度で読めるでしょうから(わーくに製造分だけなら。現地生産分?労使交渉ちゃんとやってくださいね)。

    >128発
    VLS32セルに、ESSMガン積み(各セルに4発入る)で128発?
    アスロック積む気ないのかな?

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      オーストラリア側も2029年納入にむけて海上自衛隊向けの艦をオーストラリア分に割り当てた点を評価しているらしいです。
      MEKO A-200型は時間かかりそうですからね。
      ハンター級フリゲートを増やすのではなく、もがみ型護衛艦を増やしたというところにも意味はありそう(大きさは違うんですけども)。

      VLSにESSMという手がありましたか。あれ、2発だけかと思ったら1セルに4発詰め込めるタイプがあるんですねぇ。
      Mk 25キャニスター利用して合計128発……。一体、何と戦うつもりなのやら。

      • 匿名 より:

        ドイツ製は納品が間に合わない上に結局日本製よりも高価になる

        オーストラリアはそんな事を知っていてより好条件を日本から引き出すために当て馬にドイツ製を使った

        そしてニュージーランドはオーストラリアと同じ物が欲しい
        人員が半分ならニ艦ではなく四艦導入出来るかもしれない

        日本側も当然分かっているからサービスサービス

        • 七面鳥 より:

          軍オタの多くは「日本を当て馬にドイツを選ぶのでは?」との意見が大勢を占めておりましたから、これは嬉しいどんでん返しでした。

          後は、オーストコリアが掌クルクルとかしない事を祈るのみですね。

        • 木霊 木霊 より:

          ドイツ製が「後から考えたら高価だった」というのは割とある話ですね。

          そして、ニュージーランドに売れると良いなとは思っていますが……、案外あの国は支那との親和性が高いのでどう転ぶか。
          オーストラリアへの納入が済んでしまえば多少は余裕ができる可能性はありますが、4番艦以降も作ることが出来るかやや怪しいのがオーストラリアの実情でありまして。

  5. きたやまひと より:

    今晩は。
     オーストラリアに次期FFMを輸出したり、米国の商船/軍艦の造船業に投資したり(出典:ホワイトハウスFact Sheet)と日本の造船業界隈も忙しくなりますね。ただ、マネージメントや技術者を含め、人材が足りるのか懸念があります。
     最近の造船工業会の一般向け造船関係資料では記載されなくなりましたが、かつて閲覧した造船関係資料によれば、日本の造船業の技術者が年々、減少していることが示されていました。その後も、合理化が進んでいますので、現在はさらに少なくなっていると思います。今回のFFM輸出や米国への投資案件を奇貨として技術者の育成が図られるとよいのですが。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      日本の造船業界界隈が賑わうのは良いことだと思っています。人材は不足するのでしょうが、将来を見越して育成するしかありません。
      今後も未だ未だ必要ですから。
      それと、安全保障的にはオーストラリアの造船業も補強しておきたいので、あちらももっと強化できると良いかなとか思っております。