オオゴトになってきたな。
ポーランド ロシア軍無人機の残骸見つかる NATOの対応が焦点
2025年9月11日 7時04分
ポーランドは、10日朝にかけてロシア軍の無人機19機に領空が侵犯されたとして被害を調査し、無人機の残骸が見つかったと明らかにしました。ポーランドの要請を受けてNATO=北大西洋条約機構の加盟国は協議を続ける方針で、今後の関係国の対応が焦点になります。
NHKニュースより
ポーランドの領空侵犯を意図的に行ったロシア、一部空爆まで行ったようなのだが、これでNATO各国は自動参戦の要件が整ってしまった。
ロシア軍は意図的にポーランドの領空侵犯を
事態の全容がイマイチ分からない
事態を少し整理しておこう。
- 2025年9月10日 ロシア軍無人機19機によるポーランドの領空侵犯
- 同日 ポーランド軍が領空侵犯した無人機を撃墜
- 同日 一部地上施設が破壊されたことを確認
こんな風に整理すると、ロシア側の設定ミスで無人機がポーランド領内に入り込んで撃墜された線が濃厚だと感じるが、それは違うようだ。

ポーランドはウクライナの隣国であるとはいえ、ロシア領からかなり距離がある。リトアニアとポーランドとの間にあるカリーニングラードはロシア領なので、ここから出たとしても辻褄が合わないんだよね。
無人機の多くはウクライナと国境を接する東部で見つかったとする一方、少なくとも2機は国境からポーランド国内を300キロ以上飛行したとする軍の幹部の話を伝えています。
NHKニュース「ポーランド ロシア軍無人機の残骸見つかる~」より
かなりポーランド領内深くに入り込んでいるようなのだ。
ベラルーシでも
なお、似たようなことはベラルーシでも発生していたらしい。
ポーランドが、ロシア軍がウクライナに対し無人機などで攻撃を行った際、領空が侵犯されたと非難したことに関連し、ロシアの同盟国ベラルーシの軍の参謀総長が10日、声明を出しました。
この中では「ロシアとウクライナが互いに無人機で夜間攻撃を行っている際に、ベラルーシ軍は、双方の電子戦の影響で制御不能となった無人機を追跡し、一部をベラルーシで撃墜した」としています。
NHKニュース「ポーランド ロシア軍無人機の残骸見つかる~」より
ベラルーシはロシア寄りの立ち位置にあるので、本件の声明が参考になるかどうかは不明ではあるが、証言としては信憑性はありそうだ。
ベラルーシはウクライナともポーランドとも国境を接しているからね。
とはいえ、何れの件も「ちょっと間違えちゃった」というレベルじゃないんだよねぇ。
重大な挑発行為
というわけで、ポーランドの首相が激オコなのである。
領空侵犯のドローン撃墜 「大規模な挑発」とロシア非難―ポーランド
2025年09月10日20時29分配信
ポーランド軍は10日、ウクライナを狙ったとみられるロシアの複数のドローンが領空侵犯し、一部を撃墜したと発表した。北大西洋条約機構(NATO)の領空内でロシアのドローンが撃墜されるのは初めてという。ポーランドのトゥスク首相は「大規模な挑発行為だ」とロシアを非難した。
時事通信より
そりゃもう、400kmも領空侵犯されたら笑っていられないよね。
F-35戦闘機を持ち出して撃墜したらしいんだけど、流石にちょっと効率が悪そうだ。
ドローンは9日夜から10日未明にかけて飛来し、トゥスク氏によると19機がポーランド領空に侵入し、最大4機を撃墜した。大半はロシアの同盟国ベラルーシ側から侵入したという。ポーランドに駐留していたオランダ軍のF35戦闘機などが対応に当たった。この影響でポーランドの首都ワルシャワの国際空港への離着陸が一時停止された。
現地メディアによると、ポーランド東部を中心にドローンやミサイルの残骸が見つかった。けが人はいなかったが、住宅や車が損傷し、国境から約400キロ離れた地点にも到達していた。
時事通信「領空侵犯のドローン撃墜~」より
そして、経済的にも大きな影響が出ている。
防空防衛能力に問題があることが明らかになってしまったことも、ポーランド首相がキレている理由なのだと思うが、空港を閉鎖せざるを得なかったのもその理由だろう。
ポーランドが領空侵犯したロシア無人機撃墜…NATO戦闘機など緊急発進、4空港が一時閉鎖
2025/09/10 19:51
ポーランド国防省は10日、ロシアによるウクライナ攻撃に際して重大な領空侵犯があり、複数の無人機(ドローン)を撃墜したと発表した
~~略~~
発表などによると、領空侵犯はウクライナとベラルーシ国境に近い東部地域で起きた。ポーランドとNATOの戦闘機が緊急発進し、首都ワルシャワのショパン空港など国内4空港が一時閉鎖された。人的被害は確認されていない。
讀賣新聞より
何らかの手当てはしてくれないと、話にならないよね。
ロシアは否定
ということで、当然ロシア側がどんな反応してくるかはみんなが気になるところだと思うんだ。
ロシアは、この件に関して否定している。

NHKのニュースを読むと、ロシア軍は領空侵犯を認めたようにも読めるのだが……。
ポーランドが、ロシア軍がウクライナに対し無人機などで攻撃を行った際、領空が侵犯されたと非難したことに関連し、ロシア国防省は10日、SNSで「ポーランド領内の施設を攻撃する計画はなかった」と主張しました。
また「攻撃に使用した無人機はポーランド国境を越えたとされているが、飛行距離は最長で700キロを超えないものだ」とした上で「この件に関し、ポーランド国防省と協議を行う用意がある」としています。
NHKニュース「ポーランド ロシア軍無人機の残骸見つかる~」より
なにやらおかしなことを言っているね。
この「ポーランド領内の施設を攻撃する計画はなかった」との主張は、ミスでポーランド上空を飛んだ可能性は示唆しているものと思われる。ただ、ロシアの言い分は、ウクライナへの無人機攻撃はやったが、ポーランドの件は知らん!という意味のようだ。
そして、「攻撃に使用した無人機はポーランド国境を越えたとされているが、飛行距離は最長で700キロを超えないものだ」などと言っているが、これでは辻褄が合わないわけだが、ロシアの言い分は「だからウチは関係ない」というコトなんだろう。
これについてはJSF氏が詳しく解説していたので、リンクを貼っておく。

使われたのはシャヘド136系の無人機のようで、航続距離は1,800~2,500kmである。700kmというのは嘘だな。
墜落した無人機は
結構な広域にわたって墜落した無人機が報告されている。
ロシアのドローンによるポーランド領空侵犯に関する声明。日報概要。
2025年10月9日
ポーランド領空侵犯を受け、内務省傘下の機関(主に警察、国境警備隊、国家消防局)が活発に活動し、常に警戒を続けています。午後8時時点で、16機のドローンの残骸が発見されています。
警察が提供したデータによると、合計16機のドローンが次の町で発見された:チョスノフカ、チェシニキ、クシボヴィエルシュバ・コロニア、ムニシュクフ、オレシュノ、ヴィエルキ・アン、ウォヒュン、ヴィハレフ、ヴィリキ、ザブロチェ・コロニア、ノウェ・ミャスト・ナド・ピリチ、ビチャフカトシェキア、ラビアニ – セウェリヌフ、チジュフ、ソボトカ、スムィクフの間。
ポーランド政府のサイトより

この情報に基づいてポイントを確認すると、こんな感じに分布しているようだ。そして、使われたのはシャヘド136系の偵察機と自爆仕様機の2種類。そうすると、威嚇目的があった可能性が濃厚だ。
国連安全保障理事会の招集も?
このことについて、流石にNATOも座視はできないようで。
ポーランド領空侵犯に非難相次ぐ、ロシアは関与否定 英独仏など対応協議
2025年9月11日午前 7:32
北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドが10日、自国の領空内でロシアのものとみられるドローン(無人機)を撃墜したことを受け、英仏独やカナダなどのNATO加盟国から非難の声が相次いだ。ロシアはこの件への関与を否定。英独仏など欧州5カ国とウクライナがロンドンで国防相級の会合を開き対応を協議したほか、トランプ米大統領がポーランドのナブロツキ大統領と電話会談するなど外交面での対応が続けられている。
~~略~~
外交筋によれば、スロベニア、デンマーク、ギリシャ、フランス、英国は12日に国連安全保障理事会を開催するよう要請した。
ロイターより
ポーランド首相のトゥスク氏はNATOにも注文をつけて、対応を検討しているとのことなので、ここからまた動きがあると思う。
注目していかざるを得ない。
コメント
この件、ポーランドがロシアのドローンを撃墜したってことなんだけど、ロシアは否定してるし、ウクライナ攻撃用だったって言ってるけど700kmも飛ばせるとかホント? 使われたドローンの航続距離はもっとあるんだけど、どうしてこうしてるんだろうね。NATOも動き出したし、今後どうなるか本当に気になるところだ。
この件で分かっていることは、以下の通り。
・ロシア軍の使う無人機がポーランドの領空侵犯をし、ポーランドの領土に墜落。16機が回収されたということ。(領空侵犯したのはポーランド政府によれば19機)
・墜落したのはロシア軍の使っているシャヘド136系の無人機で、航続距離は1,800~2,500km
・飛行経路から見て、間違ってポーランド領空に迷い込んだというシナリオは成立しない
・ポーランド側で人的被害は出ていないが、複数の建物が破壊された
・故にロシアはいつもどおり嘘をついている
ここまでは、事実と認定していいと思います。
そして、そうだとするとロシア軍機がポーランドに向けて軍事行動を行ったことを意味し、ポーランドが黙っているというのは悪手で、何らかの報復は必要。NATOも巻き込まれて動く可能性は高く、緊張状態は更に高まるというところまでは確実でしょう。どうやって折り合うのかは分かりませんが、プーチンとしては弱みを見せる分けにはいかないので、かなりやばい事態を迎えることも想定する必要があるでしょう。
本件はかなり深刻なので、少し様子を見たほうが良さそうですね。
リトアニア外相が「まだロシアが意図的にやったという確証はない」と声明を出しています。
https://nato.news-pravda.com/world/2025/09/10/64596.html
不穏な話ですが、ウクライナがEWを使ってロシアのシャヘドを電波ジャックし、ポーランド・ベラルーシ方面へ誘導したんだろうという見解もあるようです。その目的は、NATOを巻き込むための偽旗作戦じゃないかと。
少し様子を見たいと思ってはいます。
が、リトアニア外相の声明はともかく、ウクライナの関与はかなり怪しい話。
シャヘドの電波ジャックができれば、寧ろロシア本土を攻撃するような方向に仕向けるのが自然です。そうした話が1件も伝わってきていない以上は、偽旗作戦説はかなり怪しいんだと思います。可能性がゼロではありませんが。