このタイミングで支那はアメリカに喧嘩を売ったのは、どんな意味があったのだろうか。
4中全会を目前にしたこの時期に、経済を犠牲にしてまで外交で強硬姿勢を取る理由は一つしかない──「内側を黙らせるため」だ。
中国、レアアース輸出規制を強化 新たに5種が管理対象、米中緊張も
2025年10月9日 18時32分(2025年10月9日 20時04分更新)
中国商務省は9日、ホルミウムなどレアアース(希土類)5種類を新たに輸出管理の対象にすると発表した。採掘や製錬・分離といった加工技術も輸出管理する。米中対立の火種の一つとなってきたレアアースをめぐる規制強化により、両国間の緊張が一層高まる可能性もある。
朝日新聞より
10月9日~10日は、複数の重要イベントが重なったため、このニュースの報道や分析は十分追い切れなかった。しかし、支那がレアアース規制を強化してきたこと自体は周知の通りだ。
駆け引きの一環で
会談は実現するのか
ただ、今回のこの支那の決定は、アメリカにとっても打撃になったようだ。
トランプ氏、中国に100%の追加関税を課すと脅す レアアース輸出規制強化に反発
2025年10月11日 13:17
アメリカのドナルド・トランプ大統領は10日、来月から中国からの輸入品に対して追加で100%の関税を課すと述べた。
トランプ大統領はまた、自分のソーシャルメディアへの投稿で、重要なソフトウエアに輸出規制を課すと述べた。
トランプ氏はこの日、中国が今週、レアアース(希土類)の輸出規制を強化したことに反発。中国が「とても敵対的になって」おり、世界を「人質に取ろうとしている」と非難した。そのうえで、中国の習近平国家主席との会談を欠席する可能性を示唆した。
BBC NEWSより
本日のニュースからは、トランプ氏の苛立ちが伝わる。「会談しねーぞ」とお怒りである。アメリカとしても会談を蹴るところまではやれなかったみたいだけど、それでも、トランプ氏自身が欠席を示唆したところに意図を感じる。
支那が対米交渉前に何故ここまで露骨に圧力をかけてきたのかは気にかかるところだが、そのヒントは支那の焦りにあるように思う。
国内経済の脆弱性と見せかけの安定
このブログでは幾度か支那の経済危機の話を書いてきた。
直近の記事では、デフレ経済に加えて若年失業率の高止まりと、不動産開発業の行き詰まり。そして、地方銀行の苦境についてお伝えした。
そして、支那に対する外貨流入も鈍っている。というか、激減している。
中国、外資企業の国内再投資を奨励 国家発展改革委など7部門が共同通知発出
2025/07/19 18:30
中国国家発展改革委員会(発改委)は7月7日、財政部、商務部、自然資源部、中国人民銀行、税務総局、国家外貨管理局とともに、外資系企業による中国国内での再投資を積極的に促進するための政策措置をまとめた《外商投資企業の国内再投資を奨励する若干の措置に関する通知》を共同で発表した。
中国経済新聞より
頑張って誘致はしているんだけど、MUFG調査などによれば2024年以降、中国の対内直接投資は純流出超過の傾向が続いている。

2025年に入っても明確な回復の兆しはなく、「外資企業の国内再投資を奨励」という表現自体が、苦境の裏返しである。
こういった状況で、国内の流動性が悪化しているので賃金不払いやそれに関する抗議・暴動、そしてそれを武警が封じ込めるというような状況のようだ。内情を詳らかにするメディアがないので、おそらくそうだとしか言えないが。
ただ、経済が脆弱であるがゆえに、外交や強硬姿勢は「政治的演出」に過ぎないという構図になっている可能性が高く、なんとも皮肉である。
4中全会を前にした中国の内外圧力
で、前の記事に触れたけれども、4中全会を目前にしているので強硬に振る舞っているという演出をしているという側面もある。実際に、経済に関する言及を封じる体制に入っている。
中国共産党、「4中全会」10月20日〜23日開催 5カ年計画議論
2025年9月29日 18:46
中国共産党は29日に中央政治局会議を開き、党の重要会議である第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)を10月20〜23日に北京で開くと決めた。2026〜30年の経済政策の運営方針を定める第15次5カ年計画を議論する。
日本経済新聞より
間違っても、これが終わるまでは「滅多なことを言うな」ということなのだ。
「弱い犬ほどよく吠える」という言葉があるが、まさにそんな感じになりつつある。しかし、4中全会に向けてネガティブな材料ばかり集まるので、アメリカとの交渉に揺さぶりをかけて無理にでも利益を引き出そうという強硬策に出たと解釈すれば分かりやすい絵が描ける。
問題は、それが功を奏するか?なのだが、相手はトランプ氏だからねぇ。
高市政権誕生への恐怖
さて、ここ最近日本を騒がしている話があって、来週もどうなるかをヤキモキしながら見ていかねばならないのだが、先週末には公明党が与党からの離脱という決断をした。
公明党にどんな利益があるのか?は現時点では不明だが、自民党には激震が走っただろうことに想像は難くない。
ただ、ハレーションは間違いなくあって、特に支那が警戒しているんだよね。
中国、高市氏の内モンゴル人権批判に反発 日本政府に厳重抗議
2025年10月10日 17:48
中国外務省は10日、内モンゴル自治区の人権状況を巡る自民党の高市早苗総裁の批判に反発した。郭嘉昆副報道局長が記者会見で「基本的事実を無視し中国の内政に干渉するものだ」と非難した。
日本経済新聞より
まだ政権始まる前からコレだから、先が思いやられる。
支那としては公明党に与党に残って欲しかったという話が出ていたけれど、今回の騒ぎって不自然な面は結構あって、公明党の主張は唐突感が否めない。
「誰が総裁になっても、答えは変わらない」などと斎藤氏は返答していたようだが、それが本当であればむしろ指示が出ていたと考えたほうが分かりやすい。
支那としては台湾の蔡英文政権誕生のトラウマが過って、過激な手段に出たのでは?という風にも解釈できる。
つまり、4中全会を目前にして、習政権は“外敵”と“内なる脅威”の両面を意識せざるを得なくなっている。日本国内の政局ですら、その圧力線の一部として映っているのだ。
政策公約の象徴性と戦略的意味
支那がこのような指示を出したと仮定した場合には、以下のようなことが影響したと考えられる。
- SC法制(スパイ・情報防衛関連)の整備がすでに国内工作ルートを圧迫
- SMR(小型モジュール炉)の開発促進による産業・技術自立
- 女性総裁という象徴性+政策実績による三重の圧力
- トランプ氏の歓迎発言の象徴的意義:「米国が独立性の高い指導者を支持」
高市政権はトランプ氏と親和性が高く、台湾との交流を深める方針のようなので、ここがガッチリと手を結ぶとなると、厄介なことになるだろうと判断した可能性はある。
まとめ
というわけで、最近の支那の動きからは、明確に「焦り」が感じられるというお話である。それが冒頭紹介した「圧力」の正体のように思えるのだ。
支那共産党は、今やこんな焦りを感じている。
- 経済問題の先行き不透明
- 内外包囲網の形成
- 4中全会を前にした強硬演出
いずれにせよ、4中全会でどの程度の結論を出せるかが、次の5カ年計画および中国経済の方向性に大きく影響する。舞台の幕が上がったとき、誰が笑い、誰が震えるのか──その注目点は今後も見逃せない。
追記
あー、徹底抗戦選んだかぁ。
中国政府、トランプ政権に徹底抗戦の構え 100%超の関税掛け合う〝戦争〟へ再突入か
2025/10/12 13:33
中国政府は12日、トランプ米大統領が中国に100%の追加関税を課す意向を表明したことに対し、報復を示唆した。対中圧力を緩めないトランプ政権に徹底抗戦する構えを鮮明にした形だ。米中両国が互いに、100%を上回る追加関税を掛け合う「関税戦争」に再び陥る可能性が一気に高まっている。
産経新聞より
まあ、あれだけイキって言い出したのだから、そう簡単には折れることはできないだろうね。しかし、100%関税に100%に対抗するのか。
さらに、9月にスペインのマドリードで開いた米中閣僚級貿易協議後、米政府が輸出制限対象の「エンティティーリスト」のルールを強化するといった対中制限措置を新たに打ち出したと指摘。米側の動きについて「中国の利益を深刻に損ない、経済貿易協議の雰囲気を著しく壊した」と非難し、「断固反対」すると表明した。
中国商務省の12日の報道官談話は、トランプ氏が今月末にも韓国で予定している習近平国家主席との会談を取りやめる可能性を示唆したことについては触れていない。
産経新聞より
「エンティティーリスト」のルールを強化って話が前提にあったことは見逃していたけれど、これも何段階かで強化されているので、今更なのかも?これについては、調べていないので何が支那の気に障ったのかは分からない。
リストに掲載された企業が議決権株式の50%超を保有する子会社なども、自動的に輸出規制の対象になる辺りなのかな。
まあ、いずれにしても簡単には引けないわけだ。
追記2
コメント頂いたが、ベッセント氏が動いているようだね。
ベッセント氏、米中会談実施をなお想定-全ての選択肢排除せず
2025年10月13日 20:18 JST 更新日時 2025年10月13日 23:45 JST
ベッセント米財務長官は引き続き、トランプ大統領と中国の習近平国家主席による会談実施を想定している。その一方で、中国によるレアアース(希土類)の輸出規制強化に対する報復措置については、あらゆる選択肢があると警告した。
Bloombergより
新しい情報は無いようだが、プレッシャーをかけた格好かな。
ベッセント氏は「これは『中国対世界』という構図だ。中国は自由世界全体のサプライチェーンと産業基盤にバズーカ砲を向けた。われわれはそれを許すつもりはない」と言明した。
Bloombergより
なんというか、「関税戦争」の様相なのだけれど、アメリカは予定通り首脳会談をするつもりはあるようだ。
ただ、おそらくはお互いに妥協する部分は妥協して納める展開になるのかというと、ちょっと怪しいと思っている。
コメント
支那は、トランプ大統領による世界規模の反中・反グローバリズム政策により、これまでの勢いが止まってしまった。日本では、自民党の親中リベラル左派が敗退して、保守勢力が巻き返し、支那外交の致命傷になりかねない状況。
こうした中、四中全会を控える紅皇帝が、持病の脳卒中で倒れ緊急搬送されたという。
(この情報は、紅皇帝によって失脚させられた胡春華氏の元法律顧問からだそう。)
習近平が脳卒中で救命室に送られた。李強が北朝鮮から呼び戻されれば、事態は深刻だろうと噂されている。(人民報10/9)
https://www.renminbao.com/rmb/articles/2025/10/9/92657.html
いずれにしても、10月後半は相当に荒れそう。
コレまでずっと誤魔化しながら経済を維持してきましたが、そろそろ誤魔化しきれない状況です。
紹介いただいたニュースは裏が採れていないので、今のところは「そんな噂がある」程度で処理しています。
ただ、習近平氏にしたら倒れて病院に搬送されたほうが幸せなレベルで経済が悪化していますので、四中全会は荒れるか開催延期になる気がしますよ。
米支関係が再び緊張。
べッセント長官は、今月末に韓国(のどこか)でトランプ大統領と紅皇帝の会談は行われると言ってますが(ロイター10/13)、支那がレアアースの輸出制限を解除しないと、米支会談はキャンセルでしょう。
トランプ大統領も紅皇帝もメンツがあるので、当面米支関係はミニ冷戦状態かな。
牽制してますねぇ、ベッセント氏は。
アメリカも強く出られない事情があることを晒すような話ではありますが、実際に強火の交渉というかチキンレースをするのはトランプ氏好みなので、このままの路線で会談すると思います。ただ、何処まで折れるかは両国の調整力なんだろうと思いますよ。