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琉球が明の属国だった「証拠」掲載してしまうチャイナ・デーリー

中華人民共和国ニュース
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これは……、笑うところなのか?

中国紙、琉球属国の「証拠」掲載 台湾有事答弁、日本揺さぶり狙う

2025年12月2日 16時51分

2日付の中国国営英字紙チャイナ・デーリーは「琉球王国が歴史的に中国の属国だったことや日本による琉球侵略」を示す「重要な証拠」が遼寧省の博物館で公開されたとの記事を1面に掲載した。

livedoorより

内容を詳しく書くと都合が悪いのか、ライブドアニュースでは随分ぼかして書いてある。

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歴史をもっと勉強しよう

冊封時代の沖縄

これの尻馬に乗った報道が中央日報にあって、これもなかなか失笑モノ。

中日間の対立が続く中、中国官営メディア「日本の琉球は中国の属国だった」報道

2025.12.02 10:36

台湾問題をめぐる高市早苗首相の発言で中国と日本の葛藤が深まっている中で、沖縄が過去に中国の属国だったという主張を中国の官営メディアが最近強く前に出している。

~~略~~

報道によると、今回の展示は旅順博物館の収蔵庫に保管されている、かつて明朝が発した勅書を紹介している。明の崇禎帝2年(1629年)に作成されたこの勅書には、琉球(沖縄の旧称)の国王・尚寧が死去すると、明の皇帝が王世子である尚豊の王位継承が妥当であると命を下した内容などが記されていると同通信は伝えた。

中央日報より

琉球国というのは1429年から1879年まで沖縄県に存在した勢力で、沖縄の歴史を見るとこれよりも前の時代も別の勢力が沖縄本島を治めていた。

日本に組み入れられるのは島津氏の侵攻(1609年)以降の話。ただ、それ以前も経済圏としては日本に組み入れられていた様子があって、朝貢は行っているものの日本と支那との間を上手い具合に生き抜いてきた感じの政治を行っている。

日本書紀や続日本紀にも、琉球は登場していて日本の朝廷から服属を求められたり、実際に拝朝をしたりしているんだよね。

日本の歴史では割と有名人の遣隋使の鑑真も、沖縄に寄港したとの記録があるから、関係もそれなりに良好だったことが伺える。

そして、第一尚氏王統の始まった1429年以降、沖縄を治める一大勢力が独自の政治をしつつ、日本や支那との関係を深めていった。この頃には琉球国は明の冊封を受けており、尚豊の王位継承(1590年12月)の下りはある意味当然というか。なお、1636年には薩摩藩から琉球国王の王号を剥奪されて琉球国司を名乗るのもこの人である。

なお、朝鮮だって古代から支那から冊封を受けていたんだが、それは良いのか?中央日報よ。

冊封と化外の地

というわけで、日本の歴史を軽く紐解いてみたが、尚豊王の時代に確かに明から冊封を受けていた。

関連の研究を続けてきた旅順博物館の元副館長、韓行方氏は新華社通信に対して「この勅書は琉球が中国の属国であるという重要な歴史的事実を示した」とし、「琉球の歴史と日本の侵略史研究に重要な証拠を提供した」と語った。

中央日報「中日間の対立が続く中、中国官営メディア~」より

そういう意味では明朝から冊封を受けていた琉球国は確かに属国だったと言えるだろう。ただ、支配下にあったというよりはもう少し緩い、朝貢したらお土産もらえますよ。有事の時には軍隊を派遣してもらえますよというような外交儀礼と権威の承認に基づく関係性で、琉球国が独立国であったことを否定する事実ではないのだ。

だから、「重要な歴史的事実」と言われても、「ふーん、それが何」としか言えないわけで。

実際、明朝は台湾や沖縄を「化外の地」という位置づけにしており、天帝の意向が及ばぬ地であるという認識だった。

ところが、時代が進んで明治政府が改めて沖縄藩を日本だとする「琉球処分(1879年)」を行った際、清朝がこれに反発してきた。

琉球王国をめぐる日本と清の争いの決着、琉球処分とは?

2022/2/20

沖縄本島にかつてあった三山を統一して建国された琉球王国は、1609年に薩摩藩による武力征服を受け、中国の明王朝との君臣関係である冊封関係とともに薩摩藩の属国にもなっています。

~~略~~

琉球王国には、冊封関係を結んでいた清国、薩摩藩の直接支配とが共存する両属状態にあったため、国の在り方が大きく変わった日本が、琉球王国の領土と領有を明確化するためにも琉球処分を行なったと考えられます。

「琉球王国・沖縄の歴史を学ぼう」より

これの原因は、尚豊王が王号剥奪を受けたにもかかわらず、清朝に対しても冊封を受けるという二重朝貢体制をとったことにある。

ややこしいことに、薩摩藩としても清朝との貿易を維持するためにこれを黙認していた。清との貿易は薩摩藩に莫大な富をもたらしたからね。

だから、明治政府の方針には清朝としても反対せざるを得なかった。そして、琉球の清国への朝貢が途絶えたことで、清朝が怒ったという。

で、ここから揉めた結果が、日清戦争(明治27年:1894年7月~明治28年:1895年4月)であり、その結果、日清講和条約の締結(下関条約:明治28年)によって、朝鮮の独立と台湾、澎湖諸島、遼東半島を割譲を勝ち取った。当然、そこには冊封体制や宗主権の放棄が含まれていて、近代的な国際法に基づく日本の主権国家としての地位と行動を全面的に認めたことになる。つまり、沖縄の日本帰属を認めたわけだ。

サンフランシスコ平和条約とその後

なお、大東亜戦争の敗戦後、日本はサンフランシスコ平和条約を結ぶのだが、ここで日本は台湾や澎湖諸島への権利を失い、朝鮮独立を承認。千島列島や南樺太の権利などを失う。

ただし、九州以南にある南西諸島はアメリカの信託統治領とされる条件を呑んだ。

この時、台湾も支那も会議に呼ばれなかったので、後に日華平和条約(昭和27年:1952年)や、日中共同声明(昭和47年:1972年)を結ぶことになるのだが、この時も、沖縄返還(昭和47年:1972年5月)の時にも、沖縄の扱いには異を唱えなかった。

つまるところ、今更、「琉球国は明朝の属国であった」と言われても、そうだね、それが何か?としか言いようがない。

「揺さぶり狙い」と言われましても。

在日本中国大使館、サンフランシスコ講和条約「不法かつ無効」と主張

2025年12月2日 17:25

在日本中国大使館は2日、高市早苗首相が党首討論で引用したサンフランシスコ講和条約について「不法かつ無効な文書」だとX(旧ツイッター)への投稿で主張した。一部の西側諸国が「中ソなど第2次世界大戦の主要戦勝国」を排除して結んだと批判した。

日本経済新聞より

彼らにとっては、サンフランシスコ平和条約は不法で無効な文書らしいけれども、じゃあ、共同宣言の時に言及しなかったのは何なのという話になる。

そして、サンフランシスコ平和条約が不法だということになると、台湾は日本領ってことになるのだが良いのか?朝鮮半島はノーサンキューだが。

なお、この在日支那大使館の発言は台湾を扱いを前提として話をしているので、対象が変わると切り口が変わるのが彼らのやり方なので、正直、あまり気にしても仕方がないね。

まとめ

支那や韓国の反応を見ると、「冊封を受けていた」「属国だった」だから「支配権が及ぶ」みたいな論理展開を期待しているようだが、君たち、歴史の勉強はどうしたんだ、と。

上の論旨を整理しておくと、こんな感じになる。

  • 清朝との下関条約(1895):支那は琉球の主権について一切異論を保留していない
  • サンフランシスコ講和条約(1951):米施政下の琉球の地位が規定
  • 沖縄返還協定(1971):日本に施政権が返還
  • 支那は 日中共同声明(1972) にて異議を一切述べていない

要は、琉球処分(1879年)以降、一回も沖縄帰属について文句を言ったことがないのに、今更何を言っているんだと。

おそらく、これらは国内向けの意見醸成ということになるのだろうけど、国際社会に出たら恥をかくだけだぞ。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    支那理論では、一度でも自分の冊封体制下にあったものは未来永劫オレのもの!なのでしょうけれど。
    20世紀中盤以降の世界は(少なくとも先進国は)『国際条約が全て』『過去は関係ない(条約締結時点で過去を考慮して締結したものとする)』なんですよね。
    この『条約が全て』に反対しているのが支那であり、南朝鮮であり、ロシアである、と。
    ……全部日本の隣じゃねーか……

    で。
    >二重朝貢体制
    これも、今も昔も貧者の戦略以外の何者でも無い。
    下手すると両方から攻め滅ぼされるけど、両方の力が拮抗している(あるいは、両方ともそれほど興味が無い)間は生き延びられる。
    だから、両方を(少なくとも自分の周囲だけでも)拮抗するように持って行く。
    いやあ、なんともしたたか……違うな、ずる賢い……これも違う……
    あさましいとか、腹黒いとか、根性ババ色とか、そんな言葉が似合うやり方だと思う次第。
    ※旗色を明らかにして独立、しないまでもコウモリさんではない立場を得る事をしないので。
    ※面積も人数も国力も明らかに目下の我が国がそれをするから、中華秩序としては「癇癪おこるアル!&ニダ!」になるのですよね。

    「なんくるないさ~」で昼寝している間に國が滅びなかったのは、滅びては困る薩摩のおかげだという事を少し思い知った方が良い>沖縄

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      謎ロジックなんですが、国内向けのアナウンスなので齟齬があっても問題ないと言うことなんでしょうね。

      二重朝貢体制に関しては、色々な国が現在進行形でやっていますから、「駄目」とは言わないんですが、意図的にやっているのであれば、そのデメリットがあることもしっかり理解すべきですよね。琉球に関しては薩摩の庇護を受けていた側面と、薩摩が貿易に利用していた側面があるので、まあお互い様かもしれません。

  2. 軍事オタクより より:

    中共の言葉を借りれば日本も明に朝貢して有るので日本も属国になるかな?
    中国は日本に対して勝ったこと百済の時と朝鮮出兵の時しか勝ったことないくせ
    沖縄の左向きの知事がどう言うか楽しですね

    • 木霊 木霊 より:

      日本も属国にしたいんでしょうね、太平洋に出て行くためには邪魔な位置にありますし。
      過去はともかく、現在の軍事力は侮れません。備えていかねばなりませんね。