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国民民主党のインテリジェンス法案とスパイ防止法の位置づけ

安全保障
この記事は約8分で読めます。

国民民主党が提出したプログラム法案、内容をよく見ると想像以上に踏み込んでいる。

<独自>国民民主党のインテリジェンス法案、全容が判明 3年以内に情報活動機関設置

2025/11/25 21:28

国民民主党が取りまとめたインテリジェンス(情報活動)の強化に向けた法案の全容が25日、判明した。インテリジェンスに関する態勢整備の工程を定めた「プログラム法案」で、3年以内をめどに政府にインテリジェンス活動の機関を設置したり、届け出のない情報収集活動を摘発可能にする制度を創設したりするのが柱。26日に議員立法で今国会に提出し、与野党に賛同を呼びかけて成立を目指す。

産経新聞より

政権交代があろうとなかろうと、これを通してしまえば日本のインテリジェンス体制整備が確実に前進する。その意味での「ヤバさ」がある。

  • 国民民主党のプログラム法案は、独立した情報機関や摘発制度の創設など、日本のインテリジェンス体制を一気に強化する「工程表」になる。
  • 内容はスパイ防止法そのものではないが、合法的な情報収集の枠組み整理を含み、国際標準の体制整備を進めるもの。
  • 政府が計画する国家情報局設置と完全に連動しており、与野党一致で情報戦への備えが急速に進む流れに入っている。
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インテリジェンス制度強化の中身

プログラム法案とは何か

中身を見ていくと、スパイ防止法や国家情報局の設置を含めて、インテリジェンス活動を強化していくことが定められていて、個別の法案を作る話ではない。だが、かなり強力な内容であると言える。

  • 外国によるわが国に対する不当な影響力の行使の脅威が増大しているために、インテリジェンス活動の強化が必須と謳う
  • 国、国民の安全確保と健全な民主主義の根幹の維持に寄与する目的で設置
  • 独立したインテリジェンス機関と、機関を管理する独立行政委員会の設置
  • 内閣に「インテリジェンス態勢整備推進本部」を設置
  • 事前に届け出のない情報収集活動を摘発できる制度の創設

そして、大切なのは最後の一文。

一方で国民の自由と権利を制限するような行為については「必要最小限に限り、公正で適正な手続きの下に行う」と定めた。国民の理解増進と信頼向上に向けて、インテリジェンス活動の実施状況や成果の公表も行うとした。

産経新聞「国民民主党のインテリジェンス法案~」より

この情報の開示がどのタイミングでどのレベルで行われるのが望ましいかは議論の余地はあれど、透明性担保は将来的な恣意的運用への歯止めとして不可欠。

開示レベルの議論は今後必須だが、制度の存在自体は望ましい。

スパイ防止法設置するのか?

ちょっと面白かったのが、この法案に関する各メディアによる理解度の差である。

国民民主、スパイ防止で法案提出 罰則は見送り | 毎日新聞
国民民主党は26日、インテリジェンス(情報収集・分析)態勢の強化や外国からのスパイ活動などの防止に向けた法案を衆院に提出した。3年以内をめどに、政府に対して必要な法整備を義務づける。具体的なスパイ行為を定義した上での罰則は見送った。
国民、スパイ防止法案を提出 インテリジェンス態勢整備:東京新聞デジタル
国民民主党は26日、党独自のスパイ防止法案を衆院に提出した。外国の利益を図る目的の活動に関する届け出制度の創設を明記。国の安全確保や政...
国民民主、スパイ防止態勢整備法案を提出 罰則規定は盛り込まず:朝日新聞
国民民主党は26日、スパイ防止に向けたインテリジェンス(情報収集・分析)の態勢整備の工程を示す法案を衆院に単独で提出した。この法律の公布から1カ月以内に、首相を本部長とする「インテリジェンス態勢整備…

東京新聞はアジビラらしく「スパイ防止法案を提出」と煽り、毎日新聞は「スパイ防止で法案提出 罰則は見送り」とした。朝日新聞が恐らく一番丁寧な見出しを付けていて「国民民主、スパイ防止態勢整備法案を提出」としている。

国民民主党の説明するところによれば、この法案はスパイ防止法の骨格となるべきインテリジェンス機能の創設を重視しており、必ずしもスパイ防止法が必要だとは考えていないようだ。寧ろカウンターインテリジェンスを高めることこそ大切だとの位置づけである。

寧ろ、国家情報局などの機関に、国防を担うインテリジェンス全体の態勢整備を狙う法整備を進めていく法案となっているので、より強力な組織形成には不可欠であると言えよう。

スパイ防止法の制定を巡って、特に重視せねばならない部分は誰がスパイ行為を働いているのか?という対象特定であり、そこから流出した情報がどのような影響を与えたかという評価である。

事前に届け出のない情報収集活動を摘発できる制度の創設」という部分、これは言ってみればスパイ容認法案であるとも言える。実際に、国家におけるスパイの役割の8割は合法的な情報収集である。多くの国家は、届け出をすれば合法的に情報収集活動が行えることが認められている。

国際社会の常識では、各国の大使館こそ合法的な情報収集拠点なのだから、正しく現実的と言える。

インテリジェンス改革との直結

こうした法律は高市政権が予定しているインテリジェンス改革にも大きく関係する。

国家情報局、来年7月設置 インテリジェンス改革第1弾―政府調整

2025年12月05日19時01分

政府が各省庁のインテリジェンス(情報活動)を統括する「国家情報局」を来年7月にも設置する方向で調整していることが5日、分かった。高市政権が目指すインテリジェンス改革の第1弾として、来年1月召集の通常国会に関連法案を提出し、成立を図る。複数の政府・与党関係者が明らかにした。

時事通信より

2026年7月には国家情報局の設置を目指しており、これに関する話は以前にも言及している。

この話はかなり大きな枠組みの変更であり、特に下記の部分がこれまでと大きく変わる部分である。

情報局は既存の内閣情報調査室(内調)を格上げする形で創設し、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁などの情報部門が持つ情報を集約する。外交・安全保障政策の司令塔である国家安全保障局と同格とし、各省庁に情報提供を指示する権限を持たせる方針だ。

現在の内閣情報官の後継ポストとなる「国家情報局長」が情報局を率いる。従前の内閣情報会議は首相や関係閣僚が加わる「国家情報会議」に改め、情報局が事務局を担う。政府は同会議の設置を含めた法案を近く取りまとめる方針だ。

時事通信「国家情報局、来年7月設置~」より

ここは、情報部門が分散していたので、統合して各部門の情報を参照しながら国家安全保障にかかる情報収集活動ができるような流れとなっている。

国家安全保障局(NSS)が、外交・防衛・経済政策の基本方針の企画立案や総合調整、緊急事態への対応を担う機関なのだから、当然、そうした動きをするためには国家情報局の情報が不可欠。これまでより更に情報の精度を上げられるという意味では、国家安全保障局の機能が強化されることになる。

国民民主党の提出したプログラム法案は、まさにこの流れのレールを敷く内容となっていると言える。

国際的にも切望されている

なお、この話はオーストラリアからもつつかれているようだ。

日豪防衛相共同声明-戦略的防衛調整枠組み(FSDC)の設置

2025年12月7日

  1. 令和7年12月7日、東京において、小泉進次郎日本国防衛大臣及びリチャード・マールズ豪州副首相兼国防大臣は、日豪防衛関係及び我々の共通の利益に影響を及ぼす安全保障環境に関して重要な議論を行った。
  2. 我々は、悪化し一層複雑化する地域の安全保障環境の中で、日豪両国が、「特別な戦略的パートナーシップ」をさらに高め、共同の抑止力を強化することを目指す上で、あらゆる分野における防衛協力をより一層強化していく重要性を強調した。我々は、自衛隊(JSDF)と豪国防軍(ADF)の日本、豪州及び地域における活動の増加に取り組むことを再確認した。
  3. 我々は、日豪が地域の平和と安定を維持するために果たす重要な役割を認識した上で、防衛大臣及び国防大臣が主導する戦略的防衛調整枠組み(FSDC)の設置を発表する。FSDCの下、防衛政策及び協力の整合性を支援する関係者が関与する閣僚級会合を、少なくとも年1回、または必要に応じて開催する。2022年の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」(JDSC)のビジョンに沿って、平時から緊急事態に至るまで、あらゆる状況、あらゆるレベルで実効的な連携を確保することを視野に、インド太平洋の安定及び安全を支えるため、FSDCは、防衛政策、インテリジェンス、共同で実施する活動、産業・技術及び宇宙・サイバー・統合防空ミサイル防衛(IAMD)を含む能力に関連する幅広い案件について、より強化された協議を可能とする。我々は、FSDCの活用や他の日豪防衛閣僚級会合を活用し、各々の国家防衛戦略を含む戦略文書の更新に関する情報共有や戦略的整合性をさらに高めることにコミットした。

~~以下略~~

これは日豪防衛相共同声明の内容の一部で、3項目目には「より強化された協議」の前提としてインテリジェンス強化を暗に求められていることが分かると思う。

オーストラリアはファイブアイズに参加している国家で、「日本は早く参加しろよ」という立場にいる。「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」とは、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国が、機密情報(特に通信・信号情報:SIGINT)を共有する情報同盟・諜報ネットワークのこと。

まあ、今後のことを考えると、国家情報局の設置は必須だよね。

まとめ:安保政策はもう止まらない

現政権下で顕著な状況は以下の2点。

  • 公明党が与党にいないことで、安保法制のハードルが下がった
  • 野党側からも安保強化の提案が出てくるようになった

つまり、与野党共通のコンセンサスとして 「情報戦に戦える国にする」 方向へ動き始めている。公明党は野党に転落してから、立憲民主と似たような反応をする批判政党に成り下がった。本性が現れたね。

政府・与党はスパイ防止関連法として、外国の代理人が日本国内で活動する場合に登録を義務付ける「外国代理人登録法」などの国会提出も検討している。ただ、スパイ防止関連法には「監視強化につながる」といった懸念があり、慎重に調整を進める方針だ。

時事通信「国家情報局、来年7月設置~」より

国民民主党が敷いたレールに自民党も乗る構図。進むスピードはむしろ加速するだろう。一方で、支那からの恫喝は更に加速度的に増えていくんだろうね。

日本はようやく情報戦の土俵に上がる準備を始めたのだ。遅すぎるとの批判はあるかもしれないが、やらないという選択肢はないのだ。

コメント

  1. 軍事オタクより より:

    確かに一歩踏み込んだ事案ですね
    マスゴミはとやかく言いそうですが
    日本はガードが甘かったので早く
    法制度進めほしいですね