タイとカンボジアの国境沿いで紛争続く

始まっちゃったな。

タイとカンボジア、国境沿いでの衝突続く　死者数も増加

2025年12月9日

タイとカンボジア両軍は9日、係争中の国境付近で衝突を続けた。タイ空軍はこの日、再び空爆を実施したと発表したが、作戦の詳細については明らかにしていない。

BBCより

タイ空軍が空爆実施か。なんともきな臭いことになってきた。

領土紛争は解決が難しい

プレアヴィヒア寺院を巡る攻防

このブログでもこれの切っ掛けになった事件を取り扱っている。

タイとカンボジアの間で紛争勃発

ニュースに触れた時には、ちょっとした衝突だと思った。だが、事情を調べて見ると、すぐに収まる気配はなさそうだ。カンボジア首相“タイ側が停戦案応じず”主張 住民の被害拡大2025年7月26日 5時38分タイとカンボジアの国境地帯で続く両国の軍に...

www.kodama-yomoyama.com

2025.07.26

歴史的な因縁がある話といえばそうなのだが、何というか「誰が得するんだ」というような話でもある。でも両国にとっては大切な話なんだろう。

日本でいえば竹島の領有権を巡る争いみたいな話である。このケースでどちらが韓国側かという話をしたいわけではないよ？念のため。

プレアヴィヒア寺院はカンボジア領内にあるように見える位置にはあるんだけど、カンボジア側からのアクセスは困難だという不思議な場所である。一応、国際司法裁判所（ICJ：International Court of Justice）が関与してはいるのだけれど、中途半端な結論だったので、未だに揉めているんだよね、帰属に関して。

整備もろくろくしていない感じの史跡だが、それでも観光資源としての価値はあるそうで。

尤も、この争いはプレアヴィヒア寺院がアイコン的な位置づけになってはいるけれど、実際にはイデオロギーを利用した領土紛争というのが実情。

死傷者が出る騒ぎに

今回は、ちょっと騒ぎが大きくなってしまっているようで、再び停戦状態に至るのは時間がかかりそうだ。

カンボジア政府によると、7日に始まった衝突により、これまでに少なくとも民間人7人が死亡し、約20人が負傷した。一方、タイ側では兵士3人の死亡が確認された。うち1人は、グレネードランチャーによって殺害されたという。

両国は、相手が軍事施設ではない民間地域を砲撃したと互いを非難している。

BBC「タイとカンボジア、国境沿いでの衝突続く～」より

残念なことに、両国政府にとってそれぞれ紛争を起こす動機があるのだという。

• カンボジア：国内の詐欺ネットワーク取り締まり問題から目を反らしたい
• タイ：少数派政権を率いる現首相のアヌティン氏の選挙対策

カンボジアは今や目覚ましい経済成長を続けている反面、都市部と農村部の格差が拡大する傾向にある。急速に発展する国家につきものなのが汚職と癒着で、警察幹部と犯罪組織が結びつき、中央からの影響力の薄い地方で特に犯罪が蔓延する事態になっている。

振り込め詐欺とかその辺り、日本にもかなり被害を及ぼしている犯罪拠点がカンボジアにあって大規模摘発されたというようなニュースもチラホラ。

ポイペトやバベットといった国境の経済特区がそうした犯罪の拠点となっていて、その対応に手を拱いている状況なので、カンボジア政府は批判の矛先が向いて欲しくないという動機があるという意味だ。

事は警察の内部事情にも関わる話なのに、犯罪組織の取り締まりを行うのも警察。そんな状況で取り締まりが進むはずもなく、時間がかかるのは避けられない。だから、時間稼ぎに紛争が起きて、ヘイトがタイに向かって貰った方が都合が良いのだろう。

一方、タイ政府の実情も酷いもので、少数政党が延命のために軍事行動を起こしているという……。最悪である。

避難が続く

当然、該当地域の住民は危なくて暮らしていられない。

タイとカンボジアの衝突が拡大 14万人避難

2025年12月10日 8:13

タイとカンボジアの国境地帯での戦闘が9日、複数地点に広がり、双方で死傷者が増加した。数万人の住民が避難を余儀なくされており、米国が仲介した停戦は事実上、崩壊している。

当局によると、これまでに兵士と民間人合わせて少なくとも10人が両国で死亡し、14万人以上の民間人が避難した。

両国は衝突の原因を相手側にあると非難の応酬を続けている。

AFPより

影響は14万人に及んでおり、更に民間人被害も出ている。

アメリカの仲裁ももう機能しておらず、紛争は拡大していく方向に向かっているのだろうね。

まとめ

タイでもカンボジアでも、両国政府がナショナリズムが高まるように国民を煽っているので、非生産的な紛争が継続する方向にある。

かといって、両国政府は問題棚上げを選択することもまた難しい。

日本も複数の国家と領土問題を抱えてはいるが、容易に解決は出来ない。どちらかの国家が立場を譲ったら問題解決するのであれば、そういう選択肢もありなんだろうけれど、実際はそうじゃないからね。