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電動バイクは大気汚染の解か? ベトナム政策を支える現実

アジア
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ベトナムも環境問題には気を使わねばならないようだが、これもまあ建前が半分といったところだろう。

ベトナムのバイク「脱ガソリン」、シェア8割のホンダに打撃…政府が電動二輪普及を主導

2025/12/14 05:00

東南アジア第2位の二輪市場のベトナムで、政府が電動二輪の普及に向けた取り組みを打ち出している。ベトナムはホンダの牙城で、販売シェア(占有率)は8割を占める。ただ、ホンダは現在、ガソリン車の二輪が主力のため、販売に影響が出ている。

讀賣新聞より

だが、「脱ガソリン」を目指すことと、「電動二輪の普及推進」は必ずしもイコールではない。

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その政策の裏に支那の影響?

世界的には排ガス規制の方向へ

この流れ、実のところホンダやヤマハなどの二輪メーカーにはある程度織り込み済みの流れだと思われる。

法規対応に伴う、Honda二輪車の一部機種の生産終了について

2022年4月28日

平素より、HondaならびにHonda製品に関心をお寄せいただき、誠にありがとうございます。

日本国内向け二輪車に対して2022年11月生産分より「令和2年排出ガス規制」が適用※されることに伴い、 一部機種につきましては2022年10月生産分をもって生産終了とさせていただきます。

生産終了によりお客様には多大なご迷惑をお掛けいたしますことを、深くお詫び申し上げます。

今後もお客様のご要望にお応えする製品をお届けできるよう、引き続き最大限の努力をしてまいりますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

HONDAより

日本国内の二輪車事業も排ガス規制の影響で事業規模縮小し、原付きバイクの生産からも撤退することになってしまった。

世界的に排ガス規制の流れにあって、各国への輸出も厳しいことになって来てはいる。ベトナムでもそのような世界的な動向を受けているようには見えるのだが、僕自身はこの流れに非常に違和感を感じてはいる。

その辺りは後の方で論じるとして、少なからずこうした流れをメーカーが把握していたことは間違いないだろう。

ベトナム政府は今年7月、2026年7月から、首都ハノイの中心部で化石燃料で走る二輪の走行を禁止すると発表した。大気汚染対策を理由に掲げており、まずは時間帯を限って禁止する方向だ。30年までに対象の地域を段階的に拡大するほか、南部の大都市ホーチミンでも同様の規制が実施される可能性もある。

讀賣新聞「ベトナムのバイク「脱ガソリン」~」より

大気汚染は実際、ベトナムでかなり深刻な問題になっているようだしね。

安価な電動スクーターが市場に出回る

一方で、ベトナム国内では国産メーカーの電動バイクが、かなり安価に出回っている。

ベトナムの電動スクーター7万円 学生に人気、合格祝いにも

2025年12月14日 2:00

ベトナムで電動スクーターが売れている。国産メーカーのビンファストの最安モデルはバッテリー付きで1200万ドン(約7万円)で買える。ガソリン二輪車よりも安く、手軽な交通手段として学生たちに人気だ。

日本経済新聞より

その理由にやや不安な面を感じるのだが、その辺り杞憂であれば良いのだけれど。

Cheap Battery Risks And Why New Laws Mean Their Days Are Numbered

August 11, 2023

中国を拠点とする英国のコンプライアンス専門家、クライブ・グリーンウッド氏が、中国製の安価なバッテリーがなぜリスクが高く、消費者にとって危険になり得るのか、そしてコンプライアンス法がどのように変化し、EUや米国などの主要市場で販売する場合、将来的に中国製のバッテリーを使用することがほぼ不可能になるのかについて、詳細に解説します。また、バッテリー(およびその他の製品)に関する規制についても深く掘り下げ、早急に遵守する必要がある将来の法規制についても指摘します。

QualityInspection.orgより

やや古い情報ではあるものの、支那製のバッテリーやEV関連部品が、現在もベトナム国内に大量に流入していることは否定し難い。ベトナム製とされる電動バイクの主要部品にも、こうした支那製部品が使われている例は少なくないようだ。

中古車から抜き取ったバッテリーやモーターの流用といった悪質な事例が横行しているとは考えにくいが、EV分野が過剰生産状態にある現状を踏まえれば、在庫を抱えた工場が安値で部品を放出すること自体は珍しい話ではない。

つまり、ベトナム国内に溢れる安価な電動バイクの背景には、支那の経済事情が色濃く影を落としていると見るべきだろう。

バイクの電動化は本当に環境対策に?

ベトナムの大気汚染問題

少し先に触れているが、ベトナム政府が電動バイク推進の理由として掲げているのが、大気汚染対策である。

確かに、ベトナムの首都ハノイや大都市ホーチミンなどでは深刻なレベルの大気汚染があると言われている。

ハノイの大気汚染:世界の都市からの教訓

10/12/2025

2025年12月初旬、国際ランキングでは一貫して、ベトナムの首都ハノイが世界で最も汚染された都市の一つであり、PM2.5のレベルが公衆衛生にとって「非常に有害」かつ「危険」なレベルに達していることが示されました。

~~略~~

国内統計によると、ハノイにおける大気汚染排出量のうち、交通機関による排出量は約50%、産業による排出量は30%、建設活動による排出量は10~15%を占めています。郊外では住宅開発、工業団地の建設、大規模な都市開発が相次いでおり、大気中の微粒子状物質(PM2.5)濃度の上昇に寄与しています。

vietnam.vnより

ハノイ人民委員会の計画では、2030年までにハノイ中心部の12地区にバイクの乗り入れを禁止する計画が上がっているが、電動バイクの推進はその方向性の計画なのだろう。

他に、地下鉄建造も進んでいてハノイ・メトロ2A号線は支那製でハノイ・メトロ3号線はフランス製、ホーチミン・メトロは日本製が採用されていて、国際色豊かである。

ベトナムでは、市民の移動手段がバイクから自動車へとシフトしつつあり、慢性的な渋滞も発生している。これが大気汚染に寄与しているという主張には一定の説得力がある。

ただし、大気汚染の主因が急速な工業化にあることもまた事実だ。だが、経済成長を止めるわけにはいかない以上、そこには踏み込めない。

結果として、規制しやすいバイクに「環境対策」の役割を背負わせるという選択に行き着いたのだろう。

電力需要に追いつかない供給力

問題は、それが電力不足という別の矛盾を生みかねない点だ。

ベトナムEV、電力不足が壁

2022年1月7日 2:00

ベトナムで電気自動車(EV)がお目見えした。同国では主要な交通手段であるバイクから出される排ガスの影響などで大気汚染が年々深刻になっている。市民の健康被害を減らすためにも「電化」への期待は大きい。

日本経済新聞より

2024年の電力状況、発電量は前年比9.4%増、新規の電源開発は停滞

2025年04月15日

ベトナム国内の電力事業を担う国営企業ベトナム電力総公社(EVN)の発表資料などによると、ベトナムの発電設備容量は2024年末時点で8万2,387メガワット(MW)だった(添付資料表1参照)。2022年の発電設備容量(8万704MW)と比べ、わずかな増加にとどまった。

~~略~~

電源別にみると、石炭火力(2万6,757MW、構成比32.5%)とガスおよび石油火力(8,653MW、10.5%)を合わせた火力発電が全体の43.0%を占める。水力(2万3,664MW)の構成比は28.7%だった。太陽光(1万6,410MW、19.9%)、風力(5,037MW、6.1%)を合わせた再生可能エネルギー(再エネ)の構成比も26.0%に達した。しかし、再エネ電源の97%以上が中部と南部に位置しており、北部はわずか593MWにとどまった。

JETROより

未だ石炭火力発電や石油火力発電の比率が多く、これが大気汚染にも影響していると考えられていて、急速に再エネ発電の推進をしているらしい。

ベトナムのビン、再エネやLNG火力に最大4.5兆円投資

2025年3月26日 16:57

ベトナム最大の複合財閥ビングループは、再生可能エネルギーや液化天然ガス(LNG)の電源整備に最大で300億ドル(約4兆5000億円)を投じる。高い経済成長を目指すベトナム政府に呼応し、成長の妨げになる電力不足を解消する。

日本経済新聞より

ただ、再生可能エネルギー発電にはよく知られるように欠点もあるので、これを推進することで電力不足を解決出来るのか?という点はかなり怪しい。

まとめ:何れも支那の影響

ここまで読めば気づく方も多いだろう。EV、電動バイク、太陽光発電、風力発電——いずれも支那が得意とし、かつ過剰生産に陥っている分野だ。

インフラ整備として導入されている地下鉄にも、同様の構図が見て取れる。

冒頭に挙げた電動バイクの普及推進は、大気汚染対策の解答としては及第点とは言い難い。せいぜい、都市の中心部から排気ガスを追い出すための、最も分かりやすい処方箋に過ぎないのだ。

ベトナム政府は政治的には支那と距離を取る姿勢を示してきたが、経済発展のために支那の技術や製品を受け入れ続けた結果、近年はその距離が急速に縮まった印象を受ける。

もっと言えば、支那の過剰生産品を吸収する装置になってしまっているとも言える。

上手く利用しているのか、それとも利用されているのか。

全体を通して見る限り、ベトナムは「政策を選んでいる」というより、選ばされているように見えるのだが——それが杞憂であれば良いのだけれど。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    一時期、日本国内で、主にスクーターが安い支那製に市場を席巻されかけましたが、結局は品質がダメでほぼ消えましたよね。
    同じ事が起きてると思ってます、違うのは、多少なりとも品質が上がった可能性と、支那がバッテリーの余剰をそっちへ回してる可能性。
    なので、バッテリー由来の事故がこれから多発するのではないでしょうかね。
    日本国内だって怪しいのに、ましてや、品質も、保守整備も劣悪(言い切る)な東南アジアにおいておや。
    安いもの買いの銭失いにならない事を祈りますが、安いもの買いの国失いにまでなりそうなんだよなぁ……

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      中華スクーターはそれなりに出回るという話でしたけど、結果的にあまり売れませんでしたね。
      今出回っている電動キックボードみたいなアホアイテムも、一時の流行で終わりそうですね。

  2. 軍事オタクより より:

    七面鳥さんのおっしゃる通り
    志那のバッテリーとか品質は悪いですからね(特にバッテリー)
    ベトナムは以外太陽光発電が多いのですね
    志那に需要な所は握られてますね
    火力発電はガスタービンはいいですが
    ガスの供給場所が限定されるから
    中々大変です
    原発も核廃棄場所も確保しないと駄目ですしベトナムの核の取り扱いも多分悪いと思います
    悩ましい所ですね

    • 木霊 木霊 より:

      それなりの品質になってきてはいるようですが、外れも結構多い。
      ベトナムも厄介な国家ですから、今の流れは止められないでしょう。