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冷却塔原発を実戦投入:中国「華龍1号」の狙い

中華人民共和国ニュース
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おお、スルーしていたニュースだが、案外画期的なことを言っているね。

技術的に新しいというわけではなさそうだけど。

中国初の冷却塔付き「華龍1号」原子力発電ユニットの建設が始まる

2025年12月16日

中国・山東省招遠市(煙台市傘下の県級市)の発表によると、中国で初めて冷却塔を備え、大気を利用する冷却方式を採用した「華龍1号」(注)原子力発電ユニットの建設が始まり、中国広核集団(CGN)の山東招遠原子力発電プロジェクト1号機が2025年11月18日に全面的な工事を開始した。

JETROより

テスト運用ではなく、最初から実戦投入とは。やるな!

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発電所を増やしたい事情

華竜1号の画期的な取り組み

さて、何が「画期的」なのかというと、冷却塔である。

探したら、それらしいイメージを見つけたので紹介しておく。

おわかりだろうか?

山東招遠原子力発電の喻東執行取締役によると、同プロジェクトでは、高さ203メートル、散水面積1万6,800平方メートルの自然通風冷却塔を設置する。従来の海水冷却に代えて、冷却水を塔内で循環させ、大気を冷却源として利用する。海水は補助水源としてのみ使用し、水資源の消費を大幅に抑える。この仕組みによりエネルギー消費を大幅に削減しつつ、また、飛散水率を低減して冷却源の安全性を高めるとしている。

JETRO「中国初の冷却塔付き「華龍1号」~」より

多くの原子炉は海沿いに建設されて、豊富な海水を利用した冷却方法を採用していた。だがその反面、海沿いにしか建設できないという制約がある。

冷却塔方式を採用すれば、理屈の上では内陸部での建設も可能になる。

水源依存度を下げる

内陸部で水資源に乏しい場所では、この取り組みが成功すればかなり大きい。

中広核工程(CGNの子会社)の楊亜璋副総経理は、冷却塔には自備水槽を設けており、補給水の供給が途絶しても、原子炉を30日間以上冷却できると説明した。また、非常時には少なくとも2時間の連続運転が可能で、安全停止に必要な時間を確保できるとも述べた。この設計により水源への依存度を下げ、水資源が乏しい地域や環境規制が厳しい地域でも安定的な運転を可能にするという。

JETRO「中国初の冷却塔付き「華龍1号」~」より

構造としては、だいたい次のようなものだ。

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発電設備ではそれほど珍しい構造ではない。日本ではあまり見かけないが、海外では一般的だ。原子炉でこのタイプの冷却方法を採用するということもさほど珍しい訳では無い。

これは、事故を起こしてしまったスリーマイル島の巨大な冷却塔であるが、外国では結構この手の施設が使われているのを見かける。じゃあ、日本で使われないのが何故か?といえば、それは海水冷却のほうが冷却能力が高く、コストが下げられるからだ。

加えて、この手の巨大構造物は耐震設計が難しく、日本では不利になりやすい。ただし、松川地熱発電所のように、冷却塔方式を採用している発電設備が国内に存在しないわけではない。

水の消費量は増える

ただ、この方式、常に豊富な水を必要とするということはなくなるのだが、消費量そのものは増える。

本プロジェクトでは、「華龍一号」に初めて二次系循環冷却技術を採用し、高さ203m、散水面積16,800㎡となる自然通風冷却塔6基が設置される予定である。この冷却塔により、タービン建屋の直接冷却源は海水から大気へと切り替えられ、海水は補給水としてのみ使用される。海水を大量に汲み上げて循環させるポンプや海水処理設備の稼働による電力消費を抑え、冷却水のリサイクルを実現して冷却水源の安全確保が可能になるとしている。自然通風冷却塔はその大きな貯水容量により、外部からの補給水が途絶える特殊な状況でも、少なくとも2時間は原子炉の継続運転を確保。また本プロジェクトでは、「華龍一号」に対して初めて原子力級の機械通風冷却塔を配置。大容量の貯水池を備え、補給水が失われた状況でも、原子炉に対して30日以上の冷却能力を提供し、原子炉側の冷却安全性を一層強化するという。

原子力産業新聞より

何故なら、気化熱を利用して冷却するからである。

煙突効果によって塔内の空気を上昇させ、水を蒸発させることで冷却効果を得る以上、蒸発した分の水は失われる。

つまり「水依存度を下げる」とは、海に縛られなくなるという意味であって、必ずしも少ない水で済むという話ではない。内陸の水資源が乏しい地域では、むしろ冷却がボトルネックになりかねない方式でもある。

それでも、沿岸部ばかりにインフラが集中してきた現状を考えれば、内陸部に原子炉を建設したいという欲求が出てくるのは当然だろう。

まとめ

再生可能エネルギー発電に傾倒したところで、結果的には安定的な発電能力を確保したいという要望は減らないわけで。更に、ノウハウを獲得して輸出できるようにしたいというのが本音なのだろう。

支那の作る激安原発がさらなる発展を遂げるというのはある意味驚異的なのだが、電力の安定供給はどの国にとっても避けて通れない課題であり、そのニーズに積極的に応えようという姿勢自体は理解できる。

もっとも、その裏に経済的侵食の意図が透けて見えるのも、また事実なのだが。

コメント

  1. 匿名 より:

    マイクロソフトのAI電力のためにスリーマイル原発が2028年に再稼働
    暗号資産マイニングに原発一基分の電力を消費していた中国は地方政府か中央政府の許可が有ったんだろうと思うとAIのために原発をいくつ作るだろう?