記事にしないつもりだったんだけど、気が変わったので簡単に整理しておく。
米軍、ベネズエラ関連の石油タンカー2隻拿捕 ロシア船籍も
2026.01.08 Thu
米軍は7日、大西洋とカリブ海でベネズエラ関連の石油タンカー2隻を拿捕したと発表した。大西洋を航行していたタンカーはロシア船籍で、ロシア運輸省は同タンカーとの通信が途絶えたことを確認した。
CNNより
まずタイトルが不適切だ。
実際に拿捕を実行したのは米軍だが、作戦そのものは米欧の合同作戦である。それを「米軍がロシア船籍を拿捕」と強調し、「トランプ氏の暴走」を臭わせる書き方をするあたり、相変わらず嫌らしい。
海洋法条約を破ったのはどちらか
ロシア船籍石油タンカー拿捕
今回のニュースでは、大西洋とカリブ海でベネズエラ関連の石油タンカー2隻が拿捕された点、そしてそのうち1隻がロシア船籍であった点が強調されている。
概要については、こちらの記事の追記で触れている。
ザックリと触れただけなので、要点を少し纏めておこう。
- 大西洋で拿捕されたタンカー:「マリネラ号」(ロシア船籍)
- カリブ海で拿捕されたタンカー:「M/T ソフィア号」(パナマ船籍)
両船とも、ベネズエラ産原油を輸送していたとされ、以下の違法行為が指摘されている。
- 「船籍」の意図的な偽装・変更:ガイアナ船籍 → ロシア旗を揚げて船籍偽装・船名変更(マリネラ号)、カメルーン旗を掲げて船籍偽装
- AIS(自動識別装置)の停止:位置情報を発信するAISを意図的にオフにして航行
- 制裁逃れの闇取引:経済制裁下にあるベネズエラ産原油を不法に運び、資金源にするためのネットワークに組み込まれている
アメリカ側の主張によれば、何れも「無国籍船」であり、違法行為を行っていたとして拿捕され、アメリカへと護送中であるという。
海賊行為だ!
これに対し、ロシアはアメリカを「海賊行為」だと非難した。
ロシア運輸省は米軍による拿捕を非難し、1982年の国連海洋法条約の下では「いかなる国も他国で適切に登録された船舶に対して武力を行使する権利はない」と主張した。米国は同条約に加盟していない。
CNN「米軍、ベネズエラ関連の石油タンカー2隻拿捕~」より
うんうん、そうだね?
米、露船籍のタンカー拿捕 ロシア側「海賊行為」と非難 両国関係に影響も
2026/1/8 07:39
トランプ米政権は7日、ベネズエラの石油取引に関連し制裁対象の石油タンカー計2隻を北大西洋とカリブ海で拿捕したと発表した。
~~略~~
露下院のスルツキー国際問題委員長や上院のクリシャス議員は同日、タンカー拿捕が国際法に違反する「海賊行為」だと非難。米露間の緊張がさらに高まる可能性がある。
産経新聞より
どうやら、拿捕された船にはロシア人船員が乗っていたらしく、国内向けには抗議せざるを得なかったのだろう。
ただし、アメリカ側のロジックは一貫している。「無国籍船が違法行為を行っていたため取り締まった」という建て付けだ。
実際、この作戦にはイギリス、アイルランドが参加し、アイスランドやガイアナが協力している。多国籍作戦であったことは明白だ。
確かに「ロシア船籍を拿捕した」という体裁であれば海洋法条約違反になる。しかし、「無国籍船による違法行為の取り締まり」であれば話は別だ。
仮にアメリカ側の行為が海賊行為と認定されるとしても、ロシア側もまた船籍偽装・制裁逃れを行っていた以上、どちらも海洋法条約違反というだけの話になる。
影の船団
この件が直ちに米露関係の悪化に繋がるかと言えば、メディアはそう煽っているが、僕亜はそうは思わない。
ロシア、ベネズエラ沖のタンカー護衛で潜水艦派遣
2026年1月7日 12:05
米国がベネズエラ沖で拿捕しようとしていた石油タンカーについて、ロシア政府が護衛のため潜水艦などを派遣していたことが分かった。米政府当局者が明らかにした。タンカーは米ロ関係の新たな火種となっている。
WSJより
奇妙なのは、ロシアの潜水艦が随伴していた件を「護衛」と表現している点だ。
アメリカ政府関係者が「護衛」だと表現したのかもしれないが、そこに潜水艦がいたのは確実だとしても、護衛していた可能性は低いだろう。タンカーに潜水艦を追走させるのはコストに見合わないし、そもそも姿を見せずに「護衛」だと言われても。
既に知られている通り、ロシアのタンカーは老朽化したモノをかき集めて使い捨てのような形で石油の輸送を行っていたと言われている。

こんな古い船を使っているのに、潜水艦で護衛?そんな、まさか。
軍事作戦の様相
更に注目すべきは、今回、米欧州軍が持ち出した装備だ。対潜哨戒機P-8Aポセイドンや、RC-135リベットジョイント偵察機、MH-6Mリトルバード、チヌーク、ブラックホーク、オスプレイ、AC-130ガンシップと、かなり豪華。
ロシアは タンカーには何も積まれていないと主張しているが、同盟国はミサイルなどの極秘の軍事貨物をカラカスまで運んでいた可能性があると懸念していると報じられている。
The Sunより
そして、作戦名は「サザン・スピア」。これはもはや、制裁執行というより軍事作戦の様相だ。
その上で、アメリカ側が「潜水艦が護衛していた」と発表し、ロシア側はこれを否定していない構図になっている。アメリカ側がP-8Aを持ち出して「潜水艦がいた」と言っているのだから、確実にそこにいたのだろう。
また、ロシア側潜水艦を持ち出したと言うことは、積み荷は単なる原油ではなくて、運ばれては困るようなレベルの兵器だった疑いがあったということを意味する。
まとめ
拿捕された「マリネラ」は、過去にイランのために約730万バレルの石油を運び、その収益がテロ資金などになったとされる。故に、今回の拿捕の行く末には様々な国への影響の波及が考えられる。
ロシアも、イランも、ベネズエラも。或いは、北朝鮮などにも影響は出るだろう。支那への影響は不明だが、無関係とも思えない。
そう考えると、今回のベネズエラ電撃作戦は、制裁執行・軍事牽制・違法輸送網の可視化を同時に達成する、極めて緻密に計算された作戦だったと言える。
ただし、従来の国際法の枠に収まらない形で実行された作戦である以上、今後、同種の作戦が各地で正当化され得るという点で、その波紋は決して小さくないだろう。




コメント
こんにちは。
アレですね、もっと『公海上で、船籍の変更は認められない』『航行中に船名を書き換えるなんて何事?』ってのをアッピールしないと。
……マスコミさんは「報道しない自由」なんでしょうけど。
しかし、「マリネラ」って……風評被害で某国の某殿下がおかんむりですよ?
こんにちは。
報道しない自由を行使しているのか、ちょっと調べれば分かることを調べていないのか。
熱い風評被害には、クックロビン音頭を踊って誤魔化しましょう。