朝日新聞がこんなネタを扱うとは珍しい。海上保安庁の巡視船老朽化の話なのだ。
老いる海保の巡視船艇、37%が耐用年数超え、一部は配管に穴や故障
2/13(金) 10:00配信
海難救助や沿岸警備に使われる海上保安庁の巡視船艇386隻のうち、4割近くが更新の目安となる20~25年の耐用年数を超えていることが海保への取材でわかった。老朽化で配管に穴が開いたり、故障で一時航行不能となったりした事例もあり、改修工事で「延命」する船もある。予算が優先される沖縄県・尖閣周辺での警備や、国内の人手不足などが影響しているという。
Yahoo!ニュースより
確かに深刻な問題ではあるんだけど、何らかの意図を疑ってしまうね。
更新はすくに出来ない
老朽化は10年前からの課題
何しろ、この話は今に始まった話ではない。
海保、35%が老朽船 効率運用が課題に
2016年11月5日 20:45
海上保安庁の巡視船と巡視艇計366隻のうち、昨年度末までに耐用年数を超えた船が35%の129隻に上ることが5日、分かった。1977年の領海拡大と漁業水域設定を受けて大量建造した船の更新が進んでいないのが理由。沖縄・尖閣諸島周辺での中国船への対応などで海保の役割の重要性は増しているが、必要な船舶をどう確保するかや効率的な運用方法が課題となっている。
日本経済新聞より
2016年、つまり10年前にも似たようなことを言っていて、この頃から状況はあまり改善していないということになる。だから、「急激に悪化した」というよりも、「長年改善できていない」問題なのである。
政府側は完全に見て見ぬふりをしてきたか?というとそうではなく、対応しなければならないだろうという認識はあったのだ。優先順位が低かっただけで。
優先されたのは大型化・尖閣対応
では、優先順位が高かったは一体……?というと、こちら。
海保「空前の巨大巡視船」建造へ準備着々! “海自ヘリ空母超え”の大きさ 総トン数は既存船の4倍以上に
2025.12.02
海上保安庁は2025年11月28日、今年度の補正予算の概要を公表。そのなかで「多目的巡視船」の調達予算として140億円を計上しました。
多目的巡視船は、大規模災害時の被災者支援や有事における住民避難、領海警備などに使用することが想定されており、海上保安庁では過去最大級の大型船となります。
全長約200m、幅約27m、総トン数は約3万1000トンになる見込み。現時点で最大級の巡視船「れいめい」(6500トン)をはるかに上回るだけでなく、海上自衛隊のひゅうが型も超える巨大艦となります。
乗り物ニュースより
海賊退治や尖閣に対する支那の不穏な動きに対処するために、海上保安庁は大型の多目的巡視船を次々と導入した。その結果、大型船建造に予算が食われて小型船の整備に手が回らないというような結果に。
このことは、冒頭のニュースにも「予算が優先される沖縄県・尖閣周辺での警備や、国内の人手不足などが影響しているという。」と、軽く説明はされている。
「200海里時代」の大量建造によるツケ
1977年の領海拡大(12カイリ化)と漁業水域(200海里)の設定に伴い、当時の日本政府は短期間に大量の巡視船を建造した。
この大量建造のサイクルを迎えた結果、新造船が追いつかないという状況になっている。同時期に大量建造したということは、 更新時期も同時期に集中するのは自明である。
こういう話は、国交省ではありがちで、上水や下水の整備、道路・橋梁の整備など結構な物量を一気に整備した為に、今、一気にあっちこっちで問題が起きている。
……国交省といえば、2012年以降、公明党がずっと大臣のポストを独占してきたんだっけ。
公明党だけが悪いとは言わないけど、「老朽化問題の解決」に真面目に取り組んできていなかったのは、現状を見ても明らかである。
新規整備や個別対策には力を入れてきたかもしれないが、更新・維持管理という“地味だが不可欠な領域”は後景に退いたのではないか。
結局、海保の巡視船も、全国の橋や道路も、「高度成長期の遺産を、人口減少・低成長の今の日本が支えきれなくなっている」という共通の構造的な破綻に直面している。
ある海上保安官は「古い船なら配管に穴が開くことはよくある」と話す。係留用のロープを巻く機械や、搭載艇を上げ下ろしする機械の装置は油圧で動き、小さな穴から油が漏れる度に船員で修理しているという。
Yahoo!ニュースより
そして、困ったことに造船能力も低下しているために、直ぐに更新することも難しいというのが、日本の現状である。
まとめ
巡視船の老朽化は事実であり、軽視できない。だがそれは突然発生した危機ではない。
1977年の大量建造、尖閣対応の優先、人手不足と造船能力の低下。そして高度成長期インフラの一斉更新期という構造問題。少なくとも「いま初めて分かった話」ではない。
そう考えると、予算編成のさなかにこのテーマが大きく扱われたことには、少し考えさせられるものがある。政策の優先順位を動かす材料として使われる可能性は否定できない。「軍事予算よりも、海保に」という意見を作り出そうとしたのだろう。
もっとも、現実は単純ではない。
老朽化が明白である以上、更新と増強を同時に進めるしかない。むしろ、これまでブレーキ役を担ってきた勢力が与党にいない今こそ、抜本的な造船・海保強化を一気に進める好機とも言える。
報道が何を意図しているにせよ、必要なのは危機の強調ではなく、実行への後押しである。


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