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政府与党が防衛装備移転三原則の運用指針の見直しへ

安全保障
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ようやく実現するか。

他国と国際共同開発した武器、第三国にも輸出拡大へ 政府・与党検討

2026年2月18日 5時00分

武器輸出をめぐり、政府・与党は他国との国際共同開発品について、共同開発をした相手国以外(第三国)への完成品の輸出を拡大する方向で調整していることがわかった。政府・与党は輸出する国産武器の目的を限定する「5類型」を撤廃する方針を固めているが、国際共同開発品についても輸出を認める方向だ。いずれも武器輸出を規制する防衛装備移転三原則の運用指針の見直しで実現するもので、国会での法改正などは必要ない。

朝日新聞より

ニュースにも触れられている通り、この「5類型」の撤廃は国会での法改正など不要だ。何処かの勘違い政党が反対しなければ、割と簡単に改正できたのだ。ある意味古い自民党からの脱却を印象付ける第一歩となるだろう。

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現実的な運用へ

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武器輸出三原則の歪み

さて、先ずは忌々しい武器輸出三原則について、簡単に説明しておこう。「今更」という方も居ると思うが、少しお付き合い願いたい。

武器輸出三原則とは、日本が武器を輸出するに当たって定めたルールである。正確に言うと、輸出しないために定めた言い訳と言っても良い。

枠組みが出来たのは佐藤栄作の時代

1.武器輸出三原則(1967.4.21)

 武器輸出三原則とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策をいう。

(1)共産圏諸国向けの場合 (2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合 (3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合 [佐藤総理(当時)が衆院決算委(1967.4.21)における答弁で表明]

外務省のサイトより

1967年、当時の首相 佐藤栄作 が国会答弁で示した武器輸出三原則は、

  • 共産圏諸国
  • 国連禁輸国
  • 紛争当事国

への輸出を認めないというものだった。

元々、当時総理だった佐藤栄作は平和主義者ではあったが、この三原則は武器輸出を全面禁止を意図するものではなかった。

禁輸が決定づけられたのは三木武夫の時代

転機は1976年、首相 三木武夫 による政府統一見解である。「慎む」という表現ながら、事実上の全面自粛として運用されるようになった。

2.武器輸出に関する政府統一見解(1976.2.27)

 「武器」の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない。

(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。 (2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。 (3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。 [三木総理(当時)が衆院予算委(1976.2.27)における答弁において「武器輸出に関する政府統一見解」として表明]

(注)わが国の武器輸出政策として引用する場合、通常、「武器輸出三原則」(上記1.)と「武器輸出に関する政府統一見解」(上記2.)を総称して「武器輸出三原則等」と呼ぶことが多い。

外務省のサイトより

この時代背景にベトナム戦争(1955年11月~1975年4月)があったことは、疑いようがない。

その判断がベストだったかは分からないが、当時の判断には、時代なりの合理性があったと言える。つまり、その時代に合った判断は必要なのである。

運用方針見直し

問題は――その前提が今も続いていると見なしてきたことだ。

現在の安全保障環境は、冷戦期とはまったく異なる。

複数の政府・与党関係者が明らかにした。自民と日本維新の会はすでに運用指針見直しに向けて協議を開始しており、国産武器の輸出を「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の五つの目的に限定する「5類型」の撤廃で一致。政府は18日召集の特別国会期間中に運用指針を見直して「5類型」を撤廃し、殺傷能力のある武器の輸出を解禁する方針だ。

朝日新聞「他国と国際共同開発した武器~」より

脅威の構造の変化

冷戦期は東西二極構造だった。国家対国家の明確な対立が前提で、「武器を渡せば紛争を助長する」という図式が成立していた。

しかし現在は多極化し、グレーゾーン事態が常態化している。台湾海峡、南シナ海、ウクライナ戦争。抑止のための装備協力は、むしろ安定の前提となっている。

武器移転=紛争助長、という単純な構図ではない。

装備の性質が変わった

戦後、日本の兵器が実戦を経験せずにガラパゴス化してしまったが、兵器の在り方は変わった。ユーロファイターやF-35Aの開発に見られるように、特に高額になりがちな航空兵器の共同開発の流れは世界でも進められている。現代の兵器の多くは高度化・複雑化し、開発費は国家単独で負担できる水準を超えてしまったのだ。

もはや「国産か否か」という議論自体が時代遅れで、現代装備は最初から国際共同体の中で設計される。

日本にとって象徴的なのが、日英伊による次期戦闘機共同開発計画、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP:Global Combat Air Programme) だ。

高額兵器の国際共同開発は「選択肢」ではなく「前提」になった。

にもかかわらず、第三国移転を原則認めない運用を続ければどうなるか。

開発コストを分担しながら、市場は閉ざされる――これでは制度として不合理である。

同盟の意味が変わった

かつて兵器は「国内で作り、国内で守る」という発想だったが、いまは違う。

  • 供給網の共有
  • 弾薬の相互補完
  • 産業基盤の維持
  • 技術の統合

防衛装備は同盟のインフラになっている。そうすると、輸出できない国は、共同開発の信頼パートナーになれないのだ。

「5類型」の撤廃とその意味

だからこそ、輸出可能な運用にせざるを得ないのだ。

今回の見直しでは、国産武器の輸出を以下のように改めている。

運用指針ではまた、「5類型」とは別に日本と他国による国際共同開発品についての規定も設けられている。国際共同開発品の完成品についてはこれまで日英伊で共同開発する次期戦闘機の計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」を除き、共同開発をした相手国以外への輸出は認められてこなかった。しかし、今回の運用指針見直しで、共同開発した武器の輸出は次期戦闘機以外にも第三国への移転を認める方向だ。

朝日新聞「他国と国際共同開発した武器~」より

輸出を「救難、輸送、警戒、監視、掃海」に限定してきた「5類型」を撤廃する。さらに、GCAPのみ例外的に認められてきた共同開発品の第三国移転を一般化する方向とした。

つまり今回の運用指針見直しは、武器輸出の例外的扱いを一般化するものであり、国際共同開発品について、第三国への移転を可能にする方向への転換である。

ようやく、制度が現実に追いつきつつある。これは軍拡ではない。制度の合理化なのだ。

見直さなければどうなるか

もし現行の硬直した運用を維持すれば、

  • 共同開発からの排除
  • 装備価格の高騰
  • 技術の空洞化
  • 抑止力の弱体化

といった、自衛隊自身の弱体化を招いてしまう。

もはや、過去の常識に囚われて国防に対して足枷をつけ、自己満足できる時代は終わりを告げているのだ。戦後80年、大きな破綻が表面化しなかったのは幸運と同盟環境に恵まれていたからに過ぎない。制度が有効だったからではなく、弥縫策で取り繕ってきた結果なのだ。

そして今、その制度に限界が来ている。

その制度を頑なに維持することは、理念を守るつもりで現実から目を背け、日本の安全保障を損なうことになる。

まとめ

1967年の「武器輸出三原則」は、もともと共産圏・国連禁輸国・紛争当事国への輸出を禁じる限定であった。1976年の統一見解によって事実上の全面自粛へと拡張されたが、おそらくはその時代には合理性があった。

しかし前提は変わった。

  • 脅威構造が変わった
  • 装備の性質が変わった
  • 同盟の意味が変わった

制度が変わらなければ、むしろ不合理になる。

今回の運用見直しは、「平和を希求する」という理念を否定するものではなく、時代に合わせた運用の修正なのでだ。「輸出しないから平和」という発想は、もはや現実の抑止構造を説明できない。同盟国と装備を共有し、共同開発し、相互運用することこそが均衡を保つ手段となっている。

ようやく、日本の制度が安全保障の現実に追いつこうとしている。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >何処かの勘違い政党
    死せる公明、生きる自民をよみがえらせる、ですね。

    法の見直し(憲法含む)が許されないなら、我々は今も「十六条憲法」を遵守しなければならないですからね。
    ゆく川の流れは絶えないのですから、法も人もその時々で最適化して行かなければならない。
    意識高くてエラい人にはそれがワカランのですよ。

    ところで、GCAPにジャガイモ国が秋波を送っているとか……
    ジャガイモ国には、仲良くカエル喰いと喧嘩していて欲しいです。

    • kazmag より:

      装備運用の見直しもいいけど、いい加減ポジティブリスト式の運用もなんとかした方がいいと思うんだが、俎上には上がらないのだろうか……

      • 木霊 木霊 より:

        ポジティブリスト式の運用を止めるには、憲法改正が必須ですから。
        ……9条があっても自衛隊を軍隊認定するなら、アリでしょう。が、そうすると色々また法の不備が。

    • 木霊 木霊 より:

      憲法の見直しはやらざるを得ませんよね。
      憲法だろうが法律だろうが、メンテナンスは必須。

      GCAPは、ジャガイモ載せて飛べば良いんじゃないですかね。
      ただ、口出しはして貰うのは困るので、黙っていていただけると嬉しいですね。