日本ではまだ大きく報じられていないが、中国が南シナ海で既成事実の積み上げを続けている。
中東戦争の隙突き、中国が南シナ海に「浮遊式障害物」設置
Posted April. 17, 2026 10:14, Updated April. 17, 2026 10:14
中国がフィリピンと領有権を争う南シナ海のスカボロー礁の入り口に、浮遊式の障害物を10日と11日の2日間にわたり設置していたことが確認された。米国・イスラエルとイランの戦争で米国の関心と戦力が中東に集中する中、対中国牽制の度合いを試し、インド太平洋における統制力強化を狙った動きとの見方が出ている。
東亜日報より
この南シナ海のスカボロー礁の周辺は、フィリピンのEEZ内の岩礁なのだが、台湾も支那も自国の領土と主張し、支那は実効支配を強めている海域である。
今回確認された「浮遊式障害物」は、単なる示威ではなく、航行制限や拠点化に繋がる布石と見るべきだろう。
フィリピンの事情
所有権争い
フィリピンの前大統領の時代には、ある程度和解できていたが、現政権になってから再びスカボロー礁の所有について揉めている状態である。
中国船「スカボロー礁から姿消す」 比国防相
2016年10月28日 22:48
フィリピンのロレンザーナ国防相は28日、南シナ海で中国とフィリピンが領有権を巡って対立するスカボロー礁(中国名・黄岩島)近くにいた中国船が3日前から姿を消したと明らかにした。同礁は中国が2012年から実質的に支配する。先週の両国の首脳会談で南シナ海問題を平和的に解決することで合意していた。
日本経済新聞より
「平和的に解決」の意味が、争いを棚上げにするという話だったようで、結局、支那は侵略に乗り出している。

どんなマッチポンプなのか、という話だ。
南シナ海を巡ってはフィリピンが中国の海洋進出を阻止するため13年、国際的な仲裁裁判所に提訴。16年7月に南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶという中国の主張を退ける判決が出た。フィリピンのドゥテルテ大統領は10月20日に中国で習近平国家主席と会い、平和的に解決することで合意した。
ドゥテルテ氏は帰国後、スカボロー礁での漁業について中国と協議したと明かした。「数日待てば(比漁民が同礁に)戻れるかもしれない」とも述べていた。
日本経済新聞「中国船「スカボロー礁から姿消す」~」より
個人的にドゥテルテ氏の手腕はなかなかだと感じていたが、この判断は結果的には悪影響を及ぼしたのでは?と、現在はそのように思っている。
いわば、摩擦の回避と引き換えに主導権を失った構図だ。
これって、日本も失敗したやり方だからね。
再び領有権争いが勃発
実際に、ドゥテルテ氏が退任した後には、争いが再燃している。
スカボロー礁、中国が実効支配強化…フィリピン船に放水銃攻撃・「自然保護区」指定
2025/09/22 23:00
フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にある南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)を巡り、中国が実効支配の動きを一段と強めている。米国との同盟を重視するフェルディナンド・マルコス政権との対立が深刻化している。
讀賣新聞より
これについて、現フィリピン大統領のボンボン・マルコス氏を批判する向きもあるのだが、僕は「何を無責任な」と言う感想しか出てこない。
確かに、ドゥテルテ氏の時代には支那との距離を縮める政策を採ってきたのだが、今や支那経済の没落によって支那から資金の引き出しをするのが極めて難しくなっている。であれば、フィリピンとしては親米政策を採ることに何の不思議もない。
実際、フィリピンは支那からの240億ドル規模の経済支援を約束していたはずだった。だが、その巨大プロジェクトは頓挫。約束は履行されなかった。
9月16日、スカボロー礁周辺で比漁業水産資源局の船が中国海警局の放水銃を受け、飛散したガラスで乗組員1人が負傷した。攻撃は約30分続いた。中国側は10隻以上の比船が「違法に領海に侵入した」と主張した。中国海警局の報道官は「比側の故意の主権侵害や挑発行為は悪質だ」と言い立てた。比当局は中国側から、実弾演習を行うとの警告があったとして「深刻な脅迫だ」と非難した。
讀賣新聞「スカボロー礁、中国が実効支配強化~」より
「金の切れ目が縁の切れ目」とは良く言ったモノで。
実際に、無法な海洋進出を続けている現状は続いているので、支那と手を結んだことで一時の安寧を得たフィリピンだったが、現状は以前より悪化している。
ドゥテルテ氏にとっては、国内の腐敗に対決するために時間が必要だったから、これが全く無意味だったとは言わないまでも、良策だったかはちょっと怪しい。
日本の安全保障として
「遠い話」ではない
というわけで、フィリピンにとっても由々しき問題ではあるが、この話は日本にとってもかなりクリティカルな話だ。
中国、南シナ海スカボロー礁入り口を封鎖の動き 衛星画像で判明
2026年4月15日午後 6:51
ロイターが入手した衛星画像によると、南シナ海のスカボロー礁を巡るフィリピンとの緊張が高まる中、中国は同礁への入り口をふさぐように船舶や障害物を配置している。
ロイターより
中東の話もかなり気にはなるが、情報戦が展開されていて何が正しいのかイマイチ判然としない状況である。
一方で、支那のこの暴挙は、衛星写真という物証がある話。

つまり、単なる噂話程度の話ではなく、現実の脅威を伴うもの。
今月10日と11日に撮影された写真には、4隻の漁船、中国の海軍または海警局 の船舶1隻、そして1つの新たな浮遊式バリア が写っている。
ロイター「中国、南シナ海スカボロー礁入り口を~」より
恐らくは、スカボロー礁の湾内でなにか工事を始めようという狙いがあるのだろうけれど、すでにこういった工作活動は南シナ海の随所で行われている。
基地化した場所
既に10年前ごろから報じられているニュースではあるが、複数の軍事拠点が南シナ海には存在している。
リンク先の写真の一部をお借りしてきて2017年現在のものだが、この時点で既に複数の軍事拠点が写真で確認出来る。



こうした拠点が「安全と平和」に繋がるとは、誰も信じてはいまい。
冒頭のニュースは、スカボロー岩礁でも同じことが行われるということを示唆している。この基地化が進んだ先に何があるのかといえば、ホルムズ海峡の海上封鎖と似た結果になるのである。
今回の浮遊式障害物の設置は、2月28日に始まったイラン戦争とも無関係ではないとの分析もある。特に、イランが封鎖する原油輸送路ホルムズ海峡に対して米国が「逆封鎖」に踏み切ったことが影響した可能性が指摘されている。15年以降、南シナ海で「航行の自由」作戦を展開して中国を牽制してきた米国が、ホルムズ海峡で逆封鎖に出たことで、世界的な「航行の自由」の原則が揺らいでいるということだ。
東亜日報「中東戦争の隙突き~」より
東亜日報がちょっと何を言っているのか良く分からないが、革命防衛隊がやった実質的な海上封鎖こそ、支那が目指していることだといえよう。
シーレーンへの影響
ここで重要なのは、日本への影響である。
南シナ海は、日本のエネルギー・物流の大動脈であり、ここが支那の支配下としてコントロールされることは、ホルムズ海峡と同様のリスクを意味する。
つまり、
- ホルムズ海峡=資源の入口
- 南シナ海=輸送の中間経路
の両方が揃って初めて、日本のシーレーンは成立している。
この一方でも制約されれば、実質的な封鎖と同義になる。
まとめ
ホルムズ海峡の騒ぎに乗じて、という側面はあるものの、支那にとってはその「実効性の高さ」に大きな自信を持ったのではないか。
台湾侵攻の話は、クリミア侵攻(2014年)以降かなり現実的なオプションとして検討され始めたが、海上封鎖のやり方も、ドローンを利用したものが実効性が高そうだと言うことを証明したのが革命防衛隊なのである。
日本では積極的に報じられてはいないが、ホルムズ海峡の事態以上に危機感を強めるべきではないだろうか。そのためには、フィリピンの防衛にもっと積極的に関与していくべきだろう。


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