支那も苦しいところだけど、アメリカに対して非難声明を出しても効果はないだろうね。
米、イラン産原油を大量購入の中国独立系製油所に制裁発動
2026年4月26日午前 9:52 GMT+92026年4月26日更新
米財務省は24日、中国の独立系製油所(ティーポット製油所)である恒力石化に対し、数十億ドル相当のイラン産原油を購入したとして制裁を発動したと発表した。
ロイターより
独立系製油所が締めあげられる話は、2025年3月頃からチラホラと報道があったようだが、ここへきて一気に表面化した。そして、窮地に立ったのは支那、だけではなくてイランもなのだ。
苦しい懐事情の理由
非難の根拠がよく分からない
このアメリカの行動に対して、支那側は苦しい非難をしている。
大使館の報道官は声明で、「われわれは米国に対し、貿易や科学技術問題を政治化し、それらを武器や道具として利用することをやめ、中国企業を標的にするために様々な制裁を乱用することをやめるよう求める」と述べた。
トランプ政権は昨年、河北新海化工、山東寿光魯清石油化学、山東盛興化工の3社に対し、制裁を発動した。
ロイター「米、イラン産原油を大量購入の~」より
アメリカの制裁は「違法な制裁」らしいのだが、ちょっと言っている意味がよく分からない。
確かにアメリカの作戦は、国連決議に基づいたものではない。そういう意味での違法性が問われる可能性はあるのだが、今回の話は戦争状態にあるイランとの関係で制裁を課したということで、一応理はあるのだ。
そしてこれは、どちらに正義があるとかないとかそういう話ではなく、アメリカと支那との間の経済戦争の影響が表に出ているという構図の話である。
アメリカと支那との間には様々な確執があって、高率関税を始めとしたアプローチがあることは知られた話。だが、特に薬物関連でアメリカはかなり怒っていて、これの取り締まりや、イランなどへの援助などを理由にかなり拗れている。良いとか悪いとかの話ではなく、明確な敵対勢力なんだよね。
制裁対象となった「恒力石化」
制裁対象となった恒力石化は、年間売上高2,000億元超、原油処理能力2,000万トン級を誇る、中国民間石化企業の巨頭である。
事業内容は、 精製、石油化学、ポリエステルの新素材、繊維・家庭用繊維などの垂直統合型事業を手掛けており、遼寧省大連市に世界最大規模の石油精製・化学プロジェクトを擁している。そして、この製油所には、東芝三菱電機産業システム株式会社が各種圧縮機・ポンプ・押出機用「電気駆動システム」(モータおよびインバータ)をそれぞれ2019年5月、12月に納入している。
この日本企業の産業設備も導入されたことの意味は、同社が単なる地方業者ではなく、国際調達で巨大設備投資を行う近代的大企業であることが分かる。
中国石化企業、エネルギー転換需要増で高付加価値製品にシフト
2023年07月24日(月)16時44分
中国の石油精製会社や石油化学会社は太陽光パネルやリチウムイオン電池向けなど、付加価値の高い化学製品の生産に多額の資金を投じている。エネルギー転換技術に対する需要が高まる中、利益の拡大を狙う。
Newsweekより
この記事でも指摘されているが、大規模な投資をした結果、支那の産業発展の一翼を担うような位置づけの会社に成長している。
アメリカの制裁は、随分とアメリカ経済への影響がある企業を狙った可能性が高い。まあ、恒力石化がイラン産の安い原油を手に入れて、安く高機能製品を売り出していたからこそ狙われたという側面はあるのだろう。
製油所にあるのは隠れイラン産原油
ところで、制裁対象になったティーポット製油所だが、支那の国有石油メジャーとは別系統の民間・地方系製油所の総称で、安価な原油調達に積極的とされる組織。
ところが、ちょっと前から影響が出ていたらしく、こんな報道があった。
中国、商業用の石油備蓄取り崩し容認-中東情勢で世界的な需給逼迫
2026年4月10日 at 14:02 JST
6週間に及ぶ中東の紛争で世界のエネルギー需給が逼迫する中、中国政府は国有精製会社が商業用の石油備蓄を取り崩すことを認めた。事情に詳しい関係者が明らかにした。
中国石油化工(SINOPEC)や中国石油天然ガス集団(CNPC)などの精製会社は、製油所や貯蔵施設にある商業在庫を活用できるようになるという。協議の非公開を理由に関係者が匿名で語った。
Bloombergより
何が影響して支那共産党が方針を転換したのか?と不思議に思っていたが、イランとの取引の多い製油所であれば、深刻なダメージを受けるのは当然である。
関係者は取り崩しの具体的な規模を明らかにしなかったが、エナジー・アスペクツのアナリストによると、中国は4-6月(第2四半期)に日量約100万バレルの使用を認める可能性がある。一方、FGEネクサントECAは、商業および運用在庫の取り崩しが今月、最大で日量100万バレルに達する可能性があると試算する。中国の原油輸入量は日量1100万バレル。
Bloomberg「中国、商業用の石油備蓄取り崩し容認~」より
以前、中東からの原油の輸入量は3割程度だから、ロシア産原油に振り替えることで影響は軽微に抑えられるという話を紹介した。
ところが、ガソリンの販売や輸出を厳しく制限し始めたという、矛盾した行動に出たのである。

これの答え合わせの1つが、今回の冒頭のニュース。実は、この独立系製油所の輸入する原油はイラン発、東南アジア経由のもので、マレーシア産などと偽って行っていたもののようだ。その総量は12~15%で、実はイラン原油依存度は支那全体の輸入量の40~50%だったということのようだ。
当然、ロシア産原油に振り替え可能だというのも嘘。ロシアからの原油パイプラインは細く短いこともあって、急激に送量を増やすことが難しい。また、海洋ルートは目を付けられているので使えない。
その為、国家備蓄の取り崩しを容認せざるを得なくなったという構図だ。
革命防衛隊の資金源
で、この話はイランにとっても結構厄介で、アメリカの説目によれば、この独立系製油所は革命防衛隊(IRGC)の資金源になっているということのようだ。
2020年3月から2023年1月にかけて、山東盛興は中国石油天然気有限公司(COPC)に8億ドル以上の電信送金を行った。COPCはイラン革命防衛隊コッズ部隊(IRGC-QF)のフロント企業であり、イラン産原油の中国への販売を支援していた。COPCはIRGC-QFを支援するため、米国の金融システムを通じて数十億ドルを資金洗浄し、そのうち1億800万ドルは 米国司法省によって押収された。
山東盛興は、イラン経済の石油部門で事業を行っているとして、大統領令13902号に基づき指定される。
アメリカの公式サイトより
影の船団を利用した輸送ネットワークを使って、イランからの原油を調達していたのだが、輸出する側がIRGCで独立系製油所は人民解放軍の関連会社だった疑いが強い。
原油は積み替えや船籍変更、AIS(船舶位置情報)の遮断などで産地を曖昧にし、マレーシア産などに見せかける手口が指摘されていて、これは完全に国際海洋法条約にも違反する行為だ。つまり、根拠は十分というわけだね。
ここと、カーグ島の両方を抑えたことで、いよいよIRGCは苦しくなってくるというわけだ。カーグ島の苦難の話はこちらにも書いたけれども。

そして、IRGCの資金を締め上げるということは、ヒズボラやフーシ派の資金源に打撃を与えるという意味でもある。
まとめ
アメリカの戦略は、イランと支那の両方を締め上げる作戦で、支那に対してはジワジワと効いてくる作戦だが、イランにはダイレクトアタックということになる。
イラン産原油は制裁下ゆえ値引き販売されやすく、支那にとっては安価な調達源だった。景気減速と不動産不況に苦しむ支那経済にとって、安いエネルギーは魅力が大きい。
一方、IRGCは資金源が枯渇しかねない事態になったので、大きく抵抗力が削がれる可能性が出てきている。それでもゲリラ的な活動は続けられるのだろうが、国家単位での抵抗は難しくなってきそうだ。
だが、この話は日本にも大きな影響が出る可能性が高い。日本への影響としては、原油価格上昇、LNG価格連動、海上保険料上昇、紅海・中東航路の物流遅延などが想定される。ガソリン価格や電気料金にも波及し得るリスクに備えて政府は動いているが、果たして間に合うのだろうか?




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