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教科書通りに動けない日銀 利上げ見送りは本当に誤りなのか

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政治
この記事は約6分で読めます。

一橋大学の名誉教授によるコラムなのだけれど、記事の内容には違和感を感じた。

物価上昇が明白なのにまたもや「金利引上げ見送り」高市政権に配慮する日銀が忘れてしまっていること

2026.05.08

日本銀行は、利上げを見送った。その理由として、植田総裁は、イラン情勢の影響を見きわめる必要があるため、と述べた。しかし、ホルムズ海峡閉鎖の影響は、すでに、原油価格上昇という形で明白に現れている。ただ、高市政権のガソリン価格抑制策で見えなくなっているだけのことだ。現時点で必要なのは、価格抑制策ではなく、金融引き締めをはじめとする総需要抑制策である。

現代ビジネスより

言っていることは、原理原則的には間違っていないと思うんだけど、ちょっと粗い論説のように感じたからだ。

国際情勢を見極め

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利上げすべきタイミングか

この手の話題を出す時は常に言うようにしているのだが、正直、僕自身が経済の方面に明るくはない。なので、経済理論的にどうか?と言う話は、話半分にして聞いておいて欲しいのである。

と、逃げ口上を書いた上で、現状の日本の状況を見るに、教科書的には利上げをしておきたいというのは説得力のある話だと思う。

需給ギャップが広がっていて、利上げをするに足る状況であると言えるのだと思う。

利上げの準備を進めてきた日銀が方向転換を余儀なくされたのは、中東混迷の長期化だ。

原油価格の上昇は、消費者物価指数を押し上げる。これは、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率を高め、物価上昇を促す。

また、原油高は輸入コストを増加させ、国内景気を下押しする。ガソリン価格の上昇などを通じて家計の消費を抑制し、輸送や生産コストの上昇によって企業収益を圧迫する。

こうして、 物価高と景気後退が同時に進む「スタグフレーション」のリスクが高まる。

現代ビジネス「物価上昇が明白なのにまたもや~」より

実際に、読みを見誤るとスタグフレーションリスク(物価高と景気後退が同時に進む経済現象)が高まるという指摘は、全くご尤もである。

利上げしたかった日銀

この現代ビジネスの記事の前には、朝日新聞がこの様なニュースを報じていた。

物価上昇リスクに「ちゅうちょなく利上げを」日銀3月会合の議事要旨

2026年5月7日 20時36分

日本銀行は7日、政策金利を据え置いた3月の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。中東情勢を受けた原油価格の高騰によって、物価上昇への対応が後手に回る懸念が示され、複数の委員から早期の追加利上げを求める声が上がっていた。

朝日新聞より

この、朝日新聞のニュースより前に日本経済新聞はこの様なニュースを報じていた。

日銀利上げ、経済学者の見方割れる 「円安是正を」「景気下押し」

2026年4月25日 2:00

中東情勢を背景とした物価高と景気悪化への懸念が高まる中、金融政策のかじ取りをどうするか。日本経済新聞社と日本経済研究センターによる経済学者向け調査「エコノミクスパネル」での見方は割れた。日銀が4月に「利上げすべきだ」との回答は30%で、「すべきでない」(28%)と拮抗する。円安への対処を求める声が上がった一方、利上げの副作用を指摘する見方も目立った。

日本経済新聞より

経済学者の多くは、4月のアンケートで「ちょっと今はタイミングと違うかも」という印象を持っていたという内容である。

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日銀としては、去年末から2月頃にかけて1回は利上げをする予定だったと思われる。2025年12月19日に、金融政策決定会合で決定され、政策金利(無担保コール翌日物金利)を0.5%程度から0.75%程度へ引き上げをした。それの前が、2025年1月で0.5%に利上げしている。

reuters.com

こういったスパンと世界経済見通しなどの影響を受けて、4月には前倒しで利上げしていく予想がでていた。

見極めに時間を要する

こうした中で、現代ビジネスの記事では、「見極めている場合か」との論調を展開している。

しかし、「その状況を見極める必要がある」との見方には賛成できない。

なぜなら、日本のガソリン価格は、潜在的にはすでに高騰しているからだ。ただ、それが政府のガソリン価格抑制政策によって引下げられているために、現実の経済活動に影響を与えていないというだけのことである。問題が生じていないのではなく、政府の政策がそれを打ち消しているので、見えなくなっているだけのことである。

そして、本来であれば、政府が現在行なっているような価格政策で値上げを見えなくするのではなく、ガソリンに対する需要を抑制する方向での政策が必要なのである。

現代ビジネス「物価上昇が明白なのにまたもや~」より

要するに現代ビジネス側の主張は、「原油高は避けられないのだから、補助金で価格を誤魔化すのではなく、利上げによって需要そのものを抑えるべきだ」という話である。

なるほど、これ以降に政治的なスケジュールがなければ、そうすべきだとは思う。

ただ、政府のガソリン価格抑制政策はいつまでも続けられるモノではなく、どこかで出口を求める必要がある。

ガソリンの暫定税率(当分の間税率)の廃止でガソリン代はどうなるの?よくいただく質問に、資源エネルギー庁がお答えします!
ガソリンの暫定税率の廃止でガソリン代はどうなるの?よくいただく質問に、資源エネルギー庁がお答えします!

ガソリン税の暫定税率廃止を去年末に行い、単純に税率廃止するだけではなくて、政策的な整合をとるための予算措置が今年度の予算に組み込まれた。その成立の足を引っ張った野党の姿勢は理解できないのだが、それはさておき、トレンドとしては年内はガソリン価格の引き下げという方向に動かないと思われるので、利上げをした方が良い理由はそれなりにあるのだ。

一方で、韓国の選挙前のKOSPI引き上げ政策は、6月には一息つく可能性があって、ここで大きく崩れるリスクがある。

KOSPI7000の裏側…韓国政府が銀行に圧力をかける理由
凄いこと言い出したな。キム・ヨンボム「銀行、完全な民間企業じゃない…「社会的役割」は契約履行」入力2026.05.05.午後8時47分キム・ヨンボム大統領府政策室長が5日、金融圏信用格付けシステムの再設計に関連して「この構造を変えようとする…

更に、韓国の場合は例年9月頃に経済的な息切れを起こすことが多く、不安定になりがちなので、第1波(6月)、第2波(9月)はショックに備えておく必要がある。

reuters.com

利上げもリスクに繋がるんだけど。

首脳会談直前

もう1つがアメリカと支那との会談である。

トランプ氏は台湾で譲歩するか 米中首脳会談、米専門家に聞く

2026年5月11日 5:16

トランプ米大統領は14〜15日に北京を訪問し、習近平国家主席と会談する。11月の米中間選挙を前に中国側から経済面での成果を得たいトランプ氏が、習氏の求めに応じて台湾問題で譲歩することはないのか。米国の専門家に聞いた。

日本経済新聞より

イラン戦争が起こっている最中に会談をするのだが、経済的には非常に大きなインパクトがあるホルムズ海峡の封鎖を、「何としても止めて欲しい」というのが支那側の立場。

北京会談は“外交ショー”か、動けない支那と止められないイラン
北京で会談というのが、印象的である。中国、ホルムズ海峡の「早期」再開を求める イランと外相会談2026年5月7日中国の王毅外相は6日、イランのアッバス・アラグチ外相と北京で会談し、ホルムズ海峡を「可能な限り早期に」再開するよう求めた。アラグ…

イラン外相まで北京に呼んで、準備に余念がないのだが……、果たしてどのような交渉が出来て、何が起きるのか。

トランプ氏の狙いは、余人には予測しにくい部分があって、おそらくはアメリカが中国に対して「支援を止めろ」という圧力をかける替わりに、何らかの譲歩を引き出せるかが焦点なのだと思う。

日銀としてはこの会談前に何かメッセージを出すことを恐れたという側面も、当然にある。

あとは、この会談の後にスケジュールされているアメリカ中間選挙(11月3日)に向けて、FRBが利上げをするのか、利下げをするのかという部分も見極める必要性がある。

まとめ

こういった国際政治的なスケジュールを見ていくと、「今すぐに利上げしろ」という論陣を貼るのはやや粗い議論のように思える。

もちろん、結果的に日銀の判断が遅れれば、インフレ対応が後手に回るリスクはある。ただ、少なくとも現時点では、「物価が上がっているのだから即利上げ」というほど単純な局面ではない。

日銀としても年末までには1%までは引き上げたい、可能であれば1.25%程度まで引き上げたいという意向はあると思う。だが、日銀は、経済指標だけではなく、中東情勢、米中交渉、米国金融政策まで含めて判断を迫られている。

そう考えると、少なくとも今回の見送りは仕方のない側面の方が強かったのでは?というのが僕の理解である。

皆さんはどうお感じだろうか?

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