「6月に日本は詰む」とまで煽られたナフサ不足騒動から、およそ2か月が経った。 メディアで散々騒いだ上に、何の責任もとらなかった専門家は、どういう総括をしたんだろうか?寡聞にして知らないのだけれど。
国産ナフサ高止まり 7~9月は10万円近傍の様相
2026年7月28日
国産ナフサ価格は、6月までの状況が急変、高止まりする可能性が出てきた。中東の原油・ナフサ物流が再び閉鎖状態になったことで需給バランスは3~5月のひっ迫状態が再現されつつあり、1キロリットル当たり8万円台半ばへ下落する情勢だった第3四半期(7~9月)の国産ナフサ価格想定は、円安も重なって、直近では10万円近傍まで上昇している。
化学工業日報より
現状で、国内のナフサの価格が上がっていて、高止まりする予想になってきている。
円安の影響もそれなりにはあるようだが、調達価格そのものが高いことも問題なんだろうと思う。
供給危機は杞憂だったが
供給危機は起きなかった
先ずは、以前の記事を2つ紹介しておこう。


当初から「6月に詰む」という根拠不明な指摘には批判的だった。
理由は単純で、供給量そのものが維持できる見通しが立っていたからである。
中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び 重要物資の安定的な供給確保の対応状況
令和8年6月11日
ホルムズ海峡を経由しない代替調達に官民連携の下、最大限取り組んでおり、中東や米国に加え、アジア太平洋、 中南米、中央アジア、アフリカ等からも原油が届くなど、原油の調達先の多角化が進展。
6月は、現時点で、前年平月比で8割程度の調達が実現できる見通し。7月については、想定される今年の需 要日量224万バレルを上回り、前年平月比で約10割の調達への回復に目途が立ったところ。特に、米国からは 前年平月比で10倍以上(5月調達分から3倍以上)が調達できる見通し。
経済産業省のサイトより
さらに政府も、少なくとも今年後半にかけては前年並みの調達量を確保できるとの見通しを示しており、7月の速報値も概ねその想定に沿った推移となっている。
つまり、「日本にナフサが入ってこなくなる」という状況には至らなかったのである。
6月の原油及び粗油の輸入数量は前年比▲13.7%となった。依然として二桁のマイナスだが、 4月の同▲63.7%、5月の同▲57.3%といった極端な低水準からは明確に持ち直した。
第一ライフ資産運用経済研究所より

7月のデータはまだ出ていないが、概ね前年度並みに回復したことは、データから示唆されることは、グラフを見ても回復トレンドを見ても理解いただけると思う。
だからこそ、「6月に詰む」という話は、経済予測というよりも政権批判を目的とした煽りであったと考えている。
備蓄に乗り出す?
更に、政府は流通の不安定さを解消するために、ナフサの備蓄に乗り出す方向性を打ち出している。
「ナフサ備蓄」8月にも対策 揮発性やコストが難題、限られる選択肢
2026年7月23日 5:00
経済産業省が中東危機で供給が混乱したナフサ(粗製ガソリン)の備蓄に乗り出す。保管形態はナフサそのものやポリプロピレンなどの中間財、原油形態が浮上する。実現には揮発を防ぐ設備投資や在庫管理のコスト抑制策が欠かせない。
日本経済新聞より
保管形態についての議論はあるものの、何かしらの形で備蓄を増やすことができれば、季節要因によっての価格変動が抑えられることは期待できる。ただし、それは将来的な話だ。
それでも価格は上昇する
現時点で価格の上昇トレンドにある。
「供給危機は起きなかった」ことと、「価格が上がらない」ことは全く別の話で、化学工業日報によれば、国産ナフサ価格は当初予想を大きく上回り、第3四半期には1キロリットル当たり10万円近辺まで上昇する見通しとなっている。
米国裁定玉の減少、中国によるナフサ輸入需要増など需給ひっ迫を進める動向が、米・イラン間の対立とさらに長期にわたって重なれば、国産ナフサ価格の高止まり、過去最高の更新にもつながる。
化学工業日報「国産ナフサ高止まり~」より

赤の線がナフサの値動きを、青で塗りつぶしているのがクラックスプレッド、つまり、原油価格と石油製品価格との価格差(精製マージン)を示している。
ナフサ市況が上昇トレンドにある一方で、クラックスブレッドの上昇も続いている。このことは、石油製品価格が原油価格以上に上昇し、需給の引き締まりが続いていると分析できる。
そうすると、現状は「量が足りない」ことではなく、「調達コストが上昇している」ことが問題と言える。
今後の動向
化学工業日報では、米国の中間選挙を見据えた価格抑制や、中国の輸入需要増などを今後の価格変動要因として挙げていて、価格の高止まりが続くのではないかとしている。
最後の分析はやや前提を重ねすぎているので、参考になるかは分からない。
ナフサは今後、ひっ迫しやすい構造が基盤といえそう。米国で中間選挙キャンペーンが始まる10月を見据え、協議再開や限定合意を発信する「ガス抜き」が価格を抑える。また、高騰したナフサ自体が新規調達需要を冷やすことも市況動向のくさびになる。また、中国による輸入需要増は化学品のアジア市況にとっては好材料となる側面も持つ。
化学工業日報「国産ナフサ高止まり~」より
ただし、概ね全体的なトレンドとしては、ナフサ価格は上昇傾向にあるだろうことは間違いなさそうだ。そして、おそらくこれが日本経済全体に波及する可能性は高いと思っている。
まとめ
「このままでは6月に詰む」という予測が出された段階で、既に政府の対策は始まっていた。つまり「このまま」というのは、政府対策を続けても日本は詰んでしまうと言う意味に理解されたのだが、それは大いに外れた。
だが、一方で現実問題として中東からの原油調達不安による影響は払拭できていない。
供給量は確保されている一方で、ナフサ価格は高止まりし、調達コストの上昇は今後も石油化学製品を通じて幅広い価格へ波及していく可能性が高い。
昨日の記事では若干ブレーキがかかっているという紹介をしたが、今後はインフレが再燃することになるだろう。



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