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国家情報局創設で日本は変われるか――急がれるインテリジェンス改革

政治
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新年1本目の記事は、今年7月に設置予定になっている国家情報局の話。

高市政権の国家情報局新設に懸念 谷内・元安保局長「屋上屋では」

2025年12月24日 11:40

高市早苗政権は政府のインテリジェンス機能の強化に取り組む。各国は情報戦を安全保障の最前線と位置づけており、日本も対応を急ぐ。「国家情報局」の新設など首相がめざす方向性は妥当か。初代国家安全保障局長の谷内正太郎元外務次官に聞いた。

日本経済新聞より

1月に招集される国会で関連法案が提出される予定であり、それを踏まえた議論がこの記事で指摘されている内容である。

ただ、国家情報局の創設は単なる組織改編に留めてはいけない。もっと強力な組織を作り上げるための、第一段階であり、民意を問うことが不可欠なテーマ。そのプロセスを高市政権が踏めるのかどうかが、成否を分けるポイントになるだろう。

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来年の組織創設はスピード感が大切

諜報組織の統合

国家安全保障局(NSS)の創設に関わった谷内氏が、こうした提案を行うのは理解できる。もっとも、その道筋が現実的かどうかは、別の問題だ。

公安調査庁ベースに対外情報機関創設を 元政府高官らが提言、情報活動従事者の処遇改善も

2025/12/18 20:25

国家安全保障局(NSS)局長や防衛事務次官の経験者ら元政府高官7人が、政府のインテリジェンス(情報活動)機能強化に向けた提言を取りまとめたことが18日、分かった。英国の秘密情報局(MI6)を参考に公安調査庁をベースにした対外情報機関の創設などを盛り込んだ。高市早苗内閣で進む情報活動を巡る議論に一石を投じたい考えだ。

産経新聞より

現状、日本にある諜報機関は以下の通り整理される。

  • 内閣官房:
    • 内閣情報調査室(内調):情報の集約・分析を行い、情報収集機能は持たない
    • 国家安全保障局(NSS):政策調整・戦略立案の司令塔
  • 防衛省:
    • 情報本部(DIH):軍事面特化の陸海空の情報部、政治・経済情報は不得手
  • 警察庁:
    • 警備局(公安):法制上、国内限定の組織構成で対外活動をしていない
  • 法務省:
    • 公安調査庁(PSIA):国内外の情報収集専門
  • 外務省:
    • 国際情報統括官組織(IAS):各国要人から情報を得る政治情報収集

この他にも、海上保安庁や入管など、組織的に情報収集を行っている機関は存在するが、いずれも縦割りで、情報共有は限定的だ。機能が部分的に重複している一方、組織規模はいずれも小さく、情報処理能力に限界がある。

何より問題なのは、予算が各組織に分散していることだ。この状態では、大規模な情報収集や高度な解析体制を構築するのは難しい。

こうした状況を踏まえ、内閣は内調を昇格させる案を進めようとしており、谷内氏らは公安調査庁を核に据える案を提示している、というのが今回の議論である。

独立性の高いCIAとMI6

アメリカのCIA、イギリスのMI6は、西側諸国の諜報機関の中でも特に有名で、いずれも高い独立性を持つ組織として知られている。様々な映画やドラマ、小説などの題材にされる程度には有名であり、知っている人も多いだろう。

谷内氏は、こうした独立性と実行力を備えた強力な情報機関を、日本も持つべきだと主張している。

提言では日本の情報活動能力が諸外国に比べて「著しく遅れている」と言及。政府が来年末までに目指す国家安全保障戦略など安保3文書の改定で、情報活動を「最重要課題として検討」するよう訴えた。

「組織だけ創設しても有効な情報収集は困難」として、情報活動で身分偽装や贈賄を行った際の免責制度や、情報提供者の亡命を認める制度の整備も行うべきだとした。情報活動に従事する公務員の処遇改善や、各情報機関が持つ情報を政府内で共有するシステム構築も必要と指摘。情報活動関連の人員・予算を倍以上に増やすことも求めた。

産経新聞「公安調査庁ベースに対外情報機関創設を~」より

言わんとしていることは分かるし、方向性としては妥当だとも思う。ただし、実現のハードルは極めて高い

最大の理由は、公安調査庁の機能構成にある。

調査能力自体は高いとされるが、人員は約1,800人規模にとどまり、全国展開や本格的な対外諜報を担うには明らかに不足している。外務省などとの機能調整が前提になるだろうが、まず規模と予算が足りない。

さらに深刻なのが、法的根拠の問題だ。

MI6/CIA型に近づけるなら、最低限必要なのは、

  • 秘密工作の法的根拠
  • 海外での活動の免責規定
  • 協力者保護制度
  • 身分秘匿・偽装身分
  • 予算の秘密化

日本はどれもほぼ未整備である。

そもそも公安調査庁の職員には司法警察権がなく、逮捕や家宅捜索はできない。情報収集に特化した組織であり、公安警察とは役割が一部重なるものの、両者の関係は必ずしも良好とは言えない。

MI6をモデルにするなら、公安警察との機能重複を避けた住み分けと、明確な法的根拠が不可欠だ。イギリスでは国内治安をMI5が担っており、その構造が前提になっている。

そう考えると、現段階で公安調査庁を一気に中核に据えるのは現実的ではない。

まずは内調を強化して局に昇格させる――これが第一段階。その上で段階的に機能を積み上げていく方が、回り道に見えて実は最短だろう。

対外情報庁(仮称)も

実際、内閣はMI6型の対外情報機関については、2027年以降に設置予定の対外情報庁に担わせる構想を持っているようだ。おそらく、これが第二段階なのだろう。

現在の内閣情報官の後継ポストとなる「国家情報局長」が情報局を率いる。従前の内閣情報会議は首相や関係閣僚が加わる「国家情報会議」に改め、情報局が事務局を担う。政府は同会議の設置を含めた法案を近く取りまとめる方針だ。

自民党と日本維新の会の連立合意書は、2026年通常国会での情報局創設などを明記。27年度末までの「対外情報庁(仮称)」や情報要員養成機関の創設、スパイ防止関連法の「速やかな成立」も盛り込んでいる。

自民党は小林鷹之政調会長を本部長とする「インテリジェンス戦略本部」で(1)司令塔機能の強化(2)対外情報収集能力の強化(3)外国からの干渉を防ぐ体制構築―の3点を議論している。このうち司令塔強化の議論を急ぎ、来年1月にも政府に提言する。

時事通信より

現状は、

  • 内閣情報調査室の強化を軸とする国家情報局
  • 公安調査庁の強化を見据えた対外情報庁

という整理になる。

批判の多い子ども家庭庁だが、構造だけ見れば国家情報局と似ている。縦割りを排し、横断的に機能を束ねるという発想だ。しかし子ども家庭庁は、成果が見えにくいまま悪評が先行してしまった。

国家情報局も同様に、成果が表に出にくい組織である以上、初期のイメージ形成は極めて重要になる。

対外情報庁(仮称)やスパイ防止関連法の成立を目指すのであれば、国家情報局の立ち上げ段階でつまずくわけにはいかない。

まとめ

世界情勢を考えれば、国家情報局の創設は避けて通れない。

将来的に関連組織を整備していくためにも、スピード感は不可欠だ。そのためには、どこかで選挙を挟む必要がある。

創設後に選挙を行うのか。それとも、創設前に民意を問うのか。

国際情勢が不安定な中、確実に勝てるタイミングで民意を取る。その際、支那やロシアなどによる工作に対抗できる情報開示手段や根回しも欠かせない。

やるべきことは多いが、5月か6月頃に選挙を行い、勝ち切る。そうした政治判断が求められているのだと思う。

もちろん、大切なのは選挙をすること自体ではない。民意を取れるかどうか、それに尽きるのだけれど。

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