大事になっているな。
今度は「非関税障壁」問題 韓米関税交渉、なお難航
Posted February. 12, 2026 09:35, Updated February. 12, 2026 09:35
韓国製品への関税を25%に引き上げるとしたトランプ米大統領の発表を撤回させるための韓米交渉の焦点が、「非関税障壁」問題に移りつつある。トランプ氏が関税引き上げの根拠として掲げた対米投資履行問題では解決策を探る動きがみられるが、非関税障壁を巡っては米側の強い圧力に対し、韓国が明確な対案を提示できていないためだ。
東亜日報より
連続で韓国経済絡みの記事というのも、ちょっと気が引ける。だが、この話はかなり拗れそうなのだ。
単なる通商摩擦ではない。韓国内の政治・世論・安全保障が絡む、かなり厄介な局面に入っているからだ。
ECサイト+物流の独占的企業を巡る戦い
一連の流れ
先ずは、前回の記事を。
前回、米国通商代表部(USTR)のトップ、グリア氏から「非関税障壁を問題にするぞ」と脅された話を紹介した。
そもそも、この話は簡単に纏めると以下のような流れになっている。
- 関税導入の背景:大統領令と国家非常事態宣言
- 国家非常事態の宣言 (2025年4月)
- トランプ大統領は「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき、巨額の貿易赤字を理由とした国家非常事態を宣言
- 一律関税の導入
- 全輸入品に対して原則10%の「ベースライン関税」を課す方針を決定
- 対米黒字が大きい韓国に25%の個別関税を課す案が示された
- 暫定合意と引き下げ(2025年7月〜8月)
- 2国間合意 (2025年7月30日)
- 米大統領と韓国大統領は、関税率を15%に引き下げることで合意
- 韓国側の義務
- 韓国側は対米3,500億ドル(約54兆円)規模の投資を約束
- 現状の対立と再引き上げの警告(2026年1月〜2月)
- 再引き上げの表明 (2026年1月26日)
- トランプ大統領はSNSにて、韓国議会が合意を法制化(批准)していないとして不満を表明
- 関税率を再び25%に引き上げる考えを示す
- 新たな要求(非関税障壁)
- 米国側は関税だけでなく、韓国国内の規制などの「非関税障壁」の撤廃も
- 進展しなければ、さらに関税を上乗せすると圧力を強める
- 安全保障交渉への影響と懸念
- 経済と安保の連動
- 韓国政府内では、貿易問題での対立が防衛費分担金交渉(SMA)などの安保協力に悪影響を及ぼすことを懸念
- 韓国政府の混乱
- 関税交渉を巡り、閣僚間で発言の不一致(楽観論と慎重論)が見られ、対米交渉力の低下や同盟の信頼維持に対する不安が指摘される
韓国大統領の李在明氏(ミョンミョン)は、トランプ氏相手に色々約束をしちゃったけど、これが履行されず、「投資履行問題」+「非関税障壁」の二正面圧力になりつつある。
非関税障壁とは何か
ところで、ここに来て持ち上がって来た話がある。
ジョイント・ファクトシートで、韓国はネットワーク使用料やオンラインプラットフォーム規制を含むデジタルサービス関連の法・政策について、米国企業が不必要な障壁に直面しないよう保証すると約束した。
東亜日報「今度は「非関税障壁」問題~」より
去年11月に合意したファクトシートに「非関税障壁」の話があった。
- デジタルサービス規制
- ネットワーク使用料
- 高精度地図の国外搬出制限
などが問題視されたのだ。
この話は、「米国企業を差別的に取り扱うな」という整理がなされている。
これに加えてクーパンの話が出てきているのだ。
クーパンという名の爆弾
クーパンは、韓国最大級のEC企業で「韓国版Amazon」といえる存在だが、親会社は米国法人でNYSE上場企業である。
ところが、そのクーパンが問題をおこした。
個人情報流出で営業停止の可能性も…韓国政府、クーパンに圧力強化
2025年12月23日 9:30
韓国政府が、大手EC企業クーパン(COUPANG)による大規模な個人情報流出問題への対応が不十分だとして、「営業停止」という強硬措置の可能性を示唆し、圧力を強めている。ただ、実際に営業停止処分を下すには法的要件の充足が難しく、労働者や中小事業者への「二次被害」を考慮すべきとの慎重論も根強い。
AFPより
韓国では「配送先リストを不正照会した回数は1億5000万回に達した」などと大騒ぎしている。
この他にも、このブログで過去に取り扱ったが、内部犯による情報漏洩の話もあった。
この話の続報があって、そもそもクーパン内部のIT技術者に問題があったという話も。
特定活動ビザで来韓した中国人IT管理者、91%は通販大手クーパンの従業員だった【独自】
2026/01/28 14:05
特定活動ビザ(E-7、外国人専門人材)で韓国に滞在している中国国籍の情報通信(IT)関連の管理者のうち、9割が韓国通販大手クーパンに所属していることが分かった。
朝鮮日報より
まとめると以下のようになる。
- 3,000万人超の個人情報流出
- 1億回超の不正照会
- 内部管理体制への疑念
- 中国籍IT管理者の大量在籍問題
情報漏洩だけではなく雇用の形態にも問題があるという話が出ているんだよね。
反論と構造問題
そして、この問題は政治問題の様相を呈している。
韓国官民共同調査団「情報流出3367万人」「不正照会1.4億回超」 クーパン側と大きな開き
2026/02/11 11:35
【TV朝鮮】(アンカー)
韓国政府がネット通販大手「クーパン」の個人情報流出件数について発表しましたが、クーパンの主張とは大きな違いがありました。犯人が情報を流出させた件数は3367万件、配送先リストを不正照会した回数は1億5000万回に達しました。友人や家族など配送先の住所まで見られていました。
朝鮮日報より
クーパン側は報道のされ方に問題があるという反論をしているのだが、確かに報道警告はクーパンに厳しく、執拗に悪者に仕立てようとする意図があるようだ。
ここでややこしいのは、クーパンのあり方と、帰属に関する問題だ。
クーパンは単なるEC企業ではない。
- 自前倉庫
- 自前配送網
- 即日・即時配送インフラ
を押さえた、都市生活のインフラ企業である。日本ならば、Amazonは使いやすいECサイトと自前の倉庫を持った企業だが、輸送に関してはヤマトや佐川、郵便局などが強く、自前の配送部隊はまだ貧弱である。
だが、韓国では「クーパンなしでは生活が回らない」そう言われる水準まで浸透している。これは、人口の半分が密集するソウルの特性を活かし、効率的な自前物流網を構築し、注文から1時間以内に荷物が届くという韓国民の「生活インフラ」を独占的に作り上げたという強みがあり、他社が割り込む余地がない。
また、帰属に関して、クーパンの親会社は米国法人である。このため、韓国政府の強権的措置が米韓間の通商問題に直結しやすい構造になっている。
交渉の俎上に上げられた
ここまで読んで、「非関税障壁の話と、個人情報流出は別問題では?」と思われる方もいるだろう。
実際に、その通りなのだが、韓国政府が問題視しているのは、単なる個人情報の流出ではないのだ。
クーパンは、先述したようにインフラ的ECサイトを経営し、莫大な利益をあげている。韓国の小売市場全体の約15%、オンライン小売市場(EC)の約25〜40%を支える巨大インフラとなった。それ故に、韓国の伝統的な小売企業をも脅かしている。
だが、日本のAmazon問題同様に、税金の大半はアメリカに納めるから韓国政府には税金的なメリットが薄い。
ミョンミョンにとって、自国企業でもないのに重要な位置を占める困った企業がクーパンの位置づけなのだ。だからこそ、クーパンの営業権を停止させて、他社にその機能を代替させようとしているんだよね。
政府の関連省庁が「クーパン事態省庁横断タスクフォース(TF)」の第1回会議をおこなったわずか2日後に、休日にもかかわらず大統領室が緊急会議を招集したのは、李在明大統領の強い意志の表れとみられる。李大統領は11日の企画財政部による業務報告で、クーパンを念頭に「今後は規定に違反して国民に被害を与えたら、途方もない経済制裁を科して『会社がつぶれる』と思われるようにしなければならない」と、厳しい制裁を要請している。
ハンギョレより
それが米国から見れば「米国資本企業に対する事実上の制裁=非関税障壁」と映る。だから、トランプ氏は、「アメリカ企業を守る」という立て付けで、25%関税をちらつかせて、「不公正なことはやるな」というディールを持ちかけているのである。
このように、韓国政府、クーパン、そして米国政府が、それぞれ異なるフレームでこの問題を語っている。 「情報漏洩企業」「生活インフラ企業」「差別される米国企業」という三つの物語が並行して提示されている点を見ると、これは単なる規制問題ではなく、世論と通商を巻き込んだ多層的な情報戦の様相を帯びている。
それ故に、この問題はなかなか厄介だ。
まとめ
現在の韓国は、「国内の公正(ルール)」を守ろうとすれば「国家の経済(関税)・安保」が壊れるという極めて苦しい局面である。
トランプ政権は、クーパンを「自由貿易と米国資産の象徴」として利用し、韓国から最大限の譲歩(関税の受け入れや防衛費増額)を引き出そうとすらしている。まさにディールによる利益の最大化というわけだ。
韓国政府は最終的に、国内メディアの喧伝とは裏腹に、「クーパンを実質的な聖域として認める」ことで、最悪のシナリオ(関税25%)を回避する外交的妥協を迫られる可能性が高くなってきている。





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