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8月に使った外貨準備高とその成果について

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報道
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面白い情報が出たので、少し整理しておきたい。

8月末の外貨準備高が6.2%減 為替介入を反映し減少率最大

2026年9月7日 10時09分

財務省は7日、8月末の外貨準備高が前月末と比べて6.2%減の1兆2075億ドル(約188兆円)だったと発表した。減少幅は796億ドル(約12兆円)。7月30日以降に実施した政府・日銀による円買いドル売りの為替介入の影響で、比較可能な2000年4月以降では減少幅、減少率ともに過去最大となった。

朝日新聞より

協調介入など、結構大掛かりなことをやったので、その対価を支払ったよねという話ではあるのだけれど、「対価を支払う」意味は、記事に書いておかないと。

外貨準備を使った介入の結果

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外貨準備高は多い?

先ずは、外貨準備に関して。

7月末の外貨準備高、1兆2870億ドル

2026年8月7日 11:16

財務省が7日発表した7月末の外貨準備高は1兆2870億ドル(およそ206兆円)だった。6月末と比べて3億7700万ドル(0.03%)減った。3カ月連続で減少した。米国の金利上昇により米国債の時価評価額が下がった。

日本経済新聞より

ここのところ減らしている外貨準備ではあるが、そもそも外貨準備とは何か言えば、急激な為替変動を防ぐため、通貨を売買して市場を安定させる資金として使われる他、国の信用低下や通貨安により、外貨建ての借金の返済が難しくなった緊急時に充てられる。

では、どの程度の規模の外貨準備を保有しておけば良いか?と言えば、これはIMFがこんなことを言っている。「ARA(Assessing Reserve Adequacy)指標」を用いて、各国が100%〜150%の範囲に収まっているかを一つの目安とする、と。

IMFの基準はあくまでも新興国に想定して作られていて、日本はその基準で約2,000億〜2,500億ドルあれば問題ないと算出されるのだが、そもそも外貨建ての借金の返済に備えろという趣旨なので、日本には当てはまらない。

これは日本が新興国ではないこと。そして、自国通貨建ての借金(国債のほぼ100%が日本人に購入される)であること、が理由である。

では、先進国の外貨準備高の適正規模については、実は新興国のような「短期対外債務の100%」や「輸入額の3ヶ月分」といった明確な一律の数値基準(ガイドライン)はない。先進国は通貨の信任が高く、国際金融市場へのアクセスも容易なため、新興国ほど巨額の外貨準備を保有する必要がないというのが一般的な見解だからである。

国家に寄ってもこの考え方には差があるので、例えば、アメリカは「備える必要はない」とGDPの1%程度であるし、イギリスはGDPの5%程度。フランスやドイツは1%以下で、この辺りはユーロ圏内で保護されているので、余り参考にはならない。

そうすると、日本にとっては今回行ったような市場介入が緊急時に行える程度手元にあれば、概ね問題ないということになる。

1兆2870億ドルが1兆2075億ドルに減ったことは、事実としてあるんだけどね。

いつ仕込んだか?

そして、損をしたかどうかなのだが。

日本の外貨準備の多く(約7〜8割)は、過去の膨大な「円高阻止(円売り・ドル買い)介入」によって積み上がったものである。

つまり、以下の2つの時期だ。

  • 2003年〜2004年
    • 当時の状況: ITバブル崩壊後の急激な円高を抑えるため、当時の溝口財務官のもとで約35兆円という巨額の円売り介入が行われた。
    • 当時の円相場: 主に1ドル=105円〜115円前後
  • 2011年前後(東日本大震災後の超円高期)
    • 当時の状況: 震災後の混乱や欧州債務危機により、歴史上最高値となる1ドル=75円32銭を記録した時期。
    • 当時の円相場: 主に1ドル=76円〜80円前後

こういう大量に仕込んだ時期の情報を加味すると、日本が保有する外貨準備の平均取得単価は、概ね1ドル=100円~105円程だと推計できる。

今回の介入の結果

さて、そういう条件を加味して、今回のケースを説明していくと、市場介入のために使った米国債の売却等にあたる「外貨証券」の減少額は877億7300万ドルとなる。

そうそう、上に説明した資産を1ドル=103円とした場合で、実施時の円相場を加味して、「1ドル=153円」の時に売却したと想定すると、以下のようになる。

  • 1ドルあたりの値幅(利益)=153円ー103円=50円
  • 総額での差額(為替差益)=877億7300万ドル× 50円=約4兆3886億円

なるほど?

財務省は7月30日から8月26日の1カ月間に実施した為替介入の総額が15兆3993億円だったと発表している。

朝日新聞「8月末の外貨準備高が6.2%減~」より

この数字は正しいが、実際には877億7300万ドルを使って介入(円買い・ドル売り)したので、約4兆3886億円の差益を実現した(推計値)というのが正しい。

この利益は、一般会計に繰り入れられるので、防衛費の増額財源や国債の償還などに使われることになっている。

原資は何だったのか

とはいえ、むやみに外貨準備を溶かすのはどうかと思うし、手元のドルがなくなるのは困るといった視点は存在する。これについては、こんな話が。

8月末の外貨準備6.2%減、減少率最大 日米協調の為替介入反映

2026年9月7日 9:44

財務省が7日発表した8月末の外貨準備高は7月末比6.2%減の1兆2075億ドル(約188兆円)だった。基準改定があった2000年4月以降で減少率は過去最大となった。政府・日銀が実施した為替介入の原資になり大幅に減少した。

~~略~~

財務省が8月3日公表した財務相談話は米連邦準備理事会(FRB)が米国債を担保にドルを供給する「外国・国際通貨当局向けレポ・ファシリティ」の将来的な活用に言及した。市場で米国債を売却しなくてもドルを確保できると説明する狙いとみられる。

日本経済新聞より

日本経済新聞は重要なことに言及した割に、特に説明せずに終わっているんだけど、良いのか?

このレポ・ファシリティ(FIMA Repos)というのは、「日本が持っている米国債をFRBに担保として差し出す代わりに、FRBから直接ドルを貸してもらう」という中央銀行間の「裏ルート」である。

……「裏ルート」というか、FRBにOKを貰ったときだけに使える特別ルートと言うべきだろうね。

つまり、協調介入をやったことは、ここにも大きな意味を持っているわけだ。

構図としては、「FRBが米国債を担保にドルを供給し、そのドルを使って円を買う。そうすることで、米国債を市場で大量に売却せずに済む」というものだ。

ああ、今回の協調介入は「おそらくそういう手順で行われた」という理解でお願いしたい。現状ではその蓋然性が高いだろうという程度の話だからね。

このFIMAを使った場合、877億7300万ドルの米債券をFRBに売ってドルを得て、日本円を買ったので、日本としても流動性の高い手元資金を失わずに介入できたという点で好ましい。何故なら、「日本は未だ介入しようと思えば、いつでもやれるんだぜ」と示したに等しいのだから。

FIMAを使ったのであれば、普段は使えない債権を処分して約4兆3886億円を歳入として手に入れたという構図になる。あれ?2年間の消費税減税の財源って、本当にまだ必要?

まとめ

マスコミとしては介入によって160円台が150円台になったけど、「直ぐに戻る」「だから無駄だ」などと大騒ぎする為に、冒頭の「幾ら使ったか」という報道をしたわけだ。

ただ、この市場介入は円安誘導をしてはならないというルールがあり、あくまでも緊急時に市場を冷やす目的で使われる。

そして、今回も協調介入であったということが大きい。良いとか悪いとか言う前に、判断する材料を揃えようぜ。

コメント

  1. 山童 より:

    木霊様、とても勉強になりました。
    うん。コレという意見感想は今回はないのですが、この記事は自分の歪みを知る機会になってくれました。

    「日銀が貯蔵する金塊の重量」は知ってるのに、
    「そもそも外貨準備って何なん?」
    という知識の偏りは、さすがにアレだろ? といたく反省。
    結局、物知りがきちんと勉強したひとには勝てないのはそこなんてすよね。
    本屋さんで経済の本を買ってきます。