うぉっと、もっと酷いニュースが出て来た。
ソウル高架道路崩落、29ミリのたわみ確認後も12時間通行規制せず
2026年5月28日 8:10
ソウルで26日に発生した西小門高架車道崩落事故は、撤去中だった道路床版のたわみを確認した後、約12時間にわたり高架下を通る道路と鉄道を規制しないまま現場点検を続ける中で発生したことが明らかになった。
AFPより
実にダイナミックな国だな。フォローしきれないよ。
工事計画の不味さと事後対応の不味さ
線路上の高架撤去作業
前回の記事がこちら。

記事で扱ったニュースの公開時期は27日10時31分となっていて、後追い記事をお昼に公開したってことになるんだが、今朝の段階でもっと酷いニュースが報道されているとは気が付かなかったよ。
昨日書いた記事がこちら。

この記事の段階では、「高架撤去工事の再に周辺道路の交通規制がされていないのが動画で分かる」という趣旨だった。
で、お昼の時点で公開した上の記事では、「崩落防止の手当てが行われていなかった」という趣旨であった。
この2つだけでも結構酷い話なのはご理解いただけると思うが、今回の話はある意味もっと酷い。
撤去中の高架下を鉄道が通り続けていたため、作業は夜間の1日3時間に限られていた。ソウル市と韓国鉄道公社、国家鉄道公団の作業時間協議や工程管理の妥当性も争点になっている。
ソウル市によると、鉄道横断区間の撤去工事は3月から本格化した。市は鉄道区間の工事を前に鉄道公団などと協議し、夜間3時間の作業方式が決まったと説明している。
AFP「ソウル高架道路崩落~」より
夜間工事方式で、夜中の3時間だけ工事をして、高架の撤去を進めていたのだとか。
ここだけ見ると、割と日本でも行われる方式で、鉄道の運行と絡んで、仕方のない面があるとは思う。だが、記事の中に「撤去中の高架下を鉄道が通り続けていた」というとんでもない爆弾が投げ込まれている。
1分前に通過
これが中央日報のニュースではこのような報道として伝えられている。
ソウル西小門高架、崩落の兆候にも12時間放置…事故1分前には列車も通過
2026.05.28 07:36
ソウル西大門区の西小門高架車道崩落事故は、異常兆候が発見された時点から崩落まで12時間33分かかっていたことが分かった。しかし、この「ゴールデンタイム」は追加の構造補強ではなく、応急措置や報告、会議などで費やされたと把握された。
~~略~~
下部鉄道区間の1日当たりの列車通過回数は約300回に達する。事故現場付近のビルで撮影されたCCTV映像を見ると、崩落1分前にムグンファ号、5分前にKTX列車が通過していた。
中央日報より
大惨事一歩手前だったね。

これが工事現場の空撮の様子。
ここまで撤去が進んでいて、最後に残された部分の撤去作業をしていたときに発生した事故ということのようだ。
これで、崩落防止の桁を設けなかったとは、意味がよく分からない。撤去の途中で線路に大きめの破片が落ちただけでも大惨事に繋がるのだろうに。よくもまあ、そんな想定もせずに工事をしたものだね。
「何」が崩落したのか
事故状況を伝えるニュースへの違和感
さて、この話にオチを付ける必要もないんだけど、看過できない情報が混じっていたので、少し構造的な説明を加えておきたい。
これは冒頭のニュースの中身の抜粋である。
事故は26日午後2時33分ごろ、西小門高架車道撤去工事の鉄道横断区間であるS9区間で発生。
- 午前1時30分に高架車道床版の切断作業を開始
- 午前2時30分頃、G15番とG14番の桁の中間地点で29mmのたわみを確認
うん、ちょっと待とうか。
記事では「床板の切断工事」「桁の中間地点で29mmのたわみ」とある。ニュース記事の通りの抜粋だが、これ、実は繋がらない話なのだ。
参考までに、これは日本の高速道路の床板設置工事の様子を示す写真だ。

写真に写っている床板は、クレーンで吊ってあるプレキャストコンクリートの塊のこと。
で、その下に伸びているのが桁だ(注:後で言及するけれど、この方式ではなかったようだ)。
だから、床板をいくら切断しても、桁が中折れするなんてことは通常はあり得ない。
ナニを切っていたのか
こちらは事故現場の写真だ。

写真で見ると、ちょうど一番手前側に配置された桁が落ちていることが分かる。だが、切断されていたとされる床板らしきものは見当たらない。
……そんなバカな!!
ここで、とある可能性に思い至った。
PC-T桁構造の可能性
これ、実はものすごく恐ろしい話で、未確認ではあるものの可能性としてはプレキャストT桁構造だった可能性がある。
どういう構造かというと、こちら。

こんな形のT型の構造物を、並べて高架に使う方式。

こうなる。
もしこの推測が当たっていたとすると、恐ろしい可能性が浮かび上がってくる。
これは別記事のサムネに使った写真だが、並べられている上面に不自然な切れ込みが両側から入っていることが見て取れる。

つまり、「床板」とニュース記事で表現しているのは、T桁の上端で、切り込みを入れれば強度は当然落ちる。
一体構造だから、当然である。
会議室で何を話し合ったのか
構造を把握していれば、現場で29mm沈降したという事態に出合えば、直ちに工事中止するのも頷ける。
だが、責任者の対応は不味かった。
たわみを把握した責任監理者は直ちに工事中止を命じ、追加のたわみを防ぐため、切断された床版同士を鋼板で固定する作業を進めた。
AFP「ソウル高架道路崩落~」より
そもそも、この記事の「床板」などという書き方が問題で、実際に切断していたのは桁の上端であったとしたなら、「追加のたわみを防ぐため、切断された床板同士を鋼板で固定」は寧ろ事態を悪化させた可能性がある。
何故なら、プレキャスト製品であるT桁は、そもそもコンクリートが劣化して脆くなっていたハズ。それを鋼板で固定したということは、つまりそれは「穴を開けて一体化」したことに他ならない。
実際に、この高架は既に桁脱落や主脚剥落といった劣化問題が表面化し、その結果として撤去判断に至った構造物だ、だから、コンクリートの劣化は容易に想像がつく話。
それを、振動ドリルで穴を開け、重量のある鉄板を上に乗せる。想像通りの構造だとしたら、その応急処置には溜息しか出ない。
だが、その後の対策会議はどうだったかというと……。
その後、午前7時30分に現場関係者がソウル市都市基盤施設本部に電話で報告し、午前9時30分には監理団長や現場所長らがソウル市土木部長に対面で報告した。
午前10時50分には監理団長、現場所長、精密診断業者、構造分野の非常勤監理者が対策会議と現場点検を進め、午後1時40分にソウル市、安全診断専門家、外部専門家、現場関係者ら9人が合同安全診断に入った。ソウル市は、当初の撤去計画では桁を個別に切断して引き上げる方式で設計しており、桁の安定性に大きな問題はないと判断していたと説明した。
イム本部長は「現場で桁自体が崩れる事故が起きるとは把握しにくかったのではないかと推測する。交通規制が必要かどうかを判断するために点検している過程で事故が起きたと把握している」と述べた。
AFP「ソウル高架道路崩落~」より
もう、ナニガナンダカ。
共有されなかった「リスク」
報道ではこんな話が。
[イム・チュングン/ソウル市都市基盤施設本部長] 「本当に統制が必要かどうかについて判断するための点検をする過程で、この状況が発生したと把握しています。」
線路上の高架道路に沈下が発生したという異常の兆候を、ソウル市が線路管理などを担当するコレールに伝えていないことも把握されました。
国土交通部当局者はMBCと通貨で「2.9cmの沈下事実をソウル市がコレイルにも、国家鉄道公団にも知らせなかった」と話しました。
ソウル市はこれに対して「すべてのことをコレイルなどに報告せず、そんな義務もない」とし「そのような事実を関連機関に共有するのかなどを確認するための診断中に事故が起きたもの」と説明しました。
MBCより
ソウル市は、高架の真下を走るKORAILや国家鉄道公団に対し、2.9センチの沈下という異常事態を「一切共有していなかった」ことが国交省の調べで判明している。
隠蔽する意図があったかまでは把握されていないが、「その義務もない」って、オマエは人の命を何だと思っているのか。
本日は別の記事を書く予定だったのに、余りにものニュースが報じられたことで衝撃を受け、動揺を隠しきれない。続報を書くしかなかったのだ。
まとめ
工事計画をする際に、果たして本当にリスク対応をしっかり検討していたのか?という点はまず疑わしいと思う。だが、ここは未だ明らかにされていない部分であるので、疑惑の段階で止めておくべきだろう。
しかし、事後対応にしては極めて不味かった。
鉄道の運行を止めて安全点検をし、早急に何らかの対策を打つというのが、常道であるはずだ。しかし、実際には鉄道運航会社に情報共有をしようともしなかった。呆れてものが言えない。鉄道事故に繋がらかったのは、単なる幸運でしかないのだ。



コメント
写真分析は流石です。落ち方からして、桁で支えていた構造に切り込み入れて、沈下したので慌てて鉄板敷いて応急処置した…は当たってる想う。
んで、そういう「緊急事態」にも変わらず情報共有も、封鎖もしなかったというのが信じられない!
列車通過時に落ちていたら、航空機事故に匹敵する死者が出ていたに違いなく、亡くなった方には申し訳ないと想うが、列車に落ちる事故てなくて良かった。もちろん死傷者が出ないが最善てあり、最善策を取らなんだ関係者は厳罰に処するべきです!
とはいえ、これそもそも許可した監督官庁も責任ない??
ほんと訳わからない国だなぁ。