年始から各地で大変な事態が続いているので、ここで一つ、息抜きのネタを。
ポーランド空軍の韓国製戦闘機に暗雲 米、AIM-120統合を許可せず
2025年12月30日
ポーランド空軍が導入した韓国製軽戦闘機FA-50をめぐり、米国が中距離空対空ミサイル「AIM-120(AMRAAM)」の統合を認めていなかったことが明らかになり、改修計画そのものが暗礁に乗り上げている。
Daily NK より
この話題自体は今さら感もあるが、ではポーランドは今後どうするつもりなのだろうか。
軽攻撃機なのか練習機なのか
大量購入を決断したポーランドの失敗
先ずは過去に触れた時の記事を、軽く整理しておこう。
ポーランドは直ぐにでも使える戦闘機が欲しかったという事情もあって、韓国が高等練習機からでっちあげた軽攻撃機FA-50を購入することにした。
簡単に経緯を纏めるとこんな感じ。
- 2022年9月:韓国からFA-50GF導入計48機の契約を総額約30億ドルで締結
- 2023年末:全12機のFA-50GF(Block10相当)が納入完了
- 2025年末:予定通りならFA-50PLが納入開始される予定だった
ただし問題は、ポーランドが欲しかったのは「戦闘機」であるにもかかわらず、FA-50GFは現状では実質的に練習機としてしか使えない点にある。
2024年には納入された12機のうち11機が飛ぶこともできない状態だと、大騒ぎになっていたが、流石にその問題は解消したようだ。相変わらず武装を装備できないけれど。
ポーランドは韓国航空宇宙産業(KAI)と契約し、FA-50を48機導入。そのうち12機は暫定的な「FA-50GF」として配備され、将来的には戦闘能力を強化した仕様へ改修する計画だった。しかし、米国製AIM-120の統合が認められなければ、同機は中距離空対空戦闘能力を欠いたままとなり、実戦的価値が大きく損なわれる。
報道によれば、レーダーや兵装統合の遅れに加え、米国側の輸出管理が障壁となり、改修費用が想定以上に膨らむ見通しとなった。このためポーランド空軍は、FA-50GFを本格的戦闘機へ発展させる構想を事実上断念する方向に傾いているという。
Daily NK より
その結果、FA-50GFを戦闘に使う構想は断念する方向に向かっているようだ。無論、FA-50PLの獲得も危ぶまれている。
維持費が3割って、何の?
さて、過去には維持費が安いと言って喜ばれていたFA-50GFだが、維持費が安いのはある意味当たり前である。
価格は半分、維持費は3割…ポーランドがほれこんだ韓国の戦闘機「FA50GF」
2023/06/13 17:06
最近、ポーランドの国防関係者らが韓国を訪れ、韓国航空宇宙産業(KAI)のポーランド輸出型軽攻撃機「FA50GF」1号機の出庫式に出席した。この席にいたポーランドの空軍司令官が自国メディアとのインタビューで、FA50GFの今後の運用計画などを明かした。
~~略~~
通常の戦闘機は1回の稼働に多くの費用がかかり、費用の安い練習機を別途保有するケースが多いが、FA50は維持費が安くて練習機としても使える。
朝鮮日報より
「練習機としても使える」などと紹介されているが、現実は「練習機としてしか使えない」であり、練習機として見た場合は高価で維持費も割高だ。
ノバク司令官は「FA50は、およそ1時間の飛行で1.5トンほどの燃料を消費した。もしF16機であれば3.5トン必要だっただろう」とし「この数字だけを見ても、ポーランド空軍が訓練費を節約できるという事実は明らか」と語った。
朝鮮日報「価格は半分、維持費は3割~」より
燃費が良いということも評価しているようだけれど、F-16戦闘機の燃料消費量が激しい理由は、それだけ高出力なエンジンを積んでいるという意味であって、同じ機能・性能を備えた機体同士であれば比較の意味もあるが、練習機と本格戦闘機の燃費を並べられても、評価としては的外れだろう。
調達費用の比較はもっと酷くて、F-16戦闘機の価格には武装やシミュレーター、整備のノウハウなどの価格が含まれていたが、FA-50GFは、ミサイル、機関砲弾、照準ポッド(スナイパーATP)などが契約に含まれていなかったので、後出しで調達・統合する追加費用が発生した。もちろん、シミュレーターや格納庫、整備体制の構築費用は別途必要となる。
結果として、「安価に見えた」FA-50GFは、実運用を考えると決して割安ではなかった。
レーダーは調達が進められていると聞くが
なお、韓国はレイセオンからFA-50向けのファントムストライクレーダーの納入を開始したとの報道はあった。
レイセオン、FA-50向けファントムストライクレーダーの納入を開始
2025年11月6日
レイセオン(RTX)は、韓国航空宇宙産業(KAI)のFA-50軽攻撃機への搭載に向けて、ファントムストライク・アクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーの納入を開始した。RTXの広報担当者はJanes誌に対し、契約対象はレーダー100台であると語った。
KAIへのファントムストライクレーダー初号機の納入は、10月20日に韓国で開催されたソウル国際航空宇宙防衛展示会(ADEX)2025で発表されました。RTXの広報担当者によると、KAIは2023年3月に締結された直接販売(DCS)契約を通じて、100台のレーダーを調達する予定です。
JANESより
このファントムストライクレーダーだが、こんな格好の小型のAESAレーダーである。

窒化ガリウム(GaN)の採用により小型化が実現できたAESAレーダーは、安価で空冷による冷却を採用しているために搭載スペースが限られるFA-50にも搭載が可能。
FA-50PL化を進めるうえで、不可欠な要素の一つではある。
PhantomStrikeは、小型、軽量、低消費電力(SWaP)のAESAレーダーであり、空対空および空対地監視、目標捕捉、電子戦(EW)支援など、複数の機能を同時に実行できます。米国政府はPhantomStrikeをDCS製品として輸出することを承認しています。
この売却により、ポーランドが発注した48機のFA-50の大部分にこのレーダーが搭載されることになる。「KAIへの売却には、ポーランドが36機のファントムストライク・レーダーシステムのエンドユーザーとして含まれる」とRTXの広報担当者は述べた。
JANESより
ファントムストライクレーダーが優れたレーダーであることを疑う理由はないのだけれど、では、このレーダーを搭載すればFA-50PLへとバージョンアップできるのかというと、話はそう単純ではない。
そもそも、ポーランドがFA-50GFをお安く手に入れられた背景には、契約に武装が含まれていなかったという都合の悪い事実がある。
加えて、ファントムストライクレーダーに換装した上で、さらに武装を統合する為のコストが必要に。
アップグレード、やはり見送りか
と言うわけで、去年末にはポーランド側からアップグレードに関する懐疑論が出ているようだ。
Poland Says Upgrading FA-50 Jets Is Uneconomical But U.S. Missile Ban Is Real Story
December 28, 2025
韓国で製造されたポーランドのFA-50GF練習機は、完全な軽戦闘機能力を備えるPLまたはブロック20規格へのアップグレードは行われない。その理由は経済的な実現可能性の低さである。
~~略~~
しかし、練習機を攻撃任務、特に艦隊の残りの部隊の支援に活用するという構想を放棄したわけではなく、現在検討しているのは別の兵器だけだ。これには、欧州の空対空ミサイルASRAAMやIRIS-T、あるいは空対地ミサイルのブリムストーンなどが含まれる可能性がある。
Defense Expressより
記事に不穏なことが書かれていて、KF-21戦闘機の事情の時にも似たような話をしたんだけど、AIM-120空対空ミサイルなどの統合にアメリカ側が難色を示しているという事情があって、それはFA-50GFも一緒。

他のソースでも、ポーランド軍はFA-50GFのアップグレードにネガティブな印象の内容を書いている。
韓国メディアも遅延を認めつつ、アメリカのせいだと怒りを滲ませ、ポーランドの資金不足のせいにしている。
なお、この韓国メディアはFA-50PLの購入が前提で話を進めているが、その前提自体が崩れつつある。FA-50PLの購入契約は、破棄される可能性が十分にある。なぜなら、FA-50PLはファントムストライクにAIM-120やAIM-9といった主要兵装を統合することが前提の仕様であり、それが許可されない以上、「FA-50PL」は完成しないからだ。
まとめ
ポーランドがFA-50軽戦闘機の導入を決めた当初、その判断には驚きもあったが、「とにかく早く数を揃えたい」という事情を考えれば、理解できなくもなかった。しかし結果を見れば、懸念されていた問題がほぼすべて現実のものになっている。
FA-50GFは「安価な軽戦闘機」として売られたが、実態は武装を欠いた高等練習機で、戦闘機として使うには後付けの改修と統合が不可欠だった。その改修には、米国の輸出管理という避けようのない制約が立ちはだかり、コストもスケジュールも見通せなくなっている。
維持費が安い、燃費が良いといった評価も、裏を返せば「性能相応」であるというだけの話だ。
ポーランドはFA-50GFを、当初の構想通り戦闘機として使うことはできないだろう。残る選択肢は、割り切って練習機・補助任務機として使うか、あるいは損切りに近い決断を下すかだ。安物買いの銭失いと言われても、決断は早いほうがイイヨ。
追記
なんと、タイミングの悪い。
韓国空軍の練習機が緊急着陸後に横転 人的被害なし
2026.01.02 16:11
韓国空軍は2日、南西部の光州基地に所属する高等練習機T50が同日午後、飛行訓練中にエンジン警告灯が点灯したため緊急着陸を行ったと発表した。機体はその際に滑走路を外れて横転したという。操縦士2人は無事だった。
高等練習機T-50はFA-50の原型機である。
エンジンはGEのF404-GE-102を使っているので、おそらくは整備不良が原因だろうと思う。負傷者など無くて何よりではあるが、パイロットは貴重なのでこういうトラブルはないようにして欲しいものである。なくなりはしないんだろうけれど。




コメント
こんにちは。
大丈夫。
マッコイ爺さんに金積めば、クレムリンだって引っ張ってきてくれますよ。
※あの頃は荒唐無稽でもリアリティがあったなぁ……今じゃ、例えF-22引っ張ってきても維持出来なさそう。
こんにちは。
F-22戦闘機は運用コストも劇高ですから、流石にマッコイ爺さんも「止めておけ」と忠告してくれると思いますよ。
ポーランドは金を積む相手を間違えた、というオチなのではないでしょうかね。