リクエストを頂いたものの、既にコメント欄に回答が!概ね同意できる意見なのだけれど、しかし結論はちょっとだけ違う。
フィリピン、20機のF-16戦闘機で一層の軍備増強を決定
4月 22, 2025
激化する侵略行為に屈することなく、フィリピン軍は新しい戦闘機や軍事資産の導入を目指している。
2025年4月、米国国防安全保障協力局(Defense Security Cooperation Agency – DSCA)は、米国国務省が、インド太平洋地域の長年の同盟国であるフィリピンにF-16戦闘機20機を供給することを承認したと発表した。 約7,942億円(55億8000万ドル)規模のこの契約には、先進的なアビオニクス、レーダー、空対空ミサイル、爆弾、対空砲、弾薬が含まれる。
FORUMより
さておき、フィリピンの話などしながら、日本の戦闘機事情について少し茶飲み話などを。
戦闘機開発は遅延
F-16Vを採用するフィリピン
さて、先日、こんな記事を紹介した。
アメリカからフィリピンに対してF-16 D Block 70/72を20機ほど売ることになった。冒頭の記事はそれが承認されたのでいよいよ前に進むという話である。
コレに先駆けて、台湾がF-16V(F-16 C/D Block 70/72)に導入される話があって、アジア圏の防空防衛網を強化出来るという話になっている。
台湾が調達の新造F16V 1号機の引き渡し式 駐米代表らが立ち会う
2025/03/29 16:42
台湾が米国から調達する新型戦闘機「F16V」(ブロック70)の1号機の引き渡し式が28日、米防衛大手ロッキード・マーチンの工場で行われた。ウィリアム・ティモンズ米下院議員(共和党)がX(旧ツイッター)に投稿した写真によると、国防部(国防省)の柏鴻輝副部長(副大臣)や兪大㵢駐米代表(大使に相当)が立ち会ったとみられる。
フォーカス台湾より
大変喜ばしいことなのではあるが、このプログラムが開始されたのは第1次トランプ政権の時代である。
台湾の戦闘機の性能増強や増備を巡っては、主力戦闘機「F16A/B」140機を高性能のF16V(ブロック20)へ改修する作業が2023年に完了した他、新造のF16Vを66機購入することが決まっている。空軍司令部計画処長の江元琦少将は25日の国防部定例会見で、今週にも引き渡し式が行われることと、26年までに全機の引き渡しが完了する予定であることを明かしていた。
フォーカス台湾より
フォーカス台湾の記事はやや記載が怪しく、台湾が保有するF-16 A/B Block 20で150機ほど導入したが10機喪失したため、現有は140機であるとされている(詳細は不明)。ただし、老朽化によって近代化する必要に迫られていたため、2019年に台湾に66機のF-16V(ロッキード・マーティン社はF-16 C/D Block 70/72と説明しており、F-16Vは正式なネーミングではない)を納入することと、現有する140機のF-16 A/B Block 20をF-16V仕様に改修することが決定された。
が、遅れに遅れて台湾にアメリカからF-16Vが届いたのが2025年3月末になった。
この他にもF-16Vの引き合いは多く、世界に誇るベストセラー機であると言っても過言ではない。
正直、アメリカの生産能力がポンコツになっている今、台湾もいつまで待たされることになるのか。自前でもF-16Vへの改修をやれているのでマシなんだけど、部品がそもそも入ってこないんだよね。
フォートワース工場の生産ラインは一旦閉鎖
コレだけ売れているF-16Vだが、この機体を製造するフォートワース工場(テキサス州)はF-35戦闘機の製造力増強を行うために、F-16戦闘機用のラインを2017年に閉鎖。グリーンビル工場(サウスカロライナ州)に移すことになった。
実は、2017年時点でF-35戦闘機は低率初期生産ながら200機以上が生産され、2018年からは全規模生産が行われることになっていて、採算性の低いF-16戦闘機はちょっと邪魔だったのだ。F-35戦闘機の全規模生産をしないとコストダウンできないし、そうなると同じ工場内で作っている価格の安いF-16Vはちょっとね。
グリーンビル工場で生産が開始されたのは2019年4月になってから。都合2年間くらい生産がされていなかった。更に、後述する困ったことも。
ところが、F-35A戦闘機は完成が遅れていて、未だにブロック3Fで、ブロック4への移行が滞っている。コレにはエンジンと発電量の問題がついて回っているらしく、解決が見通せていない。
そこで、アメリカ空軍もF-16Vを繋ぎで導入し始めたんだね。だから、F-16戦闘機の製造を手掛けているロッキード・マーティン社はコストに見合わないまだまだF-16Vを作り続けねばならず、その需要は増え続けている。
そういえば、インドに提案されたF-21はどうなったんだろう?

インドに提案されたF-16派生のF-21戦闘機で、なんというかシルエットからして別物になっているのだが、2019年に提案されて以降、音沙汰がない。
日本にも提案されたのだけれど、日本はアメリカとの共同開発でF-2戦闘機を作り上げ、採用した。「形だけ似ている別物」と言われたF-2戦闘機は傑作機ではあったが、石破のアホウが既に生産ラインを閉じてしまっている。もったいないことをした。僕はこのこと1つだけで石破氏を絶対に許したりはしない。
高コストなF-15EX
さて、もう1つ忘れてはならないのがF-15戦闘機だ。
こちらも息の長い戦闘機ではあるが、未だにボーイング社は作り続けている。ただ、当時は恐ろしく高コストになってしまって、慌てて安価なF-16戦闘機を作った経緯があり、高価な戦闘機だというイメージが付いている。今ではF-16Vよりも安価に作られていて、苦笑を禁じ得ないが。
なお、F-15も近代化して、最新版はF-15EXである。F-15EXはアメリカの空軍州兵向けに開発された機体で、「ちょっと高すぎる」と文句を言われて144機製造されるはずだったのに80機に減産されて更に高コストになってしまった機体だ。
ただ、イスラエルに採用されることが決まっていて、予定通りであれば納入開始は2031年であるといわれている。イスラエルは25機お買い上げになっているが、老朽化したF-15C/Dを近代化改修して納入していて、コレがあまりよろしくない結果となっている。
F-15EX戦闘機の生産がピンチ!主要部品メーカーが工場閉鎖
2024/4/24
米国の航空機メーカー”ボーイング”社の主要部品サプライヤーであるGKNエアロスペースが米国内の工場の操業停止を計画しており、ボーイングが製造するF-15とF/A-18の両戦闘機の生産ラインがストップする可能性があると報じられている。
ボーイング社は同社が生産するF-15およびF/A-18両戦闘機に使用する重要部品の生産をGKNエアロスペースに委託しており、特に「スーパープラスチック」と「飛行制御面」の2つは両機を生産する上で必要不可欠な部品になる。ボーイング社は2001年以来、20年以上に渡って同社一社にこれらの部品を依存している。しかし、GKNは2024年末までにミズーリ州ヘーゼルウッドにある工場を閉鎖する予定で、これにより部品供給がストップしボーイングは両戦闘機の生産を継続できなくなる恐れがある。
ミリレポより
何をやっているのやら。
実際、ボーイング社自身も技術者不足で生産性が落ち、開発力も低下している中で、下請け企業にまで気を配っている余裕がない状況でもある。
これ、F-15だけでなくF-16にも言えることで、結局、アメリカは戦闘機用の部品を製造する能力が細っているので、生産に四苦八苦している。トランプ氏も兵器製造には余り積極的じゃ無いんだな、製造業の復活をあれだけ目指しているのに。
とまあ、そんなわけで、性能的にはかなり優れているF-16VやF-15EX、そして最新のF-35も含めて、どこもかしこもアメリカ製造業の根本的な問題が立ちふさがっている状況なのだ。それなのに、世界中からの引き合いが凄いというから、目も当てられない。
日本の航空自衛隊が採用したF-35
というわけで、コメントいただいたところにようやく到達するわけなのだけれど、実は日本がF-35を次期戦闘機に選ぶ際に、随分と葛藤があった。結果的には、圧倒的な大差でF-35Aの能力の高さを評価して採用に至ったのだけれど、第4次F-Xが開始したのが平成20年(2008年)で、散々揉めた末に平成23年:2011年12月にF-35の採用を決定した。
本当はF-22戦闘機が欲しかったのだけれど、結局、アメリカ空軍もF-22戦闘機を持て余して生産ラインを閉じちゃった。
この時に、F-2戦闘機の生産ラインを再び立ち上げて、近代化したものを新造する話もあって、後から考えるとコレが一番良かったような気もするんだけど、当時はメリットが薄かったと判断されたんだよね。
F-35Aも確かに優れた戦闘機なんだけど、言っちゃあアレだが未だ運用面で覚束ない部分が多いんだよね……。未だに、スクランブルに使うには問題があると言われている始末。
F-35戦闘機は「コスト高いし稼働率悪い!!」米国防省が名指し批判 どうしてこうなった!?
2023.11.02
アメリカ国防総省の国防契約管理局(GAO)は2023年9月末、F-35「ライトニング II」戦闘機の品質問題に関する報告書を公開しました。
報告書での最大の懸念材料は同機のメンテナンスに関してで、このままの状態を続けると、F-35の即応性に悪影響を及ぼすとしています。2023年3月の時点でアメリカ軍におけるF-35の稼働率は約55%、計画目標を大きく下回っていると指摘。その一因として、ステルス機のためデリケートな部分が多い同機を軍内で整備・修理できず、先端技術を扱う業者に依存していることが多いためとしました。
乗りものニュースより
アメリカ国防総省すらこんな指摘をする始末である。それでも潜在能力は目を見張るモノがあるんだけど、数を揃えるのがなかなか。
GCAPは未だ
でまあ、こんな状態でかつ、アメリカが「次の戦闘機の開発はしない」と明言してたこともあって、日本はついに重い腰を上げた。
日英伊で「GCAP」構想を立ち上げて2035年までにF-3戦闘機の調達を!という話になったのである。
日英伊の次期戦闘機「“8か国”共同開発」の可能性も!? 「統合しようよ」「仲間に入れて」 足並み揃わぬ欧州
2025.02.09
日英伊の3国共同で進む次期戦闘機の開発プロジェクト「GCAP」に対し、仏独西の3国は「FCAS」を進めています。両者は「統合すべき」という意見が根強くあるほか、それぞれに参加したい“第4国”も存在。各国の足並みは揃うのでしょうか。
乗りものニュースより
ただ、各国もF-35に関する不安やユーロファイター・タイフーンの拡張性など様々な観点で「次はどうしよう」と頭を悩ませていて、隣の愉快な国はKF-21を世界に売り出す!と怪気炎を上げることが出来る程度には、「次」に困っている国が多い。
GCAP構想そのものの進捗もやや不安ではあるが、それ以上に8カ国共同開発というアホな話も生まれてきていて、大変迷惑である。開発が遅れる未来しか見えない。
そして、F-35戦闘機が覚束ない状況を見るに、どうしてもF-15J戦闘機の延命みたいな話は出てきているわけで。
生産能力は問題
じゃあ、ユーロファイター・タイフーンを導入したら良かったのかと言うと、これもまたなんとも。割と優秀であることは否定するつもりはないのだけれど、最新版のトランシェ4の採用はドイツだけ。イギリスは現在国内で随分と揉めているようだ。
実際、タイフーンさんは運用コストがかなり高くて、導入したオーストラリアでは完全に持て余してしまい、イギリスとしてもこのまま増やすことに疑念を抱くという問題もある。だが、それよりお高いF-35が欲しいというイギリスの計画性の無さは……、え?日本も変わらない?
確かに、日本もF-35の代わりにタイフーンを選んでいたらまた違ったかもしれないが、残念ながら過去は変えられない。実際にはF-35を選んでしまったのだ。
では、今はどうしたら良いのか?というと、取り敢えずはF-35戦闘機を日本国内で製造するラインの充実だろう。作っても使い勝手的にどうなの?という部分があるが、そうは言っても現時点でも最良の戦闘機ではある。で、メインの生産ラインでは無く、新たに部品の生産ラインを立ち上げるという方向が望ましい。ワークシェアの問題はあれど、今後を考えれば無駄ではない。
そして、残念ながらF-15Jライセンス生産もF2生産もラインが閉じてしまっているため、現実的ではないのだが……、それでもF-2戦闘機のラインをもう一度1から再構築するのはアリだろう。ロッキードマーティン社が提案していたF-2 SUPER-KAI仕様なら、今後も使えるハズ。それとともに戦闘機を輸出可能な体制を構築すべきだ。上手く行けばGCAP製造のラインにも流用可能だし。
この話、5年ほど前に「10年前ならアリのシナリオ」だと笑われてしまったが、しかし10年後に「25年前ならあり」みたいなアホな事を言うより、今、大金を投じれば5年後にはラインを動かせる。決断すべきだろう。そして、世界中に需要があることを考えれば、全くナシな話ではない。ただし、アメリカとのライセンス関係は見直す必要があると思うが……。
同様なことはF-15にも言えるんだが、アメリカが持っているライセンスのことを考えると、やるならアメリカに工場を作らねばならないだろう。ただ、F-15Jでは困るのでF-15EXをという話になって、これが日本の防衛体制に結構重い負担にはなるし、時間も10年~15年とかかってしまう可能性が高い。じゃあ、今から投資するの?という話になりかねない。
ちょっとアクロバティックな解決策としては、イギリスのランカシャー州ウォートンに作った工場に日本が投資して、更に拡張。タイフーンのトランシェ4の生産拡大をするというシナリオだ。

ただ、トランシェ4には製造的に問題がある。それは電子機器の高度化によって、外国に簡単に売り出せない問題で、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインの共同開発機として開発され、他国からも引き合いも高いものの、コストや運用・保守の点でかなりハードルが高く、本当に他国で運用出来るのか問題がある。恐らく、日本にも技術は渡したくないだろうから、この辺交渉が出来るかどうかにかかっている。第4次F-Xの時には「日本に技術移転可能」という好待遇があったんだけど、どうだろう。
あとはGCAP製造計画を前倒しすることもありといえばアリだが、こればかりは作ってみないと何とも。KF-21戦闘機を笑えない。個人的には一番自由度の高いF-2戦闘機の再生産シナリオが一番近道には思える。というか、F-2戦闘機作っていた職人達が死に絶える前に早く技術承継を!というのが、現場に関わったことのある友人からの訴えである。それも、5年ほど前の話になってしまったので、遅すぎるということになるかも知れないが。
コメント
木霊様、BOOK様ありがとうございます。
F35を劇画「空母いずも」で初見の時は、
「これで日本も安泰じゃわい」と大いに喜んだものの、優れものにはクセかあるようで、なかなかそうはいかない!
最近の他の戦闘機関連記事と併読します限り、「ステルス技術」がネックなようで。
現在のステルス技術はレーダー波の反射をできるだけ少なくする技術すよね?
だから塗料の問題かと思っていたら、どうもそうではないらしい!ガタイがデカくなると木霊様も申されていたですし。
そこで山童思いついた!
そうだ水平尾翼を削って、主翼と機体を一体化させれば、空力抵抗だけでなく、平たくなりレーダー波の照射を激減できる!
と思ったら、それB2爆撃機ですな。
主翼と垂直尾翼だけにするのは断面が小さくなるが、どーも水平尾翼というのはムダについている訳ではないらしく、あれないと高速での安定性がグラグラなるらしい。
ちなみにスペック調べたら、B2系は全て亜音速で、あの形態を採用した戦闘機は存在しないそうです。
結局は「既存の……」というラインで行くか、ユーロファイター買うし投資するから
頼むわ…といくか。
でも、それならF2の生産ラインを一から再出発する方が良いなぁ。
こんにちは。
タイフーンは、悪い飛行機じゃないんですが……本邦の要求には、ちょっと航続距離と搭載量が合わないのでは……
F-2のASM四本積みってのが、まず無茶なんですが(笑)
なので、タイフーン後継の予定だったテンペストは、現状のGCAP(F-3)より小さい機体を想定していたはず。
今公開されている情報からだと、FCASはそこそこ大きいみたいですが。エンジンどうするんだろう……
航空万能論GFさんの過去記事:2026年までに初飛行?公開された第6世代戦闘機「FCAS」モックアップ!
https://grandfleet.info/european-region/6th-generation-fighter-fcas-mockup-released-2/
七面鳥としては、F-2のライン閉じたのは本当に許すまじですが、今ラインを再構築して、GCAPも推進するなんて体力はわーくににも無い気がしてます(コスト以上に、熟練工や開発者が足りないと感じます)。
手持ちで工面しつつ、米海軍&海兵隊ともよく相談しつつ、なんとかGCAPやF-47まで頑張るしかないのかなと。
※F-35は、あんな無茶な企画の割には良く出来た飛行機だと思ってます。ダメなのは基本ソフトウェアと、発電量ですが、旧態依然の国防総省のワークフローにもかなりの原因があるのでは……