界隈ではちょっと話題になっていたので、韓国海軍のイージス艦に関する記事を取り上げよう。
[単独] 米国、韓国へのイージス艦核心システム輸出を拒否
入力 2025年10月19日 午後5時33分 修正 2025年10月19日 午後10時43分
「海の盾」と呼ばれるイージス艦の戦闘力を大幅に高める協調交戦能力(CEC)が韓国海軍にはないことが明らかになった。世宗大王級・正祖大王級イージス艦6隻を確保しようとする海軍は米国側にCEC導入を打診したが受け入れられなかった。オーストラリア・日本にはCECを提供した米国が、同じ同盟国である韓国には輸出しようとしない二重的な態度を示していることによるものである。
NAVERより
ライターは、パク・スチャン氏か。韓国軍ネタを扱うと、まあまあ見かける人で軍事に詳しいらしい。
韓国不信のアメリカ
韓国版イージス艦
さておき、韓国海軍ではイージス艦を運用していることは既にこのブログでも紹介している通り。

韓国海軍で運用しているイージス艦といえば、以下の5隻が知られている。
世宗大王級駆逐艦(KDX-III Batch I)
- DDG-991 世宗大王(セジョンデワン) 基準排水7,600t級
- DDG-992 栗谷李珥(ユルゴクイイ)
- DDG-993 西厓柳成龍(ソエユソンニョン)
正祖大王級駆逐艦(KDX-III Batch II)
- DDG-995 正祖大王(チョンジョデワン) 基準排水8,200t
- DDG-996 茶山丁若鏞(タサンチョンヤギョン)
- 3番艦建造中

設計的にエレガンスさを感じないし、トップヘビーの伝統を守って重武装という面白設計ではあるんだけど、固定砲台的な使い方なら問題ないかも。
そういえば、ニュースを見逃していたのだけれど、正祖大王級駆逐艦の2番艦は就役していたんだね。しばらく作らないという噂もあったんだけど。
CECがない
さて、今回、取り上げた理由はここだ。
国会国防委員会所属の国民の力・姜大植議員が19日、海軍本部から提出を受けた資料によると、海軍は昨年6月に米海軍側に書簡を送り「 北朝鮮の脅威に対応するため、正祖大王級イージス艦とSM-3・6艦対空ミサイルの確保などを推進中だが、CEC未搭載により超水平線・長距離対空目標への対応能力が制限されている」と説明し、輸出可能性の検討を要請した。
NAVER「米国、韓国へのイージス艦核心システム輸出を拒否」より
韓国版イージス艦には、協調交戦能力(CEC:Cooperative Engagement Capability)がないらしい、ということ。
え?ないの?
CECは、複数のユニットを運用した場合に、各ユニットのレーダーから得られたデータを生のままで共有して、自艦・機が装備するレーダーのように処理できる機能だ。
戦術データリンクと似てはいるが、戦術データリンクの場合はデータ処理をした上で共有することになるため、ややタイムラグが生じる。
比較項目 | 共同交戦能力(CEC) | 戦術データリンク |
---|---|---|
共有するデータ | 射撃管制に使えるレベルの 高精度なレーダー生データ。 | 状況把握のための 加工された航跡情報。 |
精度 | 非常に高い(射撃管制レベル) | 高速目標の交戦には不向き。 |
更新頻度 | リアルタイム(秒単位) | ニア・リアルタイム(分単位)。 |
役割 | 艦隊全体の戦闘能力を統合し、射撃統制を可能にする。 | 部隊全体の状況認識を向上させる。 |
友軍機をセンサーノードとして使える点でCECは優れているんだけど、ないと戦術的に支障を来すかというと、そこまでではない。
CECで何ができるのか
ただ、CECはリアルタイムでのデータ共有ができるために、これまで利用されていた戦術データリンク(リンク16)よりも、戦術の幅が広がる。
CECは、複数の艦船や航空機でレーダーなどにより追跡・捕捉された目標情報を、高容量ネットワークを通じてリアルタイムに融合・分配し、共通目標を算出することで、遠隔交戦を可能にする支援システムである。軍艦に搭載されたレーダーは、地球の曲率(地球の球体形状によって生じる曲線)のため、低高度で水平線を超えて飛来する巡航ミサイルが接近した際に捕捉が可能となる。
NAVER「米国、韓国へのイージス艦核心システム輸出を拒否」より
小難しいことが書いてあるが、要は友軍のレーダー情報を自分のレーダーで得た情報のように使えるという意味だ。

だから、幅広い範囲の情報を利用できる。
理由は不明
ところが、アメリカ側としてはCEC技術を韓国に渡すつもりはないとし、その理由は説明されていないと報じている。
いやいや、分かってるくせに。
これに対し米海軍は同年8月の回答で「米政府の輸出管理及び技術移転政策は韓国へのCEC輸出を支援しない」と拒否の意思を表明した。拒否の理由として挙げた「輸出管理及び技術移転政策」の内容については具体的に明示しなかった。オーストラリアは2018年にホバート級イージス艦、日本は2020年にマヤ級イージス艦にCECを搭載した前例があるが、韓国にはCECを販売する意思がないことを示したものである。
NAVER「米国、韓国へのイージス艦核心システム輸出を拒否」より
韓国軍は過去にもリンク16の技術移転を拒否されるなどの事態があって、割とデータ共有を拒否されがちである。
今回もCEC輸出支援を拒否されてしまった。
まあ、韓国大統領はゴリゴリの左派の李在明氏(ミョンミョン)だから、警戒はされるよ。
あと、世宗大王級駆逐艦にしても正祖大王級駆逐艦にしても、日本の海上自衛隊保有のまや型護衛艦が装備しているDDSのアンテナのような装備を持っているとは聞かないので、技術導入するとすれば結構な改修が必要になりそうである。
ただ、せっかくF-35A戦闘機を42機も保有しているのに、F-35Aの多機能先進データ・リンク(MADL)が有効に使えないということになってしまうので、その辺りはもやもやするかもしれない。
SM3も使えない
そうそう、韓国版イージス艦はSM2ミサイルは配備しているのだけれど、SM3は使わせてもらえない。噂によるとSM6の採用を検討しているらしい。
米国国防総省(DoD)は2018年10月、ロッキード・マーティン社が韓国海軍の次世代ミサイル駆逐艦3隻にイージス戦闘システムのベースラインK2バージョンを搭載する3億6,570万ドルの対外有償軍事援助(FMS)契約を締結したと発表しました。その後、米国はレイセオン社製のスタンダードミサイル2中距離(SM-2MR)ブロックIIIB地対空ミサイルの追加バッチについて、韓国との3億1,390万ドルのFMS契約を承認しました。
韓国はまた、レイセオン社のスタンダードミサイル6(SM-6)にも関心を示しており、これは2023年から2031年の間に予算化される予定である。
KDX-IIIバッチII駆逐艦は、米国製と韓国製のミサイルを混合した最大88基の垂直発射システム(VLS)セルを搭載すると報じられています。上記の兵器に加え、これらの艦艇は、韓国のLIG Nex1海雲(シーボウ)地対空迎撃ミサイル(K-SAAM)、SSM-700K海星(シースター)地対地ミサイル、そして紅鮫(レッドシャーク)韓国の対潜水艦ロケット(K-ASROC)システムも搭載する予定です。
ASIAN MILTARY REVIEWより
別に、SM3が使えなければ困ると言うことではないんだけど、正祖大王級イージス艦はその許可を得ようとしているとされている。
SM3ミサイルは、大気圏外のミサイルを迎撃することができるのだが、これ、日米で共同開発したミサイルなので、たぶん許可は出ないよ。
SM6ミサイルは長射程ミサイルなので、こっちも当面は許可されないかも。先ずは、アメリカの信頼を勝ち取るところからやり直す必要があるよ。
コメント
韓国はなぜ拒否されたのでしょうかね
内部に中華スパイがいるからとかですかね
色々やらかしていますから、韓国は。
一番警戒されているのはスパイ行為をやらかすことでしょうけれど、根本的にP1哨戒機に火気管制レーダー向けて、誰も責任とれないような軍隊など信用できんのですよ。
こんにちは。
CEC、情報逆算してこっち向けて発砲された日にはたまったもんじゃないですからね。
誤情報流されても困るし。
※意図的にIFF殺してP-1をロックオンして発砲のみ他国艦にやらせる、とか。
※データリンクのみだと、人が介在して、情報の精査ができる……かな?
まあ、中身抜かれる心配が一番なんでしょうけれど。
こんばんは。
まあ、シンヨウデキナイ軍隊ですから仕方がありませんよね。
なんだかんだ、文句言いそうですし。