ふーん、としか言いようがないな。
「死者2000人」知られざる尖閣奪還シミュレーション ぶれる米国、戦略の共有が急務
2025/4/10 08:00
日本政府内でもごく限られた人にしか知らされていない数字がある。尖閣諸島(沖縄県石垣市)が中国によって占拠され、自衛隊が奪還する作戦で想定される犠牲者の数だ。
死者2000人―。安倍晋三政権期に行われたシミュレーションで、最悪の場合の死者数としてはじき出されたのがこの数字だった。
産経新聞より
記事は有料プラン限定なので中身を読むことは出来ないのだが、あまり良い内容ではなさそうだ。これなら空母「いぶき」のマンガ版の方が説得力が……。
日本単独での防衛力強化は厳しい
アメリカの介入なしに防衛するシナリオ
さて、尖閣諸島の防衛の話なのだが、簡単に言えば防衛は困難、奪還は可能、と言ったところだろうか。
こちらの記事はリンクだけ貼っておくが、似たような結論を出している。ただし、尖閣諸島を日本と支那で「共同管理」しようというアホなことを言っているので、その辺はスルーしておいて欲しい。
最近はこんな記事も書いたのだが、尖閣有事というのは絵空事ではなくなりつつある。
そして、リンク先の記事が言及するように、アメリカが尖閣有事に介入してくる可能性が低いという点に関しては同意だ。
尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮想「東シナ海戦争」の結末
2020年9月23日(水)20時15分
2030年。東シナ海にある日本の島を、中国軍部隊が占領した。日本は両用戦タスクフォースを派遣し、直ちに到着した米軍の軍艦や航空機が同行する。
日本を支援せよ。ただし、中国軍部隊との戦闘は回避せよ──それが米軍側の指令だった。
Newsweekより
この話は新アメリカ安全保障センター(CNAS)の机上演習によるシナリオなのだが、個人的な感想を言わせていただくと、支那が尖閣諸島だけに手を出してくるとは考えにくいと思う。やるなら台湾とセットだろう。
そうすると、アメリカ軍の関与のシナリオも変わってくるとは思うが、しかしそれでも自国の領土くらい自国の軍隊で守れなければ話にならない。
アメリカは支那との軍事的対立を望まない
そもそもの想定として、「アメリカと支那との軍事衝突」というのはかなり大きな事態に発展する可能性が高いとするシナリオが多い。これは対ロシアでも同じことで、バイデン氏が積極的にウクライナに手を貸さなかった理由もその辺りにあると思うので説得力は高かろう。
演習開始当初の交戦規定は息苦しいくらいに厳密だ。日本を支援する一方で、中国軍部隊との戦闘は避けるのがアメリカ側のルール。中国軍司令官らは、日本の部隊がEEZに入った場合は米軍に着弾させずに攻撃せよ、との指令を受けている。
両チームが用心深く動くなか、戦場マップの上では一連の応酬が展開された。レッドチーム(中国)もブルーチーム(日米)も主張を譲らず、レッドが「引き下がれ」と強硬なメッセージを発信する一方、ブルーは敵を撤退に追い込もうとする。
つまり、序盤は日本の自衛隊単独で防衛戦を行う必要があり、交戦が激化するとアメリカは手を引く可能性があるために日本対支那という構図になってしまえば、やはり単独で防衛する必要があるということになる。
海に囲まれる日本の防衛は、上陸部隊を阻止することを主眼に置かれている節があるのだが、そうすると離島防衛というのはなかなか厄介なことになる。人権などを考慮しなければやりようがあるのだけれど。
では、アメリカ軍はどの段階に関与する余地があるのかといえば、おそらくは後方支援に徹するのではないか、と。
ブルーに最初に問われたのは、日本の艦隊がEEZに入った場合に想定される、中国の対艦ミサイル一斉射撃への対策だ。イージス防空システムを搭載した米軍イージス艦が日本艦隊を護衛すべきか、それとも米軍はサイバー戦を展開して中国側の指揮命令系統を妨害するべきか。一般参加者のうち6割の賛成を得たのが後者だ。
~~略~~
演習が終了する頃には、対立は膠着状態に陥ったようにみえた。中国は手痛い損害を負ったものの、魚釣島の占領を維持していた。もっとも、この手の防衛計画ゲームの主要な目的は勝者の見極めではない。
Newsweek「尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避」より
そして、奪還作戦はともかくとして防衛作戦の遂行は困難である。その作戦の成功率を考えると、アメリカは尖閣諸島奪還作戦に直接的に関与しない可能性の方が高そうである。
奪還作戦は恐らく自衛隊単独でも可能ではあるが、防衛はかなり厳しい。兵站の維持が困難だからである。
一方、米軍航空機は約2500キロ離れたグアムの基地か、航空機がひしめき、攻撃にさらされやすい沖縄の基地が拠点だ。ミサイルを発射した後、基地に戻って再装塡し、作戦地帯に戻るまでには何時間もかかる。
戦争行為は着実にエスカレートする。これこそ、今回のシミュレーションの最も重要な点だ。対立が始まった時点で、米中に互いを攻撃する意図はなかった。だがゲームが終わる頃には、両軍は艦船や航空機を破壊し合っていた。双方とも領有権争いを地域限定の対立にとどめるつもりだったのに、中国が沖縄にミサイルを発射する事態に発展した。
Newsweek「尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避」より
アメリカ軍としても日本からの兵站維持がままならないとなると、グアムを拠点にする必要が出てくる。余り現実的ではないシナリオだ。
そして、無理がある作戦だからこそ被害が多数に上るというのは、自明の理である。
有事の際の避難計画
さて、それではどうしたらいいのか。
参考になりそうな話は台湾有事の対応について、である。
台湾有事が起きたら、住民はどう避難すればいい?最悪の様相はロシアと北朝鮮の軍事的呼応、自然災害と同じよう考えては危ない
2025年4月12日
政府は、台湾有事に伴う日本への武力攻撃を念頭に置き、沖縄県の先島諸島(宮古島市、石垣市、竹富町、与那国町、多良間村の5市町村)の住民の九州・山口8県への避難を計画している。住民を受け入れる側の九州・山口8県が策定した計画では、観光客を除く島民約11万人を8県の計32市町のホテルや旅館などで受け入れる内容となっている。
~~略~~
先島諸島は台湾に地理的に近い戦略的要衝であり、複数の自衛隊の駐屯地が所在し、周辺海空域では平素から中国軍が訓練を繰り返している。このため、台湾有事の際には中国軍のミサイル攻撃や着上陸侵攻を受ける可能性があり、ここから住民を避難させるのは当然だ。
Wedge ONLINEより
多くの論者にとって、台湾有事は日本有事だという認識で一致はしているのだが、尖閣諸島有事になった際に台湾がどのように動くのかというのはあまり言及されていないように思われる。
尖閣諸島に加えて先島諸島は、台湾防衛に置いてかなり重要な拠点となる。

地図を見れば明らかだろう。台湾としても尖閣諸島が軍事拠点化されるのは避けたいし、他人事ではいられない。
日本政府は台湾有事の想定をして離島から住民避難を実行するシナリオを検討しているようで、それはそれで必要なことだが、その先のシナリオについての検討はあまりやっていないように思う。
政府 “台湾有事”など念頭 沖縄離島からの避難計画 初公表
2025年3月27日 13時37分
いわゆる「台湾有事」などを念頭に、政府は、沖縄の離島からの避難計画を初めてまとめ公表しました。住民らおよそ12万人を6日程度で避難させ、九州や山口県の合わせて32の市や町で受け入れるなどとしています。
政府がまとめた沖縄の先島諸島の5市町村からの避難計画では、自衛隊や海上保安庁の船舶や民間のフェリー、それに航空機を使って、1日2万人の輸送力を確保します。
そして、すべての住民に観光客を加えた合わせておよそ12万人を、6日程度かけて福岡空港や鹿児島空港などに避難させるとしています。
NHKニュースより
避難したら事態が終結するまでそのままの状況が続くわけだが、事態終結までのシナリオが描かれているとすれば、やはり台湾との連携は必須。尖閣諸島をとられたりとりかえしたりだけでは終わらないので、その先の想定が必要となる。
しかし武力攻撃では、攻撃側は相手に勝つために相手に最大のダメージを与える(相手にとって最悪の)事態を「意図的に」作為する。攻撃側が、日本が先島諸島からの住民避難しか考えていないと分かれば、それ以外の地域の住民を意図的に攻撃して日本国民に恐怖を与え、戦意喪失を狙うだろう。
Wedge ONLINEより
支那は外交交渉で何か譲歩を引き出せる相手ではない。日本よりも国力の大きい支那が本気で日本侵略を目論んでくれば、物量で押し切られるのはかなり日本としても厳しい。それは先の対米開戦で痛いほど思い知らされているはずだ。
やはり、とられた時に奪還出来る圧倒的戦力を持ってこそ、抑止力たり得るのであって、9条をお題目のように唱えたところで何の意味もない。
領土奪還のために現実的なシナリオを描いておくべきであり、そのための戦力増強は必須なのだ。台湾有事と尖閣有事はセットになる可能性が高く、そうであれば支那に対抗する為に台湾と連携できる準備は必要である。台湾を見捨てて日本が救われるシナリオが存在するのであれば別だが、シーレーンの防衛を考えると台湾を見捨てるというシナリオは凡そ現実的ではない。
ミサイル配備による防衛力の強化は待った無しだし、空港や軍港の整備なども必要。必要に応じて防衛訓練などもになってくると思われる。自衛隊の方針を見る限りはその方向で話が進んではいるようなんだけど、根強く何にでも反対する方々がいらっしゃるので困った話だな。
あと、尖閣諸島に「自然保護の観点から必要」ということで調査研究の人員を派遣すべきだ。今すぐにでも出来る。尖閣諸島に固有種がいることは分かっているので、その現状調査という名目で直ぐに人を派遣すべきである。その上で、調査に必要な船だまりの建設なども進めると良い。最初に引用した記事では「危険だから止めろ」と警告しているが、今じゃないと出来ないことである。リスクをおかしてでも後々有利になる可能性が高いのだから、政治的決断をすべきだろう。
コメント
たぶん自然保護や人権に抵触する案ですが。奴らが上陸して橋頭堡を築く前にクラスター爆弾を集中投下する。
地雷原設置を用意しておく!
物資輸送やら港湾やら道路やら、実際に占領すると使える道筋は限られてくるので
(兵站に崖を登ったりしない)、そこ起点にクラスターを食らわせるようにしておく。
クラスター爆弾禁止の条約から離脱。
戦後のどうする?
集中的にバラ撒いた辺りは燃料気化爆弾を(アメちゃんに借りて)投下し、まとめて破壊する。残った細いのは時間かけて取り除く。別にカンボジアでもUNTAC時代からやってる事だし、ウクライナでもこれから長々と行われる事です。日本だけ特別じゃあない。非情かも知れませんか、911の被災者の方々だって、汚染で未だに家に帰還できない方々がいます。ましてや戦争だ!
それは仕方ないと割り切るべき!!
戦争になったら「環境」とか「人権」とか言っていられなくなるんですが、パヨクの方々はそうは思わないんでしょうね。
地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約から手を引いたほうが日本の国益になると常々思っていますが、そういう決断は政治的なコストがかかるのでしょう。
正直、「戦後どうするか」という心配が出来るのは勝者だけです。
敗者はそんな心配をすることができなくなるほど痛めつけられますから。
やはり、勝つための手段を求めるべきだと愚考いたしております。
こんにちは。
・有事にあっては、民間人は粛々と当該機関(この場合警察、保安庁、そして自衛隊)の指示に従って行動(主に退避、避難)すべし
これにつきます……が、「一緒に酒飲んで話し合えば解決!」とか行ってる奴らが絶対に足引っ張るのが見えているので、強制力のある法整備が絶対に必要。
・環境等監視のための人材の派遣
これは本当に、一人でもいいから送り込んで、実効支配の明示と、人的被害が出ることを世界中に知らしめておかなければなりません。
逆に言えば、派遣される人は、真っ先に死ぬか、捕虜になることを了承していなければならない。そこが難しい所か……(ですが、国家公務員である限り、国家の有事が予想される際には、「国民(市民ではない)」の為に防波堤になることを許容してもらわないと困る。そのために税金で養っているのだから。
戦術レベルで言えば、相手の兵站を潰してしまえれば持久戦で勝ちに持ち込めますが……航空戦力と潜水艦の活躍次第になりますね(正面戦力はともかく、あっちの補助艦艇は少ない、前に出れるのは特に少ないと想定するのですが……どうだっけな?)
※Wikiの中国人民開放海軍の項目の補助艦艇数見ると、戦闘艦の所帯の大きさに比べて少ない気はします。給油船と補給艦を潰しちまえば……
こんばんは。
憲法に非常事態が想定されていませんから、避難を邪魔した連中を逮捕するのが結構難しいのですよね。
それでも、行政が決断すればやれるのでしょうけれど。
環境のための人材派遣というのは、確かに命の危険はあるわけですが。
そこは国家公務員にお願いするしかなさそうです。
そして、戦術レベルでの「兵站」の部分でシーレーン防衛が要になったりするわけで。ヤバいですよね。