近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。「注意して下さい」もお読み下さい。
スポンサーリンク

支那指導部が「浪費は恥」と地方政府に公務員に呼びかけ

中華人民共和国ニュース
この記事は約7分で読めます。

どこの八代将軍様なのかと。

中国、「浪費は恥」と公務員に呼びかけ-酒もたばこも控えるよう通達

2025年5月20日 10:30 JST

中国の習近平指導部が全国の公務員に対し、出張や飲食、役所のスペースにかかる無駄な支出を削減するようあらためて指示した。経済の逆風が政府予算を圧迫する中で、共産党が緊縮財政を進めようとする新たな兆しだ。

Bloombergより

市中の流動性が悪化する中で、出した通達が緊縮財政だとは恐れ入る。

スポンサーリンク

地方政府の財政は最初から破綻している

緊縮財政の功罪

八代将軍吉宗公に文句を付けたいわけじゃないが、九代目をサポートした老中の田沼意次がいなかったら、幕府財政が改善しても市場経済は破綻していたぞ。そういう意味では水野忠邦は愚か者であった。

あれ、何の話だっけ。

ああ、支那の緊縮財政の話か。

国営新華社通信は18日、党と政府が出した通達について、受け付け窓口や酒類・たばこに関係する支出にも触れていると報道。「厳格な勤勉さと倹約を求め、ぜいたくと浪費に反対する」とし、「浪費は恥であり、節約は美徳」と通達は説いているという。

Bloomberg「中国、「浪費は恥」と公務員に呼びかけ」より

いきなりそんなことを言い出されても共産党員は困惑するだろうに、習近平氏はお茶目さんである。

中国では地方政府が土地売却収入の減少で予算が制限される一方、巨額の債務にも直面。今回の措置は習指導部が官僚に支出削減を促している取り組みを再確認する内容だ。最高指導部は2023年終盤、「倹約を習慣とすべき」だと求めていた。

Bloomberg「中国、「浪費は恥」と公務員に呼びかけ」より

水野忠邦かよ……。(注:忠邦は、放漫な幕府財政を引き締めるために、奢侈禁止・風俗粛正を命じ、低物価政策を実施し、低質な貨幣を濫造した)

貨幣経済において、地方政府の収入が減ってしまったことの対策として、公務員に「支出削減」を命じるのは理屈としては正しそうに思えるが、しかし、「厳格な勤勉さと倹約を求め、ぜいたくと浪費に反対する」となると、話は変わってくる。消費を冷え込ませてどうするのだ。

地方財政は窮乏している

そもそも、地方政府の財政がピンチなのは習近平氏の政策が問題だった。いや、習近平氏の政策が原因というのは言い過ぎだろうか?

一応整理しておくと、支那の不動産開発の話は以下のような経緯を辿っている。

  • 1978年 経済自由化の一環として住宅制度改革が試験的に開始
  • 1988年 土地使用権の譲渡を合法化し、住宅市場化改革
  • 1992年 不動産開発業が正式に認可
  • 1998年 住宅供給の責任が政府から市場に移行し、これ以降、不動産市場が爆発的に拡大
  • 2008年 リーマン・ショックを切っ掛けに不動産投資を実施(4兆元規模)  
  • 2010年 不動産価格の高騰が深刻化し、不動産価格コントロール政策が導入される
  • 2017年 住宅ローン規制強化、不動産開発会社の債務問題への介入
  • 2020年 三条紅線政策の導入
  • 2021年 恒大集団のデフォルト危機発覚
  • 2022年以降 住宅販売低迷

この流れで、1994年頃に中央政府と地方政府の税収配分が明確化されたため、地方政府が自主財源を確保するために土地の使用権販売を重視し始める。その上で、住宅開発資金を調達するための地方融資平台(LGFV)が多数設立される。

ここから開発による「地価上昇 → 再度売却 → 収益確保」という「土地財政ループ」が確立されることになる。いわゆる住宅バブルに繋がっていくわけだ。

10兆元の「隠れ債務」処理が中国経済に与える影響-2025年の経済減速の可能性も見据えた動き(2024年11月)

2024-11-28

中国で2024年11月4~8日に開催された全国人民代表大会常務委員会で、景気回復に向けた追加の財政政策の一環として、政府当局は地方政府が抱える「隠れ債務」処理のため、今後5年間で10兆元を投じる旨を承認した。中国では9月以降相次いで景気刺激策が打ち出されているが、足元では経済回復の糸口を見出しきれない状況下、もう一段の積極的な財政・金融政策が期待されていたなかでの大規模な施策とも考えられる。

~~略~~

11月4~8日に開催された全人代常務委員会で、中国政府当局は「地方政府の債務上限を引き上げ、隠れ債務を置き換えることに関する議案」1を可決した。足元の中国経済は個人消費の伸び悩みと長引く不動産不況の影響から停滞しているなか、景気浮揚に向けた追加財政政策の一環として、地方政府が抱える「隠れ債務」対策に今後5年間で10兆元(約210兆円)を投じることを決めたものである。

~~略~~

国際通貨基金(IMF)によれば、地方政府融資平台が抱える債務は足元5年でほぼ倍増し、2023年時点で約66兆元(約1,320兆円)に達していると推計されている。公表されている中央および地方政府債務(同69兆元)に迫る水準となっており、いわゆる政府の「隠れ債務」の温床となっている。

PWCより

去年末には「やばいよやばいよ」的な報道が出ていたが、この「隠れ債務」を誤魔化すために債務上限を引き上げるなどの対策をしたけれども、これって単なる先送りで、地方政府の債務はただただ膨れ上がるしかない。

高債務の中国地方政府、一部インフラ事業に中止命令=関係筋

2024年1月19日午後 8:07

中国政府は多額の負債を抱える地方政府に対し、一部のインフラ事業を延期または中止するよう指示した。関係筋3人が明らかにした。

ロイターより

だって、去年1月の対策は「延期または中止」だったのだから。「中止」も悪手だけど「延期」って。そりゃ債務も膨らむさ。

そして、「地方政府の債務上限を引き上げ」「隠れ債務を置き換え」って、何の解決になるのやら。延期と何が違うのやら。

地方融資平台(LGFV)の仕組み

そして、そもそも地方融資平台(LGFV)という組織がなかなか。

項目内容
設立主体地方政府(市・県・区など)が100%または過半数出資
法的地位名目上は独立した法人(会社) ただし実態は政府の資金調達ツール
主な用途インフラ建設(道路、地下鉄、公園) 都市開発、不動産プロジェクトなど
財源土地使用権の売却、政府補助金、利用料、債券発行など
担保開発予定地の土地や公共資産、将来の収益

LGFVは地方政府が出資して作った資金調達会社で、LGFVが銀行や債券市場から融資を募り資金調達を行ったわけだ。

これは支那の法律上、地方政府は原則として直接債務を負えないということになっているので、間接的に資金調達する隠れ蓑的に作ったのがLGFVである。真っ当な金融機関であれば、融資にあたってその計画で利益が出るかを検査するのだが、地方政府がバックについていることで「安心だろう」との信頼を得る。

で、採算性を度外視した公共事業や不動産開発が横行する結果に。

ちょっと考えて頂ければ分かると思うのだが、地方政府が予算を確保するためにLGFVを作って資金調達をした。でも予算確保ありきだから公共事業や不動産開発をする時に、採算を考慮しなかった。採算を考慮すると投資しちゃイケないということになって、地方政府が資金調達ができなくなるからね。

習近平氏の焦り

で、そんなことはわかりきっていると思うのだけれど、習近平氏としてはどうしようもないんだよね。

4月の経済統計の悪化の話も紹介したけれども、製造業の方もトランプ氏のお陰で奮わない。

慌てていろ色々やっているみたいだけれど、コレを慌ててやることで困ったことも引き起こしているようで。

動画はなかなか迫力がある。

鼓楼の屋根から大量の瓦が落下―安徽省・鳳陽県

2025年5月21日(水) 0時0分

中国メディアの新聞晨報によると、19日夜、「鳳陽鼓楼が崩れた」とする複数の動画が中国のネット上で拡散された。動画には鼓楼の屋根から大量の瓦が落下し、粉じんが立ち上る様子が映っている。

レコードチャイナより

この建物、2023年2月に屋根部分の損傷修繕プロジェクトを立ち上げて、2023年9月に施工開始、2024年3月に補修工事が終わっている。

つまり、補修は全く無駄だったということで。

地方政府が観光の目玉の修繕にお金をかけなかった結果、手抜き工事で大変なことになったんだけど、なかなか象徴的な事故だと思う。

あっちこっちで地方政府の経済が破綻し始めているのである。

コメント

  1. 山童  より:

    木霊様へ唐突に。実は出版化できるか不明ですが、そういう執筆話が来ました。
    それに専念する事にしました。
    調査、取材、執筆と推敲。エネルギーを
    医療の仕事以外に絞るべく、しばらく退場いたします。
    そしてご面倒を承知で、七面鳥様とBOOK様によろしくお伝え下さい。
    七面鳥様の小説を読んで楽しかったことや、BOOK様のコメントで新たな知見を開かれたことは、これに挑戦してみる大きなモチベーションになりました。
    状況的に「ヘソ曲げて木霊様ブログから出奔した」と誤解されると困るので。
    私もマンガ原作を一般誌でやった事があるので、編集者に頼まれて、よしんば原稿料でても出版はされないなんて事があるのは承知の上です
    また戻らせてもらうつもりではおりますが、ひとまず専念のために姿を消します。木霊様、七面鳥様、BOOK様ありがとう。

    • 木霊 木霊 より:

      そうでしたか、それは喜ばしい。
      山童さんの知識量ならば申し分ない執筆が出来ると思いますので、世に送り出されることを期待しつつ、お帰りをお待ちしたいと思います。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >どこの八代将軍様なのかと。

    ついこないだまで「贅沢は素敵だ」だったのに、今更「贅沢は敵だ」ですか。
    財布の紐って、ゆるめるのは簡単だけど、一度緩むと締めるの大変なんですよね。

    >山童様
    健闘をお祈りいたします!

  3. 砂漠の男 より:

    ここ数日、支那指導部に異変アリ?という観測情報がいくつか出ているんですが。
    ソースが同じなのか、内容が酷似しているので、とりま注意だけ払っておこうと。

    胡錦濤が姿を現し、政治局が「習近平解任会議」を開催した(5/20)
    https://news.creaders.net/china/2025/05/20/2870601.html

    李克強モデルか懐仁堂モデルか?習近平の命は風前の灯である(5/21)
    https://www.peoplenewstoday.com/news/en/2025/05/21/1103049.html

    曰く、5/14に胡錦濤氏ら団派が中心になって、政治局拡大会議が開かれ、
    その場で紅皇帝の解任が決定された。正式には、8月に第19期中央委員会
    第4回全体会議が開かれ、決議される、と。(どこまで本当か?w)

    • 木霊 木霊 より:

      これまた思った以上にヤバいニュースですね。
      どこで裏を採ったらいいか分からない情報ではありますが、習近平氏の足元が危うく色々な動きがある話はここ最近特に色々な方面から出てきています。
      アジア歴訪も、どうにもしょっぱい感じの結果になりましたし、先日のパキスタンのアレもどうなることか。