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支那製自動車を敬遠し始めたロシア

ロシアニュース
この記事は約10分で読めます。

ロシアにとって支那製の自動車の輸入は、ある意味生命線のような位置づけだったと思う。何しろ、国内で自動車を生産している余裕はないから。

中国製自動車の「対ロシア輸出が急減」した事情

2025/06/03 16:00

中国のロシア向け自動車輸出が急速に冷え込んでいる。業界団体の中国汽車流通協会乗用車市場信息聯席分会(乗聯会)のデータによれば、2025年1~3月期の輸出台数は約9万9000台と前年同期比44%も減少した。

東洋経済より

だが、それでも支那から大量に自動車を購入する時代は終わったらしい。特にEVは敬遠される傾向にある様だ。

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政治的な事情で売り上げが落ち込む

売れている?EV

そういえば、こんなニュースがあったばかりである。

英国EV市場を中国が席巻、BYDが新車登録台数でテスラ抜く、工場進出計画を持つ中国企業も、そのとき日系企業は…

2025.7.7(月)

中国の電気自動車(EV)メーカー、BYDの英国での新車登録台数が今年5月、前年同月の596台から一気に5倍の3025台(前年同月比408%増)に増え、米IT実業家イーロン・マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務めるテスラの2016台(前年同月比36%減)を追い抜いた。

JB Pressより

タイトルだけ見ると、ついにテスラが!と思うわけだが、台数がショボい。イギリスの月間新車販売台数は概ね15万台程度。うちEVは市場の25%程度のようだ。EVの販売は旺盛だね。

英国の新規乗用車登録数の前年比

2025年6月、英国の新車販売は前年比6.7%増の191,316台となり、2か月連続の成長と2019年以来の最高の6月のパフォーマンスを記録しました。この成長は、主にフリート需要に牽引され、8.5%増の114,841台となりました。一方、個人小売販売は5.9%増の71,616台となりましたが、市場全体のわずか37.4%を占め、新車の4台に1台に満たない割合となりました。一方、事業用登録は4,859台と15.8%減少しました。ガソリン車の登録は4.2%減少し、ディーゼル車は横ばい(+0.2%)となり、両者の合計シェアは現在51.6%となっています。電動車は92,571台と市場シェアの48.5%を占め、シェアを拡大しました。プラグインモデルが成長を牽引し、バッテリー電動車(BEV)は39.1%増の47,354台(市場の24.8%)、プラグインハイブリッド車(PHEV)は28.8%増の21,382台となりました。一方、ハイブリッド電動車(HEV)は8.5%減の23,835台となりました。

TRADING ECONOMICSより

自動車販売台数と新車登録台数はほぼ同じ意味だが、3025台(BYD)って、「英国EV市場を中国が席巻」という煽りを書いて良いものか。

テスラ、5月英販売台数が前年比45%減=調査

2025年6月4日午後 1:08

米電気自動車(EV)大手テスラの5月の英国における新車販売台数は1758台と、前年同月の3244台から45%超減少した。調査会社ニュー・オートモーティブが4日発表したデータ(速報値)で明らかになった。

~~略~~

それでもテスラ車は年初来、英国で最も売れている電池式EV(BEV)の座を維持している。

英国の5月の新車登録台数は、全体では前年同月比4.3%増の14万4098台で、BEVの販売台数は同28%増えた。

ロイターより

東洋経済の記事の裏を取るために探したら、似たような数字をロイターも出していた。ロイターの数字は調査会社の数字なので公式のモノと数字が違うのは仕方のない面はあるが。

ともあれ、イギリスではガソリン車廃止の方向に向かっているのでEVの売れ行きが好調というのは理解できる。

VWが好調

一時期はEV販売の鈍化という話も出ていたが、2025年に入ってからはその勢いを再び取り戻した感じになっているようだ。

ヨーロッパはEV普及の「踊り場」脱出へ/コンパクトな車種が増え中国メーカーの販売も加速 | EVsmartブログ
欧州市場における2025年Q1のEV販売動向が発表されました。EVシフトの停滞を乗り越えて、EV販売が伸びはじめているという最新動向が明確になりました。フォルクスワーゲングループの販売が回復し、BYDなど中国メーカーが躍進中、2025年シー

とはいえ、全体的な傾向としては支那製EVが市場を席巻!という感じではないように思う。

img

この販売ランキングで注目するべきは2点あります。まずトップ10のうち販売台数が減少しているのがテスラだけで、特にフォルクスワーゲングループのEV販売が急速に回復しているという点です。モデルYは周知の通り、モデルチェンジによる一時的な販売の落ち込みであり、生産がフル体制となっている4月以降のQ2販売台数に注目するべきでしょう。

~~略~~

また、Kia EV3、ルノー5、シトロエンe-C3、アウディQ6 e-tronをはじめとして、新型EVが続々と上位にランクインしており、人気EVの新陳代謝が起こり始めているという点も重要です。

EVsmartBlogより

ただ、支那勢が販売拡大している事情はあるようで。

さらに、BYDだけでなく中国勢の欧州におけるプレゼンスが急速に向上しています。3月単体における中国メーカー勢の販売台数は7万台超と史上最高の販売台数を更新。中国勢のマーケットシェア率は5.2%に到達しています。つまり3月に欧州で売れたすべての車両の20台に1台以上が中国ブランドの車両だったのです。

EVsmartBlogより

このブログでは最近、BYDの支那国内での不調を幾つも記事にしていただけに、こういったヨーロッパでの傾向は意外に思えるのだが、価格競争力という意味ではBYDは未だに優位に立っている。

そういえば、追加関税をかけるというような話があったハズなんだが……。

不思議である。

EUの対支那EV関税の概要

対象関税率
BEV(バッテリーEV)基本10%+反補助金措置最大35.3%(合計45.3%)
メーカー別反補助金関税 (例:BYD 17%、Geely 18.8%、SAIC 35.3%)上記に含まれる
PHEV(プラグインハイブリッド)関税対象外(10%にとどまる)

どうやら、45%の関税がかけられてなお、BYDなど支那製のEVがお買い得ということらしいね。

そんな中で冒頭に紹介したように、ロシア向けの販売台数が減っているというのは意外に思える。

締め付けが厳しく

何があったのだろうか?

2024年には、ロシアは中国車の輸出先として国別で最大の市場だった。ところが2025年1~3月期のロシア向け輸出台数はメキシコとアラブ首長国連邦(UAE)を下回り、第3位に後退してしまった。

東洋経済「中国製自動車の「対ロシア輸出が急減」した事情」より

ウクライナ侵攻を始めてから、急激にロシア国内での支那製自動車販売数が増えたという背景には、ロシア経済への制裁を西側諸国中心になって行っていたことがある。

ところが、その情勢は2024年4月までということのようだ。

乗聯会のデータによれば、2023年にロシアに輸出された中国車は前年の5.6倍の約90万9000台に急増。2024年は前年比27%増の約115万8000台と100万台の大台を突破した。

アメリカの市場調査会社ロジウム・グループのレポートによれば、ロシア市場における中国車のシェアは2021年には10%に満たなかったが、2024年は50%を超えたという。

ところが2024年4月以降、ロシア政府が打ち出した複数の政策の影響により、中国車の輸入拡大にブレーキがかかった。

東洋経済「中国製自動車の「対ロシア輸出が急減」した事情」より

ちょっと前の記事で、ロシアでの中古車市場において支那製の自動車が敬遠され始めているというような内容に触れた記憶がある。

しかしロシア政府は支那製自動車がロシアの市場を席巻することを快く思っていなかったようだ。

ロシア政府は2024年4月、中央アジア諸国を経由してロシアに流入する自動車を標的に、関税逃れの抜け穴をふさぐ措置をとった。一部の中国メーカーが(ロシアが関税を優遇している)カザフスタンやキルギスを経由した迂回輸出により、ロシアの高関税を回避していたからだ。

さらに2024年10月、ロシア政府は輸入車の廃車税(リサイクル税)を70~85%も引き上げ、輸入車の保有にかかる費用負担を(国産車よりも)重くした。この廃車税の税率は、2025年から2030年にかけて毎年10~20ポイントずつ引き上げられる予定だ。

東洋経済「中国製自動車の「対ロシア輸出が急減」した事情」より

ロシア政府は国産車の保護政策を推進したいようだが、支那製の車両の技術的な問題点があって、トラブルが顕在化したために締め付けを強めたというようなことを言っている模様。

しかし、ロシア国内の自動車メーカーは国内需要を満たすほどの生産力がなく、外国からの輸入に頼らざるを得ない状況である。それでも支那製の自動車は欲しくないってことみたいだね。

方針は加速

東洋経済の記事では44%減ったという内容だったのだが、4月の別の記事では撤退した企業もあるとのこと。

付加価値製造が新たな常態となる中、中国輸入自動車ブランドがロシア市場から撤退

2025年4月17日

中国の自動車メーカーは、欧州メーカーが市場から撤退し、中国ブランドがそれに取って代わったことで、過去3年間でロシア市場におけるシェアを45%にまで拡大した。しかし、供給過剰とロシアの自動車輸入関税の変更により、需要不足により最大10の中国ブランドがロシア市場から撤退する可能性がある。

russiaspivottoasia.comより

この理由がチョット面白かった。「倉庫の過剰在庫、高い貸出金利、そして消費者の低迷が重なり」と説明しているのだが、どうやら支那はロシアが余り望んでもいないのにどんどん自動車の輸出をして、過剰在庫が積み上がっているようなのだ。

金利上昇や消費者の低迷はロシア側の事情であるが、過剰在庫の積み上げはロシアにとっても困った話。じゃあ、輸入を絞れば良いんだが……。あ、だから絞ったのか。

オートスペッツツェントルのCEO、アンドレイ・テルリュケヴィッチ氏は、「2025年第1四半期の販売統計を見ると、多くのブランドから『なぜここにいるのか?』という疑問が湧きます。例えば、フォルシング、VGV、MG、オーティング、JMC、リヴァンなど、これらのブランドは国内での月間販売台数が数十台にも満たないのです」と述べています。

少なくとも1つの中国ブランド、スカイウェルは既にロシア市場から撤退しており、販売契約が更新されなかった。しかし、これらのブランドの多くはUAEなどの新たな輸出市場に進出している。

russiaspivottoasia.comより

特に売れない支那製の自動車は流石に撤退する方針を採らざるを得なかったということらしい。つまり、支那はロシアでも焼畑農業をやっていて、ロシア政府はそれを問題視して締め付けを始め、流石に維持出来ないメーカーが撤退を始めたという構図なんだろうね。

EVはロシアでは売れない

そもそも、ロシアで売れている支那製の自動車はほぼエンジン搭載車である。EVなど殆ど売れないのだ。

項目数値/状況
新車 (2024)約1.55‑1.57 百万台(前年比+47‑48%)
新車見通し (2025)約–10〜15%減で1.43 百万台への減速
EV保有台数約60千台(+33%)
新車EV販売17,805台(+26%、シェア1.1%)
プラグイン車57,468台(+178%、シェア約2–2.5%)

充電設備が不十分であるロシアにおいてEVなんて乗ってらんねー。冬が厳しくなれば動かなくなる車は無理!というようなことで、まあ、妥当な判断なんだよね。

しかし、支那にとってはエンジン車よりもEVに力を入れたいわけで、そうするとヨーロッパで元気の良い状況もEVに全力を傾けていて、EVが受け容れられやすい土壌だからこそという面が強い。

一方で、エンジン車は支那では開発に力を注がれない状況なので、進歩が遅い。恐らくは対策を求めても対応が遅いのだろうね。

そういう意味では、「支那製の車なんて困る」というのが実情なんだろうと思う。それにしたってロシアの内情だってキビシイハズなんだが……。よっぽど、支那製のエンジン車はダメなんだろうね。

追記

別の記事を追いかけていて、興味深い情報を引っかけたので、関連事項として紹介しておく。

中国はロシアのバイク市場を獲得した

売上高は前年比76%増加

中国企業はロシアのオートバイ市場を席巻している。専門家によると、2023年のロシアでの新車販売台数は27,196台で、2022年比76%増となった。これは主にサプライヤーの変化によるもので、現在、販売の大部分は中国メーカーによるものだ。

Quto より

自動車は売れていないけど、バイクは非常によく売れているらしいのだ。

当然ながら、戦場でもかなり積極的に用いられているようで。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    結局、ロシアは「安いもの買いの銭失い」になるのでしょうね。
    失うのが銭だけなら良いですが。
    支那のEV、よく燃えますからね。

    そして支那も、最初に売ったヤツは儲けても、悪評千里を走るからもうすぐに売れなくなる。
    そうやって世界中の市場から弾かれる。

    やはり、2027年頃にいろんな意味で阻止限界点が来るっぽい感じですね。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      支那のエンジン車はよっぽどダメなんでしょうね。
      リスクがあるので中古車市場でも使えない。流石に「もう要らない」ってことになるのでしょう。