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韓国地方都市、消滅の危機──釜山も例外ではない

大韓民国ニュース
この記事は約8分で読めます。

以前の記事のコメントで釜山の話があったので、本日は少しそのあたりに触れていきたい。

「韓国第2の都市・釜山が消滅の危機…人口災難」 英国メディアが指摘

2025.02.11 09:44

英国日刊フィナンシャル・タイムズ(FT)が韓国第2の都市である釜山が少子化や高齢化などに伴う人口減少で人口災難が懸念されると指摘した。

中央日報より

韓国は先進国の仲間入りをしたとして胸を張っていて、その経済力もロシアに次いで世界で12位。世界的な企業も数社あって、それなりの国力を持っている……印象があるんだけど、第2の都市が消滅危機というのは意外な気がする。

だが、この原因は韓国の構造的な問題に根差しているようなのだ。

  • 韓国第2の都市「釜山」で人口減少が続き、消滅都市にノミネート
  • 産業構造的にソウル以外の都市は人口減少と経済減退が目立つ
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地方へ行くほど危ない

消滅都市とは?

記事では「消滅の危機」と煽られている釜山だが、こういった消滅の危機のある都市のことを「消滅都市」と呼ぶ。

FTは9日(現地時間)、「消滅危機:韓国第2の都市、人口災難を懸念する」と題する記事で、「釜山は山・ビーチ・映画祭など魅力と資産をすべて保有している都市だが、世界で最も出生率が低い国(韓国)において、他の広域市と比べても急速に萎縮している」としながら「20世紀以後は貿易の中心地だったが、今は若者たちの離脱によって急速に高齢化している」と診断した。

中央日報「韓国第2の都市・釜山が消滅の危機~」より

具体的には、少子化や人口流出によって、自治体として存続することが難しくなる可能性のある「消滅可能性都市」を指す。同じタイトルのゲームがあるが、あれとは全然関係のない話だね。

韓国第2の都市、釜山(人口約333万人)だが、過去30年で約60万人が減少し、若年女性の流出が出生率低下に直結している。

釜山も危ない大都市

韓国の場合、人口集中する首都ソウルからの距離が、消滅指数に直結する傾向にあるらしい。

都市ソウルからの距離消滅指数特徴
ソウル0 km0.55首都圏、人口吸引力大
光州270 km0.52若者流出、地方中枢都市
大邱300 km0.51若者流出、出生率低下
義城郡380 km1.89若年層流出著しい
釜山400 km0.49若年女性人口減少、地方大都市として危険水準
高興郡470 km1.89小学校・出生ゼロの可能性

表にしてみると首都ソウルでも消滅指数0.55と高め。だが、これは消滅指数は 人口減少・高齢化・出生率低下の複合指標 であり、数値が高いほど消滅リスクが高いのだけれど、人口が集中して高齢化も進んでいる影響があるので、ソウルは例外と見るべきだろう。

一方、釜山は大都市でありながら、地方中核都市と同様に消滅リスクが高い部類に入る。特に若年女性人口の減少は、出生率低下に直結しており、将来の人口構造を大きく歪める要因となっている。

消滅指数が高く、かつ人口減少速度が高いことが釜山の問題なのだと評価できる。

釜山は大都市でありながら、地方中核都市と同様に消滅リスクが高い部類に入る。特に若年女性人口の減少は、出生率低下に直結しており、将来の人口構造を大きく歪める要因となっている。

地方の危機はさらに深刻

それでも、第2の都市だけあって、他の地方よりはまだマシなのだ。

韓国全土にある228自治体のうち、118自治体が「消滅危険地域」とされている。高興郡や義城郡の消滅指数は1.89に達しており、小学校・出生ゼロの自治体も出てきた。

ソウルからの距離が遠いほど人口減少と高齢化が深刻化する傾向があり、農村部や中小都市は「消滅最前線」と言える。

なぜこんなことになったのかといえば、産業構造の影響やインフラの整備などが影響しているんだよね。

経済・産業構造の影響

地方経済の弱さ

実は韓国の地方は一部、大企業の工場を擁するところもあるんだけど、大部分はそうではないのだ。

以下のように韓国地方経済の弱さはまとめられる。

  • 地方は中小零細企業や自営業が中心で、安定した雇用が少ない
  • 全国一律の最低賃金の影響で、地方企業の人件費負担が重く、雇用創出が難しい
  • 若者は首都圏の高収入・安定職を求めて流出する

結果として、人口減少と経済停滞が悪循環となり、地方の持続可能性を大きく揺るがす。

自動車・半導体産業の現状

では、韓国の輸出産業を支える主要製造業を抱えた地方都市はどうなのだろうか?日本だと、地方都市とはいえ産業を持っているところは結構元気なところもあるのだ。

  • 半導体:京畿道、平沢、天安市などにサムスン・SKハイニックスの工場
  • 自動車:蔚山、光州、昌原に現代・起亜の工場

しかし、これらの地方工場は経済的にはプラスであるものの、下請け企業は親会社依存度が高く、自律的な研究開発や品質維持力が限定的

そのため、地方の人口定着や消滅リスク抑制には十分な効果がでていないようだ。

日本との対比

例えば、日本だと世界的な企業を抱えている愛知県などが、その代表だといえよう。

  • 日本
    • 愛知県・トヨタ系列:デンソー、トヨタ車体、トヨタ紡織など系列下請けは独自のR&D・海外販売網を持ち、地域経済・人口維持に寄与
    • 静岡県浜松市・スズキ関連:静岡県西部の地域雇用と経済活性化に大きく貢献
    • 三重県鈴鹿市・ホンダ関連:三重県鈴鹿や埼玉県狭山の地方経済を支える雇用と下請けネットワーク
  • 韓国(現代系列):下請けは小規模で親会社依存度が高く、独自事業展開・海外展開は限定的

結果として、韓国の自動車産業は地域経済支援力はあるものの、人口流出防止には弱い構造となっている。

日本でも自動車産業は「下請けいじめ」をすると揶揄されるが、独自開発して製品の世界展開をしている会社も少なくない。一方、韓国では支配構造が強く、下請け企業が自社開発するようなケースは稀である。

つまり、世界的な大企業があるにも関わらず、地域経済を支えるような形になっていないのである。

サムスンやLGなども地域の雇用を生み出してはいるが、構図は似たような感じである。

国際比較

こうした構図は世界的にみるとどうなのだろうか?

主な自動車地域下請け自律性地方人口への影響備考
韓国蔚山・光州・昌原低い限定的首都圏吸引が強く地方消滅リスク高い
日本愛知県・静岡県高い安定系列企業が独自R&D・販売網持つ
アメリカデトロイト・オハイオ州中程度部分的サプライヤー独立性あり、近年は人口減少課題も
イギリスバーミンガム周辺中程度安定政府支援で地方経済維持
イタリアトリノ・北部高い安定輸出展開可能、地域経済への波及大

とまあ、ザックリとしたまとめではあるんだけど、こんな感じで韓国が特別、地域への貢献性の低い状況になっているようだ。

その結果、親会社依存+首都圏吸引+地方経済単一依存という三重構造で、地方消滅リスクが突出して高くなっている。

これは、韓国の大企業の殆どが財閥系企業であって、下請け企業は親会社の受注に完全依存する体質になってしまったことが影響しており、財閥系企業の多くはソウルに拠点を持っているので、地方への定着性が薄いのだ。

交通インフラの脆弱性

このことは、韓国の交通インフラの脆弱性も影響している。

経済の中心地となっているソウルから離れるほど、経済は停滞しがちである。そして、ソウルに本社がないと経済的な恩恵を受けられない。

日本も似たような構図はあるが、それでも新幹線のような高速鉄道や整備された高速道路の影響で、その影響を緩和している。

つまり、地方都市の人口流出を緩和するほどの効果は、韓国のKTXや高速道路にはないのだ。ソウル~釜山間のKTXは2.5~3時間、高速道路は4~5時間かかり、日常通勤や若年層の定着には不十分である。

実際、KTXは最高時速はそこそこあるけど、停車駅が多いこともあって早くない。だから、高速鉄道とは呼べない代物になってしまっている。つまり、物資も人もソウルに早く運べないので、結果的にソウルからの距離が消滅指数の増加に繋ながるというわけだ。

そして内需の不振が拍車をかける

で、ここにきて更に悪いことに韓国の内需が冷えている。

内需不振の直撃弾…20代・40代の雇用が過去最大減少=韓国

2024.11.21 13:51

韓国の今年4-6月期の雇用が1年前に比べて約25万件増にとどまった。雇用の増加も60歳以上の高齢層が牽引した。20代以下の青年層と経済の要となる40代の雇用は過去最大幅の減少となり、雇用の質の低下が懸念されている。

中央日報より

ムン君の時代から、雇用統計はかなりごまかしがあって、高齢層の雇用を積極的に増やすことで、見かけ上の雇用率を引き上げてていた。

つまり、韓国の若年失業率はかなり高い。

年齢帯別には20代以下の雇用が13万4000件減り、2017年に関連統計の作成を開始して以降、最大の減少幅となった。40代も5万6000件減り、過去最大の減少幅だった。統計庁のキム・ジウン行政統計課長は「2つの年齢帯ともに人口減少の影響があるうえ、20代以下はカフェ・飲食店(卸小売業)に、40代は建設業に従事する比率が高いが、両業界の事情が良くない点が複合的に作用した」と説明した。

中央日報より

そして、建設業も飲食業もかなり不振なので、若者の雇用がないのだ。そうすると、更に地方から中央へという傾向に拍車がかかって、負のスパイラルを加速するのである。

まとめ

そんなわけで、韓国第2の都市釜山の消滅危機の話をざっくりまとめてみたが、改めて要点だけ抽出すると以下のような感じになる。

  • 韓国は「首都集中+地方消滅」の二極化が進行
  • 釜山も大都市ながら消滅リスクに直面
  • 遠隔地の中小都市・農村部では小学校・出生ゼロの自治体も多数
  • 工業立地(自動車・半導体)は経済的支えにはなるが、人口維持・地方消滅防止には限定的
  • 日本や欧米の例と比べ、下請けの脆弱性や首都圏集中が韓国地方消滅の特殊要因

地方都市の人口を維持するには、若者定着・雇用創出・子育て支援・教育・医療環境改善といった包括的な施策が不可欠だ。韓国の地方都市の消滅リスクは、単なる人口統計の話ではなく、産業構造・経済力・都市間格差という構造的な課題に根ざしているのである。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    「釜山港へ帰れ」って唄が、七面鳥がガキの頃流行ってましたが、全く意味分かりませんでした。
    今は「いいからはよ帰っちまえ!」としか思いませんが、帰る先もなくなる可能性が……
    歴史の本では一行で国は消えますが、実際にはこうやってじわじわと沈んでいくのですね。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      ええ、ええ、お帰り頂くのに、何の不都合もございません。
      ただ、帰った土地に幸せがあるかは、ちょっとね。

      なかなか、「衰退の一途」を見せつけられると、日本としてもしっかりと対応しないと、と思わされますね。